アドビがFrame.ioの買収を決めた理由

アドビは、クラウド型ビデオコラボレーションプラットフォームで業界をリードする Frame.ioを買収する契約を締結しました。今回の買収の背景、アドビのビデオ制作に対する姿勢およびFrame.ioとの今後の展望について解説いたします。

今、私たちは動画の黄金時代を迎えています。全話を一気に視聴してしまいたくなるようなドラマシリーズや、SNS上に流れる刺激的なショートムービーから、顧客とのつながりを促す企業のビデオまで、あらゆる種類のビデオを制作している皆さんにとって、これほど忙しい時代はかつてなかったのではないでしょうか。そして皆さんは、素晴らしい映像を作るにはコラボレーションが欠かせないこともご存知でしょう。アドビが、業界をリードするクラウド型ビデオコラボレーションプラットフォームであるFrame.ioを買収する契約を締結したのはこういった理由があり、本日この場をお借りして皆さんにこのニュースをお伝えできることを嬉しく思います。

Frame.io(英語)のクラウドネイティブなプラットフォームは、ビデオ制作に関わるすべての人(監督から脚本・シナリオ・絵コンテ作成までを含む、最終プロジェクトを承認する必要のあるすべての関係者)からのフィードバックを集めるための安全で効率的な方法です。世界トップレベルの映画およびテレビスタジオやFortune 100企業の多くがFrame.ioを利用しており、その中にはアドビも含まれています。アドビでは、Webサイト、ソーシャルメディア、イベント用のビデオを共同制作するために、長年にわたってFrame.ioを使用してきました。Frame.ioの革新的な創業者と才能ある情熱的なチームは、ビデオの未来に向けて常に努力しています。例えば最近、Frame.ioは「Camera to Cloud(C2C)(英語)」を発表しました。これは、世界のどこにいても、カメラで撮影した映像ファイルを共同制作者に瞬時に届けることができる、最も速く、簡単で、安全な方法です。

アドビの使命は、「すべての人に『つくる力』を」を実現化することです。クリエイティブ領域におけるコラボレーションがますます盛んになる中、クリエイティブな人々が共同作業するだけでなく、その仕事をレビューしたり承認したりする必要のあるすべての人々が参加できる、シンプルかつ効率的な方法を提供することが不可欠だと私たちは考えています(ちなみに、コラボレーションの実現については、10月に開催されるAdobe MAXで詳しく紹介する予定です)。 だからこそ、私たちと同じ目標に取り組んでおり、それを実現するための革新的なアイデアの数々を持っているFrame.ioチームと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。

今回の買収の完了後にFrame.ioチームが合流することになるAdobe Creative Cloudチームは、クリエイティブな世界にシームレスなコラボレーションをもたらす取り組みをすでに始めています。例えば、ここ数年でAdobe Creative Cloudライブラリという仕組みを構築し、フォントやカラー、ベクターや画像などのクリエイティブ素材をチームで共有できるようにしました。また、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe XDのユーザーがクラウドドキュメントを展開することにより、自分の作品を共同作業者や関係者と簡単に共有できるようにしました。さらに、デスクトップ製品の多くにおいて、関係者がアプリを離れずに直接コメントを確認したり共有したりすることを容易にしています。Frame.ioとの合流は、ビデオ制作に特化したクラウドファーストなコラボレーション機能の提供だけでなく、さらなる可能性を新たに切り拓いてゆける世界最高峰のチームを私たちが手に入れたことも意味します。

Frame.ioとAdobe Creative Cloudのチームの組み合わせは、ビデオクリエイターにわくわくするようなイノベーションをもたらします。私たちは、業界最先端のビデオ編集アプリケーションであるAdobe Premiere ProにFrame.ioを統合することを予定していますが、さらに長期的には、先進的なコラボレーションならびに人工知能の拡大採用を含む画期的なテクノロジーをビデオ制作全般に導入し、あらゆるクリエイターおよびクリエイティブチームのコラボレーションと生産性を向上させる計画を持っています。また、このイノベーションはAdobe Creative Cloudのアプリケーションに限ったものではありません。クリエイティビティに関わるすべての関係者のコラボレーションを可能にするというAdobe Creative Cloudの取り組みは、Frame.ioが加わることで、アドビのアプリケーションという枠を超え、クリエイティブエコシステムの中で増え続けているサードパーティのアプリケーションにまで及びます。

この買収は、許認可取得と一般的な締結条件の充足を前提としますが、今後数か月以内に完了する予定です。買収完了まで両社は引き続き独立して事業を運営します。

ビデオはこれまでも常に共同作業を伴うメディアでした。そして今日、ビデオクリエイターはコンテンツを驚異的なスピードで生み出さなければなりません。つまり、無駄のない効率的なコラボレーションは今や不可欠なのです。私は、Frame.ioとAdobe Creative Cloudの組み合わせがその目標を達成することを確信しており、Frame.ioチームとともに、これからの数か月の進展について皆さんにご報告できることを楽しみにしています。

この記事は2021年8月19日(米国時間)に公開されたAdobe agrees to acquire Frame.ioの抄訳です。