Photoshop の生成 AI 機能を使った効率的なコラージュ制作手順:現場で役立つ Adobe Firefly 第 1 回

本連載では、デザインの現場ですぐに役立つ Adobe Firefly の活用ノウハウやヒントをお届けします。執筆陣は、日頃から Adobe Firefly を使いこなすクリエイターの皆さん。第 1 回では、パパが Adobe Photoshop の生成 AI 機能を活用した効率的なコラージュ制作をご紹介します。ぜひ最後までお付き合いいただき、今後の連載にもご期待ください。

コラージュ制作を効率化する生成 AI 機能

複数の画像を組み合わせて一枚の作品を作る「コラージュ」は、デザインにおいて頻繁に使われる手法です。表現の幅は、素材となる画像の種類や質によって左右されるため、イメージに合った写真素材の入手は重要です。そのため、フォトストックサービスで探すだけでも、膨大な時間を要すことがあります。

そこで本記事では、映画、演劇、舞台などを想定したメインビジュアルの制作に Photoshop の生成 AI 機能を活用し、従来は時間のかかっていた画像素材の選定や加工工程を大幅に効率化できる手順を開設します。

著作権に配慮して設計されている Adobe Firefly なら、商用利用でも比較的安心して活用できます。AI 生成物を活かすことで、より自由な発想をカタチにしやすくなりますので、これからコラージュ制作に挑戦する方や、ビジュアル制作を短時間で仕上げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

上の動画と、この記事の内容は同じです。お好みに合わせてご覧ください。今回使用しているサンプルはこちら(ZIP : 155MB)からダウンロードできます(個人学習以外の目的での利用はご遠慮ください)。

【1】新規ドキュメントを作る

Photoshop を起動し、Ctrl (Mac: Command) + N で新規ドキュメントの画面を開きます。

今回は名前を「Poster_01」にして、幅を 2480pixel、高さ 3508pixel、解像度 72ppi、カラーモードを RGB カラーに設定し、「作成」をクリックして新しいドキュメントを作ります。

すると、新規ドキュメントが表示されます。

【2】モデルの画像を開く

Ctrl (Mac: Command) + O で、被写体となるモデルの画像を開きます。

今回は Adobe Stock からダウンロードしてきました(Adobe Stock ID : 65896273)。

【3】「生成拡張」で人物を補完する

今回、Adobe Stock からダウンロードした画像は非常にイメージに近いのですが、頭と右端が見切れているのが難点です。本来であれば、見切れていないほかの画像を探し直すか、この画像でレイアウトを工夫する必要があります。しかし、Photoshop の生成 AI 機能「生成拡張」を使えば、このまま当初のイメージに沿って制作を進めることが可能です。

ツールバーから「切り抜きツール」を選択し、カンバスの端を左上にドラッグしてカンバスを広げます。

コンテキストタスクバーから「生成拡張」を選択します。

そして、プロンプトは入力せずに「生成」をクリックします。

処理が終わると、カンバスを広げた部分が非常に自然に拡張されます。

生成された部分は、プロパティパネル内にある 3 つのバリエーションから、イメージに近いものを選べます。気に入ったものがなければ、プロパティパネル内の「生成」をクリックして再生成することも可能です。

【4】「被写体を選択」で人物の選択範囲を作る

レイヤーパネル内の一番上のレイヤーが選択されている状態で、Alt (Mac: Option) + Ctrl (Mac: Command) + Shift + E を押して、表示されているレイヤーを結合した新規レイヤーを作成します。

ツールバーから「クイック選択ツール」を選び、オプションバーの「被写体を選択」右のプルダウンメニューを「クラウド(詳細な結果)」に設定します。

それから、「被写体を選択」をクリックします。

処理が終わると被写体の選択範囲ができあがるので、レイヤーパネル下の「レイヤーマスク」アイコンをクリックして被写体を切り抜きます。

今後の作業でレイヤーを扱いやすすくするため、右クリックして「スマートオブジェクトに変換」を選択しておきます。

【5】「画像を生成」で背景を生成する

ここから背景の画像を作っていきます。背景のイメージは、古いロンドン風の路地で、シンボル的な時計台があるというものです。しかし、フォトストックでイメージどおりの画像を見つけるのは困難です。たとえば、「古いロンドン風」という点に関しては、現在の建物が映り込んでいて、そのままでは使えないものがほとんどです。

そこで、Photoshop の生成 AI 機能「画像を生成」を使い、一瞬でイメージに近い背景を生成してみましょう。

「Poster_01」のドキュメントに戻り、コンテキストタスクバーから「画像を生成」を選択します。

ダイアログに「霧のかかったくらいのロンドンの路地裏、深夜、奥に時計台、中世」と入力し、コンテンツタイプを「写真」に設定した上で「生成」をクリックします。

処理が終わると画像が生成されます。プロパティパネル内にある 3 つのバリエーションからイメージに近いものを選択します。気に入ったものがなければ、プロパティパネル内の「生成」をクリックして再生成も可能です。

背景ができたら先ほどの被写体のドキュメントに移動し、Ctrl (Mac: Command) + C でコピーしてから「Poster_01」のドキュメントに戻り、Ctrl (Mac: Command) + V で被写体を貼り付けます。

そして移動ツールや自由変形でレイアウトを調整します。

【6】「生成塗りつぶし」で霧を生成して合成する

雰囲気を出すために、霧のエフェクトを追加します。霧、煙、パーティクルのように、正確な形状が必要ない素材をフォトストックサイトで探すのは手間がかかりがちです。そこで、今度は生成 AI 機能の「生成塗りつぶし」を使って霧のエフェクトを作成します。

レイヤーパネル下の「新規レイヤー作成」アイコンをクリックして、新しいレイヤーを作成します。

Ctrl (Mac: Command) + A で全選択を行います。

コンテキストタスクバーから「生成塗りつぶし」を選択します。

プロンプトに「霧、黒い背景」と入力して「生成」をクリックします。

処理が終わると霧の画像が生成されます。プロパティパネル内の 3 つのバリエーションからイメージに近いものを選択します。気に入ったものがなければ「生成」をクリックして再生成も可能です。

大きさと位置を整え、描画モードを「スクリーン」にして霧を合成します。

【7】カラールックアップで仕上げる

仕上げとして、レイヤーパネル下の「調整レイヤー」アイコンをクリックし、「カラールックアップ」を作成します。

プロパティパネル内で、3D LUT ファイルを「HorrorBlue 3DL」にします。

また、不透明度を「30%」に設定します。

そして、全体のまとまりを整えれば完成です。

まとめ

今回のチュートリアルでは、Photoshop の生成 AI 機能を活用し、コラージュ制作を行いました。従来は素材探しに時間を取られたり、画像の質によってレイアウトを変更せざるを得ない場面も多くありましたが、「生成拡張」や「生成塗りつぶし」を使うことで、理想のビジュアルを効率的に生み出せます。デザインや広告ビジュアル制作にコラージュが必要な場合には、ぜひ Photoshop の生成 AI 機能を取り入れてみてください。