多様な視点に応えるアクセシビリティ対応へ——「見える」「伝わる」デザイン

近年、日本国内においてアクセシビリティへの関心と取り組みが急速に高まりを見せています。その大きな転機となったのが、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法です。この法改正により、それまで努力義務とされていた民間事業者による「合理的配慮の提供」が義務化され、すべての人が平等にサービスを受け、社会に参加できる環境づくりがより一層求められるようになりました。

アドビでは、クリエイティブやドキュメント制作に関わるすべての方が、アクセシビリティに配慮したコンテンツを制作できるよう、さまざまな製品や機能を提供しています。
本記事では、アドビのアプリを活用してアクセシビリティ対応に役立てられる、機能やドキュメントの一例をご紹介します。

色覚多様性に対応する「Adobe Color」

グラフィカル ユーザー インターフェイス, Web サイト AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

カラーテーマを作成して共有できるwebアプリ「Adobe Color」

「Adobe Color」は、カラーテーマを作成して共有できるwebアプリです。
このアプリには、色覚特性を考慮したカラーテーマの作成機能や、作成した配色の見え方をシミュレーションする機能が搭載されており、誰にとっても「見える」デザインの実現をサポートします。

Adobe Colorはこちら
https://color.adobe.com/ja/

■アクセシビリティを支援する主な機能

アクセシビリティに配慮したカラーテーマの生成:
Adobe Colorには「コントラストチェッカー」が内蔵されており、背景色と前景色(テキストの色)のコントラスト比をリアルタイムでチェックが可能。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)に準拠した配色の検証も行えます。

色覚シミュレーションモード:
色覚多様性(色弱)を持つ人の見え方を、D 型 (2 型)色覚、P 型 (1 型) 色覚、T 型 (3 型)色覚 の3種類で確認でき、視認性を高めた配色調整に役立ちます。

Adobe Creative Cloudとの連携:
作成したカラーテーマは、PhotoshopやIllustratorなどのアプリと連携し、デザインにそのまま適用することができます。

Adobe Color|コントラストチェッカー

Adobe Colorの「コントラストチェッカー」では、「テキスト」と「背景の色」の組み合わせが、視認性やアクセシビリティの基準を満たしているかどうかをチェックすることができます。この機能を使うことにより、色の選び方で情報が見づらくなってしまうといった問題を防ぐことができます。

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Adobe Colorの「コントラストチェッカー」

■主な機能

色のコントラスト比を自動計算:
テキスト色と背景色を指定すると、WCAGに基づいたコントラスト比を自動で算出します。

アクセシビリティ基準(AA・AAA)の合否を表示:
小さなテキスト(17 pt 以下)、大きなテキスト(18pt以上 or 太字なら14pt以上)それぞれに対して、「AA基準に適合しているか」「AAA基準に適合しているか」をチェックし、「合格」 or「 不合格」を表示します。

リアルタイムでカラーピッカー編集が可能:
色を調整しながら、リアルタイムでコントラストの合否を確認できます。

カラーの保存・共有が可能:
作成したカラー配色はAdobe Colorライブラリに保存し、他のアプリと共有することができます。

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コントラストチェッカーで確認することで、デザインの視認性を改善することができる

Adobe Color|アクセシビリティツール

Adobe Colorの「アクセシビリティツール」では、作成したカラーパレットが色覚多様性(色弱)のあるユーザーにどう見えるかをシミュレーションすることができます。色での情報伝達に偏りがないかを確認できるので、誰にとっても使いやすいデザインを目指す際に非常に有用です。

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色の見分けができないスウォッチに、コンフリクトライン(混同色線)が表示される

少なくとも 1 種類の色覚型に対して区別されない・色の見分けができない(混同・コンフリクト)スウォッチにコンフリクトライン(混同色線)が表示されます。下のシミュレーターを使えば、3 種類の色覚型すべての場合において、カラーがどのように表示されるかが分かります。コンフリクトラインとシミュレーションビューは、それぞれの色覚型の強度の色覚基づいています。 カラーホイール上でカラーを直接編集したり、スライダーを使用したりすることで、容易にコンフリクトが解決できます。

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画面上でカラーを調整することで、簡単にコンフリクトを解消できる

作成したカラーテーマは、Creative Cloud ライブラリに保存できます。保存したテーマは、「マイテーマ」タブからアクセスし、他のアドビアプリでも利用が可能です。アクセシビリティツールで保存したテーマは、自動的にタグ付けされ、アクセシビリティツールで作成されたことを示すバッジが付与されるので、ライブラリを参照する際に、どのテーマがカラーのコンフリクトを解消しているかを素早く確認することができます。

すべての人にわかりやすく、見やすいデザインのために。Adobe Colorのアクセシビリティツールが生まれた理由
https://blog.adobe.com/jp/publish/2021/05/20/corp-cr-adobe-colors-accessibility-tools-interview

PhotoshopとIllustratorの「校正設定」で、色覚多様性を視覚的にシミュレーション

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色覚特性を持つ人が、どのように色を感じているかを画面上で再現

Adobe Illustrator および Adobe Photoshop には、[校正設定] に「色覚シミュレーション」機能が含まれています。
P型(1型)色覚およびD型(2型)色覚の、2タイプの色覚特性を持つ人が、どのように色を感じているかを画面上で再現します。これにより、色だけで情報を伝えていないか、配色の区別がつきにくくなっていないかを、視覚的に確認・修正することが可能です。

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[表示]>[校正設定]>「P型(1型)色覚)」または「D型(2型)色覚)」にチェックを入れると、シミュレーションが有効になる

情報の“出力品質”を担保するために「PDF&出力の手引き」を活用

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Creative Cloud環境で安全、安心な印刷データ運用を実現するための情報がまとまっている「PDF&出力の手引き2025」

アクセシビリティの観点では、見えるデザインだけでなく「正しく伝わる」ことも同じく重要です。印刷物やPDFといったアウトプットも、アクセシビリティに配慮した設計が求められる領域です。

アドビでは、制作物を正しく出力・活用するためのガイドライン「PDF&出力の手引き2025」を公開しています。フォントの埋め込み、タグ付きPDFの作成、配色のコントラスト調整など、制作物の品質と情報伝達力を担保するために知っておくべき実践的な知識をまとめています。
フォントの扱いに関する配慮(視認性・可読性の観点)、文字組み機能の強化(ユーザーごとの読みやすさ調整)、PDFのプリフライト・フィックスアップ機能(Acrobat Pro)なども、アクセシビリティに関する間接的な貢献が期待される機能です。是非「PDF&出力の手引き2025」を活用ください。

PDF&出力の手引き2025
https://blog.adobe.com/jp/publish/2024/10/29/cc-design-print2025

アドビのアクセシビリティへの取り組み──すべての人に開かれた創造の未来へ

挿絵, 部屋, 記号 が含まれている画像 AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

アドビは、障がいの有無を問わず、すべての人が創造的な体験にアクセスできる社会の実現を目指し、アクセシビリティを企業の重要な柱として位置づけています。

製品開発においては、設計の初期段階からアクセシビリティを組み込み、「デジタルアクセシビリティガイド」や支援技術に対応したUI設計などを導入。さらに、社内教育や外部コミュニティとの連携を通じて、社員の意識とスキルの向上にも力を入れています。
また、WCAGやPDF/UA(ISO 14289-1)など、国際的なアクセシビリティ標準の策定にも積極的に参画。業界全体のアクセシビリティ推進にも貢献しています。ツールとしての使いやすさはもちろん、誰もが表現できる環境づくりを進めています。

「アクセシビリティはクリエイティブを広げる力」であると考え、単なる遵守義務ではなく、すべての人の表現の自由と創造性を後押しする価値として捉えています。ツールを活用することで、アクセシビリティ対応は“難しい義務”ではなく、“価値ある表現”へと変わっていきます。

今こそ、「見える」「伝わる」デザインの可能性を広げていきましょう!

アドビのアクセシビリティ
https://www.adobe.com/jp/trust/accessibility.html