Adobe Stock アーティスト開拓ファンド:2021年度最終受賞者のご紹介
イメージ:Adobe Stock/ Chelsea Victoria/Stocksy
2021年に50万米ドルを出資してスタートした「2021年度 アーティスト開拓プログラム」ですが、これまで数回に分けて受賞者をご紹介してきました。今回はその最終組の発表です。今回受賞者された方々は、Ina Gouveia氏、Lochi Shaun Kalu氏、Kazuho Kurita氏、Carina Lindmeier氏、Amanda Lobos氏、Christina Nwabugo氏、Mumbi Muturi氏、Kentaro Osato氏、Yuya Parker氏、Danii Pollehn氏、Shingi Rice氏です。
選考基準は、その提案内容の素晴らしさだけでなく、様々な地域、民族、ライフスタイル、コミュニティなどの観点から、メッセージ性あるコンテンツ制作ができる能力を持ち合わせているかという点を重視しました。Adobe Stock はこの活動を通して、多様なバックグラウンドを持つ世界中のアーティスト達と連携し、サポートすることを目指しました。これにより、本来あるべき社会描くコンテンツを世に発表するとともに、真にインクルーシブなコレクションを作り上げていこうとしています。
そこでAdobe Stock Advocatesプログラムを立ち上げ、ストックビジュアルにおける被写体描写の正確さと、社会の多様性や寛容性を向上させる取り組み行ってきました。今回のアーティスト開拓ファンドもその活動の一つで、これを通して、これまで正当に評価されてこなかったコミュニティーに自己のアイデンティティを持ち、意欲的で新しいクリエイティブを探求するアーティストを支援してきました。このファンドは、モデルの人件費、作業場所、器材調達のコストとなどに利用され、コンテンツ制作に活用いただいております。
Adobe Stockは、Adobe Creative Residencyプログラムとも連携し、2021年に選出した40名のアーティストにそれぞれ1万2,500米ドルを贈与しました。才能あるクリエイターたちはこの資金を活用して、自分のコミュニティや一人ひとりの物語を正確に表現することに心を注ぎながら、新しいプロジェクトに取り組みました。Adobe Stockによる今後のコミッションを伴うプログラムに関するお知らせにご注目ください。
新たにアーティスト開拓ファンドの対象となったアーティストの紹介
イメージ:Ina Gouveia
Ina Gouveia
Ina Gouveia氏は、ブラジル、ベロオリゾンテ在住のイラストレーター兼デザイナーであり、ミナス・ジェライス連邦大学でビジュアルアートの学位を取得しています。イラストの主要テーマは、多様な体の相互作用と関係、および体と環境の関係です。Ina Gouveia氏は、イラストレーターとして、ユニセフやヴォーグ・ブラジルなどのクライアントとコラボレーションした経験があります。
同氏は、このプロジェクトを通して、ジェンダー平等と自己価値の構築に対する人々の認識と理解が広がることを願っており、次のように述べています。「ブラジル人として、そしてバイセクシャルの女性として、私は夢を追うことに常に大きな恐怖と困難を感じながら生きています。敵意や暴力があっても、現実や少数民族団結への希望を表現することが、恐怖に立ち向かい、可能性を開く方法だと信じています」
イメージ:Lochi Shaun Kalu
Lochi Shaun Kalu
Lochi Shaun Kalu氏は、ナイジェリア、ラゴス出身の映画監督兼作家です。コミュニケーション、メディア、クリエイティブディレクションでの経験を持つ同氏の作品には、魅力的な物語があふれています。
Adobe Stockの同氏のコミッションプロジェクト「LAGOS GYRATION」は、クリエイティブブリーフ「Joyful Rhythm(楽しいリズム)」と「Celebration of Self(自分自身の在り方を称える)」からインスピレーションを得ています。Lochi Shaun Kalu氏は、ラゴスのさまざまな人々が交流し楽しむ様子を追いかけ、親しく個人的な視点で、ラゴスの生活の気ままで楽しい瞬間を見る人に伝えます。作品の全体的なビジョンは、「ラゴスの精神に対する心からの歓声を世界に届けること」です。
Lochi Shaun Kalu氏は次のように述べています。「私はただ、楽しい時間を過ごしている普通のナイジェリア人を紹介したいだけです。しぐさ、運動、ダンス、レジャー活動での動きのあるうれしそうな表情を捉えることで、これをやろうとしています」
イメージ:Kazuho Kurita
Kazuho Kurita
京都府亀岡市で生まれたKazuho Kurita氏は、写真家、手話通訳者であり、Circus Visionというクリエイター集団の一人です。23歳のときに手話と聴覚障害者のコミュニティーに出合い、手話の美しさと繊細さに魅了された同氏ですが、自身のことをまずは手話通訳者であり、次にアーティストであると考えています。Kazuho氏は、様々な身体能力、病気、表現方法を持つ友人や知人を取り上げたドキュメンタリー写真を通して、健聴者の理解を深めようとしています。
Kazuho氏は、クリエイティブブリーフ「Celebration of Self(自分自身のあり方を称える)」からインスピレーションを得ました。このプロジェクトで重視しているのは、障がいのある人々を表現することと、人間のあらゆる感覚を探求することです。聴覚障がい者との仕事について同氏は次のように述べています。「聴覚障がいを持つ友人たちとの共同作業です。手話の美しさを感じ、聴覚障がいとは何かを考えるきっかけにしていただければと思います」
イメージ:Carina Lindmeier
Carina Lindmeier
Carina Lindmeier氏は、オーストリア、リンツ出身のフリーランスのイラストレーターです。専門は、フィギュラティブで現代風のデジタルイラストです。作品は、何層にも重なるテクスチャ―、鮮やかなパターン、明るい色彩、わずかな不完全さが生み出す、手作り感のあるデジタル美学を特徴としています。Carina Lindmeier氏は、女性の権利拡大を深く気にかけており、しばしば日常生活の中の女性を描いています。過去には、Adobe、Refinery29、Bombay Sapphire、Simon & Schuster、Harper Collins Publishers、Red Bull Media Houseなどのクライアントと仕事をしたことがあります。
同氏のプロジェクトは、女性の権利拡大というテーマを探求し、力強い積極性、幸福、健康の概念を遊び心を持って伝えています。Carina氏は「私は女性として自分のパワーと強さを使い、創造性と視覚的な言語で、他者を力づけ、その声を表現したいのです。私たちは共に立ち上がり、さらに輝くことができます」と述べています。
イメージ:Amanda Lobos
Amanda Lobos
Amanda Lobos氏は、ブラジル、ビラベリャ出身の黒人アーティスト兼デザイナーです。作品には、ビジュアルアイデンティデザイン、デジタルイラストレーション、パッケージング、印刷物、ポスターデザインなどがあり、独特の大胆さと印象的な色彩が特徴です。Amanda Lobos氏は、インターセクショナルコミュニティを鼓舞し反映する映像を制作すること、そして自分の経験の価値を共有することに情熱を注いでいます。
同氏のプロジェクトは、クリエイティブブリーフ「Taste of Heritage(伝統の味)」、「Celebration of Self(自分自身のあり方を称える)」、そして「Identity & Gender(アイデンティティとジェンダー)」からインスピレーションを得ています。Adobe Stockを通して同氏が目指すのは、世界的大混乱の渦中にクリエイティブな仕事で生き残るアーティストとして、自分の経験を表現することです。「私は、政治、社会、健康に関わる最大の危機から逃れる黒人バイセクシャルのアーティストとして、存在すること、創造すること、生きることを、アートを通して視覚的に表現しようとしています」と話してくれました。
イメージ:Mumbi Muturi
Mumbi Muturi
Muturi氏は、ケニアのナイロビを拠点に活躍する写真家であり、多くの分野を専門とするクリエイターです。写真家を目指したきっかけは、2018年の写真家たちとのキャンプ旅行でした。出会った人々の表情にアートの核心を見いだしたのです。活動の中で熱心に取り組んでいるのが肖像写真です。Mumbi Muturi氏は、現場のクリエイティブディレクターとしてだけではなく、写真やビデオ撮影を含むほとんどの制作で、衣装やヘアスタイルのスタイリングも手掛けています。
同氏は、今回ファンドを受賞し、ケニアの人々や生活を正確に表現する作品を作成し、レンズを通して現代のケニアの農村生活を伝えることに重点的に取り組んでいます。同氏は、African Women Photographers、Black Women Photographers、Diversify Photo Up Next photographersのメンバーでもあります。
イメージ:Christina Nwabugo
Christina Nwabugo
Christina Nwabugo氏は、イギリス、ロンドンを拠点に活動するイギリス系ナイジェリア人の作家、写真家、ディレクターです。その作品では、表現と包括性に心を注ぎながら、人、文化、自然の共生関係を探求しています。過去に仕事をしたクライアントには、Apple、Nike、Tiffany & Co.などがあります。
同氏は、作品を通じて、地球を守ることについてポジティブな情報を広めている先駆的な活動家を称賛しようとしています。また自分の作品がポジティブな変化を促す会話のきっかけになることを願っています。
ストック素材の世界で経験を積んだ同氏は、Adobe Stockのコミッションプロジェクトの中で、黒人を偽りなくキャスティングすることを重視し、環境に優しい自然との共有空間と人間とのつながりを表現しています。「私の作品は、自然の中の黒人を正面から取り上げ、環境活動と自然を前面に押し出しています」と同氏は述べています。
イメージ:Kentaro Osato
Kentaro Osato
Osato氏は、写真家兼映画制作者であり、著名なミュージシャンやアスリートを含むクライアント向けの作品を制作しています。日本を拠点に、ビデオ、写真、デザインを通して、正確でインクルーシブな視覚表現に取り組むマルチメディアアート集団「サーカスビジョン」の創設者兼代表でもあります。
同氏は生まれつき、下肢、足、手に障がいを持っています。障がいを持つ人々と映画プロジェクトに取り組む中で、自分の人生経験を活かし、能力に関係なく、誰もが参加でき歓迎されていると感じられる創造的な世界を築き始めました。アーティスト開拓ファンドでの同氏のプロジェクト「Our Standard(私たちの標準)」の中で、同氏は次のように述べています。「日本で社会の多様性と受容性の重要度が高まってきているようです。[このプロジェクトで]私は障がいのある人々に焦点を当て、私たちの創造力を通じて、障がいのある人々のための新しい機会を創出したいと考えています。障がいは、彼らにとって特別なものではなく、当たり前のことなのです。彼らを創造的に表現することで、彼らが自信と活力を持って、笑顔で生きられる世界を構築できると確信しています」
イメージ:Yuya Parker
Yuya Parker
Yuya Parker氏は、カリフォルニア州ロサンゼルス在住の日本人写真家です。日本の静岡県にある小さな海辺の町、福田町で育ちました。祖母は書道と生け花(日本の伝統的なフラワーアレンジメント)が上手く、同氏は祖母の作品を見るのが大好きでした。また幼い頃から、絵や写真を楽しんでいました。
東京で建築を学び、景観設計への興味を追求し、ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学んだあと、写真家兼ディレクターとしての現在のキャリアを見つけました。同氏のプロジェクトは、クリエイティブブリーフ「Joyful Rhythm(楽しいリズム)」と「Taste of Heritage(伝統の味)」の影響を受けており、生け花への称賛を示し、文化的な物語およびインスピレーションとして食の美しさを表現しています。
「食べられるものは喜びの瞬間を表現できます」と語るYuya Parker氏は、イメージの中にその喜びを捉え、故郷や祖母の思い出というフィルターを通して表現しています。
イメージ:Daniela Pollehn
Danii Pollehn
Danii Pollehn氏は、ドイツのハンブルグを拠点に活動するイラストレーター兼デザイナーです。その作品は、自然界を称賛するイメージ、植物のイラスト、女性の姿を取り入れた、絵画、印刷物、デジタルイラスト、パターンデザインなどです。Danii Pollehn氏は、編集やライフスタイルに関する仕事でブランディング、パッケージング、広告キャンペーンを手掛け、過去にはZeit Verlagsgruppe、Neverland、Volkswagen、P&Gなどのブランドの仕事をしたこともあります。
同氏のプロジェクトは、自身の経験に基づき、自分は異質であるという感覚と、女性および障がいを持つ人々を偽りなく共感的に表現することへの希望を表しています。「てんかん発作と脳腫瘍を抱えて育った私は、不完全で「壊れている」と思われてきました。自分の状態と過去を受け入れること。これにはいまだに格闘しています。恥ずかしいと思うのではなく、誇りを持つべきなのです」と同氏は話しています。
イメージ:Shingi Rice
Shingi Rice
Shingi Rice氏は、ジンバブエ人を祖先に持つスペイン/イギリスの写真家です。写真は独学で身に付けました。スペインで育ち、現在はイギリスのロンドンを拠点に活動しています。ファッション、ポートレイト、ライフスタイルをテーマにした写真、スタイリング、アートディレクションなどのクリエイティブな経験があります。
Shingi Rice氏は、自分の周囲で、表現の誤りや文化的アイデンティティの欠如を目にしてきたため、有色人種、特に黒人女性、LGBTQ+のコミュニティ、プラスサイズモデル、障がいを持つ人々、熟年モデルを表現することの重要性を強調した、美しい画像の制作に専念することにしました。
同氏のプロジェクトは、同性愛に焦点を当てています。モデルへのインタビューやドキュメンタリー要素を取り入れた肖像写真は、ファッションの美学に対する意識も高めてくれます。「私が所属するコミュニティはさまざまなアイデンティティが身を隠すように共存しています。私は、そんなコミュニティに対する変化や帰属感を見たいという人々の観点から個人を撮影しています」と同氏は述べています。
_多様性、個性、そして現代的なビジュアルの創り手を私たちは応援します。_Adobe Stockでは皆様からの作品も受け付けております。コントリビュータープログラムの詳細はこちらをご覧ください。
この記事は2022年1月10日に Irene Malatesta により作成&公開された Adobe Stock Artist Development Fund congratulates our final 2021 recipients の抄訳です。