【イベント】 College Creative Jam 2021 フィナーレ!リサーチに基づいたアイデアあふれる力作が並ぶ

リアルな社会問題の解決に大学生が挑むデザインコンペ「College Creative Jam 2021」が、ついにフィナーレを迎え、チャンピオンが選出されました!

リアルな社会問題の解決に大学生が挑むデザインコンペ「College Creative Jam 2021」が2021年10月13日(水)、ついにフィナーレを迎えました。事前審査によって選ばれたトップ10チームが、フィナーレ当日にプレゼンテーションを行い最終審査へ。いずれも見応えのある作品が並ぶ中、チャンピオンと入賞チームが発表されました。

UI/UXデザインの知識をイチから学べる体験型コンペ

「College Creative Jam 2021」は6月の事前セッションを含めて3ヶ月という長期間にわたる体験型のデザインコンペで、参加者は、UI/UXデザインの実用的で専門性の高いワークショップで学びながら作品作りに挑むことができます。

8月のキックオフで発表された本コンペのテーマは「有機農業×土壌の健全性×気候変動問題」。具体的には、出題企業であるパタゴニアが取り組む健康な土壌を構築するための有機農法に焦点を当て、「リジェネラティブ・オーガニック農法に賛同する日本の有機農業者を増やすモバイルソリューションを作成する」が課題となりました。

参加チームは、デザイン思考やリサーチのワークショップを通じて課題を自分達なりの視点で捉えアイデアを考え抜き、デザインの知識と技術を学ぶワークショップを経て、Adobe XDでプロトタイプを制作してきました。

応募は10月1日(金)に締め切られ、全ての作品は現場で活躍するプロのクリエイターによりていねいに審査され、トップの10チームが選出されフィナーレを迎えました。

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1次審査の審査員。フィナーレに残ったチームに限らずすべての応募チームがフィードバックを受けられる

10チームのプレゼンテーションと審査、審査発表という緊張感の高まるフィナーレですが、アドビのエデュケーションエバンジェリスト 井上リサとクリエイティブクラウドエバンジェリスト 仲尾毅によって明るくテンポ良く進行しました。

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オンラインで10チームの参加者が集合

消費者に目を向けるか、農業者に目を向けるか

チームのプレゼンテーションの持ち時間は4分。限られた時間で機能やアイデアの背景を説明するために、動画を用意するなど様々な工夫が見られました。

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トップ10の全作品。発表順で1〜5

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トップ10の全作品。発表順で6〜7

最終審査の審査員はパタゴニア日本支社の環境社会部門アクティビズム・コーディネーター中西悦子氏、株式会社電通の CDC クリエーティブ・ディレクター/アートディレクター高草木博純氏、株式会社フェリシモのカスタマーマネージメント グループディレクター吉田綾貴子氏。各チームの発表をていねいに審査しながら、あたたかくも鋭い視点でコメントや質問を投げかけていきます。

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各チームのソリューションの視点は、大きく2つに分かれました。消費者に目を向け、有機野菜の消費を増やすことで間接的に有機農業を盛り上げようとするアイデアと、農業者に目を向け、有機農法の農業者を直接的に増やそうとするアイデアです。どちらの視点に立ってもチームによって独自の切り口があり、なるほどと感じさせられたり思わず笑ってしまったりと見応えのある作品がそろいました。

チャンピオン作品は農地取得支援アプリ「Norch」

グランプリに選ばれたのは、チーム「ラタトゥイユ」(日本女子大学 小沢早紀さん、嘉山絵美さん、宮嶋文子さん)の「Norch」です。その名の通りノーチ(農地)の取得をサポートするアプリで、農地を探す新規就農者と土地のオーナーとをつなぎます。

コンペ課題の解決には、今農業をしている人を有機農家に変えるよりも、これから有機農業を始める人をサポートした方が良いと判断。新たに農業を始めようとした人が農地の取得に苦労するという点に着目しました。

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チーム「ラタトゥイユ」の「Norch」。左から嘉山さん、小沢さん、宮嶋さん

リサーチからわかったのは、農地取得には、知り合いがいないと土地の紹介を受けにくく、農業経験がないとオーナーからの信用を得るのが難しいという課題。そこで、農地を細かい条件で検索する機能を中心に、農地を探す人がプロフィールを登録する機能、オーナーとのチャット機能を設けました。農地を探す側の利便性だけでなく、信頼できる人を求めるオーナーにもメリットがあります。

さらに、補助金などを受けられる認定新規就農者の申請などには煩雑な手続きが必要なため、各種チェックリストを用意して補助制度獲得のプロセスのサポートも盛り込みました。

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検索だけでなく、借りたい/購入したい人と土地のオーナーとのコミュニケーションを重視した

審査員からは、「農業の土地を借りるにはいくつもハードルがあるというとても細かいところをリサーチで見つけてよく設計できています」(中西氏)、「空き部屋探しアプリとマッチングアプリのいいとこ取りで “Norch”という音も上手」(吉田氏)、「最初の段階での冷静な状況の見極めがきいていて、いっけん地味なゾーンに見えるところに伸びしろがあるというのを見いだせています。補助金のあたりの機能が、リサーチでの解像度の高さ、処理力の高さを物語っていたなと思います」(高草木氏)とのコメントがありました。

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ドラムロールででチャンピオンチームを発表

受賞の発表を受けてチームメンバーからは「信じられない気持ちでいます。3人でがんばって良かったです」(嘉山さん)、「私たちなりの視点を評価していただいたのだと思うので、たくさんリサーチした甲斐がありました」(宮嶋さん)、「美大ではないのでアイデアを強みに何度も練り直しました」(小沢さん)と、喜びの感想があがりました。

多彩な入賞作品を紹介!

2位から5位と審査員特別賞の作品を順にご紹介しましょう。

2位「vegeviva」

チーム「KKD」(武蔵野美術大学: 和田峻弥さん、山田泰樹さん、江口尚希さん)

リジェネラティブ・オーガニック農法を広めるには、“半農半X”のような新しいタイプの農業者のやりがいを後押しし、有機野菜に興味のある消費者に魅力を伝えることが大切と考え、両者をつなぐ野菜のライブ購入アプリを考案しました。ライブ感を生かしコミュニケーションをとりながら極めて手軽なフローで購入できるのが特徴です。農業者と購入者のつながりを強くする常連機能も設けました。

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YouTubeライブやTikTokのような軽快で新しいコミュニケーションのスタイル。動画対応前のXD製品バージョンで、あたかも動画が動いているように見える、完成度の高いプロトタイプでした。

3位「つづる」

チーム「オムライス」(芝浦工業大学:石口夏帆さん、海野恵さん、北城満理奈さん)

リサーチから、新規有機農法者にとって情報交換のための仲間作りが重要だと考え、コミュニティづくりを支援するアプリを考案しました。農家が日々記録をつける感覚で日誌をつけ、それを公開してコメントや質問などのやりとりができます。日誌を中心としたコミュニケーションが生まれ、有機農業を始めたい農家とベテラン有機農家での情報交換が可能になり、有機農法へのハードルを下げることができます。

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日誌をベースに自然な情報交換が行われるしくみ。日記入力画面では、天気などある程度の情報が自動で入力されるく工夫がされていました。

4位「ほめてミール」

チーム「ありまうさお」(東京工芸大学 浦あかねさん、小川里菜さん、齋藤舞さん)

有機農場をふやすためにオーガニック商品の消費を増やすことにフォーカスし、一人暮らしをターゲットにしたミールキットの販売とレシピのアプリを考案。ただし、リサーチでオーガニックというだけでは購入につながらないことがわかり、付加価値として「ほめる」をアプリのコンセプトにし、導線の各所に「ほめられる」「ほめる」要素を用意しました。作り方動画の途中で機械音声がほめてくれるなど思わず笑ってしまう演出も好評でした。

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「ほめられ」ながら購入と調理ができるだけでなく、生産者に感想を伝える「ほめる」機能もある

なお、「ほめてミール」はリアルタイムで行われた視聴者からの人気投票「Popular Vote」で1位に輝きました。審査員の高草木氏は、「今回のテーマに対してエモーショナルな原動力として 『ほめる』『ほめられる』を見つけてきて一点突破で取り入れたのが見切りとしてすごくよかった。ほめられることの気持ち良さみたいな発見は、意外と万人に通じて、そんな簡単なことでアイデアがピリッとするという例です」とコメントしました。

5位「PayPay ROCK」

チーム「熱中SHOW」(東北芸術工科大学+広島大学: 増田京吾さん、冨田光太郎さん、阿部拓都さん)

有機野菜は厳しい規定をクリアしているにもかかわらずその情報や魅力が消費者に伝わらず、購入の選択肢になっていないことがリサーチでわかり、購入を促進する情報提供アプリを考案。ただし、独自にアプリを作っても現在の有機野菜同様、消費者に届かないと判断し、ユーザー数の多い既存の決済サービスPayPayと連携したアプリにしました。購入履歴から有機食品の割合を見て「有機率」を表示したり、野菜ごとの詳しい情報、レシピを提供したりして、購入を促進します。

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野菜が育った背景がわかる細かい情報提供がされている

審査員特別賞「勇気?有機。」

チーム「HYBE」(芝浦工業大学:横山萌さん、中村梨世さん、シャリフカーン ムニーザ皓さん)

農業者の間で有機農業の情報が足りず、有機農法を始めたいと思っても相談相手がいないことをリサーチで捉え、農業者間のコミュニティとなるアプリを考案しました。知識を提供したい有機農業者と、始める勇気が出ない一般の農業者とをつなぎます。有機農業の経験者はホストとしてノウハウ等を自分のタイムラインで公開し、一般農業者は投稿を検索したり特定の人をフォローしたり直接質問したりすることでノウハウを得られます。有機農法への不安や情報不足を解消し、有機農法への移行を促します。

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農業者に特化したノウハウを農家の間で共有できるコミュニティ

デザイン等も含めた総合点で及ばなかったものの、コミュニティ形成を目指す直接的なソリューション提案が評価され審査員特別賞となりました。

なお、入賞チームには、それぞれ、Amazonギフトカード、インタビューやフェリシモとの特別ネットワーキングイベント KOBE TRIP等の規定の副賞が贈られました。

体験型コンペでの学びを生かして

いずれの入賞作品も、ていねいなリサーチから課題を分析し、根拠のあるアイデア構築を行っているのが印象的で、ワークショップでUI/UX設計に必要なノウハウを吸収したことが伝わってきました。また、デザインのレベルが高い作品が目立ち、Adobe XDを使いこなすのはもちろん、他のアドビのツールも活用してロゴやイラストの制作、画像処理などを行っていることがわかります。

審査員からは全体のまとめとして、「複雑な状況を単純化するときに、落としてしまっていいものかどうかということを見極めることが、ものを作る人達にとってとても重要になると思います」(中西氏)、「自分だったら……、このメンバーに入れてもらえるなら……というワクワクした妄想がふくらむとても楽しい時間でした」(吉田氏)、「すぐには解決しない課題だと思いますが、今回何ヶ月もかけて考え抜いていたことを、八百屋やスーパーで絶対に思い出します。皆さんがこの課題のエバンジェリストになって誰かに話をするかもしれません。世の中を変える小さな種に確実になると思います」(高草木氏)などのコメントがありました。

同コンペを引いてきたアドビの井上は、「特にこのUI/UXのフィールドにいると、デザイナーの先入観でデザインしてしまうことがたくさんあるんですね。でも、使う人がいてこそのデザインなので、自分目線でデザインできないような癖を今からつけておくと、本当に人が欲しいサービスを作れると思います」と話し、ここからが始まりであり、今回の気づきを大切にして欲しいとエールを送りました。

参加した学生が、このコンペで得た経験を今後の学びや社会で役立てさらに伸ばしていくことが楽しみです。