【事例】PDF変換精度の向上により顧客満足度向上と新規顧客獲得を実現

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株式会社 LegalOn Technologies は、AI 技術を活用した法務プラットフォーム『LegalOn Cloud』を提供している。同サービスでは、契約書をレビューするためにPDF をWord に変換する機能の一助としてAdobe PDF Services API を採用。開発工数の削減とともに、高精度な変換を実現した。需要の多いWord変換に対応したことで、新規顧客獲得などにもつながっている。

リーガルテックが直面したPDF 変換の課題

近年、各企業では人材不足が深刻化しており、法務も例外ではない。AIや法律の観点から導入を控えていた企業もいたが、2023年に法務省が公開したガイドラインにより、AIを用いた契約の自動レビュー機能などは弁護士法72条に違反しないことがより一層明確になったことも相まって、法務業務の効率化に対する需要が高まっている。株式会社LegalOn Technologies(以下、LegalOn Technologies)は、新サービスである『LegalOn Cloud』の使い勝手を向上させるため、PDFで受け取った契約書の処理に関する問題と向き合っていた。PDFで契約書をやり取りをすることが多い顧客から、『LegalOn Cloud』サービス内でPDFをより効率的に確認し、編集できる機能を求められていたのだ。

従来は、独自のOCR技術を用いてPDFのテキスト抽出を行えるようにしていたが、この方法には大きな課題があった。プロダクトマーケティングマネージャーの高松 泰嗣氏は、「OCRで読み取ったテキストは、元のPDFと体裁がズレてしまうことがありました」と振り返る。

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プロダクトマーケティングマネージャー 高松 泰嗣氏

具体的には、インデントが崩れる、表の罫線が消失する、ヘッダーやフッターに不要な文字が混入するといった事象が発生し、顧客は手動で再び整える必要があったという。体裁が整っていない契約書は、顧客や契約関係者に不信感を抱かせる要因となるため、体裁のズレは『LegalOn Cloud』を利用する顧客の取引に影響を与えかねない重大な欠点でもあった。

さらに、2023年初頭に『LegalOn Cloud』の開発が決定された際、開発工数の課題も浮上した。『LegalOn Cloud』の機能は多岐にわたるため、限られた人的リソースの中で契約書のPDFの変換機能を改善する必要があった。これらの課題を解決するため、複数のAPIを調査した結果出会ったのが、PDF Services APIだった。

法務文書に求められる精度とセキュリティ要件を満たすPDF Services API

PDF Services APIを選択した理由は、まず、その高い変換精度である。

「Wordに変換した際に、本文の情報はほぼ完璧に再現できていました。表のセル結合なども含めて正しく変換できています。当時、5つほどの他社サービスと比較していましたが、その中でも圧倒的に高い変換精度でした。これであれば、よりお客様のご要望に応えられるサービスにできると確信しました」(高松氏)

また、セキュリティ面での信頼性も、導入の決め手となった。法務文書を扱うLegalOn Technologiesにとって、セキュリティは非常に重要な要素である。PDF Services APIは、政府が求めるセキュリティ要求を満たしている資格であるISMAPや他にもISMS、SOC2などの認証を取得しており、社内のITガバナンス部門からも高い評価を得ていた。高松氏は、「ITガバナンスの部門からは『特に問題は見当たらない』『心配しなくてもいい』というお墨付きをもらっていました」と語る。

さらに、Adobe Acrobat Service APIのプライバシーポリシーや利用規約が、LegalOn Technologiesのサービスポリシーと適合していたことも、選択の大きな理由となった。法務サービスを提供する企業として、この点は非常に重要なポイントであった。

高精度なPDF処理機能が顧客満足度向上と新規獲得につながる

『LegalOn Cloud』は、2024年6月より本格的にPDF Services APIを実装したことによって、PDF処理の精度が大幅に向上。表の中の文字、左揃え・中央揃えなどの配置場所や、行間などの細部まで崩さず内容を抽出することが可能になった。Wordへの変換後、印鑑の文字も契約書のテキストとして読み取ってしまうといった不具合や、文字化けが発生する確率も大幅に減少したという。この機能の実装により、同社の顧客は契約書の体裁を崩すことなく、より効率的なレビューや編集が可能になった。

次に大きな導入効果として挙げられるのが、開発工数の削減だ。高松氏は、「今回のPDF処理に関する開発については、当初の予定の半分ぐらいの工数に削減できました」と語っており、PDF Services APIの導入が開発効率の大幅な向上につながったことがうかがえる。

開発工数を削減して実装できた高精度なPDFの読み取りは技術的なメリットだけでなく、同社のビジネスにも成果を生み出している。

「PDFで受け取った契約書をWordに出力できるようになり、より契約書の編集がしやすくなったなど、業種問わず多くのお客様から好評いただいています。『PDFの変換ができるなら使いたい』と、Wordへの変換機能に注目されたお客様から契約のご相談をいただくこともありました」(高松氏)

リーガルテック業界において、PDFの編集機能や読み取り機能を備えたサービス自体がまだ多くはない。その中で、市場に先駆けてPDF Services APIを導入し、クオリティの高い変換サービスを提供できたことは、LegalOn Technologiesに大きな競争力をもたらしたといえる。

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『LegalOn Cloud』の操作画面。PDFの契約書をWordに変換し、レビューの労力を大幅に軽減

APIを活用し、オンラインエディター機能の拡充を推進

PDF Services APIの導入は、LegalOn Technologiesに想定以上の効果をもたらした。PDF変換サービスの提供が顧客からの評価された経験を踏まえ、LegalOn Technologiesは今後の展開についていくつかの方向性を示している。

一つは、『LegalOn Cloud』上で契約書の編集作業が可能になるオンラインエディター機能の拡充により、『LegalOn Cloud』のプラットフォーム内での完結性を高めることを目指しているという。「今後は、Adobe Acrobat Service APIをさらに活用させていただき、契約書のレビューや修正がより『LegalOn Cloud』の中で完結できる環境や機能を目指し、お客様にとって使い勝手の良いサービスにしていきたいと考えています」と高松氏は述べる。

さらに、新たな業務領域への展開も視野に入れている。高松氏は「これまで契約書のレビューや修正にかかっていた時間を、もっと別の法務業務にあててもらえるようにサービスを強化していきたいです」と将来の展望を語る。PDF処理技術の向上によって、新たな法務サービスの開発や、既存サービスの拡張につながることが期待される。

※掲載された情報は、2024年9月現在のものです。