自己表現までの長い道のり イラストレーター:Carina Lindmeier

クレジット:Adobe Stock / Carina Lindmeier

Carina Lindmeierさんは、子供の頃からアーティストが自分の天職であると信じていました。クリエイティブな世界に入るきっかけは広告代理店での仕事でしたが、アドミ業務(事務やサポート業務)を担当していました。

「グラフィックデザインの専門学校を卒業した後に広告代理店へ就職しましたが、イラストレーターやグラフィックデザイナーとしてではなく、プロジェクトマネージャーとして働いていました」

Lindmeierさんはオーストリアのリンツ出身で、カラフルな花やファンタジーの世界、馬などを何時間もかけて描くことが大好きでした。特にディズニーが初期に出した手描きアニメや、1982年の長編アニメ『最後のユニコーン』に大きな影響を受けてきました。

Lindmeierさんにとってアートは子供の頃から日常生活の一部でした。「私の母もとてもクリエイティブな人で、子供の時によく絵を描いていたと聞きました。今は裁縫や手芸などを楽しんでいます。このような環境で育ったため、たくさんのクリエイティブな表現に触れることができました。アート志向は母親譲りだと思います」

クレジット:(左)Adobe Stock / Carina Lindmeier、(右)Adobe Stock / Carina Lindmeier

苦しい時代もあったが、あきらめなかった

Lindmeierさんはグラフィックデザインの専門学校を卒業し、広告業界で仕事を探し始めたものの、自分のクリエイティブな素質を生かせないことに気づきました。

「大手代理店でインターンシップをする機会があり、イラストレーターとして働きたいと会社に伝えました。すると『君には無理だ。私たちが求めるスタイルを持っていない』と言われました。意欲を失い、とても落ち込みました。夢や希望を持ってクリエイティブなキャリアを考えていた矢先に『君では実力不足だ』と言われたので」と当時を振り返ります。

それでもLindmeierさんはプロのイラストレーターになりたいという想いを諦めることができませんでした。すると広告業界でプロジェクトマネージャーとして10年が経った後に転機が訪れました。

「絵を描かなきゃいけないと思ったのです。まるで天からのお告げのようでした。働いていた10年の間は、一本の線すらも描きませんでしたが、再び自分のためだけにスケッチブックを開きました」と彼女は語ります。

Lindmeierさんは自分の作品をソーシャルメディアで投稿し、そこから自身のキャリアをスタートさせました。広告代理店での仕事はやりがいを感じられなかったものの、クライアントサービスで学んだすべてのスキルがフリーのイラストレーターとしての成功に向けて大いに役立ちました。

Left image: woman on horse with a flag. Right image: illustration of a woman in a forest.

クレジット:(左)Adobe Stock / Carina Lindmeier、(右)Adobe Stock / Carina Lindmeier

ついにフリーランスに

商業イラストでは、クライアントが求める絵を描くことが重要です。特定の仕事を引き受けることは、Lindmeierさんにとってアーティストとして自分の声を確立できる良い経験となりました。

「クライアントのニーズに応える、クリエイティブブリーフに関する知識を持つ、といったことは当たり前のことです。この仕事の醍醐味は、新しい視点を見つけること、そしてテーマやトピックを深く掘り下げることだと思います。この数年間で新しいことをたくさん学びました。好奇心が旺盛で自分の仕事に情熱を持っていれば、すべてのプロジェクトが異なるミッションやチャンスとなります。そしてそこから新しいことを学び、成長することができるのです」とLindmeierさんは言います。

Lindmeierさんは練習を兼ねて今でも手でイラストを描くこともありますが、本業はデジタルイラストを専門に、造形的で現代風の作品を手掛けています。明るく生き生きとした女性をモデルにした作品が多く、何層にも重なるテクスチャーやアニメのような動きを表現するライン、ちょっとした不完全さを加えることで、デジタルイラストの中に手作り感を残しながら作品の立体感を演出しています。

Lindmeierさんの努力が報われ、アドビ、Refinery29、Bombay Sapphire、Simon & Schuster、Harper Collins Publishers、Red Bull Media Houseを初めとする大手クライアントから、日常生活を送る女性をモデルとした作品の依頼が多く来るようになりました。Adobe StockのArtist Development Fund(アーティスト開拓ファンド)のために制作した500点の作品では、その多くで女性が描かれ、多様性溢れる生き生きとした作品に仕上がっています。

LindmeierさんはAdobe Stockこう語っています。「自分が持つ女性としてのパワーと強さ、そして創造性を生かした作品を通して、他者の声に意味を持たせるだけでなくその声を表現したいです。お互いを支え合うことで、共に立ち上がり、さらに輝くことができます」

また一体感を大切にするLindmeierさんは、オンラインチュートリアルDomestikaのインストラクターとして、自分のスキルを積極的に共有しています。最初は指導者に恵まれず、くじけそうになった彼女自身の体験があるからこそ、このような優しさや思いやりを持って独立を目指す人たちに対して惜しみなくソートリーダーシップを発揮しています。

クレジット:(左)Adobe Stock / Carina Lindmeier、(右)Adobe Stock / Carina Lindmeier

自分を見つける

Lindmeierさんは、イラストレーターとしての在り方を確立し、今回のテーマである「Celebration of Self(自己を称える)」を表現するうえで Artist Development Fund(アーティスト開拓ファンド)での経験が大いに役立ったと言っています。アイデアが煮詰まった時は、リンツの街を歩く人々を観察し、彼らの日常にある小さな幸せを見つけることでインスピレーションや刺激をもらっています。

Adobe Stockのコンテンツ募集についてもLindmeierさんはこのように語っています。「私の作品は、日常でよく見られる女性や、植物、自然、時には動物などを描くことが多いので、今回のテーマは私にぴったりでした。人生、心の健康、健康的なライフスタイルに焦点を当て、日々の生活の中で見つけた嬉しいことやシンプルでささいな幸せを表現した作品をたくさん作ることは難しくありませんでした」

Adobe Stockのコミッションプロジェクトに向け大量の作品を制作したことは、Lindmeierさんにとって一種の自己再構築にもつながりました。

「数か月という短い期間でたくさんのイラストを描いていると、すべての作品に通じる一本の線が見えてくるんです。例えば、自分のスタイルを発見できるような線です。Adobe Stockのプロジェクトに参加したことで、アーティストとして成長できただけでなく、アートにおける自分の在り方や美学を見つけることができ意味のある経験でした」とLindmeierさんは振り返ります。

さらにLindmeierさんは、自分の作品の中にある「不完全さ」が大切であることを学び、Behanceのプロフィールにあげている過去の作品を「とてもきれい」と評しています。動きを表すラインや手描きらしさを目立たせた過去の作品は、彼女が子供の頃にインスピレーションを受けたアニメーションのスタイルと同じです。このように新たな自分を発見したLindmeierさんは、これまで以上に他者を肯定し、インスピレーションを与える人になることを決意しています。

「メディアを通して様々な女性に力を与え、その声を代弁できる作品を出すことはとても意味があることです。なぜなら、広告代理店で働いたことがありますが、古い体制の中では、変化を生み出すことは難しく、またそういった環境はとても退屈だと学んだからです。人々に声をあげる機会を与えることは、とても重要なことだと思います。もっとたくさんの人にこのメッセージが届けばいいと思います」

Carina Lindmeierさんのアートワークをもっとご覧になりたい方は、Adobe Stockでご確認いただけます。コミッションアーティストやアーティスト開拓ファンドへの応募方法やその他詳細は、Adobe Stock Advocate(Adobe Stock支援プログラム)をご覧ください。

この記事は2022年5月25日にSarah Rose Sharpにより作成&公開されたThe long road home to self-expression with illustrator Carina Lindmeieの抄訳です。