デザインコンセプトのプレゼンに役立つ 6 つのヒント | アドビ UX 道場 #UXDojo
Tridib Das によるイラストレーション
プロジェクトはそれぞれ異なります。プロジェクトやビジネスの目的に合うようにデザインに関する決定を行うのはデザイナーの責任です。
デザインコンセプトの出来栄えと同じくらいに重要なのは、デザインコンセプトを説明できる能力です。アイデアを明確に伝えられなければ、プロジェクトは先に進まないかもしれません。効果的なデザインプレゼンテーションは、ステークホルダーを説得し、デザインの実現に向けて進むための鍵です。
この記事は、デザインコンセプトをできるだけ明確かつ効果的に伝えるためのベストプラクティスを紹介します。
1) 説明する相手を知る
デザインは繰り返し修正が行われるものであり、チームメンバー、ステークホルダー、ユーザーとの協業を含む進行中のプロセスの一部であることは、考慮するべき大切な点です。制作プロセスを通じてデザインコンセプトを説明することは重要ですが、それはデザイナーではない人々にも伝わらなければなりません。
説明する相手の理解は、効果的なプレゼンテーションへの第一歩です。相手に合わせた効果的なプレゼンテーションをするため、以下の質問を念頭に準備を進めましょう。
- プレゼンテーションの相手は誰か?
- 彼らはどの程度デザインの知識を持っているか?
- プロジェクトについての事前知識はどの程度か?
- このプレゼンテーションから何を得ることを期待しているか?
- プロジェクトに対して何を期待しているか?
プレゼンテーションを効果的に行うためには、相手を知ることに加えて相手が理解できる「言葉」で話すことも必要です。デザイナーだけが知っている業界用語は避け、グラフやチャートを使って視覚的かつ明確に客観的なデータを示しましょう。たとえば、ビジネスゴールとデザインコンセプトの関連を図表を使って表現できます。
図表やグラフはコンセプトを明確に説明するために使用できる
2) シンプルで視覚に訴えるプレゼンテーションを構築する
ステークホルダーを納得させるために使える時間は限られています。また、プレゼンテーションの参加者は、それぞれが各自の部門やチームからの異なる優先事項、要件、考慮点を持っているものです。
加えて、プロジェクトの初めから関わっていないメンバーの参加も珍しくはありません。そのため、プロジェクトの背景と目的、そしてデザインコンセプトを決めた理由を論理的、視覚的、簡潔に話す準備は欠かせません。
以下は、プレゼンテーションの構造を検討する際に考慮すべきいくつかの側面です。
- 計画の概要を含める - プロジェクトの背景、課題、目的についての十分な情報を、技術的過ぎず曖昧過ぎないように注意しながら短くまとめて紹介します。
- 論理的にプレゼンテーションを構成する - プレゼンの最初の時間を使って、セッション中に話す内容およびプレゼンテーションの目的を明確にします。
- 長いテキストを使わない - 伝えたいことを複数のスライドに分割し、さらにビジュアルを加えることで、各スライドのコンテンツを簡素化して理解しやすくします。
- 終わり方に気を配る - フィードバックや質問を受けて結論を確認します。また、次に行うアクションを決めます。
簡素化した内容とビジュアルはコンテンツを理解しやすくする
3) フィードバックを集める
プロジェクトを前進させる効果的なフィードバックが欲しければ、プレゼンテーション中に参加者を導く必要があります。意見を求めるときは、プロジェクトの目的に沿った正しい質問を考えることが大切です。また、提案、批判、好意的な見解など、受けたフィードバックは確実にフォローしなければなりません。
デザインコンセプトが承認されない場合、説明が不十分なことだけでなく、プロジェクトの目的と関係ないフィードバックが原因になることがよくあります。フィードバックを求めるときは以下の点に配慮するようにしましょう。
- 先にデザインの正しさを説明する - 自分の判断を説明する前にフィードバックを受けるのは良い考えではありません
- プロジェクトの目的に直結する質問をする - 「この案は目的の達成や顧客獲得にどのように役立つと思いますか?」のように問いかけます
ミーティングに参加できない人からフィードバックを集めるために、プレゼンテーションへのリンクをミーティング開始前または終了後に共有することがあります。その際は、共有の対象にミーティング参加者も含めても構いません。
Adobe XD には、デザインレビュー用とプレゼンテーション用に共有リンクを作成する機能があります。そのどちらかあるいは両方を組み合わせて、意味のあるフィードバックを促すことができます。
4) プレゼンテーションを事前録画する
「参加者の視覚に訴えるプレゼンテーション」と「参加できない人のための必要な情報を含むドキュメント」のバランスを取ることは困難です。
スライドに多くの情報を詰め込みすぎると、聞き手が退屈してしまったり、説明を聞かずに長いテキストを端から読み始めるリスクが生じます。一方、提供する情報が十分でないと、セッションに参加せずスライドだけを受け取った人々はデザインの背景にある考えを十分に理解しないでしょう。
解決方法はプレゼンテーションの録画を準備することです。人に訴えるプレゼンテーションを録画することには、以下のようなメリットがあります。
- 直接会えない人にもデザインコンセプトを説明できる
- 長いテキストに頼らずに、自身の考えを明確に相手に伝えられる
- プレゼンテーション参加者が、後から提示された情報をレビューできる
5) プレゼンテーションを楽しく対話的なものにする
デザイナーはデザインに対する情熱を持ち、熱心にデザイン作業に取り組みます。頑張ってつくり上げたデザインをお披露目するのは心躍る行為です。部屋に集まった人々やオンラインミーティングの場でプレゼンテーションを始めるとき、デザイナーは自分が注目を集めていることを感じて気持ちがさらに高まります。
その一方、プレゼンテーションを見ている側は、その日に予定されている多くの仕事が気になるなど、同じように興奮してはいないかもしれません。ミーティング参加者がメールを確認しようとして、数分後にプレゼンテーションの重要なパートを聞き逃したことに気づくのはよくある話です。
参加者の注目を十分に集めることはとても重要です。前述したように、もしステークホルダーがデザインに関する判断の理由を明確に理解していなければ、意味のあるフィードバックを得ることはできないでしょう。彼らがプレゼンテーションに引き込まれることなく注意が散漫であれば、そうしたリスクが発生します。
参加者たちから十分な注目を集めるために、プレゼンテーションは可能な限り楽しく対話的なものにするべきです。以下はそのちょっとしたヒントです。
- アニメーションの使用 - アニメーションは、単にスライドの見た目を派手にするだけではなく、注意を引き付け、コンセプトを表現し、段階的にコンテンツを表示して認知負荷を下げることができます。
- 参加者と対話する - 対話のあるプレゼンテーションは、その場にいるすべての人が参加でき、誰もがプレゼンテーションの一部であると感じられるようになります。何かを促したり、質問を投げかけたり、可能であれば打ち解けるためのちょっとした話題からプレゼンテーションを始めてもよいでしょう。
このアナの動画はごく単純な例ですが、ちょっとした発想があれば、アニメーションや対話を使ってプレゼンテーションをより魅力的にし、参加者にその場でフィードバックを促すことは容易です
6) 実践的な例やシナリオを題材にして語る
でき上がったデザインコンセプトは素晴らしいものに見えるかもしれません。では、それはどう機能するのでしょう?より具体的には、それはどのようにユーザーの役に立つのでしょうか?また、ステークホルダーにとっての利点は何でしょう?
ストーリーを語ると聴衆を惹きつけることができます。ストーリーはユーザーに対する共感を促進し、全てのユーザーに有益な解決案を見つけることへの興味を促します。プレゼンテーションの一部としてストーリーを語る際は、考慮すべきいくつかのポイントがあります。
- ストーリーの主役は誰か?どれほど素晴らしいコンセプトを思いついたとしても、デザイナーは、あくまで主役の目的達成を支援する立場です。プロジェクトや状況により、主役はエンドユーザーやクライアントになるでしょう。
- 解決案はどのように主役の目的達成を支援するか?また、それは主役にとってどのような利益を生むのか?を話しましょう。
- 主役が目的を達成するときの様子はどう見えるでしょうか?ユーザー視点からストーリーを語るために、具体的なシナリオや例の使用を心掛けましょう。
デザインを伝えるスキルは必須
コミュニケーションスキルが最も重要なソフトスキルのひとつであるという話は特に目新しいものではありませんが、そこにはちゃんとした理由があります。実際、デザイン案を伝えられるということは、デザイン自体と同じくらい重要です。どんなに優れたデザイン案も、その背景にある理由を伝え、ビジネスゴールやステークホルダーの優先事項に関連づけられなければ、実現されることは無いかもしれません。
デザイン案を提示するときに利用できるツールは数多く存在します。対面、リモート、または直接説明する機会を持てないときでも効率的にコンセプトを伝えられる手段があります。ほとんどの場合に必要なのは、解決案をデザインするときと同等の、創造性と献身を発揮できることだけです。
この記事は Best Practices for Presenting Design Concepts to Stakeholders(著者: Ana Santos)の抄訳です