【Adobe Education Forum Day1レポート 後編】新価値を創造する力クリエイティブ・デジタルリテラシーを育む教育

Adobe Education Forum 2022DAY1「新価値を創造する力クリエイティブ・デジタルリテラシーを育む教育」レポートの後編です。前編はこちらからご覧ください。

モデレーターの八木早希氏

企業活動におけるクリエイティビティの作用

レポート前編でご紹介した奈良県の教育に関する事例から視点を変え、次はビジネスの視点おけるクリエイティブについて、ウォンテッドリー株式会社CEO仲暁子氏が講演しました。仲氏はキャリア構築のためのビジネスSNS「Wantedly」を立ち上げ、同社を成長に導いてきました。

仲氏は、クリエイティブを独創性と創造性と定義します。そして、「他人の課題を解決し、対価を得る」というビジネスのプロセスには、解決のアイデアを「形にする」という独創性が重要なステップと、それを「伝える」という創造性が求められるステップがあり、それらによって「人を動かす」ことで、課題が「解決」すると説明しました。ビジネスの世界にも、会社の部署内のコミュニケーションにも、さまざまな場にこのプロセスが存在することを、具体的な事例で示していきます。

さらに、「伝える」というステップを丁寧に見ると、伝える力にはレベルがあり、「理解」よりも「共感」、「共感」よりもさらに「感動」を生むことができると、より強く人を動かすことができると解説。この伝える力を、「理解」のレベルから「感動」のレベルに「ぐっと動かしていくのが、クリエイティビティ、創造性、表現力なのかなと思っています」と仲氏は話しました。具体例として、同一内容のスライド資料のデザイン前とデザイン後を見せ、そこから受ける印象や説得力が明らかに異なることを示しました。この例示はイベント視聴者にとって大変インパクトが大きく、クリエイティビティがいかに「伝える」力を担っているかを実感する時間となりました。

仲氏は、「形にして伝えて人を動かす」という流れを繰り返し、試行錯誤を重ねることは、ビジネスに限らず重要なことであり、クリエイティビティや問題解決を学ぶことができると指摘。この視点は、教育現場でもそのまま参考にできる話として参加者に響いた様子です。

Z世代がクリエイティビティを語る座談会

DAY1の最後には、現役大学生を迎えた座談会「Z世代大解剖」が行われ、アドビエデュケーションB2Cマーケティング原渓太が、 アドビ製品の利用経験が深い3人に話を聞きました。

早稲田大学創造理工学部経営システム工学科の大木孝太郎さんは、在学しながらフリーランスで動画制作やデザインの仕事をするなど意欲的に活動中。専修大学経営学部ビジネスデザイン学科の山本歩さんは、ウェブ、ロゴ、ポスターなど幅広くデザインに挑戦しています。国際基督教大学教養学部国際関係学専攻のジョン・ヨンキョンさんは学生団体TED×ICUのPRデザインチームの一員として昨年のイベントでコンセプト動画を制作しました。

(上段左から)アドビ原渓太、国際基督教大学ジョン・ヨンキョンさん、(下段左から)早稲田大学大木孝太郎さん、専修大学山本歩さん(下段右)

山本さんは、大学生活やインターンでの経験を通じて、「思考して出てきたアイデアや課題を人にわかりやすく表現する力が求められていると感じています」と話します。デザインが価値につながるという認識が広がっていることから、デザインの良し悪しを見る力も必要とされていて、「社会でクリエイティブの需要が高まっている」のを実感するそうです。

社会で高まるクリエイティブの需要を実感している(山本さんスライドより)

また、ソーシャルネイティブのZ世代は、写真や動画などのデジタル表現は見慣れていてクリエイティブへの関心は非常に高まっていますが、「関心はあるのに、『こんなことができたらいいのに』というところで止まっているのではないか」と山本さんは指摘します。学生とクリエイティブツールとの出会いが必要だと提案し、一例として自身が通う専修大学経営学部ビジネスデザイン学科でAdobe XDを使った実践的な学習「ビジネスデザイン特講」が行われていることを紹介しました。また、「専大アドビラボ」という学生間のクリエイティブな活動が生まれていると報告。若い世代の間でクリエイティブスキルを重視する層が増えてきていることが伝わってきました。

専修大学でのクリエイティブな事例(山本さんスライドより)

座談会に集った3人は、すでにスキルを身につけてクリエティブな力を発揮しているわけですが、それぞれにクリエイティブツールとの出会いがありました。ジョンさんの場合は、高校時代にビデオ制作コンテストに出た際にPremiere Proを使ったことがきっかけでした。「初めは難しいと感じましたが、自分が思い描いたシーンを可視化できたことにとても達成感があり、映像編集が楽しくなりました」と振り返ります。山本さんと大木さんにも、幼い頃からものづくりが好きだった経緯やアドビのツールと出会いスキルを高めた経緯があり、周りに個性や力を認められたことがモチベーションを上げるきっかけになった様子です。

学生ながら実務経験が豊富な大木さんは、これまでクリエイティブなことに挑戦するたびに視野が広がり経験の幅が広がったと実感しています。「クリエイティブというのは誰でも挑戦できることなんですよね。興味を持ったらやり始めること。最初のステップがすごく小さくても奥が深い、そんなクリエイティブな世界をみなさんにも楽しんでほしいと思います」と参加者に呼びかけました。大木さんは現在フリーランスで経験を積んでいますが、卒業後は就職をして自身の適性を見定めたいと考えているということです。

クリエイティブスキルを身につけ未来に向かう学生の皆さんの、気負わず前に進む姿が印象的です。原は学生時代に必要なクリエイティブな学びについて、「一番重要なのはきっかけを与えてあげることだと思っています。きっかけがあれば加速度的に自分で学んでいくので、本当に学生さんのパワーを感じます」と話し、生き生きと活躍するZ世代を応援しました。

アドビからは、最先端の3D関連ツールの紹介も行われ、初日から盛りだくさんの内容となりました。引き続きDAY2DAY3のレポートもご覧ください。