「Working Parent Network」発足者に聞く。誰もが働きやすい社会を作るためのコミュニティの意義

アドビには、「すべての社員にとって働きやすい環境を生み出す」ということを第一に考えるカルチャーがあります。2022年版日本の「働きがいのある会社」(Great Place To Work)においては、6年連続で「ベストカンパニー」に選ばれるとともに、中規模部門で11位に選出されました。(詳細はこちら ) この順位に裏打ちされるように、アドビには、社員のエンゲージメント向上を支援する環境が整っています。

その一つが、従業員によるクラブ活動の支援です。

アドビでは、従業員によるクラブ活動の支援を行っています。公認されたクラブ活動は、アドビより活動費用の支援やスペースの利用許可などを受けられます。現在、テニス、登山、フットサル、ヨガなど様々なクラブ活動があり、従業員のコミュニケーション促進、リフレッシュ、健康増進など、様々な効果を発揮しています。

今回は、そんなクラブ活動の一つである「Working Parent Network」を主催する松本さんにクラブ発足の経緯や活動内容についてお話をうかがいました。松本さんは現在、9歳と4歳のお子さんをお持ちです。

■出産後に様々な悩みが。相談できる仲間を見つけたくてクラブを発足

「Working Parent Network」の前身にあたる「Working Mother Network」が発足したのは、2012年のこと。松本さんの第一子が1歳になるころでした。

「出産後6ヶ月で復職しましたが、職場で搾乳をしたりそれを保管する場所に困ったりと、以前は感じたことがなかった悩みにぶつかるようになりました。もちろん、プライベートでも、赤ちゃんが生まれるとこんなに人生が変わるのかと自分で驚くくらい、ライフスタイルや考え方が変わりました。」(松本さん)

しかし、当時のアドビでは子を持つ親同士のコミュニティはありませんでしたし、部署が違うメンバーとは、仕事を一緒にする機会があっても、結婚しているのか、子供はいるのかといったプライベートな情報はまったくわからない状態でした。

「子育てに関する困り事や悩みを相談したり、情報交換したりできる場を設けたいと思って、Working Mother Networkを始めました。Motherにしたのは、搾乳の問題など女性ならではの悩みがあったからです。」(松本さん)

子どもが成長するに連れて、保育所の入園、習い事選び、進学など悩みの種類が変わってきますが、先輩ママのやり方を教えてもらったり、同じ年齢の子を持つ親同士でフランクに社内のランチルームなどで話したりするような場になっています。

■男性も参加しやすいように、Working Parent Networkに変更

活動を続ける中で、5年前に「父親も育児や家庭に関する悩み相談がしたい」という話を聞いて、会のあり方をメンバーで再検討することになりました。

「Working Mother、Working Woman、Working Parentなど複数の候補を出して、『Womanだとキャリアアップの視点が入り過ぎて、キャリアセントリックな話以外の日常の話題が排除されてしまいそう』、『Motherだと女性ならではの相談がしやすい』など、それぞれのメリットデメリットを部員たちで話し合いました。結果、『ママとパパの双方の視点を共有して夫婦の価値観を話し合う場としても活かせる』という総意を得て、『Working Parent Network』に変更しました。」(松本氏)

現在のメンバー45名中、10名ほどの男性社員が参加しています。これから親になる人、出産直後の人、子どもが大学卒業する人など、お子さんの年齢の幅も広がっています。

Working Parent Networkでは、主に次のような活動が行われています。

・カジュアル座談会(月に1−2回):ランチルームでメンバーが気兼ねなく相談しあう会

・外部講師を招いた勉強会(四半期に1回):子育ての専門家にテーマについて講演してもらい、ワークショップを行う

・ペアレンティングの関連書籍、雑誌の購入(四半期に1回):購入した本は、ランチルームに置き、部員以外も読めるようにしている

大学生のお子さんを持つ社員による「思春期に備える子育て講座」を開催したこともあります。プロではありませんが、自身の経験をざっくばらんに話して、気軽に悩みを共有できるような場となりました。勉強会のテーマは、四半期に1回メンバーにアンケートをとってニーズを聞いて決めているそうです。

「コロナ禍においては、外部講師を招いてオンラインで講座を開きました。ただ、オフィスで開催したときは、お弁当を配って食べながら受講したり、ワークショップで講師に気軽に質問したり、インタラクティブな活動ができていましたが、オンラインではやりにくくなってしまいました。そこで、外部講師に個別カウンセリングをお願いできるようにしました。」(松本さん)

また、コロナ禍ならではのテーマでの講演も行いました。アドビでは、2020年3月から感染リスクを鑑みてグローバルで在宅勤務を基本としていますが、緊急事態宣言中はお子さんも学校に行けない場合があり、家の中での仕事と子育ての両立に悩む方も多くいます。そこで断捨離を含めたライフオーガナイズの考えを伝えるセミナーを実施したところ、好評でした。

「私自身、お片付けセミナーのようなことをイメージしていましたが、自分のこれからの人生を含めて何がしたいかを考えて、家の整理や設計をしていこうという話で、とても参考になりました。

最初は赤ちゃんのお世話が大きなトピックでしたが、今後は介護の問題も出てくるでしょう。メンバーや時代のニーズにあわせて、テーマを考えていきたいです。女性も男性も、子どもがいて働いて生活するという中で、諸先輩がどうやって課題を乗り越えてきたのか、知見を共有したり、同じ立場の者同士で気軽に相談しあえる会を続けたいです。メンバーに育児カウンセリングの資格を取得した人がいるので、その人を囲んで相談するような機会も作れればいいですね。」(松本さん)

最近は、同様の活動をしている他社からも活動について質問されることも増えてきたと松本さんは話します。様々なバックグラウンドを持つ人、異なるライフスタイルの人がいる中で、誰もがより働きやすい社会を目指して活動するWorking Parent Networkは、さらに活動の場を広げていきそうです。