地理学科でクリイエティブな地図制作実習〜ガイドブックと動画制作でアドビ製品を活用

橋の下の海
低い精度で自動的に生成された説明

立正大学地球環境学部地理学科では、実習やフィールドワークを通して実践的な技術を身につけることを重視したカリキュラムが組まれています。同学科准教授原美登里先生による「地図画像処理論および実習」の授業では、企画書作成から調査分析を経てオリジナルの地図・ガイドブックと動画を仕上げるクリエイティブな学修活動が行われ、Illustrator、InDesign、Premiere Proが活用されています。原先生と2021年度に当該授業に参加した学生の皆さんにお話を伺いました。

ICTラボにて、原美登里准教授とゼミの学生の皆さん。(前列右より)柳澤さん、齊藤さん、原田さん、(中列右より)上岡さん、市川さん、箱田さん、小馬谷さん、(後列右より)原美登里准教授、笹本さん

独自の視点でオリジナルのキャンパスマップを作成

原先生の授業で取り組んだのはオリジナルのキャンパスマップとガイドブックの作成です。現3年生(当時2年生)を中心とした35名の受講生が11のグループに分かれ独自のテーマで企画書を作成しました。テーマは他のグループとかぶらないように設定。例えば「自動販売機マップ」「Wi-fi接続状況マップ」「ゴミ箱分布マップ」「学内自給自足マップ」など、地球環境学部が学ぶ広大な熊谷キャンパスで役立つマップのアイデアが並びます。

授業ではまず、グループごとの企画に基づいて実際にキャンパスを歩いて調査し、収集した地理情報の可視化と分析をGIS(Geographic Information System:地理情報システム)の専用ソフトウェアで行いました。次に、これらの調査データをもとにマップやガイドブックの制作に着手。Adobe Illustratorでキャンパスマップを作成し、InDesignでガイドブックに仕上げ、さらにマップに関する情報や制作過程などをPremiere Proで動画にまとめるという非常にクリエイティブな活動に取り組みました。

コンピューターのスクリーンショット
中程度の精度で自動的に生成された説明

学生が制作した授業紹介の動画より

原先生は調査分析とアウトプットを組み合わせた授業のねらいについて次のように語ります。「調査研究をして自己満足で終わるのではなく、それを外に向けて発信することが大事だと思っています。研究者としても、どのような職種につくとしても求められる力ですから、他の人に伝えることを意識して情報提供することを課題にしました」。

授業を受講した学生の皆さんはどのようなことを感じ、どのような変化があったのでしょうか。

苦手意識が「デジタルの方が便利!」に変化

受講生には大学に入るまでPCを触ったことがないなど苦手意識が強い学生もいましたが、実際に地図の制作にIllustratorを使ってみるとその便利さに気づいたそうです。「デジタル関係は得意ではなかったのですが、手書きよりも自由に細かいところまで表現できるということがわかりました。地図の情報を重ね合わせるのにとても便利でした」と話すのは上岡さん。他の学生からも、「デジタルだと消すのも色を付けるのも楽」「絵が苦手なので図を貼りつけることができて表現しやすい」「以前はプレゼンテーションソフトで作っていたのでかなり便利になった」などと次々に利点があがりました。

IllustratorをはじめInDesign、Premiere Proなどのアドビ製品を使ったのは全員が初めてでしたが、原先生が用意したA4で1枚分のマニュアルをもとに次第に使い慣れ、最終的に立派なマップやカタログを仕上げられるまでになりました。なかには自分でアドビの公式動画を見て学んだという学生も。「学生たちの吸収力は素晴らしいので、本当に主要な機能だけ伝えて、それをもとに触ってどんどん覚えていってもらうようにしています。逆に深く先取りして説明しすぎるとそこでつまづいてしまうことも多いので」と原先生。

“わかりやすい“デザインの工夫がグループワークで生まれる

原先生がもうひとつ大切にしているのがグループワークです。「同級生で相談し合いお互いのスキルを共有しながら全員でスキルアップするのが挫折しないひとつの方法だと思っています。また、学生同士で考えることでより良い作品になりますね」。原先生の言葉の通り、グループごとにさまざまな工夫が生まれました。

例えば自動販売機マップを作成したグループの場合、全体マップだけでは同じ建物の違う階に自動販売機があることがわかりづらかったので、ガイドブックにエリア紹介ページを設けて階ごとの詳細なマップを掲載しました。また、個別の紹介ページのレイアウトに統一感を持たせたり、ガイドブックの小口部分にインデックスをつけたりして、情報を見つけやすくするという工夫も。同グループの市川さんは「どうすれば伝わりやすく見やすいものになるのか、普段のレポートなどでも考えるようになりました」と話します。

自動販売機のガイドマップ

情報の受け手の体験を想定したUXの視点も

なかには「熊谷キャンパス内の食べられる食材を見つける」というおもしろいテーマも。橘や鯉、ウシガエルなどの食材について、生息地や植生地、入手難易度などがゲームの攻略本のようなコンセプトで紹介されています。このガイドブックを制作したグループの箱田さんは「老若男女すべての方々に楽しくページをめくってもらえるように、内容を厳選し、写真を多用しました」と話します。

教職課程を受講している箱田さんは、子ども達が楽しい、知りたいと感じる工夫が大切だと考えているといいます。そうした情報の受け手への思いが結果的に、ガイドブックを手にした人のUX(ユーザーエクスペリエンス)を考慮したガイドブックの企画につながったといえるでしょう。

食材を見つけるガイドマップ

受講生の皆さんはデザインの基礎を学んだわけではありませんが、わかりやすさを追求したり、情報の受け手の気持ちを深く考えたりすることで、デザインの基本やUXの視点に自然と気づいている様子です。

クリエイティブスキルが将来へつながる自信に

初めてアドビのツールを触りマップやカタログ、動画を作るまでに至った学生の皆さんに、クリエイティブスキルをつけることの意義や効果について聞いてみました。

齊藤さんは、「初めてでわからないことだらけでしたが、簡単な図形や線の描き方から始めて、慣れるとできることがどんどん増える実感がありました。社会に出ていきなり求められるのではなく授業で触れたことは大きな経験になりました」と話します。原田さんも、「今回基礎を学べたので他の授業の課題作成でも使用できますし、また今後社会に出た時も、図や動画、ガイドブックの作成スキルは武器になると感じます」とプラスに捉えています。現在4年生で実際に就職活動中の柳澤さんは、「アドビを使った制作経験があるということは一つの自己PR力になっています」と実感をこめて話してくれました。

アドビのツールを使い表現力が上がったという実感を話してくれたのは学生の小馬谷さん。「頭の中の考えを具体的な形に表すときに学業においてはもちろんのこと、卒業後もアドビツールが役に立つと思います。発想は手を動かして作業しているうちに出てくるものだと思うので、Illustratorは発想する練習場所のように感じていました。どうしたら人に関心を持ってもらえるかということを意識するようになり、アドビのツールが表現力をつけてくれたと感じています」。小馬谷さんは、会社や製品の良さを伝えるにはパンフレットやポスターなどの内容や印象が重要な役割を持つと感じていて、社会に出てもスキルが活かせると考えています。

また、すでに他の授業などで地図を作る際にIllustratorを使用したことがあるという学生も複数いて、さっそく普段使いのスキルとして活かされている様子です。

原先生は、「アドビのツールを使うスキルを身につけることは、学生の自信につながります」と話し、学生たちが自ら学ぶ姿を見守ります。今後、地域連携の取り組みなどにも広げ、調査分析とアウトプットの両面での学びを推進していく予定です。

学生が制作した授業紹介の動画はこちら