フォトグラファーにもっと力を。Adobe MAX 2024で発表されたLightroomの最新機能をご紹介
2006年にAdobe Lightroomを発売して以来、アドビは、誰もが素晴らしい写真を撮影したり、創造的なビジョンを表現したり、また、ストーリーを共有し、さらにフォトグラファーとして成長できるよう支援することを使命としてきました。 皆さんからのAdobe Lightroomを最高の製品にするための貴重なフィードバックがなければその実現は不可能でした。
プレリリースプログラム、Lightroomアドバイザリーボード、コミュニティフォーラム、アンバサダープログラム、そして世界中のイベントを通じ、私たちは何千ものフォトグラファーからご意見をいただいています。こうした対話は、皆さんのクリエイティブなニーズを満たし生産性を向上させる製品としてのAdobe Lightroomの開発に役立っています。
私たちは、この1年間の開発の成果をAdobe MAX 2024リリースで皆さんにお届けできることをとても楽しみにしてきました。本記事では、作業効率を高める革新的な新しいAI機能からAdobe Lightroomのパフォーマンスとスピードの重要な強化まで、さまざまな機能をご紹介します。開発チームあるいはコミュニティに属するフォトグラファーたちのコメントもあわせ、詳細なアップデート内容をご紹介します(動画コメントもあります)。
AIで作業時間を短縮するパワフルな新機能
Adobe Lightroomに備わった数々の革新的なAI搭載編集機能は、編集の質を維持しながら時間を節約したいプロフェッショナルにとって強力なショートカットとなります。
今年のAdobe MAXでは、クイックアクションと生成削除の強化が発表されました。どちらの機能も、時間のかかる編集ステップを省略し、よりクリエイティブな編集プロセスに集中できるようにします。Adobe Lightroomコミュニティメンバーで、写真教育者であり、そして新たに品質エンジニアリングチームの一員となったブライアン マティアシュ(Brian Matiash)が動画でご説明します。
クイックアクションでどこからでも精密な編集が可能に
早期アクセス版として提供:Adobe Lightroomモバイル版(iPhone & Android)、Adobe Lightroom web版
Adobe Lightroomモバイル版および web版のクイックアクションはまず、写真の被写体の形状に基づいてマスクを自動的に作成し、精密な編集をスピードアップしてくれます。 そして次に、コンテキストに応じた編集を提案し、関連ツールを表示するのでワークフローを迅速に開始できます。これは外出先での編集や、メインのコンピュータから離れた場所で正確な編集を行う必要がある場合に最適です。
例えば人物写真を素早く編集したい場合、クイックアクションは被写体、背景、歯、目、肌などのレタッチ対象を検出し、選択した各要素の個別のマスクを自動的に作成します。それらのマスク領域にそのまま画像調整を適用することも、マスクパネルで形状をさらに微調整することも可能です。また、画像に最適化がワンタップで完了するプリセットの提案もしてくれます。
クイックアクションは、Adobe MAXでの発表に合わせてモバイル版およびweb版アプリで早期アクセスがご利用可能で、今後さらに改善していく予定です。ぜひ今すぐお試しいただき、ご意見をお寄せください。
生成AI削除の選択機能の強化
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroomモバイル版(iOS/Android)、Adobe Lightroom web版、Adobe Camera Raw
2024年5月に「生成AI削除」を早期アクセス版としてリリースして以来、何百万人ものユーザーが、本当に伝えたいことを写真に残すために、不要なものを除去して完璧な画像に仕上げられるようになりました。
生成AI削除は、今回のAdobe MAXリリースによってAdobe Lightroomエコシステム全体にわたって正式リリースされます。また、オブジェクトの選択機能も強化され、より使いやすくなりました。「オブジェクトの検出」オプションをオンにすると、削除したい邪魔なオブジェクトを囲むだけで選択され、オブジェクトを正確になぞる必要がなくなります。
ワークフローの高速化
私たちは日々、フォトグラファーのコミュニティから貴重なご要望やアイデアをいただいており、そのフィードバックを真摯に受け止めています。 Adobe Lightroomチームのメンバーの多くはフォトグラファーでもあり、強力な新機能の開発だけにとどまらず、この製品のユーザーエクスペリエンスを向上させ、皆さんの作業を少しでも楽にする方法を常に模索しています。
フォトグラファーコミュニティからの要望やフィードバックを直接反映した、特にリクエストの多かった機能の改善および強化は以下の通りです。
Adobe Lightroom Classicの現像モジュールのパフォーマンス向上
対応環境:Adobe Lightroom Classic
この1年、Adobe Lightroom Classicにおいては、現像モジュールのパフォーマンスの向上に注力してきました。その結果、画像ナビゲーションの速度が2倍に向上し、フィルムストリップがより機敏で応答性の高いものになりました。今年のAdobe MAXリリースでは、メモリとキャッシュをさらに強化し、Windowsでの画像ナビゲーションの操作性を改善して、よりスムーズなパフォーマンスを実現しました。
Nikonカメラでのテザー撮影サポートの強化
対応環境:Adobe Lightroom Classic
Nikonカメラでのテザー撮影が、WindowsとMacの両方でより高速かつ信頼性の高いものになりました。最新のアーキテクチャの改善により、カメラの検出時間が約1秒に短縮しています。一部の新しいNikonカメラでは読み込みが最大3倍速に改善され、古いNikonカメラでも2倍の速度を維持しています。これには、Adobe Lightroomが既に提供しているSony(5月にサポート追加)やCanonなど他のカメラメーカーのテザー撮影サポートで培った技術が活かされています。
HDRサポートの拡張
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroomモバイル版(Androidのみ)
昨年のAdobe MAXでは、モバイルでのキャプチャから編集、書き出しまで、エンドツーエンドのハイダイナミックレンジ(HDR)ワークフローである「HDR最適化」をリリースしました。これにより、より現実世界に近づいた素晴らしいHDR写真を作成できるようになりました。今回の最新リリースでは、すべてのAdobe LightroomにおいてHDRコンテンツを追加のビューで表示できるようになりました。
また、書き出し時にISO HDRゲインマップの埋め込みが可能になり、SDRとHDRの2つの別々のファイルを作成する必要がなくなりました。 HDRゲインマップにより、ディスプレイの能力に応じて、SDRかHDRのレンディションを自動的に表示できるようになり、デバイス間で一貫した表示体験が保証されます。 HDRゲインマップは、Apple Photos、Google Chrome、Instagramなど、多くのアプリでサポートされるようになりました。
さらに今回のリリースでは、Google Pixel 9シリーズのデバイスを使用しているユーザーがHDRで写真を閲覧および編集できるようになりました。さらに、Appleシリコン搭載のMacデスクトップコンピューター、または、Adobe Lightroom iOS版を使用している場合は、静止画に加えて動画もHDRで編集できるようになりました。
その他のアップデート
ノイズ除去の追加ファイル形式サポート:(対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Camera Raw)「ノイズ除去」が対応するRAWファイル形式について、これまでのベイヤー形式とX-Trans形式に、HDR形式とパノラマ形式のDNGファイル、Apple ProRAW DNG、Samsung Galaxy Expert RAW DNG、Google Pixel Raw、およびCanon、Nikon、Sony、Leica用のリニアRAWファイル形式を追加し、サポート対象を拡張しました。
プレビュー管理コントロール:(対応環境:Adobe Lightroom Classic)以前は、カタログ設定内でプレビューストレージを管理するには、古いプレビューをどのくらいの頻度で破棄するかをAdobe Lightroom Classic上の設定で調整するしかありませんでした。Adobe MAXリリースでは、ユーザーはプレビューキャッシュの制限を設定して、Adobe Lightroom Classicがプレビューの保存に使用できるディスク容量を制御できるようになりました。
カタログのアップグレードワークフローの改善:(対応環境:Adobe Lightroom Classic)カタログのアップグレード時に名前の変更が不要になりました。Adobe Lightroom Classicでは、アーカイブ用に以前のバージョンのカタログをバックアップできるようになりました。現在のカタログの名前は、「ファイル/カタログの名前を変更」で変更できます。
Adobe Lightroom Android版のパフォーマンスの改善:(対応環境:Adobe Lightroomモバイル版)Adobe Lightroom Android版にも重要なアップデートが追加され、写真のレンダリング、編集、書き出しにかかる時間が大幅に短縮されました。グリッドビューでの RAW画像の読み込み時間が88% 短縮され、わずか 2.5 秒になりました。 選択した被写体のマスク生成も40%高速化され、レンズぼかしで編集した JPEG の書き出しにかかる時間は 3 倍速くなりました。
新しいワークフロー
Adobe Lightroom、Adobe Photoshop、Adobe Camera Raw など、アドビのエコシステム全体で利用できる、さらに多くの写真向けの魅力的な新機能が追加されました。Adobe Lightroom 以外の写真ツールでも、新しい作業方法をお試しください。
作家、教育者、および「アプリ内学習とインスピレーション」のプロダクトマネージャーであるAdobe Lightroom チームに所属するカトリン アイスマン(Katrin Eismann)が動画でご説明します。
Adobe Lightroomでのより高度なワークフローのサポート
対応環境:Adobe Lightroom
- スマートアルバム: 検索結果をスマートアルバムとして Adobe Lightroomに保存し、すばやくアクセスして簡単に整理できます。
- サードパーティ製アプリケーションとの連携: Adobe Lightroomから任意のサードパーティ製アプリケーションに写真を送信して追加編集し、作業が完了したら自動的にAdobe Lightroomに戻すことができます。
- カメラとAdobe Lightroomの連携: Frame.io を使用して撮影から編集までをシームレスに行い、C2C 対応カメラからモバイル、Web、デスクトップ経由でAdobe Lightroomにワイヤレスで画像を送信することができます。Frame.io プロジェクトをAdobe Lightroom に接続する方法とデバイスの互換性を確認する方法については、こちらをご覧ください。
- プリセットの強化: 選択した複数の写真にプリセットを一括適用したり、よく使うプリセットをお気に入りに追加して簡単にアクセスしたり、プリセットリストでサムネイルプレビューを表示したり、その他にもさまざまな機能が追加されました。
- アクセシビリティ: Adobe Lightroomでスクリーンリーダーを使用したり、キーボードでアプリケーションを操作したりできます。
Adobe Camera RawのAI搭載新機能
https://main--theblog--adobe.hlx.page/en/assets/adobe_adaptive/img/landscape-sdr.jpg
https://main--theblog--adobe.hlx.page/en/assets/adobe_adaptive/img/landscape-hdr.jpg
Adobe Adaptiveを使用してCamera RAWで作成した画像の編集前(左)と編集後(右)。右の編集画像は、Adobe Adaptiveプロファイルを使用し、手動調整なしでレンダリングしたものです。画面が対応している場合は、画像にカーソルを合わせるとHDRバージョンが表示されます。
- 生成拡張(テクニカルプレビュー):Adobe Fireflyを搭載した 生成拡張は、背景に自然にフィットするコンテンツを新規生成し、既存の画像のエッジとシームレスにブレンドします。
- Adobe Adaptive(ベータ): Adobe Adaptive(ベータ)プロファイルは、空と人物を内部的に調整することで、画像固有のレンダリングを作成します。 風景、建築物、高コントラストのシーンなど、ハイダイナミックレンジの高い画像に最適です。 Adobe Adaptiveの詳細については、こちらをご覧ください。
- その他のACR機能強化(テクニカルプレビュー): スーパー解像度、Rawディテール、ノイズ除去の各機能では、個別のDNGファイルは作成されなくなる他、ノイズ除去の設定を素早く再調整できるようになり、より効率的な編集が可能になりました。
Adobe Fireflyを搭載したAdobe Photoshopの新しいAI写真機能
- 不要な物を検出: 電線や背景に写り込んだ人物など、写真の不要な要素をワンクリックで自動的に検出し、除去します。
- 生成拡張: 生成コンテンツで写真を枠外へとシームレスに拡張し、画像を拡張します。
- 生成塗りつぶし: 簡単なテキストプロンプトを使用して、選択範囲内で画像を追加、削除、または変更します。 蝶、山々、広大な景色といった要素の追加など、クリエイティブなワークフローで使用できます。
Adobe MAXにおけるAdobe Photoshop リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
信頼と透明性に対する継続的な取り組み
Adobe Lightroomチームは、AI時代における信頼性と透明性を高める機能の構築に専念しています。コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)の一環として、Adobe Lightroomから書き出したファイルにコンテンツクレデンシャルを追加できるオプションをリリースしました。これにより、作品の来歴証明と信頼性の維持が実現します。
Adobe Lightroomのコンテンツクレデンシャル対応
対応環境:Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、Adobe Lightroomモバイル版(iOS/Android)、Adobe Lightroom web版、Adobe Camera Raw(早期アクセス)
Adobe Lightroomエコシステム全体で、新しいコンテンツクレデンシャル機能が早期アクセス版として提供されます。これにより、Adobe LightroomからJPEGファイルを書き出す際に、デジタル署名を通じて名前、SNSのハンドル名、編集履歴を添付するオプションが提供されます。
コンテンツクレデンシャルの添付を選択すると、入力した情報が画像ファイルに関連付けられ、それらは contentcredentials.org/verify または新しいAdobe Content Authenticity(ACA)ウェブアプリに写真をアップロードして確認することができます。写真にコンテンツクレデンシャルが含まれていることを示す「CR」アイコンが表示され、画像をタップすると作品の帰属先、使用状況、作成プロセス(作者がそれを含めることを選択した場合)などの概要が表示されます。
ドキュメンタリーおよび編集写真家として活躍し、ハワード大学の非常勤教授でもあるシェリス メイ(Cheriss May)氏に動画でご説明いただきます。
ぜひお試しいただき、ご意見をお寄せください。
本記事でご紹介した最新の機能と機能強化は本日よりご利用いただけます。Adobe Lightroomモバイル版は、お使いのスマートフォンのアプリストア(Apple App Store、Google Play Store、Samsung Galaxy Store)から無料で入手できます。 Adobe Lightroom web版には lightroom.adobe.com からアクセスでき、ダウンロードは不要です。Adobe Lightroom、Adobe Lightroom Classic、および、Adobe Photoshopは、Adobe Creative Cloudデスクトップアプリからダウンロードできます。
これらのアップデートについてさらに詳しく知りたい方は、Adobe LightroomとAdobe Lightroom Classicの新機能ページをご覧ください。
Adobe Lightroomの新機能をお試しいただいた後は、ぜひご意見をお寄せください。Adobe Lightroomアプリ内の「早期アクセスツール」、コミュニティフォーラム、またはSNS(@Lightroom)を通じてご意見やご感想をお寄せください。
注意事項:Adobe Lightroomの生成AI削除は、Adobe Lightroomを含むサブスクリプションまたは体験版をお持ちのAdobe Creative Cloudメンバーが利用可能です。なお本機能およびAdobe Fireflyを搭載した機能は中国本土ではご利用いただけません。
この記事は2024年10月14日(米国時間)に公開された More Power to Photographers: Explore the latest from Lightroom at Adobe MAX 2024 (beta) の抄訳です。