UXリサーチに取り組むための必要なマインドセットとは? | Design Leaders Collective

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Design Leaders Collectiveは2022年4月からスタートしたエンタープライズで働くデザイナー向けのマンスリーイベントです。スタートアップ、制作会社、代理店など組織体制や規模によって抱える課題は様々。本イベントでは、エンタープライズで働くデザイナーが直面する課題の情報共有とディスカッションを目的としています。

7月のイベントでは参加者の意見を交えながら、様々な環境下でどのように UX リサーチを取り入れているか情報交換しました。

もくじ

  • 成熟度によって取り組み方が変わる
  • 今できることから実践する

成熟度によって取り組み方が変わる

日本語の専門書籍だけでなく、イベントも開催されるようになった「UXリサーチ」。定量・定性調査を通して、ユーザーの動機や文脈を明らかにできる活動とはいえ、すぐに実践できるとは限りません。たとえ1度リサーチできたとしても、持続的に行うのは至難の業です。

誰もが利用者/顧客の理解は欠かせないと考えていますが、止まることのないデジタルプロダクトの開発プロセスに合わせて動くための仕組み作りも必要になります。インタビューの仕方やデータの分析方法といったリサーチそのものの学習と実践は大事ですが、持続可能な仕組み作りにも同時に取り組まないと「リサーチのせいで遅くなる」「コストをかけるわりに効果がない」といった誤解に繋がる恐れがあります。

UXリサーチの取り組み方は組織の成熟度や体制によって異なります。ある組織ではインタビューを定期的に実践することで自然と広まるかもしれませんが、同じやり方を試してもまったく効果が出ない場合もあります。他社事例を参考にするのが難しいですが、UXリサーチの成熟度に注目するとプランが立てやすくなります。

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書籍「Validating Product Ideas」に記載されている組織のUXリサーチ成熟度を把握するための図をつかって自己評価をしてもらいました。

ワークショップでは上図のようにUXリサーチの成熟度を「専任でリサーチできる人がいるか」「組織で必要性を感じているか」の2軸で参加者に自己評価をしてもらいました。どの辺にプロットしているかによって、UXリサーチを取り組むための最初の活動が変わります。

例えば、組織で必要性は感じられているものの、専任スタッフがいない場合は、リサーチ結果をすぐに使えて効果が測れるのが理想です。インタビューは様々な課題を明らかにしてくれるものの、リサーチ結果から要件定義が必要になるので時間がかかってしまうだけでなく、効果が分からない場合があります。効果が分かると人を配属したほうが良いと判断してもらいやすくなるので、インタビューよりユーザビリティテストや A/Bテストを通して課題の傾向を掴み、施策前後でどんな変化があったか計測したほうが次へ繋がりやすくなります。

今できることから実践する

「UXリサーチを実践することで利用者への理解が深まり、携わっているプロダクトも良くなる」といった大きな目標(理想)はあっても、そこへの進み方のイメージがない場合があります。大きな目標だけしかない状態だと、書籍の情報や事例がベンチマークになってしまい、現実と伴わない活動をして失敗したり、理想とかけ離れていることへのフラストレーションが溜まりやすくなります。

成熟度を見て活動するだけでなく、まず行動してみることも重要です。イベントでは、参加者から2つのアドバイスをいただきました。

  1. 第三者の視点を取り入れる
同じ部署の方にクイックインタビューを実施し成果物を作ったが、それでも声がかかるようになった

理想はターゲットユーザーに向けてインタビューを実施して分析することかもしれません。しかし、それができないから諦めるのは良くありません。プロジェクトに直接携わっていない方の意見に耳を傾けるだけでも新たな視点が得られる場合があります。重要なのはターゲットユーザーにインタビューすることではなく、プロジェクトに関わるメンバーが納得して前進できることです。誰かに意見を伺うことで成果物が変わることを体感できると、「次はターゲットユーザーに聞いてみよう」と次へ繋がることがあります。

2. 過去のデータを集める

過去のリサーチ結果を集めたデータを基に小規模ワークショップを開催して方向づけをしたところ全体が活性化して巻き込めるようになった

過去に実施したリサーチ結果が PowerPoint や Excel ファイルの中に眠っていることがありますし、カスタマーサービスや営業が専用ツールでお客様の声を集めていることがあります。改めてリサーチをしなくても、点在するデータを整理するだけでも新たな発見があります。アドバイスしていただいた方のように、担当者が整理する前にワークショップを通して整理しほうが、関わる人たちの納得と理解もより高まります。

情報の点在化は組織が大きくなればなるほど深刻になりがち。貴重な情報が既にあることを知らないばかりに、各所で似たようなことを実施してしまうことがあります。こうした課題に取り組むために情報共有できる仕組みを作ることも重要です。例えば各部署で入力されたお客様からの要望を自動的にひとつにまとめることも低コストで実現可能です。

ここぞのときにリサーチできるよう効率化する。

人も時間も限られているなかで、効果を示すために何ができるでしょうか。アドバイスをしていただいた方達は『効果』の意味を一歩踏み込んだ上で活動しています。リサーチという手段を目的とせず、関わる人たちが納得して前進するために今できることは何かという問いをした結果だと思います。「もっとこうしたい」といった理想はもちつつも、できないから諦めるのではなく、今できることを考えて実行するのはリサーチに限らず必要なマインドセットです。

イベントでは「リサーチ結果を施策の優先順位にどう活かすか」といった疑問が出てきましたが、リサーチそのものより、リサーチを実務にどう活かすかに課題を感じる方が多数いらっしゃいました。こうした課題を何十年も続く組織で取り組んだ場合、1, 2度の活動だけでは何も変わりません。難しい課題ではありますが、似たような悩みをもつ方たちと情報共有するだけでも明日からの活動のインスピレーションになることを改めて感じるイベントになりました。