時代にフィットする文字を身体になじむ、目にやさしいかたちで作り上げた凸版印刷|Adobe Fontsパートナー紹介08
文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、映像といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2022年9月現在、600を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、オススメのフォントを紹介していきます。
身体になじむ、目にやさしい文字の秘密
今回、紹介するフォントメーカーは凸版印刷株式会社です。
凸版印刷は1900年に創業した日本を代表する印刷会社で、印刷・プリント技術をベースにさまざまなフィールドで事業を展開しています。
凸版印刷のオリジナル書体は、1956年、二瓶義三郎氏らの手によって金属活字書体として誕生しました。活字書体の二大潮流のひとつ「築地体」をもとに、見やすさと読みやすさを考慮したデザインで、他の書体にはない親しみやすさを備えています。
内容がすっと頭に入り込んでくる没入感……その秘密は、人間にとって自然と感じられる文字のかたちにあります。特に顕著なのが「そ」「さ」「き」の文字で、多くの書体ではつながっている画線が凸版書体では手書きの文字のように離して書かれています。こうした独特の処理が凸版書体ならではの、身近でやわらかい印象を生み出しています。
その後、金属活字から写真植字(写植)、コンピュータによる組版(CTS)と時代が変わるなかで、時代、技術、メディアに合わせて文字のありようも変化していきましたが、自然に目になじむ、凸版書体ならではの魅力が色褪せることはありませんでした。
金属活字から受け継がれている文字 「凸版文久体」web・パンフレットより
このような流れを受けて2014年に誕生したのが、“人間にとって自然な文字”という凸版書体の特徴を現代の技術で再構築した「凸版文久体」です。“文字による情報表現に永久に携わっていきたい”という想いが込められた“文久”の名にふさわしく、凸版文久体の文字はそれまでの伝統を引き継ぎながらも、将来の文字のありようを提案するデザインになっています。
従来、印刷を前提に作られていた文字は、よりデジタルデバイスを中心としたスクリーンメディアでも見やすい、読みやすい書体へとリデザインされ、現在、webなどで主流となっている横組みの文章、英数字の頻出する文章での可読性も抜群。あらたに専用設計された英数字は、これまでの凸版書体とはまったく異なる、洗練された印象をもたらしています。
今後、どのようなコミュニケーション技術が生まれたとしても、その伝達の中心には文字があります。凸版文久体はそうした未来の文字のありようも視野に入れて作られた、文字・書体の“あたらしいベーシック”と言うことができるでしょう。
凸版文久体シリーズ・5書体
あらたにデザインされた英数字も凸版文久体の魅力のひとつ。明朝・ゴシックの3書体には欧文イタリックやリガチャ(合字)、ルビ字形等も含まれる
Adobe Fontsで使える凸版文久体シリーズは、「凸版文久ゴシック」2ウェイト、「凸版文久見出しゴシック」「凸版文久明朝」「凸版文久見出し明朝」の5書体・7フォント(見出し系の2書体はStd/StdNの2フォントで構成されているため/後述)。これは現在、リリースされている凸版文久体シリーズの全書体にあたります。
印刷物だけでなく、電子書籍やweb、映像などのあらゆる場面で活躍できる凸版文久体。ぜひ一度、体験してみましょう。
https://fonts.adobe.com/foundries/toppan-printing-co-ltd
明朝体・ゴシック体のあたらしいスタンダード
Adobe Fontsで提供されている凸版印刷の書体を紹介しましょう。
「凸版文久ゴシック」は、従来の凸版ゴシック体をベースに、おもに横組みでの読みやすさを重視して作られた書体です。もっとも大きな特徴は、ひらがな、カタカナに見られる筆の入りのでっぱりが、右側ではなく左側についていることです。多くのゴシック体だけでなく、それまでの凸版ゴシック体でも、このでっぱりは右側についていますが、凸版文久ゴシックでは、横組みで文字を書くときの線の運びは左から右へと流れていくことに着目し、自然で読みやすい目の流れを生み出しました。
左:凸版文久ゴシック 右:小塚ゴシック
英数字のセリフに、スラブセリフ体の特徴を取り入れているのも凸版文久ゴシックのポイントで、凸版文久ゴシックの文字の特徴にも自然にフィット。英数字が混在する文章でも違和感なく、組み上げることができます。ウェイトはRとDBの2種類が用意されており、印刷用途の長文ではRを、強調文字や映像、スクリーンメディアなどではDBを、と用途に合わせて使い分けることができます。
凸版文久ゴシック Pr6N R/DB https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-gothic-pr6n
「凸版文久見出しゴシック」はおもにタイトルや見出しを想定して作られたゴシック体です。
落ち着きのある佇まいのなかにも、抑揚のある筆遣いを感じさせる文字のかたちは、人の目を強く惹きつけます。太い画線に対してシャープなハネ、なめらかな手の動きを感じるカタカナも凸版文久見出しゴシックの魅力のひとつで、クラシカルな印象になりすぎることなく、デザインに彩りを加えることができます。しっかりした太さと読みやすさを備えているので、webやSNSバナー、動画サムネールや映像のテロップにも最適。通常の太ゴシック体ではどこか物足りないときには、凸版文久見出しゴシックを使ってみましょう。
凸版文久見出しゴシック Std EB https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-midashi-go-std
凸版文久見出しゴシック StdN EB https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-midashi-go-stdn
「凸版文久明朝」は凸版文久体のなかでもっとも代表的な書体です。従来の凸版明朝体をベースに作られた書体で、スマホやタブレット等ディスプレイ環境での読みやすさを考慮した、さまざまな調整が施されています。たとえば、透過光によって表示されるディスプレイ上の文字は光によって細い線を読みにくく感じることがあります。このような環境にも対応するために、凸版文久明朝は、従来の凸版明朝に比べて、文字の先端を太くするとともに、全体の太みも調整。それまでの文字が持っていた、凸版書体独特のゆらぎと可読性はそのままに、時代を見据えたブラッシュアップが行なわれた書体と言うことができるでしょう。
凸版文久明朝 Pr6N R https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-mincho-pr6n
「凸版文久見出し明朝」は「凸版文久見出しゴシック」と対をなす、凸版文久体シリーズの見出し用明朝体です。力強さを感じさせる線と、下に重心をかけた安定感のある文字の設計によって、目を留めずにはいられない、豊かな表情を備えています。クラシカルなひらがな、カタカナに対して、モダンな英数字のデザインも特徴的で、英数字だけで組み上げても非常に優雅なデザインに仕上げることができます。
凸版文久見出し明朝 Std EB https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-midashi-min-std
凸版文久見出し明朝 StdN EB https://fonts.adobe.com/fonts/toppan-bunkyu-midashi-min-stdn
「凸版文久見出しゴシック」「凸版文久見出し明朝」には、StdフォントとStdNフォントの2種類が用意されています。StdN/Pr6Nフォントは、JIS X 0213:2004(JIS2004)で示される漢字の例示ルールに則って作られたフォントで、Std/Pr6フォントに比べて「祇/鯖/噂/辻」など168字の例示字形が変更、10字が追加されています。
凸版文久ゴシック・凸版文久明朝はいずれもPr6Nフォントとしてリリースされていますが、凸版文久見出し明朝・ゴシックにはStdN・Stdの両方が用意されており、前述の168+10字以外にもデザインが異なる文字があります。具体的には「文」の4画目に筆抑えを入れるかどうか、「分」の文字の上部分を水平にするかどうかなどの違いがあり、Stdフォントを使うか、StdNフォントを使うかによって文字のかたちを使い分けられるようになっているのです。
なお、見出し書体に比べて収録文字数が多い凸版文久明朝・ゴシックでは、このような“文字としては同じでもデザインが違う文字”を各フォントのなかに持っており、Adobe InDesign、Adobe Illustrator、Adobe Photoshop等のアプリケーションでは「字形」パネルを使って、使用する文字を切り替えることができます。
Std/StdNフォントでは一部文字の例示字形に違いがある(上)。凸版文久見出し明朝・ゴシックではこれに加えて、一部文字のデザインにも差をつけている(下)
スクリーンメディアに最適な基本書体パック
Adobe Fontsで使用可能な多くのフォントのなかから、イメージや目的にあわせて厳選して提供する「フォントパック」に、凸版文久体シリーズの全書体を収録した「スマホ・パソコンでも見やすい基本書体パック」が追加されました。スクリーンメディアでの見やすさ、読みやすさを考慮して設計された凸版文久体を、印刷、web、電子書籍、映像のデザインに活用しましょう。
- 凸版文久ゴシック Pr6N R/DB
- 凸版文久見出しゴシック Std EB
- 凸版文久見出しゴシック StdN EB
- 凸版文久明朝 Pr6N R
- 凸版文久見出し明朝 Std EB
- 凸版文久見出し明朝 StdN EB
Adobe Fontsでフォントパック「スマホ・パソコンでも見やすい基本書体パック」を見る
https://fonts.adobe.com/collections/basic-fonts-for-screen
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https://fonts.adobe.com/
Adobe Fontsで凸版印刷のフォントを見る
https://fonts.adobe.com/foundries/toppan-printing-co-ltd
凸版印刷株式会社
web(コーポレート)|https://www.toppan.co.jp/
web(凸版文久体)|https://www.toppan.co.jp/bunkyutai/