オンラインの顧客を魅了するコンセプトストアを Adobe Substance 3D でデザインする手順

3D デザインはここ数年にわたって急成長を遂げている分野で、2022 年の主要トレンドのひとつと目されています。3D テクノロジーは、製品開発、マーケティングキャンペーン、没入型 e コマース体験などにますます利用されるようになっており、最先端の 3D デザイン作成に必要なツールは、これまで以上に身近で手頃になっています。

アドビは、3D 分野の経験の有無にかかわらず、すべてのクリエイターが 3D でデザインできる環境の実現を目標に掲げています。それが Adobe Substance 3D Collection として、相互に連携する強力なツールやサービスの包括的なスイートを発表した理由です。2021 年 6 月の追加アップデートでは、新機能の一部として Substance 3D Assets に約 2,200 のモデルを追加し、提供済みの 8,900 以上のマテリアルを補完しました。これらの新しいアセットの大半は、インテリアデザイン、建築、リテールを 3D で演出するクリエイターの支援を目的に、アドビと専門のパートナーとの緊密な連携により作成されたものです。

新規追加された 3D モデルやマテリアルの汎用性、そして Substance 3D がアーティストのワークフローを効率化できることを実際に示すため、アドビは Daniel Margunato にコンタクトをとり、新規追加されたアセットを使用して本物の写真のように見えるコンセプトストアをデザインするよう依頼しました。Margunato は、建築のビジュアライゼーションを専門とするクリエイティブスタジオ Oneblock.city のリードアーティストで、共同設立者でもあります。

https://cloud.3dvista.com/hosting/7214230/0/index.htm

Daniel Margunato がデザインしたコンセプトストアの完成した 360 度ビュー。

構築済みモデルの読み込みとシーンへのテクスチャリング

アドビからの Margunato への具体的な依頼は次のようなものでした。現実世界に存在していそうな高級ショールームを Substance の 3D アセットを使用して作成すること。そのショールームでは、オンラインの利用者が商品をカスタマイズできること。つまり、たとえば靴を選んだなら、レザーなど数種類の仕上げから選択できるといったように、ユーザーが好みの仕様を選べる仮想空間の構築です。

まず Margunato は Substance チームと共同でムードボードを作成し、カラーパレット及びマテリアルを定義しました。

「今回、主要な課題になったのは、展示されている商品が未完成に見えるようにしながらも、一方では魅力的にすることでした」と Margunato は説明します。「このプロジェクトのそもそもの意義は、アセットの品質と汎用性を紹介することです。そのため、主役であるアセットが質感がないかのように見えるのは好ましくありませんでした。しかし、置かれているアセットをカスタマイズできることも伝える必要があります。そこで、顧客の興味を刺激するためのものと、特別な質感を持たないカスタマイズ用のものに商品を分け、目的別にカスタマイズすることにしました」

Margunato は、Substance 3D Asset ライブラリから構築済みのモデル(服、靴、アクセサリーなど)を選び、Substance 3D Painter を使って主役のアセットに質感を与えました。その他のアセットは Substance 3D Asset から直接ドラッグ&ドロップしただけです。一部の要素(カーテン、中央の台、柱など)は、主役のアセットを引き立てるためだけに必要とされたものだったため、細かい質感の調整は不要でした。とはいっても、シーン全体を本物らしく見せる上で重要な役割を果たす要素として、そのクオリティはやはり重要でした。

「制作作業はとても素早く進みました」と Margunato は振り返ります。「Substance 3D Assets のモデルは、非常に簡単に使用できることが明確に示されたと思います。モデルは細部までつくり込まれ、テクスチャの無い状態です。つまり、すぐに質感を設定し始められます。特に準備をしなくても、Substance 3D Painter で開けばすぐに描画を始められるため、迅速に修正を繰り返すことができました。主役のアセットを拡大した時も、モデルの UV マップを少し調整しただけです」

精密で緻密なディテールを加える

e コマース体験では、商品の拡大画像が特に効果的です。そこで Margunato は、シーン中央に展示されている商品を、できるだけリアルに近づける作業に取り組みました。

彼は、Substance 3D Painter のディスプレイスメントを利用して、靴のゴム底に精密なディテールを加え、バッグのモデルに高級感を与えました。この作業手順は、Margunato に大きな柔軟性を提供するものでした。ディテールを調整しなければならなくなったとき、必要なのは、適切なマスクを編集することだけです。

Margunato は、靴の細かなステッチやバッグのラベルも Painter で作成しました。バッグのパッドやレザー素材はどちらも Painter で作成されたスマートマテリアルです。そのため他の 3D モデルに自由に適用でき、一貫性のあるコレクションを簡単につくれます。

ドレスを扱う際、Margunato は動きのある感覚を表現したいと考えていましたが、オリジナルのモデルは、彼のデザインに合わせるにはあまりに静的な印象でした。そのため、ドレスをよりダイナミックにするためのシンプルなワークフローが追加されました。まず、アンラップ機能を使って縫製パターンを抽出し、それを Marvelous Designer に読み込みました。次に、Mixamo からダイナミックポジションを持つよう構築されたモデルを選択し、それを Marvelous Designer に読み込んで、その上にドレスを配置しました。最後に Painter を使用して、ドレスの仕上げを行いました。

クリエイティブを自由で柔軟にする Substance 3D

Margunato の完成したコンセプトストアの 360 度レンダリングは、顧客エンゲージメントを高める没入型 e コマース体験の作成に 3D 技術がどのように使えるのかを示す好例です。

この本物の写真のようなシーンを作成するために採用されたワークフローは、Substance 3D Collection がクリエイターに提供する柔軟性を示しています。Substance 3D Asset ライブラリの 2000 以上の新しいモデルとマテリアルは、すぐにテクスチャリングして使用できます。そのため、最初のドラフトから最後のレンダリングに至るまで、クリエイターが 3D リテールの演出に費やす時間とコストが大幅に削減され、アイデアを素早く試したり、アセットをプロジェクトに合うようカスタマイズすることが容易になります。

この生産性の向上は、Substance 3D が他の Adobe Creative Cloud アプリケーションや、3ds Max、Marvelous Designer などの業界をリードする 3D ツールとシームレスに統合されていることによってさらに拡張されます。ツール連携により最先端の 3D デザインの作成に必要なすべてをクリエイターに提供するこのエコシステムは、2022 年にさらに進化して、3D がクリエイティブに持つ意味を変えていくことでしょう。さらに革新的なユースケースを紹介する機会が今から楽しみです。

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Adobe Substance 3D コレクションを使用した最先端の事例に興味のある方は、2021 年 MAX セッション『Substanceを手にしたシューズデザイナーの話(ミズノ株式会社)』をぜひご覧ください。ツールの使い方や制作ワークフローが丁寧に紹介されています。

この記事は Designing a concept store with Adobe Substance 3D(著者: Sebastian Shawの抄訳です