会社全体を自ら動かし、お客様の問題解決に当たるテクニカルサポートエンジニアの仕事とは
Marketo Engageのシニアテクニカルサポートエンジニア櫨山は、サポートは、プロジェクトマネジメント、コミュニケーションなど、多才さが求められるエキサイティングな仕事と言います。その面白さややりがい、求められる能力に迫ります。
アドビのBtoB向けソリューション「Marketo Engage」のシニアテクニカルサポートエンジニアとして4年半、お客様の課題解決に当たってきたのが櫨山(はぜやま)美幸です。サポートといえば、お客様からいただいた質問への回答やトラブルシューティングが主業務ですが、実は自らが起点となって問題解決プロジェクトを動かすスキルや、パズルを埋めるように必要な知識・人脈を動かして対応に当たる能力、そして課題の裏にあるニーズを解釈するコミュニケーション力など、多才さが求められるエキサイティングな仕事とのこと。その面白さややりがい、求められる能力について話を聞きました。
お客様からの質問内容を解釈し、真の問題を見抜いていく
——櫨山さんの業務内容を教えてください。
櫨山:マーケティングオートメーション「Marketo Engage」のシニアテクニカルサポートエンジニアです。この業務について4年半ほど経過しました。主な業務は、有償のプレミアサポートをご契約いただいているお客様からのお問い合わせへの対応です。専用に説明を行うメンタリングセッションを行なったり、サポートサービス説明のミーティングを設定したり、緊急性の高い重大問題が発生した際に米国の開発チームへエスカレーションするといったさまざまな業務があります。
——テクニカルサポートのチーム構成はどのようなものでしょう?
櫨山:Marketo Engageのチームでは、私の上にマネージャーがいて、私を含めてシニアテクニカルサポートエンジニアが2名、あとは通常のテクニカルサポートエンジニアが数名います。タイトルの付かないサポートエンジニアとシニアとの違いは、「プレミアサポートでアカウントを持って対応するか」「複雑な問題に対応できるか」「米国担当者や社内の営業アカウントチームと連携して問題対応に当たるか」といった細かい点があります。
▲Marketo Engage シニアテクニカルサポートエンジニア 櫨山美幸
——業務を遂行するうえで心がけていることを教えてください。
櫨山:ベンダーのサポートとは、お客様にとって「質問をすれば、何でも答えてくれる場所」です。正しい答えを返すことは大前提で、決して割ってはいけない最終ラインなのですが、そうかといって、正しい回答がベストな回答というわけではありません。「この機能がありますか」と質問された際、機能のある・なしを答えるだけでOKかといえば、そうではないのです。
たとえば製品の活用段階が変わってくると、他システムと連携させたり、「こんな使い方をしたい」というご要望が出てきます。その時に「こういう機能はありますか?」と聞かれて、正解は「ない」だとしても、「こんな代替案があります」や「コミュニティで聞いてみてはいかがでしょう」というように、いくつかの選択肢があることをきちんと情報としてお伝えすることが私たちの仕事です。
私の場合、シニアテクニカルサポートエンジニアで固定のお客様をアカウントとして持っているため、1件1件のお問い合わせではわからなくても、いくつかの案件を通して見ていくことで「こういうニーズがあるのか」と気付くケースがあるんですね。その都度、営業チームのカスタマーサクセスマネージャーや、活用支援の担当者、お客様に伴走しながら活用を支援するフィールドサービスの担当者に連絡を入れ、「こういうお問い合わせが入っています」と相談・共有し、問題の予防や製品の活用支援を行っています。
——サポートと一口にいっても、QAに答えるだけでなく、多彩な役割があるんですね。
櫨山:そうですね、アカウントを持つことで、一般的なテクニカルサポートより求められる役割の幅は大きいと思います。それがお客様に喜ばれる成果にもつながりますし、仕事の醍醐味だと思います。
——テクニカルサポートエンジニアという職種を選んだ理由を教えてください。
櫨山:キャリアのスタートはSIerのインフラエンジニアで、そこで海外製品を扱っていたんです。ベンダーではなかったので情報が限られており、「扱っている製品やサービスについて深く知りたい」と思い、テクニカルサポートエンジニアが面白そうと考えました。そして海外メール配信システムのサポートエンジニアに就いたのですが、その後「SaaSという軸は変えずに、サービスの中身を変えて同じくサポートに当たりたい」ということで、2017年にマルケト(当時)に入社しました。SaaSという特性もありますが、サービスが常にアップグレードされ、時にはインフラが変わることもあるので、変化の多い仕事といえます。だから飽きることなく続けていられるのかもしれません。
以前のメールシステムでは、サポートの対象者はほとんどがIT部門でした。いまのMarketo Engageでは、8割の方が現場のマーケターです。業務現場で業務担当者が利用するツールなので、先ほどお話ししたように、機能の解説や疑問に答えるだけが正解とは限らないのです。何のために、何をやりたいのかがポイントなので、Marketo Engageのテクニカルサポートエンジニアには、お客様からのお問い合わせを解釈するスキルが求められるのです。
テクニカルサポートエンジニアは「問題解決のプロフェッショナル」
——お客様から喜ばれた対応、印象的だった案件について教えてください。
櫨山:最近だと、緊急度の高いお問い合わせがありました。お話を伺うと、お客様の業務への影響が大きく、かなりクリティカルな問題だったので、本社の開発チームでの修正対応が必要になりました。そこで迅速に問題解決を図れるよう、私を含めた日本のサポートチーム、マネージャー、営業のアカウントチームに加え、米国のエンジニアやクリティカルな問題を専門とするチームの担当者とプロジェクトを組んだんです。これにより、最大限の速度でお客様の課題解決を遂行できました。お客様からも感謝の言葉をいただきました。
アドビは、サポートチームや担当者だけがお客様の問題を扱うのではなく、それぞれのチームにプロフェッショナルがいて、全社一丸となって対応します。何か問題があれば私たちテクニカルサポートエンジニアがドライブし、各チームと連携して課題解決に向かうのですが、アドビになりこの連携がさらに強くなりました。
——起点となって動くわけですね。
櫨山:そうですね。One to Oneで、チャット上で正確に質問に答えて喜ばれるのも1つのモチベーションですが、会社の力をフルに使って対応に当たる複雑な問題を解決するのも、大きなモチベーションです。そして誰に連絡すれば最速か、どのチームが的確に早く動いてくれるか、自分だけでは解決できない事柄について、どこに相談するのがベストなのかというのを見つけに行く力が求められます。
——まさに問題解決のプロフェッショナルですね。
櫨山:はい、そもそもSaaSは常にアップデートされることが前提です。中でも Marketo Engage はマーケティング活動全般を支援できる製品なので、機能も多岐にわたりお客様の活用方法も自由度が高いです。
そのため、ドキュメント等を参照し一問一答でお答えできるようなお問い合わせは少なく、基礎としての製品知識に加えて、多角的に課題に取り組む応用力が要求されます。
私たちテクニカルサポートエンジニアの業務は、お客様の問題をビジネス・技術面の双方から理解し、明確な調査方針を設定、テストシナリオの設計やログ解析を経て複雑な問題の仮説検証を進め、解決に導くというものです。
さらに、調査を経て得られた情報を簡潔かつ論理的に回答としてまとめ、お客様の活用段階や役割に応じて最適な形でアウトプットする必要があります。
アドビのサポートチームにはシステム開発やメールシステム、CRM やデータベース構築の経験をもつエンジニアがいるので、アウトプットの精度を高めるため、お互いの知見を活かして調査を支援し合っています。
また、グローバルのサポートチームや開発チームとも直接やり取りし最新の情報を集め、調査スキルの向上を心がけています。
エンジニアとしての調査能力と、問題の原因や解決策をお客様の立場に応じて的確に伝えるコミュニケーション能力がある方は、テクニカルサポートエンジニアに向いていると思います。
“縁の下の力持ち”のサポートを会社全体で評価・表彰
——普段の業務はどのように進めているのでしょうか。
櫨山:サポート用のシステムに入ってくるお問い合わせをルーティングし、対応していきます。アドビは2020年の3月から完全リモートワークに移行していますが、お客様とのコミュニケーションはもともとWebを使っていたので、実はコロナ前と業務の進め方にほとんど違いはありません。朝早くから動けるようになったので、米国チームとのミーティングに対応したり、開発エンジニアに連絡取りやすくなったり、むしろ生産性は上がっています。柔軟に働けるので、自分の時間をコントロールしやすくなりました。
またアドビでは、2021年末まで感染者の多い地域から離れて自由に働ける「テンポラリー・リロケーション」という制度を設け、従業員の安全を確保しています。私も昨年の10月から関西で仕事しているのですが、コロナ禍でも家族の近くで働くことができ、会社には本当に感謝しています。
▲居住中の京都で撮影
——アドビではすべての業務にKPIを設けて、お客様へ提供する価値を上げていくと伺っています。サポートではどのようなKPIを置いているのでしょうか。
櫨山:最も重要なのはCSAT(Customer Satisfaction)で、サーベイの結果の平均値を取って評価しています。また契約ごとに問い合わせが発生してから次にご連絡するまでの時間が決められているので、その時間内にどれだけの割合でお返事ができたのか、お問い合わせをクローズするまでどれだけ日数がかかったのか、迅速性に関する指標もあります。なかなか厳しいのですが、私はゴールが明確化されているとモチベーションが上がるので、やりがいにつながっています。
さらにやりがいといえば、アドビではCSATや、他部門からのフィードバックで「社内の他チームにどれだけ貢献したか」という指標でアワードを開催しています。普段、表に出ることの少ない業務なのですが、こういう形で仕事をしっかり評価・祝福する制度があるのも、モチベーションが上がります。
柔軟な働き方、多様性のある環境で自由にキャリアを組めるアドビ
———アドビで働く楽しさ、会社の好きなところを教えてください。
櫨山:お話ししたように、社員が仕事に集中できるように、生産性を発揮しやすいように環境を整える点はとても素晴らしいですし、社員に優しい会社だと思っています。今は完全リモートですが、今後も状況を見ながら、どのチームはどういう働き方がベストなのかを考え、柔軟に対応していくことを明らかにしていますし、その点でも安心です。
また、多様性の高い環境で活躍し続けられるのも魅力です。アドビに買収される前に米国に研修に行ったのですが、本当にMarketo Engageのチームは特に多様性が高く、さまざまなバックグラウンドの方がいます。一般にエンジニアの世界は男性が多いのですが、私たちのチームは半数が女性で、日本のチームでも女性が多いのが特徴なんです。柔軟な働き方、エンジニアとしての居心地の良さ、ダイバーシティを尊重してお互いのシチュエーションを考慮し合うので、長く働き続けることができます。これもアドビの魅力ですね。
▲研修先で同じテクニカルサポートエンジニアチームのメンバーと共に
——今後の目標、キャリアについてお聞かせください。
櫨山:テクニカルサポートエンジニアとして4年半働くなかで、お問い合わせいただく内容の傾向や、どういう情報があればお客様の支援になるかが見えてきました。私たちの製品情報は英語で発信されているものが多いのですが、これまでの経験や知見を生かし、日本のお客様に役立つように日本語化して情報を発信する、そんな分野に挑戦したいと思っています。
「サポートに問い合わせるまでもない、けれどこういうことで困っている」という日常の困りごとはたくさんあります。私が適切な情報を提供すれば、そうしたお客様の支援にもなるし、テクニカルサポートエンジニアは本当に対応しなければならない重大な課題に注力できます。これまでの経験を還元するというと大袈裟かもしれませんが、知見を生かしてより良いお客様支援をしていきたいですね。
SaaSなので、お客様がツールをずっとお使いになるかどうかは、私たちテクニカルサポートエンジニアの対応にかかっています。責任は重大です。なので、お客様に喜んでいただき、お役に立てるよう、さまざまな視点でサポートの可能性を広げたいですね。
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