「SEMICON Japan 2025」球体LED用テーマ映像を立命館大学の学生が制作 ~立命館大学×SEMIジャパン×アドビ 産学連携プロジェクト
2025年12月17日~19日に東京ビッグサイトで開催された、世界的な半導体製造サプライチェーンの展示会である「SEMICON Japan 2025」。会場内に設置された大型球体LEDディスプレイで投影されていたテーマ映像を制作したのは、立命館大学の学生たち。今回の球体映像コンテンツの制作プロジェクトに携わった立命館大学の学生の皆さんと、指導された立命館大学副学長 三宅雅人先生にお話をうかがいました。
立命館大学、SEMIジャパン、アドビの3者による4か月に及ぶ産学連携プロジェクト
「SEMICON Japan 2025」は、半導体製造工程の全域にわたる1200を超える企業・団体が出展した大規模イベント。会場となった東京ビッグサイトには、3日間で延べ12万人を超える来場者が訪れました。会場の中心エリアでひときわ目を引いていたのが、イベント全体を視覚的に盛り上げるシンボリックな存在として設置された直径2.5メートルの大きな球体LEDディスプレイ。このディスプレイに、立命館大学の学生が制作した「Four Seasons(四季)」をテーマとする約2分間の動画コンテンツがイベント期間中に繰り返し投影されました。
このプロジェクトは、2025年8月に立命館大学、SEMIジャパン、およびアドビの3者が連携し、次世代のクリエイター育成と半導体業界のビジュアル化を目指す産学連携プロジェクトとしてスタートしました。クライアントであるSEMIジャパンから制作課題が提示され、その要望に沿ったテーマ映像を立命館大学の学生たちがAdobe After Effects(AE)やAdobe Premiere、Adobe Stockなどアドビのデジタルツールや素材を使って制作。アドビの講師によるプロ仕様のツールの活用方法や技術的なメンタリングを受けて段階的にスキルを身につけながら制作を進めました。 この展示会はもともと産業界向けイベントの性格が強く、学生の来場が少ないという課題がありました。そこで、会場中央に設置されるメインの球体オブジェの映像を学生に制作してもらうことで、学生が主体的に関与しながら参加できるような仕組みをつくり、学生を会場に呼び込むことにつなげることが主催者側の狙いでした。
学生たちは4つのチームに分かれて活動。テーマに沿った映像を作るため議論を重ねる
プロジェクトには全体で20名強の学生が参加。まず、動画のテーマを考えることからプロジェクトは始まりました。SEMICON JAPAN 2025のメインテーマである「AI×サステナビリティ×半導体」を軸としながら、若者らしい自由で未来志向な発想で、何をアピールする動画にするかアイデアを練った結果、動画制作の全体テーマが「Four Seasons(四季)」に決定。学生たちは4つのチーム(春・夏・秋・冬)に分かれ、それぞれのチームが1つの季節を担当し、30秒ずつの動画コンテンツを制作することに。与えられた時間内でどうテーマを消化し、具現化するかが学生たちにとっての次の課題となりました。アイデアを出しあい、「シナリオ」を構築するためさらにディスカッションが重ねられました。
チームごとに細かいテーマやシナリオ、動画のイメージを検討していった
制作技術が未熟でも短期間でクオリティの高いコンテンツにたどりつくには、ツールの質も重要
プロジェクトに参加したのは、公募で集まった、動画編集の未経験者を含む一般の学生たち。そうした点も踏まえて立命館大学 副学長の三宅雅人先生は、この試みが非常に「チャレンジング」ではあったものの、「未経験者が動画編集を学び、最先端の球体映像制作まで到達することに、大学の教育プログラムとしての意義があった」と評価しています。
未経験の学生たちが、短期間で高品質な作品を制作できたのは、学生たち自身が調べ、学び、考えるといった主体的かつ積極的な姿勢で取り組んだのはもちろんですが、一番のベースとして「アプリの力も大きい」とも。ユーザーフレンドリーで使い勝手の良いアドビのツールがあったことも成功の要因、と語ってくださいました。
さらに、もう1つのキーとして、教員だけでなくアドビの技術者など外部の協力者からも指導を受けられたことも挙げられました。たとえば、球体への映像投影について、学生だけでなく教員にとっても未経験であり、最初は全方位からの見え方や上下が歪む映像のイメージを掴むのが困難だったと三宅先生。そんなとき、アメリカから来日したアドビの担当者により、携帯電話とプラスチックの盤を使って映像が立体的に浮かび上がるというホログラム体験が提供されたそうです。「それを見た学生たちがもう、初めておもちゃをもらった幼稚園児のように釘付けになって。そのときの新しいものに触れた驚きや感激、それを表現したいという気持ちから球体コンテンツにスムーズに発展できたように思います」。二次元的な感覚から抜け出すことができた学生たちは、「球体だからこそ可能な表現」へと議論が発展し、球の形状を活かした映像展開を模索するようになっていったといいます。
大学の中だけでなく、社会の中で作品を見てもらえることの意義は大きい
完成した球体映像作品に三宅先生は、「プロが集う展示会でもひけを取らない、堂々とした作品を展示できているのは嬉しい」と述べられました。「学生たちのアウトプットが大学の中だけではなく、10万を超える人が集まるイベント会場の中央で見ていただけるということが感動的で、価値があること。また、見ていただくだけでなく、学生が来場者から声をかけられたり作品について話したりする機会があることも、学生にとっては非常に良い体験になっていると感じます」
プロジェクトに参加した立命館大学の学生の皆さん。会場の球体LEDの前で
プロジェクトで得た社会とつながる実感。学生の皆さんにとっても学びや発見の多い経験に
制作に携わった学生の皆さんも、会場で初めて完成映像を目にしました。口々に感動や手ごたえ、充実感が口をついて出てくる中、あえて、このプロジェクトで最も苦労したこと・大変だったことを伺ってみました。
◆映像学部 1回生 松井さん: 「投影先が平面ではなく球体なので、立体感を表現することがとても難しかったです。球体ならではの見栄え(映像映え)を考慮し、「だるま」のような丸い物体をモチーフに選ぶなど工夫しました」
◆映像学部 1回生 松野さん: 「『SEMICON JAPAN』のテーマに沿って、半導体という要素を映像に取り入れる必要がありました。作品テーマである『Four Seasons』の中に新しい技術要素をどう組み込むか、アイデアを出しあうのにかなり苦戦しました。どちらかの要素にかたよりすぎないようにバランスをとるのが大変でした」
◆政策科学部 2回生 朝倉さん: 「素材のイメージ作りにはFireflyなどの生成AIも使いました。コンセプトに合うイメージ画像を生成しようとしたのですが、納得のいく画像を生成するためにどのようなプロンプトを入力すればよいかを見つけるのが非常に難しかったです。何パターンもの言葉を考えて入力し、意図したとおりの素材を見つけ出しました」
◆映像学部 1回生 北村さん: 「見ていて飽きないような映像を作るのが難しかったです。ただ写真を並べただけだと単調になってしまうので、いろいろなエフェクトを使ったり、トランジションを工夫したりしました。また、自主制作と異なり、ちゃんと締め切りや発表の場が決まっているプロジェクトで、役割分担をしたりコミュニケーションを取ったりするのが想像より難しい体験でした」
また、このプロジェクトでどのようなことを学び、成長したと思うかという問いに対しては、次のような声が聞かれました。
◆映像学部 1回生 水本さん: 「1回生ながら『納期を守って作品を作る』という貴重な経験を積めました。企業の方と実際に関わり、協力して映像を作るという経験ができたことはすごく有意義な経験でした」
◆映像学部 1回生 小山さん: 「制約・制限も多い中で、楽しいだけじゃなく、責任をもって制作しなければいけないというのはなかなかできない経験だったと思います」
◆映像学部 1回生 松野さん: 「AEやPremiere などアドビのソフトを使いこなせるようになったのは大きな経験だと思います。また、企業の方との共同での制作で、連携が途切れないようにコミュニケーションを上手に取っていくことの重要性を痛感しました」
◆映像学部 1回生 北村さん: 「学生のうちに、本当の仕事につながるようなプロジェクトに参加できたこと自体が貴重な体験だったと思います。きちんとしたプロセスで作品を制作する大変さも、楽しさも感じられました」(北村さん)
決められたステップを踏むだけでない、自然発生的な学びの発展を期待
今回のプロジェクトの実績を踏まえ、デジタルツールを活用した学生の学びや取り組みについて、三宅先生に今後の展望をうかがいました。
「大学の教育は、シラバスや単位、明確なゴール設定に基づくステップなど形がある程度見える形で進められることが多いものです。今回のプロジェクトのように、外部からの提案や企業のニーズがあり、そこに学生のアイデアが融合し、さらにそれをツールで具現化していくという自然発生的な学びの形は、これからの教育において面白いアプローチだと考えています。これまで専門的なデザイナーなどその道のプロにしかできなかったような表現が、アドビのデジタルツールがあれば学生でも実現可能になっているので、今後も決まったレールを敷くのではなく、毎年新しいテーマが自然に生まれてくる形で、学びが発展していくことに期待しています」。
今回のプロジェクトは、企業のニーズと大学の取り組み、そして学生たちの創造性が融合した、新しく深い学びの機会となりました。アドビはこれからも、大学のニーズに応じた支援や様々な活動を通して、最新のデジタルツールを活用したクリエイティブでプロダクティブな学びを全力でサポートしていきます。
※記事中の所属・回生・肩書は取材時点のものです。