100年を超える活字書体「秀英体」を新しいかたちで未来へとつなぐ大日本印刷|Adobe Fontsパートナー紹介04

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大日本印刷(DNP)イメージ

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、動画といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2022年5月現在、600を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、オススメのフォントを紹介していきます。

金属活字は印刷会社の重要な資産だった

今回、紹介するフォントメーカーは大日本印刷(DNP)です。
印刷会社がなぜフォントを出しているの? そう思う人もいるかもしれません。いまでこそパソコンで自由にフォントが使えるようになりましたが、金属活字を使って印刷していた時代、印刷会社にとって文字(活字)は必需品でした。DNPの前身・秀英舎は、創業のころは活字を購入していましたが、印刷物の注文が増えるにつれて、仕事の効率化を図るために自社で活字を作るようになります。こうして生まれた書体は「秀英体」と呼ばれ、その洗練された文字のかたちから、築地体と並ぶ二大活字のひとつとされ、いまなお高い評価を受けています。

DNP活字部門

DNPでは金属活字の鋳造、組版、印刷を100年以上にわたって続けていた(2006年撮影)

DNPでは、明治時代から続いた金属活字の鋳造・組版部門を2003年に閉鎖。しかし、2年後の2005年には現代にふさわしい秀英体のかたちをデジタルフォントで再現していく「平成の大改刻」をスタートしました。
金属活字、写真植字(写植)、CTS(パソコン以前のコンピュータによる組版)、DTP(パソコンによる組版)と、文字組版の環境が移ろいゆくなかで、秀英体もそのかたちを変えていきました。そのなかにはDNPでデジタル化され、社内でのみ使えたものもあれば、写植向けに外部に提供されたものもあります。「平成の大改刻」では過去に作られたすべての秀英体を見つめ直し、これからの時代を担うにふさわしい、秀英体のあるべき姿を模索。7年の歳月をかけて「秀英明朝」「秀英初号明朝」「秀英角ゴシック」「秀英丸ゴシック」を完成させました。

写植時代の秀英体

上:写植時代の秀英初号明朝(写研・秀英明朝 SHM/1981〜)/下:写植を経て現在はデジタルフォントとして利用可能な秀英3号・秀英5号(モリサワ/1984〜)*いずれもライセンス提供

秀英体の再構築は「平成の大改刻」によって生まれた基本書体にとどまらず、「秀英横太明朝」のような用途を拡充する書体や、「秀英四号かな」「秀英四号太かな」「秀英アンチック」のような活字の文字を復刻した書体、「秀英にじみ明朝」のような質感を加えた書体など、いまなお増え続けています。
このうち、Adobe Fontsでは2022年5月現在、11ファミリー・22フォントを利用することができます。

Adobe fontsのDNPのページ

https://fonts.adobe.com/foundries/dai-nippon-printing

100年を超える伝統、長い時のなかで洗練されてきた「秀英体」

DNPの書体ラインナップを紹介しましょう。
「秀英明朝」は現在の秀英体の核とも言える書体です。
金属活字の四号をベースに現代向けにアレンジが施されており、本文を落ち着きのある、格調高い雰囲気に仕上げることができます。ウェイトバリエーションはL・M・Bの3種類。たとえば本文をL、小見出しをBにすれば、秀英体でイメージを統一することも可能です。
秀英明朝 Lには、活版印刷ならではの紙とインキの質感を再現した「秀英にじみ明朝」、M・Bには明朝体の細い横画を太くすることでスクリーンメディアに最適化した「秀英横太明朝」も用意されています。

秀英明朝
秀英にじみ明朝

DNP 秀英明朝 Pr6N https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-mincho-pr6n 左下:DNP 秀英にじみ明朝 Std https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-nmincho-std

「秀英初号明朝」は秀英体の金属活字のなかでもっとも大きい、初号活字の文字をベースに作られた書体です。ダイナミックな筆の動きを感じさせる力強い文字のかたちが特徴で、写植の時代にも多くのデザイナーに支持されてきました。シャープな輪郭の秀英初号明朝に加え、活版印刷の質感を再現した「秀英にじみ初号明朝」も用意されています。
下の見本は左から、DNP発行『活版のしおり』より初号明朝、写研・秀英明朝 SHM、DNP 秀英初号明朝、DNP 秀英にじみ初号明朝です。印字手法が変わっても、変わることのない、芯のある優雅さを感じることができるのではないでしょうか。

秀英初号明朝
秀英にじみ初号明朝

DNP 秀英初号明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-shogomincho-std DNP 秀英にじみ初号明朝 https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-nshogomincho-std

秀英体シリーズのゴシック体には、2種類のかなバリエーションがあり、それぞれ「秀英角ゴシック 金」「秀英角ゴシック 銀」と名付けられています(漢字・欧文は共通)。
「秀英角ゴシック 金」はCTS時代に作られた「秀英角ゴシック」が持つやさしい骨格を生かして設計された書体です。ゆったりと描かれた視認性にすぐれるかなは、横組みの本文にも最適で、クラシックなものから現代的なデザインまで幅広く活用できます。
「秀英角ゴシック 銀」は秀英明朝 Lの骨格をゴシック体としてアレンジしたもので、筆の動きを感じさせるかなの表情は特に縦組みで高い可読性を発揮します。いずれもL・M・Bの3ウェイトを組み合わせることで、本文から見出しまで幅広い活用ができます。

秀英角ゴシック金・銀

左:DNP 秀英角ゴシック金 https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-gothic-kin-std 右:DNP 秀英角ゴシック銀 https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-gothic-gin-std

「秀英丸ゴシック」は「平成の大改刻」で生まれた秀英体シリーズ初となる丸ゴシック体です。
漢字は秀英明朝 Lをベースに、かなは既存の角ゴシック体のふところを絞るように設計されています。秀英体らしいたたずまいの漢字に、こぶりなかなが加わることで、クセのないやさしい書体に仕上がっています。
数ある丸ゴシック体のなかでもあらゆるデザインに使える汎用性の高さを備えており、デザインの現場でも非常に高い人気を誇ります。ウェイトバリエーションはLとBの2種類が用意されています。

秀英丸ゴシック

DNP 秀英丸ゴシック https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-mgothic-std

「秀英アンチック」は、明朝体のかなにインパクトを持たせた「太仮名」をベースに作られた書体です。マンガの吹き出しではゴシック体の漢字と組み合わせて使われることが多く、Adobe Fontsで利用できる「秀英アンチック」も、漢字には秀英角ゴシック Bが組み合わされています。
「秀英四号かな」は、秀英明朝の源流と言える四号のかなを忠実に再現したかな書体で、秀英明朝よりもクラシックな印象を与えることができます(漢字は秀英明朝 M)。
「秀英四号太かな」は、活字時代にかなのバリエーションとして用意されていた太仮名を復刻したものです(漢字は秀英初号明朝)。金属活字時代は小さい活字は細く、大きい活字は太くデザインされるのが一般的でしたが、秀英体では小さい活字でも太い文字を用意することで、小見出しや文字の強調に対応していました。秀英四号かなとも秀英初号明朝のかなとも異なる、独特の筆遣いを持つ「秀英四号太かな」は活字書体として受け継がれる秀英体ならではのアプローチで生まれた書体と言えるでしょう。

「秀英アンチック」「秀英四号かな」「秀英四号太かな」

左:DNP 秀英四号太かな Std https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-4gob-std  中:DNP 秀英四号かな Std https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-4go-std  右:DNP 秀英アンチック Std https://fonts.adobe.com/fonts/dnp-shuei-anti-std

印刷体験もできる! 市谷の杜 本と活字館
DNPが運営する「市谷の杜 本と活字館」では、活版印刷と本作りをテーマにさまざまな展示を行なっています。秀英体の活字や原図、当時使われていた印刷設備を見ることができるほか、活版印刷の体験も可能。デザイナーや文字好きにはたまらないスポットになっています(要事前予約)。

市谷の杜 本と活字館

レトロ、クラシックで力強い。活字から生まれたフォントパック

長い歴史のなかで磨き上げられてきたDNPの秀英体シリーズ。
今回は、このうちレトロでクラシックな印象を与える力強い書体をフォントパックとしてまとめました。収録書体はデザインにインパクトがほしい、変化を与えたい、テクスチャ感を加えたい……そうしたときにピッタリなものばかり。秀英体シリーズのうち、ベーシックな明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体を中心に使ってきた人にこそ最適なラインナップになっています。

Adobe Fontsでフォントパック「レトロで力強い活字書体パック」を見る
https://fonts.adobe.com/collections/retro-powerful

DNPフォントパック

Adobe Fontsを無料で試してみる
https://fonts.adobe.com/

Adobe Fontsで大日本印刷(DNP)のフォントを見る
https://fonts.adobe.com/foundries/dai-nippon-printing

大日本印刷(DNP)
web|https://www.dnp.co.jp/