【小学校事例】ICTも画材のひとつ!図工でAdobe Expressを活用

小学校の図工というと、絵の具や工作、粘土などアナログな手段のイメージがありますが、デジタル手段を積極的に取り入れて授業を行っているAdobe Education Leader(AEL)の先生がいます。新宿区立富久小学校 図画工作専科教諭の岩本紅葉先生です。図工の授業にプログラミングを取り入れたり他の教科と連携したりと、クリエイティブな学びを設計しています。デジタルで広がる子どもたちの世界とAdobe Expressの活用についてお話を聞きました。

学校の展覧会の様子。

展覧会のポスター制作にAdobe Expressが大活躍

岩本先生が5年生で取り組んだのは、図工と総合的な学習の時間を連携させ、そこにプログラミングを取り入れた授業。SDGsの目標を達成するロボットを考え、プログラミングロボットキットで作りあげるという内容です。グループで制作したロボットの発表会や、学校の展覧会での展示にあわせてAdobe Expressで紹介ポスターを作成しました。

プログラミングロボットキットKOOVで制作した作品を展覧会で展示。展示台のサイドにポスターが掲示されている。

Adobe Expressで作成したロボット紹介のポスター

また、6年生では展覧会の際に1人1つずつ展示ブースを用意し、図工や家庭科の作品を自由に展示できるようにしました。事前の授業時間に各自のそれまでの作品を振り返り、展示方法を検討。Adobe Expressで紹介ポスターを作りブースにも掲示しました。いわば自己プロデュースともいえる取り組みです。ポスターのデザインはもちろん、編集内容にも個性があり、1つの作品を紹介するものもあれば複数の作品を紹介するものもありさまざまだったといいます。

展覧会で設けられた6年生の個人展示ブース。カラフルにペイントされた展示台も自分で作った

個人ブースを紹介するポスターをAdobe Expressで制作

展示会全体で必要な掲示物は、まわりの先生にも作ってもらいました。みなさんAdobe Expressを初めて使ったものの、短時間でイメージに合う掲示物を作ることができたそうです。

各学年の展示テーマを紹介する掲示物は複数の先生がAdobe Expressで制作した

ICTは画材のひとつ

学生時代からデジタル表現にも親しんできた岩本先生は、ごく自然にICTも表現手段のひとつとして捉えています。「今の子ども達が将来大人になった時に、AIとかロボットとかそういうものと共存していく上で、ICTも画材のひとつとして捉えて表現できる方がいいと思っています」。それと同時にアナログな活動の大切さも実感しています。「特に絵の具の質感だとか、粘土の手触りだとか、実際に人間が肌で感じてそこから表現することというのは図画工作においてすごく大切です」と話します。

岩本先生はデジタルならではの特徴として、使い方の説明を細かくする必要がないことをあげます。例えば陶芸の粘土などアナログの材料は、教師側で細かく扱い方を教えなければいけないことがたくさんあるそうです。その点デジタルで例えばAdobe Expressを使うときは、先生が簡単に話をしただけで、子どもたちが自主的にいろいろと試して、“こうしたらおしゃれにできそう”などと効果的な使い方を発見していくといいます。

デジタルツールを使うとアウトプットにかける時間も速くなります。その分、別の表現を試すなど試行錯誤を繰り返すクリエイティブな時間を確保できる上、失敗してもやり直しが簡単にできることがメリットになっています。確かに水彩絵の具では、デジタルのように気軽にやり直しはできません。

そのメリットが、子どもたちの心のハードルを下げることにつながっていると岩本先生は指摘します。絵に苦手意識のあった子どもが、プログラミングに使うデジタルツールで絵を描く活動には自ら熱心に取り組み、魅力的な作品を作って周りからもほめられ自信をつけるきっかけになった例があるのです。「その自信がアナログな活動にまた戻った時に生きている気がします」と岩本先生。それ以降、絵を描くときにその子の手が止まってしまうことはなくなったといいます。

豊富なテンプレートは表現の幅を広げるインプット

Adobe Expressは豊富なテンプレートを生かし手軽に完成度の高いデザインを完成させられるのが魅力ですが、図工でテンプレートを使用することはどう捉えているのでしょうか。岩本先生は、「デジタルに限らず他の表現活動においても、絶対何かしらのインプットをした上でアウトプットすると思うんです。0から作ることはどんなアーティストでもないと思うんですね」と指摘。「あらかじめいろいろな豊富なおしゃれなテンプレートを自分達で見て、インプットすることによって、さらに表現の幅は広がるんじゃないかと思います」と話します。

テンプレートを使っても子どもたちの作品には個性があり、テンプレートの選び方ひとつにも特徴があるそうです。また、普段から図工で繊細な表現をする子はAdobe Expressでポスターを作っても表現に工夫か感じられるものだといいます。一方で、誰もが整ったデザインにまとめられるので、評価には注意が必要だと感じています。「もとのテンプレートの写真を変えただけなのか、そこから自分なりに工夫したところがどれくらいあるのか、そういうことを見とる必要があります」。先生の側でどのようなテンプレートがあるのかをある程度知っておくと参考になるということです。

デジタルとアナログの垣根なく表現の力を

図工で今まで通りさまざまな画材や材料に触れてアナログの表現をすることは絶対に大切だと岩本先生は繰り返します。その上で、「プラスでICTを使うと、また違う表現ができるし、自信がつけられると伝えたいですね」と、新しい手段を柔軟に捉えることをすすめます。GIGAスクール構想により1人1台のPCが整備され、子ども達は新しい表現手段を手にしました。「筆とか鉛筆とか粘土とかそういうもののひとつとしてICTを捉えて授業を行なっています」という岩本先生のように、子どもたちの手段にデジタルとアナログの境目を設ける必要はないと感じさせられます。

岩本先生自身は、PCが整備されるより前から常にデジタル機器を表現手段として授業に取り入れる工夫を重ねてきました。「授業を子どもたちが最高に楽しいものにする」ことを考えているという岩本先生は、「新しい時代にあわせてデジタルも材料のひとつととらえて表現する経験をしてほしい」と子ども達の未来を見つめています。

A person standing in front of a wall with art on it Description automatically generated with low confidence

今回お話を伺ったAdobe Education Leaderの岩本紅葉先生。新宿区立富久小学校 図画工作専科教諭 岩本紅葉先生