TikTokで200万人以上のフォロワーを獲得し警備業界の採用難を克服。全て内製で動画制作を行うメンバーを支えるAdobe Premiere Pro | 『大京警備保障株式会社』
ショート動画プラットフォーム「TikTok」で企業アカウントながらひたすら面白いことを追求して人気を博しているユニークなアカウントがあります。それが東京都・新宿区に本社を構える警備会社、大京警備保障株式会社です。
このアカウントを立ち上げた櫻井社長は同社が抱えていた若手人材の採用難の打開策として、2020年にTikTokをスタートします。そして開設したその年に驚異のフォロワー数100万人を突破。2年が経過した現在では240万人を超える人気アカウントに成長しています(2022年6月現在)。
警備業界としては珍しいSNSの活用で、採用難の克服に向けての取り組みを行っている大京警備保障株式会社の櫻井大輔社長と撮影から編集までを担っている同社広報部 部長の畠山翔氏に、TikTokのショート動画制作とPremiere Proの活用についてお話を伺いました。
■なぜ採用難の対策として、TikTokを利用しようと思ったのですか?
櫻井大輔社長
櫻井:
そもそも私は知り合いや友人で警備員になりたいという人を見たことがありませんでした。それなら「会社が良くて、そこの仕事がたまたま警備員だった」という会社自体が選択肢になるような状況を作ればよいのではないかと考えたのです。
2019年から会社のブランディング強化に取り組み始めてSNSを運用していく中で、他業種で同じような課題を抱えているTikTokを発見し、警備会社もTikTokを始めてみるべきでは? と思い立ちました。
■アカウント開設時はどんな制作体制で動画を作っていましたか?
櫻井:
私個人としてはTikTokをリリース当初から見ていて馴れていたので、決断後はすぐに会社のTikTokアカウントを作って、社員に「今からこれを撮りますのでよろしくお願いします」と依頼して進めていきました。
もくじ
- 適材適所の制作チームを編成し、無駄のないワークフローを確立
- Premiere Proで作業効率改善、投稿頻度UPし短期間でフォロワー獲得
- TikTokを始めたことによりブランディング強化を達成し、採用難を解消
適材適所の制作チームを編成し、無駄のないワークフローを確立
櫻井:
警備業をしながらの動画制作になるので、いかに時間的なコストを減らすかを考える必要があって、自ら試行錯誤の末、極力工数を割かない方法にたどり着きました。
現在は週5本くらいのペースで公開していますが本業のピークタイムは避けて撮影をしなければならないので、なるべくアイデアをまとめて、1週間分ないし2週間分を1日で撮るようにしています。
現在、制作チームは、私と畠山氏ともう1人の編集担当の3人体制で編成しています。主に私が企画を担当し、カメラマン兼ディレクションのような立ち位置を畠山氏が担当。撮影したものを編集担当に渡して仕上げるというワークフローが構築しています。
本業を疎かにしないためには分担は必須で、適材適所でやっていますね
法人向けビジネスNo.2フォロワー数のTikTokアカウント
■企画を考えるときに気をつけていることはありますか?
櫻井:
社長がTikTokで目立っていては「遊んでいる」と見なされて怒られるだろうと思っていましたが、意外と「どんどん社長も出してほしい」という声がありました。ただ、まじめなことを言う社長系のコンテンツは飽和状態ですし、社長って一人だとふざけられないのですよね。だから我々がこだわっていることは、コンプライアンスやハラスメントを考慮した上で、部下が上司に何かを行うというネタづくりを心がけています。
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Premiere Proで作業効率改善、投稿頻度UPし短期間でフォロワー獲得
■Premiere Proを導入した理由を教えてください
櫻井:
現在は制作チームが編成されていますが、アカウント開設当初は私が1人で撮影から編集までをスマートフォン上のアプリで行っていました。ところが表現したいことがどんどん増えてくるにつれ、作業の負担が大きくなりました。
スマートフォンでの動画編集は手軽にできるメリットはありますが、編集作業の効率化を考えてPremiere Proの導入を決めました。導入時期は2020年9月で、TikTokを始めてからは約半年が経過していました。
■Premiere Proを初めて使ったときの印象はいかがでしたか?
櫻井:
音楽制作を趣味でやっていたというのもあるかもしれませんが、初めてでも使いやすかったですね。
編集のスピードはスマートフォンと比べてものすごく速くなりました。動画のレイヤー(トラック)が画面上で全部見えるので作業効率が格段に上がります。
私の場合は指も太いので、スマートフォンの細かい操作が難しかったのですが、Premiere Proにしてからはそういうストレスからも解放されましたね。
畠山:
私もまったく使った経験がありませんでしたが、PhotoshopやIllustratorなどアドビ製品を昔少し使っていたからか馴染みやすかったです。
あとはYouTubeやアドビのチュートリアルを見て便利な機能を覚えたりして、1ヶ月も経たずに使えるようになりました。
もう1人の編集担当も以前は別の編集ソフトを使っていましたが、基本の機能は似ているのでPremiere Proへの移行もスムーズでした。
広報部 部長 畠山翔氏
■編集でよく使っている便利な機能はありますか?
畠山:
自分の使いやすいショートカットを当てられるのがいいですよね。カットして削除して詰めるという一連の作業(リップル削除)はショートカットを使うことで作業効率がかなり上がります。
あと、クリップの端をドラッグするだけで自動的に速度を合わせられる「レート調整ツール」という機能もよく使っています。
TikTokの楽曲は秒数が決まっているのでこの機能はとても便利です。スマートフォンでは細かい調整ができなかったので作業時間の短縮やクオリティーアップに繋がります。
またテロップをPhotoshopで作ってテンプレート化しています。Photoshopの拡張子のままPremiere Proに読み込むことができるので、その辺も非常に便利ですね。
■TikTokの動画編集で重要な音やテロップについてはいかがですか?
畠山:
テロップ入れはPremiere Proだとタイムライン上でできるので1コマ単位で調整しやすいですよね。
TikTokでは、音に合わせて画面を切り替えていく音ハメ動画がけっこう多く、それをスマートフォン上で指で操作するとすごく時間がかかりますが、PCなら即座にできます。
さらにPremiere Proなら音も細かく1コマ単位で動かすことができるのでぴったり音を合わせることができます。音をピタッとはめて気持ちのよい動画を作るとなると、Premiere Proのほうがいいですよね。操作性の面では、もうスマートフォンでの操作には戻れないと思います。
あとはキーフレームなどを使用してPremiere Proで動きをつけたりもします。ステレオタイプではない自分たちの思い通りの動画が作れるようになるので、動画の資産としての価値は上がると思いますね。
■Premiere Proの導入によりTikTokを運用する上での作業効率に変化はありましたか。
櫻井:
Premiere Proを入れてから作業効率が大幅に上がりました。以前は会社で撮影して、それから家に帰っても2〜3時間スマホで編集していましたが、いまでは業務の時間内で終わらせることができています。コンスタントに動画を上げられるようになりましたし、100倍早くなったと言っても過言じゃないと思いますね(笑)。
畠山:
素材が1時間半とか2時間くらいのものを1分に縮めたり、膨大なカット数をスマートフォンで編集したら何日かかるんだというものが1日でできてしまうので、相当早くなってます。投稿本数が増えたおかげで、フォロワー増加につながったとも言えると思います。
Premiere Pro導入により作業効率を大幅に改善
■編集する上で、再生数を伸ばすために気をつけていることはありますか?
櫻井:
最初の1秒ですね。
TikTokはどんどん映像をスクロールされてしまうので、止まって視聴してくれるかどうか判断する秒数が1秒という感覚で制作しています。その1秒の間に音やテロップで惹きつけないといけないので、インパクトのあるテロップやキーワードを考えています。
TikTokを始めたことによりブランディング強化を達成し、採用難を解消
■もともとの目的である会社のブランディング強化や採用での改善は達成できましたか?
櫻井:
まだ経過中ではありますが、今までは応募者の70〜80%の方が50〜60代だったのが逆転して、70〜80%の方が20〜30代になっていますので、それはかなりの成果だと思います。
畠山:
あとは小さい会社ながら部署ごとに多少のコミュニケーション不足を感じていましたが、アップされた動画の話題などができるので、社内コミュニケーションの活性化につながっていると思います。
櫻井:
取引先の方から、いつも見ていますという反応もいただけるようになりました。円滑なコミュニケーションに繋がるのは大きなメリットです。
また、事業承継をした後も警備会社としての質を維持するために、バズらせて外部から注目されている企業にすることで内部の意欲向上を図ることも私の中では目標の1つでした。そういう観点で警備としての精度が上がっていることもブランディング強化の成果と言えるかもしれません。
ブランディング強化で採用難を克服
■今後の展望についてお聞かせいただけますか。
櫻井:
ブランディング強化が実証されたことにより、警備以外の新規の案件にも携わっています。例えば大手の日用品メーカーや飲食などのPR案件のほか、現在はTikTokのコンサル業も行っており今後はクリエイター向けのスクールや企業インフルエンサーが所属できるようなMCN(マルチチャンネルネットワーク)も考えているところです。
■SNSへの参入を迷われている企業さんは多いと思いますが、なにかアドバイスをいただけますか。
櫻井:
企業のいろいろなものを天秤にかけたときにやるべきかやらないべきかの判断はすぐには見い出せないと思いますが、ファンになっていただくきっかけづくりを直接できる場なので、あとは代表者の決断だけだと思います。
初めから炎上のリスクを考える人もいますが、そもそもバズってなければ何の影響もないですからね(笑)。未知の領域に一歩踏み出さないと成功はないですから、我々はやってよかったと思っています。
櫻井社長がTikTokコンサルタントに?!進化を続ける大京警備保障