感覚だけに頼らないデザインチームの成長を支援する方法とは? | Design Leaders Collective
Design Leaders Collectiveは2022年4月からスタートしたエンタープライズで働くデザイナー向けのマンスリーイベントです。スタートアップ、制作会社、代理店など組織体制や規模によって抱える課題は様々。本イベントでは、エンタープライズで働くデザイナーが直面する課題の情報共有とディスカッションを目的としています。
6月のイベントでは参加者の意見を交えながら、マネージャーやリーダーの視点からデザインチームの状態をどう判断するか情報交換しました。
もくじ
- デザイナーの評価は難しい
- 成長のための計測をする
デザイナーの評価は難しい
5月の Design Leaders Collective ではデザインフィードバックがテーマでしたが、デザインの評価はどうしても明文化が難しい感覚的なところが含まれます。KPI(重要業績評価指標)やユーザビリティテストの結果など客観的にデザインを評価する手段はあるものの、それだけでは良し悪しの判断はできません。比較検討した結果、「なんかこちらのほうがシックリする」といった感覚が決断に繋がることもあります。
フィードバックと同様、デザインチームとその一員として働くデザイナーの評価は簡単ではありません。「バナー制作に3時間かかっている」と計測することは可能ですが、短い時間で作れたら良いとは言い切れません(逆も然りですが)。より短い時間でたくさんモノを作るといった生産性だけで評価すると質の担保が難しくなるだけでなく、現場で働くデザイナーのモチベーションも落ちてしまいます。
どうしても感覚的なところを省くことができないので、「喜ばれる」「褒められる」といったフィードバックが上手くいっているかどうかの判断基準になりがちです。「チームの成功をどう判断していますか?」といった問いを本イベントでもしてみましたが、何人かはそうした周りからの声を頼りにしていました。
成功の判断基準は KPIのようなビジネスに直結した指標から、「喜んでもらう」といった感覚的なものまで様々な意見が出ました。
もちろん、依頼主やユーザーの喜びの声は成功判断のひとつにはなりますし、何よりもデザイナーのモチベーションアップに繋がります。しかし、こうしたフィードバックは下記の理由からチームの成長に繋がらない場合があります。
- 比較ができない(前回と今回の違いが分かりにくい)
- 再現性がない(フィードバックからの学びが少ない)
- 「喜んでいる」の理由が人によって異なる
感覚だけではチームとしてうまくいっているか判断がつかないので、KPIやCVR(コンバージョン率)といった数値に着目することはできますが、これにも課題があります。数値目標の達成はデザインだけでなく、企画、マーケティング、エンジニアリングなど様々な方が関わったことによる結果なので「この部分がデザインされていたから数値にこれだけ貢献した」と断言できません。
成果物の量が増えれば良いとは言い切れないですし、感覚的なところだけだとステークホルダーをはじめとした周りに対してデザインチームが上手くいっていることを伝えるのは難しくなります。
成長のための計測をする
デザインへの理解が乏しい方が計測をしてしまうと、生産性 (作った量やスピード)に評価が偏ってしまう可能性があります。生産性を上げることを目的にしたチームだと、ユーザー課題の発見と解決方法の模索といった本来の仕事から遠ざかるので、デザインマネージャーが評価の判断基準の設定などオーナーシップをもつ必要があります。
計測することは生産性を測ることだけが目的なのかといえば、そんなことはありません。チームがどれだけ成長したか分かるだけでなく、課題摘出にも役立ちます。重要なのは何のために計測するのか明確にし、デザイナーの理解を得ることです。よりデザイナーひとりひとりが活躍できる場を作るための計測とした上で、下記のような計測方法を紹介しました。
施策理解度調査
戦略、ユーザー課題、成果物の3カテゴリそれぞれどれくらいの理解度があるかアンケート調査。例えば、「ユーザーのニーズ又は課題を理解している」という供述に対して、「強く同意する」から「まったく同意しない」までの5段階評価をしてもらいます。仕事と成果の結びつけ方や施策実施への不安など、アンケートを通して傾向が見つかります。ワークフロー見直しのヒントが見つかるだけでなく、定期的に計測することで理解度にどれだけ変化があったか見えてきます。
プロセス計測
デザインプロセスの各フェイズでどれだけ時間がかかったのか計測します。例えばデザインプロセスに要件定義、情報設計、模索、デザインと4フェイズあった場合、各フェイズにどれだけ時間がかかったか記録してもらいます。遅い、早いといった生産性を測るためではなく、チームメンバーが共通して時間がかかっているところをボトルネックと見なして対策を考えるために使います。
レビュー計測
判断基準を設けた上で画面のレビューを実施します。施策の範囲やユーザーの文脈などで使いやすさの定義が変わる場合があるものの、ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則のように普遍的なチェック項目もあります。こうした判断基準に基づいて何人かがレビューを実施し、課題感を明らかにします。レビューの数が増えてくると、10項目のなかで十分満たされていない項目はどれか傾向も見えてきます。こちらも定期計測することでどれだけユーザービリティに貢献できたか見える化できるようになります。
明文化、具体化するチーム文化を作るためのきっかけにもなります。
デザインは成果物以外の評価が難しい分野ではありますが、そう頻繁に成果物が世に出るわけではありません。何かを作り上げないと評価できない(評価されない)だと成長の実感を得る機会が減りますし、感覚的なところだけだと次に何をすれば成長するかも分かり難いです。
何でも計測すれば良いわけではありませんが、デザインチームの状態とチームとしてどう成長すれば良いか考えるヒントになります。チームメンバーの特徴や性格にもよりますが、チームの評価と比較検討できる計測項目をひとつ持っておくと良いでしょう。