Adobe StockアーティストBiruohによる人々を魅了するセミ・シュルリアルの不思議な世界
クレジット:Adobe Stock / Biruoh
タイのイサーン(東北部の意味)地方に位置するナコーンラーチャシーマー(通称コラート)の田舎町で育ったPhatthranit Oamanさんは、Biruoh(日本語で「ビール」の意味)という名で活躍しているプロのアーティストです。子供の頃から絵を描くことが大好きだったBiruohさんは、その時の情熱を注ぎこむかのようにフリーランスのイラストレーターやUX/UIデザイナーとしてキャリアを積み、現在はアイルランドのコークを拠点に活動しています。
「母と叔母が仕立屋だったこともあり、幼い頃から絵やデザインを身近に感じていました。よく母や叔母の働く姿を見ていで、時には2人に絵を描いてとお願いすることもありました。当時は自分で描くことができなかったので、見ていただけでもとても楽しく、面白いものだと感じていました」とBiruohさんは振り返ります。10代の頃は漫画やパソコンにはまり、Adobe Photoshopやグラフィックデザインにも興味を持つようになりました。
「イラストを描いてる間は、ありのままの自分でいることができるんです。自分の考えを自由に表現できます」とBiruohさんは言います。アニメやゲーム、映画から作品のアイデアを得ることが多く、友人との旅行も大好きでそこからインスピレーションを受けることもあります。
「家に帰って旅行の写真を見ている時に、その写真を楽しいストーリーとして表現したいという気持ちになるんです」
2021年のArtist Development Fund(アーティスト開拓ファンド)のために制作した作品をはじめとするAdobe Stockのポートフォリオは、Biruohさんならではのエネルギー、動き、色彩に満ち溢れていて、カラフルな万華鏡をのぞいているかのように彼女の旅の思い出や経験を蘇らせます。
クレジット:(左)Adobe Stock / Biruoh、(右)画像提要元Biruoh
異国の地へ
故郷のタイを離れ、夫の家族が住むアイルランドに移住して以来、Biruohさんの人生において「旅」は大切な要素となっています。カルチャーショックも受けましたが、視野を広げて物事を見ることができるようになりました。
「新しいことをたくさん学ぶことができました。文化の違う人たちとの出会いなど、小さな池から広い世界へ飛び出したような感じです。これらはとても意味のある経験だと思います。タイにいた時はインスピレーションと言えるものがあまりなかったのですが、今は新しい作品の制作でこれらの経験を活かすことができるので」とBiruohさんは言います。
当然、食事や天候、服装の違いにも慣れる必要がありました。
「アイルランドは比較的寒い地域でもありますが、私は寒いところが好きなのでラッキーでした。タイにいた時ですら日差しが強くてもジャケットを着ていました。ジャケットが必要なくらい寒いアイルランドでの生活のほうが私にはあっています」とBiruohは語ります。アイルランドの街を探索することが大好きな彼女は、家の色使い、特に花の色に目を奪われながら新生活を楽しんでいます。
「ここに来て初めて見る花は写真に撮って保存しています。いつか参考にできると思って。街中や公園、自然など、いろいろな場所に出かけるたびにいつもワクワクします。見るものすべてに驚かされています」
Biruohさんの作品は、タイの郊外で過ごした幼少期から影響を受け、多様性、ジェンダー、リアリティを追求しています。一方、非日常を日常的に描くマジックリアリズムのような彼女独特の色の使い方を自身で「セミ・シュリアルの不思議な世界」と名付けて呼んでいます。
「私は、現実と夢を融合させたようなイラストを描き、それらを通して自分の考えを伝えています」とBiruohさんは言います。また、モンスターや空想上の生き物を描くことで、単なる旅行やアクティビティのイラストで終わらせるのでなく、誰かを笑顔にしたり、ファンタジーな冒険が始まるようなイラストを描きたいと思っています。
クレジット:(左)Adobe Stock / Biruoh、(右)Adobe Stock / Biruoh
多彩なテクニックとツール
Biruohさんは、主にデジタルプラットフォームでイラストを制作していますが、油絵、版画、水彩画などで求められる手作り技法も学びたいとずっと思っていました。
「本職はUX/UIデザイナーですが、仕事後の空き時間には、家でいろいろな画材を試していました。自分が本当に好きなもの、本当の自分を見つけようとしていたのです」とBiruohさんは言います。アイルランドへの移住を決めた矢先に、新型コロナウイルスにより予定変更を余儀なくされたBiruohさんは、自分の芸術的な能力を模索するために仕事をしばらく休むことにしました。
「休んでいる期間に様々な新しいことに挑戦しました。練習やトレーニング、開発などを通して、自分のスタイル、自分の描きたい絵を見つけたかったからです。いろいろな色を使ってみたり、描き方を変えてみたり、自分だけのスタイルを確立しようとしていました」
最近は、Adobe FrescoやAdobe Illustrator iPad版を使ってiPadでイラストを描いています。
「外出先や、移動中であっても、場所や時間を問わず作業できるので今はすべてiPadでやっています。Frescoにはたくさんのツールがあり、撮った写真を取り込んでスケッチするという作業を楽しんでやっています」
しかし、これらのツールは、彼女の最終目標である「フィーリングを生み出す」ための手段に過ぎません。
「嫌なことがあった日に、心が晴れて、気分をリフレッシュさせてくれるものに出会うことがありますよね。私はイラストを通して人に喜びと力を与えるような人になりたいんです」とBiruohさんは語ります。
クレジット:(左)Adobe Stock / Biruoh、(右)Adobe Stock / Biruoh
自分らしく生きる
アイルランドでAdobe Stockのアーティスト開拓ファンドに応募する機会を得たBiruohさんは、父親の仕事に対する姿勢を思い浮かべながらプロジェクトに取り組みました。
「毎日朝早くから文句を言わずに仕事をしている父の姿を見て育ってきました。コラートにあるパクチョン地区で自分の自動車修理工場を開き、一生懸命働いていました。仕事に関して父はよく『何をするにしても、本当にやりたいと思ったら達成するまで追求しなさい。10回でも100回でもあきらめずに挑戦し続けなさい』といつも言っていました」
しかし、ある日、電気事故で父親が命を落としてしまいます。
「今までを振り返った時に、一生のうち多くの時間を仕事に費やしているのだから、自分らしく生きていけることに取り組もうと思いました」とBiruohさんは言います。
そんな思いを胸にBiruohさんは迷いを断ち切ってAdobe Stockのアーティスト開拓ファンドへ応募し、ポートフォリオを作成することを決心しました。
「挑戦すれば合格するかもしれないし、不合格かもしれない。でも、何もしなければ、不合格という答えしかない」
Biruohさんの作品に込めたメッセージに大きな影響を与えたもう一人の家族がいます。彼女の叔母です。叔母は幼い頃から自分がクィアであると認識していましたが、田舎町ではそのアイデンティティを隠さないとやっていけませんでした。
「子供の頃から、叔母とはとても仲が良かったです。叔母のアイデンティティを否定し、自分らしくいることがいけないことだと思ったことは一度もありません。ただ家族の一員として愛を持って受け入れてました。最終的に、叔母は自分らしく生きることを決意し、自分のアイデンティティを確立しました。しかし、私の祖父はそんな叔母を認めてはくれませんでした」とBiruohさんは振り返ります。
Biruohさんは、Adobe Stockのポートフォリオを作成する際に叔母から大きなインスピレーションを受けたと述べています。自分のアイデンティティが理由で、理解されない、受け入れてもらえない人をサポートしたいと考える中で、Biruohさんにとって叔母はとても大きな存在でした。
「自分に正直でいると、何か解き放たれた気持ちになります。ユニークな自分を隠さず外に飛び出すことで、充足感に満たされるのはもちろん、周りにもその意味が伝わり、勇気を与えることができます」
Biruohさんのイラストをもっとご覧になりたい方は、Adobe Stockでご確認いただけます。コミッションアーティストやアーティスト開拓ファンドへの応募方法やその他詳細は、Adobe Stock Advocate(Adobe Stock支援プログラム)をご覧ください。
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この記事は2022年8月19日に Sarah Rose Sharp により作成&公開されたEnter a semi-surreal wonderland with Adobe Stock artist Biruoh の抄訳です。