クリエイティブな力は人や社会を変えていくことができる ―「デジタルの日」ロゴデザイナー岩田直樹さんインタビュー

今年から制定された「デジタルの日」のロゴを制作されたグラフィックデザイナー岩田直樹さんにインタビューを行いました。

デジタルの日は、デジタルに触れ、使い方や楽しみ方を見つける日として今年から制定された記念日です。その「デジタルの日」のロゴは、岩田直樹さんがAdobe Illustratorを使ってデザインされています。公式サイトでも紹介されている通り、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を体現する素晴らしいデザインです。

デジタルの日のロゴに込めた想いと制作秘話

岩田さんは聴覚に障害をお持ちですが、そのハンディを物ともせずに、様々なクライアントとお仕事をされています。そんな「耳の聞こえないグラフィックデザイナー」として活躍されている岩田さんのインタビューを行いました。

つくることが大好きだった子供時代

――まずは「デジタルの日」のロゴデザイナー決定おめでとうございます。決定したときのお気持ちや、そこから何か変わったことがあるか教えてください。

国からの仕事とのことで、最初はとても信じられませんでしたがデザイナーとして大きなチャンスだと思い、非常にワクワクしましました。ロゴ公開後は、ありがたいことにいろんな所からお声かけを頂いております。そして、デザイナーとして、より身を引き締めていかないといけないと感じています。自分らしさはそのままに、よりクオリティを上げて頑張っていきたいと思っています。

――どうしてデザイナーになろうと思ったのでしょうか?

小さい時から絵を描くこと・モノを作ることが好きでした。元々、自己承認欲がすごく強かったため、「これは僕が作りました」と自慢し、認めてもらえるのが好きでした。仕事でも僕がやりましたと言えるようになりたいと思い、高校生のときからグラフィックデザイナーを目指すようになりました。

大学で本格的にデザインを学ぶことになり、大学の授業・課題だけではなく自主制作や様々な学生団体に入りデザインの仕事をしていました。とにかくデザイン・クリエティブに貪欲で動いていた記憶が残っています。

岩田さんの仕事道具

――影響を受けたアーティストや好きな作品は何ですか?

影響受けた作品はいろいろありすぎて、お伝えしきれないかもしれません。手塚治虫さんの漫画、ドラえもんの漫画、ポケモンのドット絵、原研哉さんの無印良品、松浦泰仁さんのムービー、聶永真(アーロン・ニエ)さんの作品、上田三根子さんのイラストなど。とにかく色んな作品を見る度に、「これはどうやって作っているんだろう?」「僕も作ってみたいなぁ」と常に考えてしまい、刺激をもらっています。

その中でも一つだけ挙げるとすれば、デザイナーという仕事を知ったキッカケとなった深澤直人さんの「INFOBAR」です。中学生のときINFOBARを見つけ、そのデザインがすごく好きで、誰が作ったんだろうと興味本位で調べてみたら、デザイナーの深澤直人さんを見つけ、デザイナーという仕事があることを知りました。

*INFOBAR – auブランドを展開するKDDIが2003年に販売したデザイン性の高い携帯電話

――印象に残っている、またターニングポイントとなったお仕事を教えてください。

学生の時、来場者1万人規模の「つくばクラフトビアフェスト」という地域のイベント団体の実行委員になり、デザイン担当をさせてもらいました。「大変さ」や「プレッシャー」を感じましたが、イベント当日に会場のあちこちに僕が作ったモノがあるのを見かけ、嬉しさが体の奥から込み上げてきて、これが僕のやりたいことだと認識することができました。それがきっかけで自信を持ちながら活動し始めました。

つくばクラフトビアフェストのロゴデザインを担当

岩田さんとアドビの出会い

――アドビ製品を使い始めたキッカケをおしえてください。

初めてアドビ製品に触れたのは大学に入学した時です。デザインを学ぶために不可欠だと思い、授業を受ける準備としてAdobe Creative Cloudコンプリートプランに加入しました。Illustrator、Photoshop、After Effectsなど、いろんなアプリをダウンロードしました。最初は操作に慣れるのに苦労しましたが、いろんなものが作れるようになると世界が凄く広がったような気分になりました。もちろん、今でもまだ使いこなせていない部分があると思うので、使い方は無限だなと感じています。

――アドビ製品の中で好きな機能は何ですか?

Illustrator・Photoshop・InDesignなど仕事では本当に欠かせない存在です。特に好きなのはIllustrator・Photoshopの「描画モード」です。色んな色・写真を重ねて色んな表現が思い通りにできるのでとても好きです。そこにグラデーションやマスクをかけると、もっといろいろな表現ができて楽しさが尽きません。使い始めて8年経ちますが、今もオモチャの感覚でいじっています。

Photoshop、Lightroom、Illustratorで制作

人をワクワクさせる仕事をしていきたい

――今後どんなお仕事をしていきたいですか?

銭湯・サウナがとても好きなので、銭湯・サウナ関係の方々と仕事で関われたらいいなと思っています。ゲーム全般も好きなのでボードゲームやテレビゲームなどのビジュアルデザインにも関わってみたいなと思います。人をワクワクさせるのが好きなので、そういった仕事ができたらいいなと思っています。

また、聴覚障害者のロールモデルとなれたらいいなと思っています。私自身、就職活動の時に苦労することも多かったので、自分が注目されることで、聴覚障害者に対しての理解が広がれば嬉しいですね。

――他のデザイナーに伝えたい想いがあれば教えてください。

「クリエティブな力は人や社会を変えていくことができる」と思うだけでとてもワクワクしませんか?

僕は耳が聴こえないというハンディを持っていて、「障害に関係なく楽しめる世界」を実現したいと思っているのですが、それを実現するには高いハードルがあると思っています。しかし、デザインという力で自分から積極的に理想の社会を作れる主体的な楽しさがあります。皆さんも「作る楽しさ」を大事にしてほしいと思います。

――ありがとうございました。

岩田直樹 (いわた・なおき)

1995年11月生まれ。筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科卒業。会社員としてデザイナー業務を行いながら、個人でも「耳の聞こえないグラフィックデザイナー」として活動している。聞こえない人と聴者との交流の場「ろうちょ~会」を運営。ろうちょ~会では、主にデザインを担当。

復興庁主催の『Re:来人』ロゴ

レプロ東京のエンブレム

BathBusProjectのビジュアルデザイン

ろうちょ~会のロゴ

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