【イベント】College Creative Jam 2021チャンピオンインタビュー農家と農地取得希望者を結ぶ、アプリ「Norch」

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College Creative Jam 2021の優勝を飾った、日本女子大学の小沢 早紀さん、嘉山 絵美さん、宮嶋 文子さんの3人からなるチーム「ラタトゥイユ」。日本の有機農業者を増やすモバイルソリューションを作成するという課題に対し、同チームが出した答えは、これから農業に取り組もうとする若い農業従事者の支援でした。農地取得において、農地を託す側とこれから農業を始めようとする側のニーズを丁寧にすくい上げた農地取得支援アプリ「Norch」は、着眼点の面白さと入念なリサーチに基づいたアプリ設計の両面で、審査員の皆さんから高く評価されました。アイデアが生まれた経緯も含め、ラタトゥイユの皆さんに話をうかがいました。

――College Creative Jam 2021参加の経緯を教えてください。

嘉山さん:メンバー3人が参加するゼミの先生から、「こんなイベントがあるんだけど参加してみない?」と紹介されたのがきっかけでした。私は以前から社会課題の解決に興味があり、良い機会だと思い参加を決めました。そのとき一緒に手を挙げてくれたのが小沢さんと宮嶋さんでした。

――農地取得支援アプリ「Norch」は審査員の皆さんからも絶賛されましたが、そのアイデアはどのように生まれたのでしょう?

嘉山さん:これから農業に取り組もうとする若い年代をターゲットにすることを最初に決めました。当初は農家体験予約サイトを想定しており、一度体験すればリジェネラティブオーガニック農法(環境再生型農業)の魅力にも気づくのではと考えたのですが、リサーチを重ねてもなかなか形に結び付きませんでした。大きな転換点になったのは、宮嶋さんの知り合いで、農地付き一軒家を購入して農業に取り組む方にインタビューできたことでした。話を聞く中で、新たに農業を始めようとする際に、農地取得が大きな課題になっているという現実を知ったのです。「Norch」のアイデアは、この課題の解決を考えることから生まれました。

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ラタトゥイユの作成したプロトタイプ「Norch」

――アイデアを形にするうえで苦労したことを教えてください。

小沢さん:農地取得が難しい理由の一つは、譲り手と受け手のマッチングの難しさにあります。特に譲り手は代々耕してきた農地に対する想いは強く、安心して託せる信頼した相手に譲りたいという強い思いがあります。この課題の解決が一番こだわったポイントです。パタゴニアの中西さんからのアドバイスもあり、チャットの仕組みを導入することでその解決を図りました。

宮嶋さん:農業をめぐる課題に関するリサーチは普段から大学のゼミなどで行ってきたこともあり、特に問題はなかったのですが、デザインの作り込みには苦労しました。ただ、Adobe XDはUIが分かりやすく、アニメーションなども感覚的な操作で付けることができるので、デザインとは縁のない学部の私たちでもプロトタイプを完成させることができました。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション, Teams
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Norchでは、農家と農地取得希望者がチャットでやりとりできる

――チーム「ラタトゥイユ」は最終審査のプレゼンも高く評価されました。どんなことを考えて臨みましたか。

嘉山さん:最終審査に残った後、3人で再確認したのは「UIデザインだけで勝負しているわけではない」という点でした。ですから、プレゼンでは見た目の美しさよりも、このソリューションがなにを解決するのか、一つ一つの機能がどういう役割を持つのかを打ち出すことを心掛けました。大学で私たちが学んでいる、経営学やマーケティング理論、組織論などを通し、課題解決を目指すという姿勢を貫いたことが結果として評価につながったのではないでしょうか。

――では最後に、それぞれがCollege Creative Jam 2021に参加して得たものを教えてください。

嘉山さん:課題の解決策が一つではないことを再認識できたことです。オンラインとはいえ、いろんな方の考え方を学べたことはとても刺激的でした。また利用者の視点に立つことの大切さが学べたことも大きかったです。今後どんな仕事に就くにせよ、この経験を大切にしていきたいです。

宮嶋さん:以前参加したビジネスコンテストはアイデアを発表するだけでしたが、College Creative Jamはアイデアをプロトタイプで表現するため、思いもしなかったフィードバックが得られます。これは反省点でもあるのですが、「農地取得がゴールではない」という審査コメントは確かにその通りだと思いました。利用者の視点の大切さを知る良い機会になったと思います。

小沢さん:最初は「革新的」という言葉にひっぱられすぎて、奇抜さを競うような方向に目が向いていました。しかしリサーチを通し、現実の課題が浮かび上がる中、その解決には何が必要かという点に立ち戻ることができたことが、個人的には一番の収穫だったと考えています。アイデアを形にする、真の意味の課題解決に取り組んだ経験は、社会に出てから生きてくるのではないでしょうか。

まとめ

美大生ではない3人で構成されたチーム「ラタトゥイユ」。見事優勝に輝いたその背景には、入念なリサーチに基づいたコンセプト設計と、初心者でも扱いやすいAdobe XDの特性がありました。今回のコンペを通して、沢山の方々の意見やアイデアに触れた経験が、今後の人生に少しでも役立つことを期待しています。

次回のブログでは、2位入賞チーム「KKD」、5位入賞チーム「熱中SHOW」の皆さんにお話をうかがいます。