UI/UX デザイナーにコーディングスキルは必要か? | アドビ UX 道場 #UXDojo

Ran Liu によるイラストレーション。

Ran Liu によるイラストレーション

デザイナーであれば、自分の将来ためにコードの書き方を学ぶべきか?という疑問に、一度は向き合ったことがあるでしょう。たとえば企業の求人欄に UX デザイナー職の要件として「コーディングを理解していることが望ましい」と書かれていたら、コードを学んでおこうと考える人はいるかもしれません。

もしこうした疑問を抱えているのなら、その答えは次の通りです。優れた UX デザインのためにコーディングの能力は必須ではありません。

さて、質問に答えたところでこの件を少し深く考えてみましょう。既に UX デザインにコードの知識は必須ではないと書きました。必須ではありませんが、コードを学ぶことが、デザイナーのキャリアに有利に働きうるケースは実際に存在します。この追加スキルの恩恵を受けられる可能性を持つタイプのデザイナーも存在します。

UX デザイナーの必須スキルは何か?

UX デザイナーにコードの知識が求められないとして、では、保持しているべき本質的なスキルは何でしょうか?UX デザイナーの大きな責任のひとつは、ユーザー調査を行いデザインが解決すべき問題点を特定することです。そして理想的には、デザインを制作する工程を通じて、デザインを改善するために繰り返しユーザーとテストを行います。このプロセスこそが UX デザイナーとして成功するために習得しなければならない最も重要なスキルです。

デザイン思考プロセスは、共感、問題定義、発案、プロトタイプ、テストの 5 つのステージから構成されます。調査、デザイン、検証を繰り返し行うこのアプローチは、UX デザイナーのスキルセットの中核です。

デザイン思考プロセスは、共感、問題定義、発案、プロトタイプ、テストから構成される。

デザイン思考プロセスは、共感、問題定義、発案、プロトタイプ、テストから構成される 出典: Adobe Stock

調査を徹底的に行い実際の問題を特定する能力を持つことは、UX デザイナーとしての最初の一歩です。ユーザーインタビュー、コンテクスチュアルインクワイアリ、エスノグラフィックリサーチ、競合分析などの手法を通じて、UX デザイナーはデザインにより解決するべきユーザーの課題を特定できなければなりません。

その次にデザイナーに求められる必須のスキルは、ユーザーの問題に対処するデザインを生み出す能力です。UI デザイン、情報設計、レイアウトデザイン、インタラクションデザインは全てその一部です。プロトタイプツールを使用すると、頭の中のビジョンを現実世界に持ち込んで、アイデアが実際に役立つかどうかを確認できます。プロトタイプの使いやすさと見た目の美しさはビジョンの評価を左右するでしょう。(この点に関して Adobe XD ユーザーに対する最近の調査では、プロトタイプ作成に苦労しているという回答は 10% に留まっています)

プロセスの最後に必要になるスキルは、ユーザーとテストを行い、調査で特定された問題をデザインが確実に解決できるようにすることです。正しい方向に進んでいることを確認するには、ユーザービリティテストを行います。ユーザービリティテストの環境がリモートと対面のどちらであっても、リアルなユーザーとプロトタイプをテストすれば、デザインの何が機能しているのかを確認し、次回のテストまでに改善すべきポイントを理解できます。

UX デザイナーに必要なスキルトップ 10

デザイン思考プロセスが UX デザイナーにとって重要であることを説明したところで、ここでは、より具体的にデザイナーに必要なスキルを紹介しましょう。

UXデザイナーが習得すべきスキルはワイヤーフレーム作成やユーザーフィードバックの分析など様々。

UX デザイナーが習得すべきスキルはワイヤーフレーム作成やユーザーフィードバックの分析など様々 出典: Adobe Stock

Web サイトのデザインでも、モバイルアプリのデザインでも、UX デザイナーとして成功するには以下を実行できることが重要です。

  1. ユーザー調査の実施
  2. 競合調査や比較調査の実施と分析
  3. ペルソナ、ストーリーボード、シナリオを通じた共感の確立
  4. 質の高いビジュアルデザイン(UI)の制作
  5. ユーザビリティテストの実施
  6. 操作可能なワイヤーフレームとプロトタイプの作成
  7. ユーザーフィードバックの分析
  8. すべての関係者にデザインを説明できる強力なコミュニケーションスキル
  9. チームメイトとの効率的な協業と分業
  10. 分析の解読と理解

デザイナーがコードを学ぶ理由

「UX デザイナーにコーディングは必須か?」への回答は既に述べた通りです。では「UX デザイナーはコーディングをするか?」という質問ならどうでしょうか?その回答が肯定的なものであることは少なくありません。

大抵の UX デザイナーは、HTML、CSS、JavaScript などコードを多少は理解しています。コーディングを専門家に任せることが最適な選択であるのは間違いありませんが、コードの基本的な理解を持つべき理由もいくつか挙げることができます。

コードの知識を持つデザイナーは開発者との会話に強みを持つ。

コードの知識を持つデザイナーは開発者との会話に強みを持つ 出典: Adobe Stock

コードを学ぶことにメリットのあるデザイナー

デザイナーの立場によっては、他のデザイナーよりも、コードを学ぶことからより多くのものを得られます。一般的に、ある程度の規模の企業では、デザインと開発は別の組織に分かれているため、デザイナーは開発者との会話に必要な最低限の開発知識だけ持っていれば十分かもしれません。一方、スタートアップ企業や小規模の会社で働く場合は、コーディングの深い知識を持つデザイナーの価値が高くなります。むしろそうした環境では、一人でデザインと開発をこなせる人材を積極的に探すでしょう。

それ以外にも、コードの勉強を検討すべき 3 種類のデザイナーがいます。

A: 愛好家

コーディングの恩恵を受けるタイプのひとつ目は、自然とコーディングを楽しむことができるデザイナーです。空き時間に CSS で表現を試したり、HTML を分析して自身の理解度を確認したり、自分に足りない部分を深く調査して補うのが好きな人たちです。このタイプのデザイナーは、自身の情熱に従って UX エンジニアになり、幅広いスキルを活かす道を選ぶことも可能でしょう。

ただし、一つ忘れてならないことは、あるひとつの分野を選択し、その分野で活躍する方法を習得することの大切さです。UX の必須スキルを学び終える前にコードに深入りしすぎると、スキルの幅の広さが製品の成功に影響する欠点となってしまうことがあります。まず UX プロセスをマスターするために必要なステップを踏み、その後でコーディングに注力しましょう。製品のユーザー体験が悪ければ、どれほど優れたコーディングでも製品を成功させることはできません。

コーディングが好きなデザイナーはUXのスキルとコードの両方の恩恵を受けられる。

コーディングが好きなデザイナーは UX のスキルとコードの両方の恩恵を受けられる 出典: Adobe Stock

B: コンサルタント

UX コンサルタントとしてキャリアを積みたいデザイナーにとっては、自分が提案するソリューションを組み立てる能力を持つことが資産となります。このタイプのデザイナーであれば、クライアントは 2 人ではなく 1 人雇うだけで仕事を発注できます。加えて、コーディング担当が自分であれば、デザインの実装手段をより深く理解する機会を得られます。後から必要になるはずの開発作業を把握していれば、より現実的なデザイン案を提案するために役立ちます。

デザインコンサルタントはデザイン案の実装方法についての理解を持つ。

デザインコンサルタントはデザイン案の実装方法についての理解を持つ 出典: Adobe Stock

C: 起業家

3 つ目のタイプは、自分のビジョンを実現したい起業家精神の旺盛な人です。最初のうちは開発者を雇うよりも、自分でビジョンを形にした方が時間もコストもかけずに進められるでしょう。たとえ資金が提供される場合でも、起業家気質のデザイナーは、すべての作業に関わりたがる傾向があります。

起業家は初期段階でデザイナーと開発者を兼任することがある。

起業家は初期段階でデザイナーと開発者を兼任することがある 出典: Adobe Stock

プロジェクトチームが成長してからも、デザイン系の起業家にとってコードの知識は有益です。まず、最低限の機能を持つ最初のバージョンを開発するときに、必要な人数が少なければ初期投資を抑えられます。そして、コード開発のためにエンジニアを雇う段階になったら、エンジニアと同じ経験を共有しているために、方向性をより効果的に伝えられます。エンジニアとのコミュニケーションは全般的により質の高いものになるでしょう。

ファイナルアンサー

結局のところ、デザイナにコーディングは必須なのでしょうか?一言で言えば、「必須ではないが、役に立つ」です。

UX デザイナーとしての成功は、コードが書けるかどうかではなく、デザイン思考プロセスを実行できること、すなわち現実の問題を解決するデザインを実現する能力にかかっています。

また、ほとんどの企業が UX デザイナーに実装を求めていないことも事実です。最新のデザインツールやワイヤーフレームツールを使えば、デザイナーから開発者へのハンドオフはとても滑らかなプロセスになります。それでも、コーディングについての基本的な知識を持っていれば、デザインをより的確に伝え、開発チームに共感を持つために役立ちます。最終的には、自分がコードを学ぶことで利益を得られるタイプのデザイナーなのか、それともデザインに集中したいタイプなのかを決めるのは、あなた次第です。

この記事は Does UX/UI Design Require Coding?(著者: Justin Morales)の抄訳です