ユーザーテスト&ユーザビリティテスト初心者のための手引き(事前準備&実施編) | アドビUX道場 #UXDojo
ユーザービリティテストからできるだけ成果を得るためには、正しい質問をすることが重要です。この記事では適切な質問とその聞き方を紹介します。
自分とユーザーは似ていると考えるデザイナーは少なくありません。ですが、大抵の場合それは通用しません。良いユーザー体験をデザインするには、自分のユーザーがどんな人々で、何故、何を必要としているのかを理解する必要があります。
ユーザーテストはユーザー調査の一種です。人々がどのように製品や画面を操作するのか調べ、その結果はデザインの改善に利用されます。このテストからできるだけ成果を得るためには、正しい質問をすることが重要です。不適切な質問はセッションの意義を失わせ、開発チームを間違った方向へと導きます。一方、正しい質問は率直なユーザーの意見を集め、より良い体験への道を示します。
この記事では、ユーザーテスト及びユーザビリティテストに関連する3つの主要なトピックを扱います。
- テスト前、テスト中、テスト後に尋ねるべきユーザビリティ関連の質問
- テストで質問する際にすべきこと、避けるべきこと
- 誘導にならない質問をするために役立つテクニック
ユーザーテストの目的を定める
質問項目の作成を始める前に、ユーザーテストの目的を定義しなければなりません。何を達成したいのか?それはなぜか?を考えましょう。明確な目標は、適切な質問表の作成をずっと容易にしてくれます。
一般的には、ユーザーテストは以下のような目的に有効です。
- 仮説の検証: 典型的な仮説は「もし『あるものを提供』すれば、自分たちのユーザは、彼らにとって『価値の得られる何かをする』ことができる」というものです。プロトタイプを構築し、それをユーザーに使用してもらうことで仮説の検証を行えます。
- 既存のサイト/アプリに存在する問題点の発見: 公開済みのサイトやサービスを実際のユーザーに使用してもらうことで、ユーザーが問題を感じている個所を特定できます。
- 同種のサービスについて理解: 競合と比較した利点と欠点を確認したい場合、テスト参加者に他社製品を使用するよう依頼することで比較分析を行えます。
ユーザビリティの確認に必要な質問はケースごとに異なりますが、どのようなテストシナリオでも有効な基本の質問を割り出すことは可能です。ユーザーテストの質問は場面に応じて大きく3つのグループに分けられます。
- 適性検査の質問: 事前にテスト参加者の適格性を評価するための一連の質問
- テスト中の質問: テストの目的の達成に直接関連する一連の質問 (一般的な質問と、テストする製品固有の質問が含まれる)
- テスト後の質問: テスト後に尋ねる一連の質問 (明確化のための質問も含まれる)
1. 適性検査の質問
どのようなユーザーテストも、最初の一歩はテスト参加者の選別から始まります。テストに招待する人々は、ターゲットグループを代表する人々、すなわち実際のユーザーや、将来ユーザーになることが想定される人々であるべきです。理想的な参加者を定義する基準を規定して、それに照らしてすべての候補者を評価します。適性検査で尋ねる質問は、候補者のデモグラフィックデータと経験を理解するのに役立つものを選びます。
適性検査は、望ましいテスト参加者を選ぶプロセス 出典: Adobe Stock
それでは、適性検査で尋ねる質問の候補をいくつか紹介します。
年齢
年齢の確認は重要です。世代の違いがテスト結果の信頼度に影響する場合があります。たとえば、中年向けのサービス開発のためのテストに若年層を参加させるのは避けたいでしょう。何歳かを尋ね、望ましい年代の参加者であることを確認します。
教育
参加者の経歴は、彼らの行動や意見を解釈する参考に使えることがあります。たとえば受けた教育の情報は、保有スキルや思考方法についての洞察を与えてくれます。技術関連の高度な教育を受けている人は、インターフェイスの操作を容易にこなす傾向を持つでしょう。デザインが適切でなかったり情報が欠けていても、どのように機能するかを理解する能力を持っていることが多い人たちです。
収入
もし有料のサービスを提供しようとしているなら、テスト参加者がその費用を賄えることを確認すべきです。サービスを利用する見込みのないテスト参加者を招待するのは無意味です。テスト結果が偏る理由になることもあります。
趣味
「あなたの趣味を教えてください」とか「標準的な日はどのように過ごしていますか」のような質問には、質問者が自由に答えられます。場の雰囲気を和らげるのに向いていますし、参加者の行動をより深く学ぶ機会にもなります。日常生活についての質問から、調査に関連する行為が見つかるかもしれません。
オンラインで過ごす時間
テスト目的次第では、参加者のデジタル体験に関する経験値が影響します。デジタル画面を使用する時間が長いほど、標準的なインタラクションやUIパターンに慣れ親しんでいます。一般的に、経験の豊富なユーザーは、より詳細なフィードバックを提供する能力を持っています。
定期的に利用するサイトやアプリ
よく利用するサービスや機能を確認します。たとえば、eコマースアプリのユーザーテストであれば、参加者がオンラインショッピングに積極的かどうかを知りたいところでしょう。普段eコマースサイトを利用しない人は、おそらくオンラインショッピングにさほど興味がありません。別の候補を探した方がよいでしょう。
「それ」を行う頻度
どのくらい頻繁に「それ(オンラインショッピングなど)」を行っているかを尋ね、ユーザーのデジタル体験を評価します。対象のサービスの理解度に加え、購入する際の特徴や習慣を特定することができます。
「それ」を行うときに通常使用するデバイス
特定のインタラクションをテストしたいときは、ユーザーがその作業を行うときに最も好んで使うデバイスの情報が役立ちます。たとえばモバイル版のチェックアウト機能をテストしたいとき、デスクトップ環境を好み、モバイルはほとんど使用しないユーザーのテスト結果は有効とは言えません。
利用歴
参加者に既にテストする製品やサービスの知識がある場合、製品に対する意見やテスト結果に影響が出ます。テストの目的次第で、これは利点にも欠点にもなります。たとえばサイトの大規模改修を行う際に、既存のユーザーが問題なく利用できるかを検証するには、そのサイトを過去に訪問した経験を持つことが重要になります。
2. テスト中の質問
この段階では、参加者は実際に画面を操作します。彼らが操作する様子を観察し、関連する質問を投げかけます。その際の目的は、ユーザーの振る舞いを説明するデータの収集です。(なぜこの操作を行ったのか?何故あるオプションが好まれたのか?など)
競合候補の名前
主要な競合を知ることは重要です。テスト参加者に、彼らが競合だと考える製品やサービスを聞くと、自分たちが考えていた競合とは異なる名前が挙がるかもしれません。
最も価値を感じた機能とその理由
ターゲット層のユーザーにとって、すべての機能が等しい価値を持つわけではありません。時には些細な機能が、ユーザーにとって比較的大きな価値を持つこともあります。多くのユーザーが最も価値があると感じた機能は何か、そう感じた理由は何かを尋ねると、さまざまな洞察を得られます。
実際に「それ」を行うであろう状況の具体例
テスト参加者に具体的な操作シナリオを求めましょう。一般化された例ではなく、参加者自身の生活における状況を前提にすると、より具体的なユースケースを聞くことができます。事前には想定すらしていなかった状況を話す参加者に出会うこともあるでしょう。
デザインに対する感想
Webサイトやアプリのデザインの見た目についての個人的な感想を集めます。こうした特定の側面についての意見を集めるには、自由回答式の質問が有効です。リサーチャーは、ページ全体の印象や、アイコンや見出しのコピーテキストなどの個別の要素について尋ねることができるでしょう。集めた回答はデザインに対する定性的な評価としてまとめます。
タスク完了の邪魔になったもの
指示されたタスクを実行中のテスト参加者に聞くべき質問があります。参加者がある操作を完了できない場面を目にしたとき、彼らが直面している問題について尋ねましょう。これにより、操作中にユーザーを邪魔するものを特定するための情報が入手できます。ユーザーに必要な情報が欠けていたり、進むべきステップが存在しない場合もあるかもしれません。
「ある行為」をした理由
テスト中、モデレーターはテスト参加者の振る舞いを観察します。もし興味深い振る舞いに気付いて、その動作の理由を知りたいと思ったら尋ねましょう。その答えは、ユーザーの操作の背景にある動機を明らかにするためのヒントになります。
ここまでは、ユーザーテストの事前審査およびテスト中に尋ねるべき質問を紹介しました。この記事の後半は、テスト後に尋ねる質問候補と、質問をする際のベストプラクティスを紹介します。
この記事はUser & Usability Testing Questions: Ultimate Guide(著者:Nick Babich)の抄訳です。