教育機関のデジタルトランスフォーメーション:現在と今後の展開
デジタルトランスフォーメーションは小中高等学校と大学等の高等教育機関の両方でますます関心が高まっています。この考え方は多くの教育機関で既に浸透していましたが、最近では変化が見られ、デジタル署名の導入や児童・生徒・学生関連情報システムの改善などの施策にさらに価値を見出す教職員の方が増えてきております。
現在、デジタルトランスフォーメーションが重要であると同意している教職員は小中高等学校で65%、高等教育機関ではさらに高く77%となっています。
その結果、学校では教室中心の取り組みとバックオフィスの校務改善の両方で大きな進歩を遂げています。デジタルトランスフォーメーションの需要の背景には、情報へのアクセスの必要性が挙げられます。
デジタルトランスフォーメーションが進むことで校務効率の向上やデータ精度の向上など様々なメリットが得られますし、今が教育機関にとってデジタルトランスフォーメーションに全力で取り組む決定的なチャンスと言えるでしょう。現在の状況と今後の展開を考察します。
教育界のデジタルトランスフォーメーションとは
2021年9月、アドビはHotwireに委託して、小中高等学校から高等教育機関の200人以上の教育関係者を対象に、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みに対する認識と進捗状況を明確に理解することを目的とした調査をおこないました。その結果、教育関係者はデジタルテクノロジーを導入する重要性を明確に理解し、優先度を高めていることがわかりました。
この調査では、デジタルトランスフォーメーションを「教育機関の校務と戦略的方向性を変革する、人材とテクノロジーによる協調的移行」と定義しています。調査の結果、以下の大きな傾向が見られました。デジタルトランスフォーメーションが非常に重要であると回答した教職員は、小中高等学校で実に65%に達し、高等教育機関ではさらに高い77%となっています。
デジタルトランスフォーメーションを実現するには、ペーパーレス化に取り組むことが重要です。教育関係者の74%が重要だと考えています。米国の教育機関では1週間に平均85,000枚の署名文書を処理していることを考えれば、これは当然と言えるでしょう。その上、教育機関の35%は今後18~21か月間に文書量が増えると予想しています。米国の教育機関では、時間がかかり誤りが生じやすい紙ベースの作業比率が77%にのぼるため、これは深刻な問題です。
明るいきざしとしては、多くの学校で、バックオフィスと教室の両方でデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みが始まっています。この調査では平均33%の教育機関が紙のフォームをデジタル化し、26%が事務処理やワークフローを自動化していることがわかりました。また、25%がペンによる署名をデジタル署名に転換しています。
教室でのアクセスの必要性
生徒や学生が卒業後のキャリアで成功するには、強力な技術的リテラシーが必要です。つまり、教師が自ら模範を示すことで、テクノロジーを教室に行き渡らせる必要があります。授業の評価に電子タブレットを使う、書類を電子化して紙の代わりに電子サインを使う、マルチメディアを授業に取り入れるなどの工夫をすることです。
このような教室では生徒や学生の授業環境の質を変えることができるため、42%の教育関係者が所属先でオンラインやリモート学習環境を改善するための投資を促しています。また、32%が児童・生徒・学生関連情報システムの導入と改善に、30%が学習管理システムの強化に投資しています。
このような変化を求めるのは、効率への影響が測定値として目に見えるからです。アンケートの回答には様々なメリットが挙げられていますが、50%が「情報へのアクセスが容易」を最大の要因としています。僅差の2位が「校務効率」と「時間の節約」で、平均42%の教育関係者が重要なメリットであると回答しました。
また、教育関係者の35%が「データ精度の向上」を挙げ、27%が「生徒や学生の成績向上」、「意思決定の改善」を挙げています。そして、21%がデジタルトランスフォーメーションによって教職員の「生徒や学生のための時間が増える」ことを評価しました。
アドビの電子サインが学校のサステナブル化に貢献
教育関係者は様々な方法でペーパーレス化を進めています。例えば、多くの人がAdobe Scanを使って、紙の印刷物から複数ページのデジタルワークシートを作成しています。また、生徒や学生はAdobe Scanを使って、手書きした提出物をスマホのカメラでスキャンして提出することができます。これにより、昨年のリモート学習環境からの移行がスムーズになりました。
また、事務局もデジタル文書を活用できます。例えば、Adobe Acrobat Signを使って入学手続きを効率化することもできます。保護者の同意書や覚え書を簡単にデジタル化でき、事務の無駄を省くことができます。また、小中高等学校の保護者が遠隔でフォームに電子サインを追加できれば、学校は時間と紙を節約でき、保護者が学校に車で出向く必要もなくなるため、二酸化炭素排出量の削減にもつながります。
小さな変化の積み重ねが、驚くほど大きな成果につながります。フォームと署名をデジタルに移行すると、学校は生徒1,000人あたり平均約5,790リットルの水、242キロの木材、534キロワット時のエネルギー、38キロの廃棄物、584キロの二酸化炭素を節約できます(節約額をご確認いただけます。計算ツールをご利用ください)
教育環境のペーパーレス化に向けて
教育関係者は、今後ペーパーレス環境がさらに重要になると予想しています。つまり、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを今から進めることが重要です。文書の送信、署名、管理の点で特にペーパーレス化の重要性が顕著です。77%以上がこの需要は過去12か月間に加速したと回答。85%が今後5年以上にわたって増大を続けると予想しています。
ペーパーレス化を阻む壁については、存在することは否めないものの、技術的なハードルよりも、教職員関連の課題を一番に挙げています。しかしそのような課題は、ペーパーレス化の導入支援と加速をおこなう人材を拡充するための学習機会を設けることで克服できます。専門能力開発やチェンジマネジメント研修、ツールの集約はすべて、役立つ戦術と考えられます。
教育機関がペーパーレス化を進めるには、主に5つの課題があります。まず、教育関係者の29%が、教職員の賛同を得るのが難しいと回答しています。次に、24%が、スタッフがテクノロジーを利用できないことを挙げています。3番目に、22%が資金不足を指摘しています。4番目に、21%が導入プロセスに問題があると指摘しています。そして5番目に、21%が支援に特化したITリソースの不足を指摘しています。
教育現場のペーパーレス化を進めるにあたり、課題がある場合、知名度、信頼性、安全性が揃ったソリューションであれば、教職員からの賛同を得やすくなります。調査対象の回答者のうち、実に70%がAdobe Sign(現Acrobat Sign)を知っていると回答しています。
電子サインは、予測しにくい今日の教育界に強力な回復力と柔軟性をもたらすものです。デジタル署名があれば、天候や健康上の緊急時などにも臨機応変に対応でき、一貫したワークフローを保護できます。実際、テクノロジーアクセスを標準化するためには、電子サインなどのデジタルサービスを利用できることが重要な要素になります。これがあれば、あらゆる教職員や児童・生徒・学生が作業に必要なリソースに安全にアクセスできるからです。
アドビが教育機関のデジタルトランスフォーメーションの実現をサポートします。アドビ教育機関向けサイトをご覧ください。