興味あること「共に」追いかけよう:サーカスビジョンが伝える多様性
クレジット:Adobe Stock / Circus Vision
日本のクリエイティブ集団であり、Adobe Stockのコントリビューターでもあるサーカスビジョンは、この1年あまりの間に、遊び心があり、真面目で、新鮮な作品を多く生み出してきました。その美意識の一端は、メンバーの様々な経歴にあると思われます。4人のメンバーは、映像作家、写真家、プロのインラインスケーター、デザイナーです。
しかし、それ以上に重要なのは、サーカスビジョンが、自分たちの作品を通して、多様な能力を表現することに心血を注いでいることです。彼らは、短い活動期間の中で、車椅子に乗った友人が田舎で農業をしている様子や、手話でコミュニケーションをとる人々、カラフルな補聴器、コミカルな側面を見せる表情豊かなシニアなどを撮影してきました。
これらの作品の多くは、Adobe Stockのキュレーターやストックバイヤーの目に留まりました。多くの主要ブランドは、多様な顧客層にアピールするために、ますます多様なキャンペーンを展開しています。しかし、健常者だけではなく、シニアや障がいを持つ方々も含めた真の社会がきちんと描かれたライフスタイル作品はまだ不足していると思われます。そんな中、サーカスビジョンの作品は、共感できる、親しみやすい作品として注目されています。
クレジット:(左から)Adobe Stock/Circus Vision; Adobe Stock/Circus Vision; Adobe Stock/Circus Vision
サーカスビジョンは、映像作家の大里健太郎さんとデザイナーの丸山桂さんが、2020年の春に交わした会話から生まれました。「車椅子の友人がオーロラを見に行ったり、山に登ったり、エクストリームスポーツをしたりしていることを、一晩中話しました」と大里さんは振り返ります。大里さんと丸山さんは、この時の気持ちを鮮明に覚えており、そういった人達の姿を色々な人に見てもらいたいという希望を共有していました。
モビリティの話は、聴覚、視覚、年齢の話にもつながりました。二人は、「手話の表現力」や「目の不自由な方のキャンプなどのアクティビティ」をイメージした作品を作りたいと考えるようになりました。そこで、手話通訳者として活躍する写真家の栗田一歩さんと、プロインラインスケーターの安床武士さんに声をかけることになりました。
クレジット:(左) Adobe Stock/Circus Vision; (右) Adobe Stock/Circus Vision
クレジット:Adobe Stock/Circus Vision
先に質問し、後に撮影する
サーカスビジョンの活動の根幹にあるのは、「自分の興味を優先する」という哲学です。障がいのある人たちを撮影するためのコンセプトを考える際、メンバーは常に、障がいのある人たちとの関係性から出発します。彼らは何に興奮し、何を共有したいと思っているのか?そして、創造性という概念を語るとき、何が浮かび上がってくるのか。
栗田一歩さんにとって、聴覚障害者との関わりは日常的なものでした。「写真家である前に、手話通訳者なんです。モデルとなるのは、一緒に仕事をしていた人や、コラボレーションしたいと思っていた友人たちでした。手話でメッセージを受け取り、私はカメラを媒体としてそのメッセージを伝えているだけです」と栗田さんは振り返ってくれました。
また、彼は耳の不自由な方の「りんご」の表現に衝撃を受けたと言います。その人は「赤」と 「丸い」という視覚的な表現でリンゴを表現したのですが、リンゴの味や皮の感触、木から取る動作などが、活き活きと伝わってきたそうです。
「言葉や物には目に見えない物語があるのだと実感しました」と栗田さんは言います。「その後、手話の美しさやニュアンス、豊かさを表現したいと思うようになりました。」
生まれつき手足に障害のある大里健太郎さんにとって、興味を持つことは当たり前のことでした。インラインスケートやスケートボードなどのスポーツが好きだった彼は、これらのコミュニティを通じて、自分と同じように障害を持ち、スピードと冒険を好む人々と出会ったのです。
障がい者を撮影したいと考えている他のフォトグラファーへのアドバイスとして、大里さんは自身の経験をもとにこう語っています。「それは簡単なことです。車椅子の人、手話をする人、目の不自由な人、自分より年上の人と知り合う。日常のことを話す。一緒に新しいプロジェクトを始めてみてください。ともに時間を共有し会話を重ねることから必要なことが見えてくるはずです。」
クレジット:(左) Adobe Stock/Circus Vision; (右) Adobe Stock/Circus Vision
シンプルさとセレンディピティを受け入れる
常に自分の関心ある事やなじみのコミュニティから題材を探すことで、出来上がった作品は具体的で、目に見える活動に基づいた説得力のあるものになります。特に、「障害を正しく、共感を持って表現したい」というような大きな目標がある場合、例えば「聴覚障害や車椅子を使う人たちに対する世界の見方を変えるにはどうしたらいいか」ということから始めるのは、圧倒的に難しいと感じます。
デザイナーやペインターとして活躍する丸山桂さんは、週末を利用し(例えば友人たちが普段は行けない場所にハイキングに行けるといった)車いすなどのアイテムを利用したアクティビティ開発のお手伝いをしています。
「このプロジェクトのために休日を返上する理由のひとつは、人が集まり、その過程でいろいろなことを試しているうちにセレンディピティが起こるから」と丸山さんは語ります。
みんなで何かをするというシンプルな行為から得られる喜びやインスピレーションが、彼の仕事に目的を与えてくれる。丸山さんにとって、それは人々をまだ行ったことのない場所に連れて行くことでした。
「セレンディピティとは、思いがけない発見や素晴らしい偶然を受け入れることです」と彼は言います。「誰もやったことのないことをやったときの結果が楽しみです」。
クレジット:Adobe Stock/Circus Vision
発見に満ちた旅
パンデミックの最中に息もつかせぬ速さで作品を作っていたことを考えると、当面サーカスビジョンがその制作のペースを落とすことはないでしょう。プロスケーターとして活躍し、現在は写真やビデオの撮影を行っている安床武士さんは、メンバーとのコラボレーションによって、昔からの趣味が新鮮に感じられるようになったといいます。「誰も見たことのない新しい映像表現が生まれると信じています」と語っています。
2021年のAdobe MAXに登場したサーカスビジョンは、インラインスケートを使って行う撮影など、彼らの取り組みを積極的に紹介してくれました。チームは常に新しいものを見つけては、撮影し、アレンジし、世界に向けて発信しています。
「障がい者の方々と出会い、一緒にゴールを目指すことは、発見と驚きと感動の連続です」と大里さんは語ります。
Circus Vision の作品はこちらからご覧ください.
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