無数の候補からフィットする書体を見極める GTDI ヘンリーさんのブランディングデザイン|Adobe Fonts×Creators 07

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アドビのクラウドフォントサービス「Adobe Fonts」の書体を使い、クリエイティブな活動を繰り広げる人たちにフォーカスする企画「Adobe Fonts × Creators」。
第7回目は、国内外でパッケージデザインを軸にしたブランディングを手がけるGTDIにフォーカス。代表のヘンリー・ホー(Henry Ho)さんに、Adobe Fontsの活用法を伺いました。

情緒、質感、余韻……日本の美意識を世界に展開する

日本や中国を中心に、食品、化粧品、嗜好品等、さまざまなフィールドでパッケージとブランディングを展開しているGTDI。まずは現在の活動内容について、あらためて聞きました。

「基本的にはパッケージデザインとブランディングを中心に活動しています。ご依頼をいただく割合は、日本と中国で半々くらいですね。
日本の企業からの依頼は国内向け商品がほとんどで、海外展開する際のパッケージデザインを担当することは以前と比べると少なくなっています。中国から依頼される仕事も中国国内で展開される商品のデザイン、ブランディングが中心ですが、グローバル展開を視野に入れた商品開発を行なっているクライアントもいます。たとえば、中国の伝統的なお菓子・月餅は、中国では大きなビジネスになっているのですが、香港の特別なクライアントとともに、この文化を世界に広げていきたいと考えているところです」

ヘンリー・ホーさん写真

GTDI ヘンリー・ホーさん

なぜ、中国の企業、ブランドは中国国内のデザイナーではなく、日本で活動するヘンリーさんに仕事を依頼するのでしょうか。そこには日本のデザインだけを見ていては気づかない、意外な違いがあると言います。

「いまは中国のデザイナーも非常にレベルが高いですし、私自身、不思議に思っています(笑)。ただ、クライアントと話していて感じるのは、写真ひとつとっても、中国と日本では感覚がまったく違うということです。
食べものの写真を例にとると、中国では生成AIも使いながら、ほぼすべてをレタッチして、ありえないくらいにきれいな状態に仕上げますが、日本では素材のよさをライティングや撮影技術で引き出し、写真としての風合いを残そうとします。やりすぎない、リアルな表現が中国のクライアントに評価されているんですね。印刷や加工でも、中国では最新技術を使った装飾的なものが好まれますが、日本では紙の風合いを生かしたもの、五感に訴えるものが好まれます。
そこにあるのは、たとえるならロボットによるサービスと、人によるサービスの違いのようなもので、ロボットがいかにスピーディに、完璧なものを作ることができたとしても、人が作り出したものとはやはり違うものだとわかります。人の手によって生まれたものには感性、情緒に響くなにかがあり、日本のデザイナーはそうしたデザインがうまいですよね。中国は技術力やスピードの面では非常に進化しているのですが、そのぶん、感覚に訴えるようなデザインはまだ弱いのかもしれません。
中国国内で商品を展開するにあたって、そうした日本的なブランディングを求めるクライアントが、日本にいる私にデザインを依頼してくださっている。そう感じています」

GTDIのweb

GTDI https://www.GTDI.co.jp/

コミュニケーションにふさわしい書体をゼロから探し出す

書体をデザインの重要な一要素と捉え、丁寧に書体を選び出すプロセスからは、クライアントの個性に真摯に向き合い、課題を解決していく、ヘンリーさんならではのアプローチが見て取れます。
ここではGTDIの仕事の中から、Adobe Fontsのフォントを活用した、デザインをピックアップして紹介します。

「AVA HIRAFUは、スキーリゾートとして世界中から注目を集めている北海道のニセコ ヒラフエリアにできる複合施設で、GTDIではロゴデザインをはじめ、グラフィックを担当しています」

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「ツールのひとつとして作った6枚組のポストカードでは、『AVA HIRAFU』の名前を知らせることに加え、よりエモーショナルに施設の魅力を伝えようと考えました。そこで提案したのが、一般的な不動産のような宣伝コピーではなく、手紙のようなスタイルで AVA HIRAFU の体験を伝えることでした。恋人に宛てて『ヒラフはすごくいいところだよ』と手書きのラブレターを送るイメージですね。
それぞれの個性を手書き風フォントで表現するために、6人の手紙ぞれぞれに、Adobe FontsのScriptカテゴリから見つけたフォントを使用しました。Adobe Fontsはスタイルによって、カテゴリ分けがしっかりされているので、こうした書体選びには本当に便利ですよね。
Adobe Fontsのフォントは、これ以外にも『AVA』のロゴマークの下に添えられた『AVA HIRAFU』の文字に Calluna Sans を、数字には Avenir を使っています」

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「AVA HIRAFU」のブランドガイドラインで定義された合成フォント(3ウェイト)

日本語…源ノ角ゴシック https://fonts.adobe.com/fonts/source-han-sans-japanese

英語…Calluna Sans https://fonts.adobe.com/fonts/calluna-sans

数字…Avenir https://fonts.adobe.com/fonts/avenir

「パッケージデザインを担当した森永サプリメントウォーターは、継続的なインナーケアを目的として開発されたドリンクです。一般的なフルーツジュースとは異なる機能的な商品であることをわかりやすく伝え、売り場での差別化を図るため、白地をベースに成分名を大きく配置しました。また、機能性だけでなくフルーツ本来のおいしさや飲みやすさも感じていただけるよう、果実を大きく見せるデザインを採用しています。
商品が持つ機能をわかりやすく伝えるために、日本語フォントには読みやすさに定評のあるヒラギノ角ゴを採用しました。英語はNeulis Neueというフォントを使用しているのですが、このフォントはAdobe Fontsのサンプルテキスト欄に『SUPPLEMENT WATER』の文字を打ち、ひとつひとつチェックをして見つけたものです。表示されたリストのなかから、商品の機能性を表現するために、シャープでやわらかすぎない、でも特徴のある書体を探していたのですが、パッと見は普通のサンセリフなのに『R』の文字にユニークな特徴をもつこの書体はピッタリでした」

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「鏞記酒家(Yung Kee Restaurant)は、1942年に創業し、70年以上の歴史を持つ香港の老舗レストランです。ローストグース(焼鵝)で世界的に知られていて、定番の観光スポットになっています。
リブランディングを担当するにあたって、まず最初に行なったのがロゴのリニューアルです。
もともとは林語堂が揮毫した『鏞記酒家』から取った『鏞記』の文字に『YUNG KEE RESTAURANT』の文字を小さく添えたデザインでしたが、『鏞記』の文字と『YUNG KEE』をスクエアに組み合わせたデザインに変更をすることで、グローバル対応しつつ、パッケージ等のデザインにも展開しやすいかたちにしました。
鏞記酒家らしさを表現するために、歴史や伝統を示す明朝(セリフ)とモダンさや新しさを示すゴシック(サンセリフ)、両方の特徴を持つ書体をAdobe Fontsで探して見つけたのが、ここで使っているUtile Display という書体です。
『YUNG KEE POP』はより若い層をターゲットにしたポップアップストア向けのロゴで、ここでは『鏞記』の書は控えめに、英語を前面に打ち出したデザインにしています」

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Utile Display https://fonts.adobe.com/fonts/utile-display

「中国の大手文具メーカー・deliのブランド『Keep Right』の仕事では、ロゴとパッケージデザインを担当しました。
『Keep』の『ee』をつながった手書きの線としてデザインすることで『たくさん書けて、楽しく学べる筆記具』というブランドのコンセプトを表現しています。
中国語はAdobe Fontsでも提供されているAlibaba PuHuiTiを採用し、数字や英語には、幾何学的に構成されたObjektivを選んでいます」

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「東海堂 Aromeは、日本の食材を使ったパンやケーキ、スイーツを販売しているベーカリーで、香港で100以上の店舗を展開しています。
中秋節(旧暦の8月15日)の時期には月餅も販売していて、GTDIでは約10年間、そのプロモーションを担当しているのですが、2026年のポスターは、日本で撮影したファッションスナップに、小塚明朝で組んだ日本語のキャッチコピーを組み合わせたデザインにしました。
香港で掲示される月餅のポスターでも、コピーをあえて日本語にしているのは、東海堂 Aromeが日本スタイルのベーカリーであることに加え、日本語が香港では新鮮に見え、目を惹くことができるからです。
写真は、Instagramでよくあるストリートファッションフォトのように、道ゆくおしゃれな人に声をかけて写真を撮らせてもらい、その流れで月餅を食べるシーンも撮影したものです。『ファッションが素敵だったのでお写真撮らせていただいてもいいですか?』『ところで月餅を食べたことはありますか?』……表参道、渋谷、原宿でこんなやりとりをしながら、10パターンのビジュアルを作りました」

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小塚明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/kozuka-mincho-pr6n

「Henri Charpentier(アンリ・シャルパンティエ)では、10年近く、クリスマスギフトのデザインを担当しています。
2025年のアドベントカレンダーでは、Adobe Fontsから選び出した装飾的なフォントを使って、日付のデザインに変化をつけていくことで、クリスマスシーズンの華やかさ、その日の箱を開ける楽しさを表現しました」

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Adobe Fontsには、いい書体、おもしろい書体を見つける楽しさがある

日々、さまざまな国、地域、ジャンル、メディアのデザインを手がけるヘンリーさんがいま、Adobe Fontsに感じている魅力はどこにあるのでしょうか。あらためて伺いました。

「Adobe Fontsはカテゴリー分けもしっかりされていますし、ユニークなフォントを探すときには、Adobe Fontsが一番便利だと思います。『種類が多いけれど、探すのが面倒』という人もいますが、GTDIでは毎回、楽しく探していますよ。
欧文フォントについても、日本のフォントサブスクリプションサービスでは数や種類が揃っていないので、どんな言語でも豊富に揃っているAdobe Fontsはとてもありがたいですね」

ヘンリー・ホーさん写真

ヘンリーさんのなかでよく使う書体、定番書体はあるのか。そして、企業やブランドのコミュニケーションを構築するうえで、書体、文字をどのように選び、決めていくのか。書体とデザインの関係性について、最後に聞きました。

「基本的にはプロジェクトごとにゼロから書体を選ぶようにしているので、決まった書体を使うことはありません。自分のなかに定番を作ってしまうと、クライアントの変化、時代の変化に柔軟に対応することができず、デザインが硬くなってしまうからです。自分の好みや選ぶスタイルによって、結果的に同じフォントになることはありますが、私もGTDIのデザイナーも本当に自由にフォントを選んでいます。
書体はデザインにおいて、非常に重要な要素です。企業やブランドが表現したいこと、伝えたいメッセージが選んだ書体の文字で表現できているかどうか、その相性を第一に考えなくてはいけません。
たとえば服を買うときに、ブランドを先に決めるのではなく、純粋にデザインで選ぶように、これからデザインを使用するプロジェクトに一番合うフォントを自分の判断基準でその都度、選んでいくことが何より大切だと思っています。
だからいいと思うものは、たとえ使ったことがないもの、まったく知らないものでも積極的に使います。これまで使ってきた書体を振り返ってみても、そのプロジェクトでしか使っていないものばかりです。
さまざまな言語、デザイン、スタイルのフォントが豊富にあるAdobe Fontsだからこそ、こうした選びかた、使いかたができるんですよね」

ヘンリー・ホーさん写真

ヘンリー・ホー(Henry Ho)
株式会社GTDI 代表取締役社長 / TOPAWARDS ASIA設立者
1972年生まれ。香港理工大学グラフィックデザイン学部 卒業。渡日後、1996年株式会社GTDI代表取締役に就任。KIRIN、大塚製薬、資生堂、花王、リッツカールトン、LOTTE、Philip Morris Japan、モンデリーズ、docomo、Blue Bottle Coffee Japan、Taiwan Star Telecom等のパッケージデザインやブランディングを手がけ、JPDA日本パッケージング賞、グッドデザイン賞、Red Dot Design Award等を受賞。
アジア各国が持つ文化がパッケージデザインにも影響されることに興味を持ち、2016年よりアジア限定パッケージデザイン賞TOPAWARDS ASIAをスタート。

Web(GTDI)|https://www.GTDI.co.jp
Web(TOPAWARDS ASIA)|https://www.topawardsasia.com