なぜ一言で「アドビのプロジェクトマネージャーはこんな仕事/こんな人」と説明できないのか? 現役プロジェクトマネージャー2人に聞いた

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アドビコンサルティングサービスで顧客企業のプロジェクトをリードするプロジェクトマネージャー。一般的にプロジェクトマネージャーといえば、顧客企業の要件を受け、ゴールに向けてプランを立て、人材を調達して全体を管理する業務ですが、アドビのプロジェクトマネージャーは⼀般的なプロジェクトマネージャーと異なり、仕事の幅もやりがいも⼤きいようです。そんな仕事なので、現役プロジェクトマネージャーも個性豊かで多種多様なバックグラウンドを持った人たちが集まっています。今回はアドビ プロフェッショナルサービス部 プロジェクトマネージャーの森谷 章生さん、小池 暢啓さんに、仕事の内容ややりがい、今後のキャリアについて聞きました。

入社して知った、アドビは多様性あふれた人材の宝庫

「前の職場では既によく利用されている、実績のある技術を活用し、 クライアント企業のニーズに応えることが求められました。でも、せっかくIT業界にいるのであれば、ITの先端技術みたいなところにも触れる機会が欲しいと思ってアドビへ転職したんです」と語るのは、アドビ コンサルティングサービスのプロジェクトマネージャー職を務める森谷 章生さん。森谷さんは日系の大手SIer、インド系のSIerを経て2018年にアドビに入社しました。

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アドビ プロフェッショナルサービス部 森谷 章生さん

1社めではERPの導入エンジニア、2社めではオフショア開発や保守業務を担当していたそうです。

「完全にSIerの開発部隊からの転職組です。ほかのアドビ社員と違って、あまりマーケティングのバックグラウンドがないんですよ」(森谷さん)

現在の主な仕事は、オフショア開発を伴うソリューションデリバリープロジェクトのマネジメントです。クライアント企業の要件に合わせ、データアナリストやエンジニア、業務のスペシャリスト、マーケティングのスペシャリスト、制作のスペシャリスト、コンサルタントなど必要な人材を調整してチームを組み、ゴールに向けて体制を整えていきます。

常に心がけているのは、メンバーそれぞれの力が最大限発揮され、1つのチームとして機能していくような仕組み・枠組みを作ること。

「アドビの社員は1人ひとり、本当にすごい能力を持っています。データのプロもいれば、私よりも数段技術力が高い人、専門的な知見を持っている人、全員がそれぞれの専門分野に精通しています。正直、アドビに入社してびっくりしました。だからPMとしては、皆さんの良いところをいかに結集させるかに注力しています」(森谷さん)

具体的に、どのようにチームの力をドライブしていくのでしょうか。森谷さんは「大切なことはモチベーション、コミュニケーション、ミッションの3つをうまく機能させることです」と説明します。

自分が本当にやりたい仕事やゴールと、目の前のプロジェクトで求められる役割が違ったら、当然ながらメンバーのモチベーションは下がります。そうならないようにメンバーとしっかり話をし、どんなチャレンジをしたいのかヒアリングして、モチベーション維持につながるヒントを探ります。プロジェクトプランにモチベーションをどう組み込むかは、まさにPMの腕の見せ所です。

また、アドビでは各コンサルタントが複数のプロジェクトを兼任する事が普通なので、プロジェクト内のコミュニケーションを円滑に行うには工夫がいります。そのためにコミュニケーションプランを用意するのもPMの大切な役目です。

そしてミッションは、モチベーションにもつながる大切な要素。たとえば顧客企業が製品導入を成功させようとするあまり、「導入がゴール」になってしまうとやはりプロジェクトは盛り上がりません。積極的にコミュニケーションを取って顧客企業が目指す本当の理想を言語化し、可視化させてより高いミッションを設定し、道筋を付けていく。やりがいのあるミッションに変えるのもPMの手腕です。

アドビに入社して得た、PMとしての高い視点

4年半前、アドビに入社した森谷さんが最も驚いたのは、アドビの多様性豊かな社員たちでした。前述したように、それぞれ独自の優れた専門性を持っていること。そんなプロフェッショナルが世界中にいて、国境の垣根なく1つのプロジェクトチームを組み、顧客企業のビジネスに深く貢献していること。

「前職でもオフショア開発を担当していたのでダイバーシティのカルチャーや海外とのやり取りも経験がありますが、当時は同じ開発部隊のメンバーと接していました。アドビに入社して、本当にダイバーシティ豊かな会社だとびっくりしましたし、PMのミッションも前職とはまったく違うので、改めて学んだこともたくさんあります」(森谷さん)

実際、森谷さんは自身のキャリアやスキルで大きな変化があったと説明します。

「前職との大きな違いは、やはり視座/視点の高さですね。アドビでは、製品を導入することではなく、そこから生み出されるビジネスバリューにいかに貢献できるかを重視しています。いまだから白状しますが、実は前職では顧客企業の中期経営計画なんてあまり見ていませんでした。でも、アドビは顧客企業のビジネス戦略に真摯に向き合います。目の前の導入プロジェクトをしっかり進めつつ、コンサルタントの方と一緒に導入した後のビジネス後継、ロードマップを行い、『数年かけてこういうふうにビジネスを変えていく』というプランを組み上げていくところは、前職のオーソドックスなSIerのPMとはまったく違いますし、大きなやりがいを感じるところです」(森谷さん)

そんな森谷さんは今後どのようなキャリアを目指しているのでしょうか。

「PMとしての仕事の仕方も心がけも、まだ『これを目指している』という段階で、完全にできているわけではありません。いま話したことを着実に実行し、お客様のビジネスに貢献できるPMとして成長していくことが直近の目標です。そして将来は、世界をまたぐグローバルプロジェクトのPMとしてチームを牽引していく存在でありたい、そんな夢を持っています」(森谷さん)

ワインショップ、通信会社を経て「多様な業種を経験したい」とアドビへ転職

もう1人のアドビ プロジェクトマネージャーの小池 暢啓さんは、ワインソムリエの資格を持ち、ユニークな経歴を経て2018年にアドビに入社しました。前職は大手通信会社に6年間勤務し、EC事業やデジタルマーケティングを担当。そのさらに前は、大手ワインショップで海外のワイナリーを訪問したり、EC事業を担当したりと、ワインの仕入れから出荷してお客様にお届けするところまでを8年間一貫して見ており、ワインソムリエの資格もその時に取ったそうことです。

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アドビ プロフェッショナルサービス部 小池 暢啓さん

「普通に考えたら、ワインショップから通信会社、そしてアドビという転職ルートは変わっていますよね。でも私は『キャリアは掛け算』だと思っていて、これまでの経験でいうとワインショップ8年+通信会社6年ではなく、8年の経験と6年の経験を掛け合わせて可能性を広げていくものと捉えているんです」(小池さん)

ワインショップから通信会社への転職も「EC」が起点でした。そんな小池さんがアドビに転職したのは、事業会社で1社のビジネスしか見えないという立場ではなく、「ECという切り口で、さまざまなビジネス分野に携わりたい」という思いがきっかけだったそうです。

「これまでの経験はBtoC、もしくはBtoBtoCでしたが、アドビはBtoC、BtoBtoCだけでなく、BtoBにも強く、さまざまなエンタープライズのお客様のプロジェクトを⼿掛けているところに惹かれました」(小池さん)

小池さんが現在担当しているのは、製造業や金融業など。いずれも日本を代表する大手企業です。

「扱っているのはAdobe Experience Cloudが中心です。プロジェクト規模が大規模になりやすいですし、1つのソリューションを導入するプロジェクトというのはほとんどないので、複数の製品を合わせて導入していくので、何か1つに絞られるっていうことはありません」と小池さんは話します。

もともとアドビのコンサルティングサービスは、アドビというソフトウェアベンダーでありながら、自社製品に縛られないというユニークなサービスです。それは小池さんが語るように、複数の製品を組み合わせて活用することがすでに前提となっているという理由もありますし、アドビ自身も「製品導入」ではなく「顧客企業のビジネスに貢献する」という点を重視しているのも大きな要因です。

「私はアドビの製品は世界トップクラスの製品だと思っていますし、それを使いこなして問題解決を進めていくことがプロジェクトに求められているので、自社製品に縛られているという感覚はありません。私も事業会社出身だったので、製品というよりは事業ありきで話を進め、『このビジネスに製品をフィットさせましょう』という感覚で会話をしています。ベンダーのコンサルタントやプロマネだから、自社製品ありきの仕事になるというわけではありません」(小池さん)

事業会社での経験や度胸を現在も活用、今後も可能性を広げるためにチャレンジ継続

ユニークな経歴を持つ小池さんですが、前職での経験をアドビでどのように役立てているのでしょうか。

「事業会社特有の考え方や視点がわかるので、お客様が話している内容から社内にある課題の原因を推理したり、次に来る山場を予測したりなど、状況判断がやりやすい面があります。これにより、プロジェクトの進行や休みなどをコントロールするなど、できるだけ激務にならないように全体をカバーしています。プロジェクトは、お客様企業も含めて海外の方が参加されるケースが多いのですが、あまり臆せず、拙い日本人英語でも意見を言う時にはしっかり伝える、物事を先に進めるためにも言うべきことははっきり言う、といった度胸も役立っています。これは20代にワインショップで働いていたころ、海外のワイナリーを訪ねて培われたものでしょうね」(小池さん)

もちろん、アドビで大きく成長した点もあります。それは「自分だけでなく、ほかの人が動きやすいように環境を整えて動いてもらう」というスキルです。

「事業会社では、自分が会社を説得したり、ステークホルダーを自分が押さえに行けば何とかなる面がありました。いわばエンジンは自分です。⼀⽅、アドビでは、お客様やプロジェクトメンバーがエンジンです。そのエンジンが正しく速く動けるように環境を整え、さまざまな事象を整理して動きやすいようにすることが私の仕事です。自分だけでは動かせない物事を、ほかの人がうまく動けるようにする部分は成長したなと感じています」(小池さん)

そんな小池さんが仕事において心がけていることは、お客様もプロジェクトメンバーも含めて「プロジェクトに参加したみんながハッピーになることです」といいます。

「どういうことかといえば、お客様であればプロジェクトが成功して社内評価が上がることも1つのハッピーですし、プロジェクトメンバーであれば、この案件に参加したからには何かしらの成長を得て帰って欲しいという思いです。若干上から目線かもしれませんが、お客様だけではなく、メンバー自身も参加することで、何かしら成長を感じたり、ハッピーの種を見つけられるようにしたいと考え、プロジェクトに取り組んでいます」(小池さん)

将来のキャリアについても柔軟に考えており、「何か1つに特化していくというより、これまでの仕事や経験と現在との掛け算で、キャリアの幅を広げていけるのではないかと思っています」と説明します。

「これまでECという切り口で、ワインショップ、通信会社、アドビと違う世界、違う職種にチャレンジしてきました。自分としては、プロジェクトマネージャーを極めるというより、そこで一定の成果を収めたら、また別の可能性を広げるためにチャレンジすると思います。アドビは職種のキャリアチェンジも柔軟ですし、いろいろな可能性を見つけたいですね」(小池さん)

アドビで同じ職種に就く2人ではありますが、バックグラウンドも異なれば、仕事への思いやキャリアに関する考え方もそれぞれ違う森谷さんと小池さん。ただ共通しているのは、システム開発をゴールにするのでなく、顧客企業へ最大の価値を提供することを目指している点、そしてそのためにプロジェクトに関わる全ステークホルダーが最高のパフォーマンスを発揮できるようにPMとして全員を支えることに注力している点です。単に顧客企業と現場の橋渡しするのではなく、最高の成果に向けてチームをクリエイトしていくその姿が印象的でした。