Patrick Masseの作品を通した人間と動物の対話

Image credit: Adobe Stock / Patrick Masse

ザトウクジラのような体重2万7,000キロを超える哺乳類をシンプルで美しく、そして感動的に描写するには、高度なトレーニングを受けたプロフェッショナルなスキルと豊富な経験が求められます。アーティストの感性、アスリートのような肉体、そして科学者のような頭脳を持ち合わせるPatrick Masseさんのような人物が必要です。

記事の目次

  • 紆余曲折な人生
  • 商売道具
  • 写真=生き物との対話
  • 私たちの地球は誰のものなのか?

過去数十年間にわたり、Patrickさんは赤道近くの海の浅瀬、西インド洋のサンゴ礁、北極圏のツンドラ、人里離れた山脈、ユカタン半島のグランセノーテなど世界中を旅しながら、ホオジロザメやマンタからハゲワシやヒグマまであらゆる生き物を記録してきました。

Patrick さんの広告写真ストック写真のポートフォリオは、彼の長年の仕事、巧妙な技術、適応能力の高さ、そして多くの生き物に至近距離で遭遇した賜物です。今回Adobe Stockは、Patrick さんの作品制作のプロセスについて詳しく話を聞いてみました。

Two images of wildlife by Patrick Masse.

クレジット:(左)Adobe Stock / Patrick Masse、(右)Adobe Stock / Patrick Masse

紆余曲折な人生

Patrick さんはイタチザメの写真撮影をするフォトグラファーに至るまでトンガでスキューバダイビングやピレネー山脈でハイキングをする生活の前は、戦闘機のパイロットやダイバーとして活躍していました。

「私はこれまで様々な人生を送ってきました」 と北アフリカの海岸沿いで育ったPatrick さんは言います。銛や水中銃を用いて魚を捕えるスピアフィッシングを楽しんでいましたが、成長するにつれ魚を突くスリルより海の生き物に対する愛情が上回り、彼らを何度も見ていたいと思うようになりました。Patrick さんはこの当時のことを「銛をカメラに持ち替えた出来事」として振り返ります。

カメラを濡らさずに酸素を供給しながら自分の存在を消すスキルを磨いていく中で、興味深い仕事の依頼が入るようになりました。その中の仕事の一つで、バハマでサメの映像を20分間撮影するために、大勢の水中ビデオグラファーと連携したことがありました。「問題は、サメが20分間カメラの前でじっとしてくれないことでした」とPatrick さんは当時を思い出します。この問題を解決するために、撮影スタッフはビデオグラファーの前にサメのエサとなる魚を仕掛けました。この経験は、とっさに状況を判断する力や平常心を保つ方法を学ぶ良い訓練となり、また海の生き物は自由気ままに常に泳ぎ回ることを知る良い機会となりました。

Patrick さんはフリーランスからキャリアを順調に積み重ね、多い時には70人のフォトグラファーを抱える写真エージェンシーを経営するまでになりました。所属しているフォトグラファーと契約してくれそうなお客様に彼らの写真を紹介するなどサポートを惜しみませんでしたが、写真のマーケティングに多くの時間を費やすことで写真を制作する時間が少なくなってしまうことが悩みの種でした。

これが、フリーランスに戻った理由の一つです。Adobe Stockで自分の撮った写真や動画を管理、宣伝、配信できるため、以前よりも写真を撮る時間を確保できるようになりました。「今は撮影に専念して、ビジネスの部分はAdobe Stockに一任しています」とPatrick さんは語ります。

Group of divers looking at tiger shark at bottom of sea, image by Patick Masse.

クレジット:Adobe Stock / Patrick Masse

商売道具

スキューバダイビングや亜寒帯地域でのキャンプは、Jack Londonの小説に出てくるようなロマンチックな冒険をしている気分になりますが、フォトグラファーであるPatrick さんは自然の美しさや神秘、そして多様性を捉えた素晴らしい写真を撮りたいと考えています。

Patrick さんは自身の長いキャリアの中で実践的な撮影テクニックと同様に、照明や光の調整、フレーミング(構図)における美的感覚を常に磨き続けてきました。

例えばレンズであれば、被写体によっては超広角レンズが必要になります。ザトウクジラを撮影する場合、全長15メートル以上の生き物を1枚の写真に収めなくていけません。また、水は空気ほど透明でないため、遠ざかれば遠ざかるほど写真が暗くなってしまいます。そのため、クジラのような大きい被写体を至近距離で撮影し、1枚のフレームに収めることができるのは超広角レンズだけとなります。

一方、ハゲワシ、オオカミ、クマには長焦点レンズが必要です。これらの鳥や動物は非常に鋭い感覚を持ち、用心深いうえ動きも素早いため簡単に見つけることができません。相手が視界に入るまで息を潜めながら野宿して待ち続けます。至近距離で撮影できない鳥や動物が写真の大部分を占めるように撮影するには、長焦点レンズを使用します。

Patrick さんは新しいテクノロジーを試すことが好きで、より軽量で耐久性が高く、万能な撮影機材を常に探し求めています。静止画と動画の両方を高画質で撮影できるカメラが出たことで、これまでにないほど作業効率があがりました。「持ち込む機材の数が格段に少なくなり、持ち運びも楽になりました」 とPatrick さんは語っています。

写真=生き物との対話

日常的にPatrick さんは、自然界の生き物たちに喧騒から遠く離れて生きてほしいと思う反面、時には機械や装置を通して自然に立ち入る行為に対して葛藤を抱えています。動物に普段と変わらず暮らしてほしいと思う反面、自分の存在が動物たちにどのような影響を与えるかを認識しなくてはいけないことに対する葛藤です。

写真撮影は、Patrick さんにとって生き物と対話することを意味します。彼が生涯をかけて記録してきたオオカミやクマ、サメは、Patrick さんが彼らの存在を意識しているのと同じように、彼らもPatrick さんの存在を意識しています。

多くの人がサメのような大型捕食者には近づきたくないと思いますが、何千回も一緒に潜っているPatrick さん曰く「彼らは私たちの存在に気付いている」とのことです。「怖がっても仕方ないんです。でも、注意は必要です。用心するに越したことはありません」とPatrick さんは言います。

適切に行動しないと怖い思いをします。「サメは、誰かがいると近づいて触れようとします。手がないため、鼻先で触れようとするのです。」非常に鋭利な歯は、鼻先からそれほど遠くないところにある幸運なことに、サメが最初に狙うのはカメラであり、サメにとって面白みのない物体のため、触っただけで去ってしまうとのことです。

Patrick さんの最大のスキルは、生き物の心理や自然に対する敬意と理解にあると言えます。彼はすべての野生の生き物との遭遇とその撮影を、狩りのように一瞬のうちに獲物を捕らえるといった単純なものでなく、異なる2種の生き物が交流する機会と捉えています。

エサや回遊ルートを利用して交流するチャンスを増やすこともあれば、イルカの場合であれば遊べるおもちゃをいくつか持っていくこともあります。「海には国境がありません。至るところに生き物が存在します。海の中にいると、彼らがわざわざ会いに来て、一緒に時間を過ごしてくれるんです」

Patrick さんの大好きな思い出に、シュノーケリング中にザトウクジラの親子と一緒に泳いだ話があります。クジラの目が何時間もPatrickさんや他のダイバーたちの後を追っていたそうです。「彼らは私たちと同じように好奇心が旺盛です。両者の間で信頼関係が生まれました」と話してくれます。

Two images of underwater sea life taken by Patrick Masse.

クレジット:(左)Adobe Stock / Patrick Masse、(右)Adobe Stock / Patrick Massev

私たちの地球は誰のものなのか?

ここ最近は多くのクリエイターがそうであるように、Patrickさんも新型コロナウイルスの世界的大流行により、36時間のフライトや窮屈な船旅で世界中を巡っていた生活から、ロックダウンや入国制限などに適応しなければなりませんでした。「以前は太平洋が主な撮影場所だったのですが、コロナ禍により近場で陸生動物を撮影するだけになってしまいました」と彼は言います。

その結果、フィンランドのオオカミやクマ、ピレネー山脈のヒゲハゲタカのような大型の陸生頂点捕食者を対象に絞り撮影するようになりました。Patrickさんは頂点捕食者へのこだわりを、複雑な生態ピラミッドの頂点に位置する生き物への愛着からくるものであると説明します。またこれらの捕食者は、変化する地球に対して最も弱い生き物であるとし、それは「どこかで一つの関係性が崩れると、連鎖的に消滅していくから」だと言います。

Patrickさんは、次の旅行先としてオーストラリアを計画しています。「オーストラリアは、私がプロのフォトグラファーとして足を踏み入れたことのない最後の大陸です。グレートバリアリーフがなくなる前に見ておきたいんです」と言います。しかし同時に、自分が最も慣れ親しんでいるヨーロッパ、特に北欧が気になっていて、最近訪れたフィンランドに続き、ノルウェーへの遠征も計画しています。

Patrickさんは、撮影で過去に訪れた場所へ戻るたびに、地球温暖化や大気汚染の進行を目の当たりにし、気候変動の影響を直に感じています。

彼は自分の作品が単に行動を促すだけでなく、私たち人間が同じ地球に住む仲間として、あらゆる生き物に対する道徳的責任を再認識することを望んでいます。「私たちが持つこの多様性と自由を、他の生き物にも分け与えなければいけません。私たちと同じように彼らも地球に住む権利があります」

Adobe StockでPatrick Patrickさんの写真と水中ビデオ素材を是非ご覧ください。心を動かされませんか? 画像やビデオ素材など、ご自身の作品をAdobe Stockに是非投稿してください。

いかがだったでしょうか?Adobe Stockでは、通常ライセンスの素材が毎月10点ご利用いただける年間サブスクリプションが、初月無料となるキャンペーンを引き続き継続中です。

Adobe Stockは通常ライセンスの素材に加えて、HDビデオの素材も使えるサブスクリプションプランも提供しています。こちらのプランも年間サブスクリプションが初月無料となるキャンペーンを実施中ですのでお試しください。

また、 Adobe Stockにアーティストとして参加されたい方は、新規登録をしてください。取り扱われる素材の種類については、各種ガイドラインをご覧ください。Adobe Stockについてさらに詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

この記事は2022年6月16日に Malcolm Thorndike Nicholson により作成&公開された Talking with tiger sharks: Patrick Masse’s images bring us into conversation with the animal world の抄訳です。