ユーザーテストから得られる 5 つの主要な指標とは | アドビ UX 道場 #UXDojo

Rouba Shabou によるイラストレーション。

Rouba Shabou によるイラストレーション

製品や UI のデザインに関わる人には、ユーザー体験の重要さをあらためて説明する必要はないでしょう。良いユーザー体験への投資は、成功の可能性を高めます。UX に投資した $1 が $100 になって戻るという調査も存在します。

しかし、追いかけるべき UX や UI のトレンドが山のようにあるときに、優れた体験を構築できたことを確認するにはどうすればよいのでしょう?それはユーザーテストにかかっています。

最近、150 人以上のプロのデザイナーを対象に、彼らの働き方に関する調査を行いました。この記事ではその結果を参考に、ユーザーテストから得られる 5 つの主要な指標を紹介します。

ユーザーテストから学べるものは何か

ユーザーテストの参加者にいくつかの操作を完了するよう依頼すると、デザインのユーザビリティを計測できます。テストに参加する人々は、実際にデザインを操作することが想定されている層の適切な代表であることが理想的です。

テスト用に準備したタスクを遂行する被験者が揃ったら、価値のある洞察を明らかにするための質問を始めます。ユーザーテストが実施される理由はさまざまですが、最も一般的なものは以下の 2 つです。

ユーザーテストは製品デザインプロセスの重要な一部。

ユーザーテストは製品デザインプロセスの重要な一部 出典: Adobe Stock

ユーザーテストを準備する際の最初の作業は、追跡することが可能ないくつかの指標を選択することです。これを怠ると、理解困難な情報の寄せ集めを前にして悩むことになります。場合によってはデザインに誤った悪い評価を下しかねません。

この件に関する情報を集めるために、調査ではユーザーテストの際に最も役に立った指標について尋ねました。これから紹介するのはそのトップ 5 です。

(メモ:紹介するすべての指標を使う必要はありませんが、これらを知っていること自体は重要です)

1: ユーザビリティ上の問題がある箇所

ユーザビリティは、ユーザーが製品を使って与えられたタスクをこなす際の容易さの度合いを表します。通常、ユーザビリティにはいくつかの要因が関わりますが、中でもとても大きな影響を持つ要因はユーザーの目的達成やタスク完了を妨げるもの、すなわち障壁です。

テストで判明する障壁はデザインの不具合によって引き起こされたものかもしれません(例:ダイアログに表示された分かりにくいメッセージや長い待ち時間)。あるいは必要なスキルの欠如かもしれません(例:ユーザーが製品の知識を十分に持っていない)。どのような理由であれ、多くの問題に出会ったユーザーがその体験を楽しむことは期待できません。

調査の参加者の 50% は、ユーザビリティ関連の問題を発見することがテストで最も役立ったと答えました。つまり、これは検討すべき重要な指標のひとつであるということです。ユーザーテストのシナリオには、ユーザーが完了する最も典型的な操作を含めるのが一般的です。たとえば、オンラインショップであれば、最初に確認したいことはユーザーが商品を見つけて購入できるかどうかでしょう。ユーザビリティテストを実施すると、ほとんどすべてのユーザーが出会う問題を見つけるのに役立ちます。

2: ユーザーは製品やサイトをどのように考えているか

ユーザーの満足度は個人的で主観的なものであることは、誰もが知っている通りです。ではそれを測定することは可能でしょうか?UX を実践してきた人々が利用している指標のひとつに、ユーザー満足度(またはタスクレベル満足度)と呼ばれるものがあります。調査では 41% の回答者が、ユーザーテストにおいてこの指標はとても役立つとしています。

ユーザー満足度は、完了するよう依頼されたタスクについて、テスト参加者がどのように感じたのかを示します。もしそのタスクが現実世界のシナリオに近いものであれば、リアルユーザーが使用した時の標準的な反応を予測するための参考にできます。満足度の低いユーザーは、再びその製品を使おうとしないかもしれません。タスクレベル満足度の測定が重要である理由はそこにあります。

この指標を調べるには、テスト参加者にセッションの最後に質問に回答して貰います。たとえば、個々のタスクについて、とても困難からとても簡単の間で評価を依頼します。これは、シングル・イーズ・クエスチョン(SEQ)として知られているテクニックで、実践的なヒントが Jeff Sauro の記事 10 Things to Know About the Single Ease Question (SEQ) に紹介されています。

ユーザー満足度を測定するためにタスクレベル満足度を使う。

ユーザー満足度を測定するためにタスクレベル満足度を使う

ユーザー満足度は製品やサイトを使うユーザーの一般的な印象(と彼らの技術スキル)を表します。また、全体的なタスク設計の評価にもなります。もし多くのテスト参加者がタスクをとても困難と評価したのなら、タスク自体に問題があるかもしれません。おそらく課題の見直しが必要になるでしょう。

3: 実際に目的を達成したユーザーの数

回答者の 42% は成功率も有効なユーザビリティの指標であると答えました。成功率(または完了率)が扱うデータは、成功と失敗のどちらかだけです。ユーザーがタスクを完了できなければ大きな問題が存在している可能性があります。成功率が重要であることをは明らかです。

たとえば、テスト参加者 10 人中 5 人がタスクを正しく完了した場合、達成率は 50% です。もちろん望ましい結果は限りなく 100% に近いことです。それは実際にユーザーがタスクを行う際にほぼ全ての人ができることを意味するからです。

類似する指標として e コマース関連の製品で使われるコンバージョン率があります。この指標は商品を購入するユーザーの割合を測定し、購入に至るまでの経路が効果的かを判断するために使われます。

4: タスク完了に必要な時間

時間は貴重な資源です。多くの人々がデジタル製品の使用を好む大きな理由のひとつは、効率の良さによる時間の節約です。テスト参加者がタスク完了に費やした時間は、製品の効率の良さを判断するための材料になります。

この指標は計算が容易です。ユーザーが指示を読んで理解した時点(開始時刻)から、ユーザーがタスクを無事完了した時点(終了時刻)までを単純に引き算して計算するだけです。一般的にはタスク完了に時間がかかるほどユーザー体験の満足度が下がります。特に繰り返し行うタスクについてはその傾向が強く出ます。

回答者の 40% はタスク完了までの時間は役に立つとしています。しかし、この指標の意味は製品の性質に依存します。たとえば、ゲームのようにユーザーが楽しむことを目的に時間を費やす場合は、タスク完了に長い時間がかかることが悪い体験であるとは限りません。

5: 作業中に発生した間違いの数

回答者の 3 分の 1 は、エラーの総数はユーザーテストから得られる有効な指標であると答えました。エラー総数は、ユーザー操作の結果がエラーの状態になった回数の合計です。対象になる操作は様々で、ログイン時にパスワードを打ち間違えたなどのちょっとした不注意もあれば、デザインの意味を理解できずに誤った判断をしたために起きた操作手順の間違いもあります。

現実の世界では、ユーザーが操作の途中で間違いをしたとしても、いつでもそれが大きな意味を持つわけではありません。ユーザーが容易に間違いを修正できるなら、それを問題とは認識しないかもしれません。発生するエラーを重要度に応じてランク分けすると、ユーザー体験の全体像がより分かりやすくなるでしょう。

おわりに

この記事で紹介した調査結果から明らかなように、残念ながらどんなデザインの評価にも利用できる普遍的な指標の組み合わせはありません。それぞれの製品やサイトは異なる目的のためにデザインされており、そのため異なる指標による評価が必要です。

その一方で、他の UX デザイナーのアプローチを知っておくことは、自身のデザインプロセスの効率化を容易にします。この記事では、製品やサイトおよびそのユーザーの全体像を理解するために役立つ、多くの UX デザイナーに支持されている指標を紹介しました。

この記事は 5 User Testing Stats Every UX/UI Designer Should Know(著者: Nick Babich)の抄訳です