【Adobe Express活用事例】あらゆる学習活動で創造的な情報活用能力を育む~印西市立原山小学校

千葉県印西市立原山小学校では、GIGAスクール構想を機に2020年より1人1台Chromebookが導入されています。導入当初からクリエイティブツールとして全校で活発に使われているのがAdobe Express(旧Adobe Spark)。同校が目指す「主体性や創造性を育む」授業の実現に向けて、具体的にどのように役立てられているのか、各学年での事例をお聞きしました。

課題解決の実践にクリエイティブツールを活用

学校のグランドデザインとして「社会とつながる情報教育・情操教育・市民教育」を掲げ、学校・家庭間にとどまらず地域社会とのつながりを大切にする同校。学びの集大成として6年生(2021年度当時)が総合的な学習の時間に国際理解・協力活動として取り組んだのは、ルワンダについて学び、子どもたち自身でアフリカ布を使ってハンドメイド作品を作ること、さらには地域の商業施設で作品を販売した利益を交流先のルワンダの学校に寄付して問題解決に寄与するということでした。

イオンモール千葉ニュータウンの協力を得て店頭でハンドメイド作品を販売


用意した約200点のハンドメイド作品を販売する店頭では、児童による接客のかたわら、取り組みの概要や児童の想いをまとめたAdobe Expressビデオを再生。作品そのもののクオリティの高さに加え、企画の趣旨がより豊かに伝わったことで、店頭を訪れた多くの人の心を動かし好評のうちに2日間の販売を終えました。結果として売上は10万円を超え、費用を差し引いた利益でルワンダの交流校へたくさんの文房具を寄付し、学習の充実に寄与することができたとのことです。

「知識として学んで終わりではなく、自分たちにできる国際支援、社会貢献はないか。具体的に考えて『実践』するまでを心がけています」と同校校長の松本博幸先生。募金活動など一般的に広く行われている取り組みにとどまらず、一歩踏み込んで地域社会との結びつきを生かした活動を積極的に行っています。その中で周りの人を動かし、行動変容を促すうえで欠かせない「情報をまとめる」「意図や想いを伝える」ツールとしてAdobe Expressを様々に活用されているそうです。

テキスト 自動的に生成された説明

5年生によるエシカル消費を広める活動。店頭で流す啓発ビデオ(右)やPOPなどのデザインをAdobe Expressで制作

5年生が教科横断型の探究学習の一環で「エシカル消費」を扱った際には、近隣スーパーの店頭用ビデオ、のぼりなどをAdobe Expressで制作して特設売り場に掲示しました。学んだことをまとめるだけでなく、初めてエシカル消費についてふれる人でも興味をもち、理解してもらうためにはどう伝えればよいのか。みんなで話し合い試行錯誤しながら作り上げた店頭には、行き交う人の目を留めるのぼり、エシカル消費の全体像を伝えるビデオ、売り場で具体的な商品紹介につなげ購入を促す手書きのPOPなど、複数のメディアを巧みに使い分ける工夫が光ります。

幅広い学習活動で創造的な情報活用能力を育てる

主体性や創造性を育む授業の実現を目指す同校において、一貫してベースとなっているのが情報活用能力の体系表。文科省の定める学習指導要領に明示されない「デジタルコンピテンス」領域について、欧米での教育活用例などを参考に、同校の子どもたちが身につけたい力と照らし合わせながらオリジナルで作成されています。

各学年の情報活用能力の到達目標が詳しく明示されており、全教員の共通理解事項として落とし込まれています。前出の5・6年生の取り組みからも情報活用能力の高さは明白ですが、1年生から、ごく日常的な学習活動においてデジタルツールを活用したアウトプットが組み込まれていることが目を引きます。

Adobe Expressを使い立体作品について説明するナレーションを吹き込む


例えば、1年生の図工では、学年末に工作・絵画などの作品を撮影しAdobe Expressでまとめて1つの作品集に。また、2年生では国語の朗読として取り込んだイラスト画像にあわせて自分の音読を録音して1本のビデオに。従来は創作に直結しなかった学習にもクリエイティブツールを取り入れることで、豊かな表現活動に昇華しています。

1年を通して制作した図工作品をまとめたWeb作品集。コーディング不要で、一つ一つの作品がより魅力的に伝わるWebページが作成できた

各場面の画像に合わせて朗読を吹き込み1本のストーリー動画に。登場人物の心情など理解を深め、場面に合ったナレーションに挑戦

コマ撮りでクレイアニメ制作。静的な作品から動的なストーリーを伴う作品へ

2年生の図工では、さらに音声・動画の編集レベルを高めて幅広い学習活動へ。制作した粘土作品をコマ撮り動画にしてクレイアニメを作成したり、紙に描いた絵をベースに音声やデジタル描画を加えたりと、動的でより魅力的な作品に仕上げるツールとしてAdobe Expressを活用しています。

さらに中学年に進むと、低学年で身につけたデジタルツールの基礎スキルをもとに「情報を編集する力」「発信する力」を伸ばします。

Adobe Expressで牛乳パックのリサイクル方法の説明ビデオを制作。新入生でも迷わずできるように、年々わかりやすくブラッシュアップしている

生活科では街の良いところを集めてビデオにまとめる、委員会活動で牛乳パックをリサイクルする意義・正しい手順を説明するビデオを作るなどでAdobe Expressを活用。データを集め、統計し、啓発するという一連の中で、動画の特性を活かしたアウトプットで情報をわかりやすく効果的に伝えます。

学年を問わず常にChromebookを手元に置き、あらゆる学習活動でAdobe Expressをはじめ様々なアプリを使いこなす同校の児童たち。松本校長は、同校において「通常の授業を進めるうえで必要不可欠な基礎スキル」と話しますが、低学年で最初のハードルとなりそうな基本的なツールの使い方は、どのように習得しているのでしょうか。

異学年交流・教員間の情報共有が活用ハードルを払拭

同校の出した解決策は、高学年の子どもたちが低・中学年を支援する方法でした。「先生一人で40名クラス全員に基本操作を細かく指導するのは難しい。しかし、すでに使いこなせている高学年の児童なら一人ひとりに目を配ることができ、つまずきやすいポイントも実感をもって知っています」と松本校長。

必要に応じて低学年をICT面でサポートする高学年の子どもたち。それぞれ使いながら覚えてきた知見をもとに、教員が気づきづらい困りごとにも寄り添って教えられる

同校の活発なデジタルツール活用を後ろ支えするのは、こういった子どもたちの異学年交流に限りません。松本校長は、教員同士の知見の共有として「雑談を大切にしている」とのこと。毎週の定例研修のほか、10分ほどのミニ報告会を随時設けるなど、教員間で会話が生まれやすい場づくりに気を配っています。授業の実践例からアプリの新機能の紹介まで、小まめなナレッジ共有がより良い授業デザインへとつながっているようです。

情報活用能力の体系表に基づくカリキュラム・マネジメント、授業デザインによって「協働的な学びはできるようになった」と手応えを感じています。同校が今後のテーマとして挙げるのは「個別最適化」。児童一人ひとりの課題意識やニーズに合った学びづくりは、人的リソースが問題となるものの、テクノロジーの活用でそのハードルを乗り越えチャレンジできればと意気込みます。

低学年から日常の学習活動でクリエイティブツールを使いながら学び、幅広い表現とアウトプットの方法を習得する子どもたち。協働的な学びとともに個々の課題に沿った探究を通して、今後さらに豊かな創造性が育まれていくのが楽しみです。