障がいのある人々の自然体を映すポートレート制作 Adobe Stockアーティスト:Gabriel Vergani

Man with prosthetic leg walking with friend.

クレジット:Adobe Stock / Gabriel Vergani

Adobe StockコントリビューターのGabriel Verganiさんは、物心ついた頃から写真の世界に惹かれてきました。彼はいつも、次のようなアドバイスを胸に刻んできました。「自分が熱中できる物事を一つ選び、それを追求することに自らの人生とキャリアを賭けるべきだ」

ブラジル・サンパウロのブタンタ地区で生まれ育ったVerganiさん。はじめは、家業である観光業の世界で、写真に情熱を傾けていました。19歳ではじめての給料をもらうと、そのお金でデジタルカメラを購入しました。

それから間もなく、彼の作品は写真コンテストの審査員の目にとまり、本格的に写真家としてのキャリアを進むきっかけとなりました。スキルを磨くために講座を受け、そこで建築物の写真撮影に強く惹かれるようになりました。現在Verganiさんは、ホテルやオフィス、レストランなどをクライアントとするほか、ストック写真の撮影も行っています。

Verganiさんはこう語ります。「建築物の撮影では、時間をかけて構想を練り、じっくりイメージを働かせて、成果物を作り上げていきます。この丁寧なアプローチを通じて、僕は写真と深いところでつながることができます。ポジショニングや光を理解しながら、そうしたイメージを作り出すためにあれこれ考えるプロセスが、本当に楽しいです」

ポートレート撮影のときは、温かみのある写真にすることを心掛けているようです。それは、彼がブラジル育ちだからだといいます。笑っている顔や、ハグをしたり触れ合ったりしている様子、身を寄せ合っている姿、愛情を表現している様子、交流している様子の写真を制作するのが好きだとVerganiさんは語ります。

「ブラジルの文化を表現したいと思っています。何人かで集まって、みんなが一緒になって楽しんでいる様子を撮影するのが好きです。その成果物はいつも驚くほどダイナミックな写真に仕上がります。自分のブラジル人の血筋と関係しているのかわかりませんが、きっと、ブラジル人ならではの温かみやホスピタリティによるものだと思います」

Left: A child with disabilities laughing and having fun with mother in bedroom; Right: Photographer Gabriel Vergani

クレジット:Adobe Stock / Gabriel Vergani(Gabriel Vergani提供)

障がいを持つ人々のポートレート制作

「多様性をカメラでとらえることができて、ありがたいですし、楽しいと思っています」とVerganiさんは言います。「障がいのある人々を、その人らしさが表れるように、ポジティブな姿勢で撮影するということに関心を持ってきました」

Verganiさんは制作の方針を考えるにあたり、身体の多様性をビジュアルで表現するだけでなく、障がいのある人々の地域の多様性も反映して表現に厚みを持たせることで、障がい者コミュニティの多様性に対する見方を広げたいと考えました。

障がいのある方を被写体とするストック写真は、白人に偏っているケースが多く見られます。しかし本来は、あらゆる人種や民族に障がいのある方々がいます。障がいを持つ人々は世界に10億人以上いますが、北米のテレビの登場人物の中で障がいのある人々が占める割合は3%未満です。また登場したとしても、障がいのない俳優が演じることがほとんどです。世界は明らかに、障がいのある人々をもっと表舞台に登場させるべきであり、また、その表現はより正確でなければなりません。

「Adobe Stockは、そうした写真を自分なりのやり方で撮るために必要な自由度を十分に与えてくれました」とVerganiさんは語ります。「できるだけ、さまざまな背景、年齢、民族の人々を呼んで、さまざまな活動を映そうとしていました」

その過程の中でVerganiさんは、障がいのある人々と一緒に仕事をするにはどうしたらよいか、関わるすべての人にとって最良の環境を作るにはどうしたらよいかについて、理解を深めていきました。

例えば、以前撮影したカップルに聞いた話の中で、ハッとしたことがあるといいます。車いすユーザーである2人から聞いた話によると、ストック画像では多くの人が「車いす」と聞いてイメージするような車いすが映っていますが、実はそれは、病院の外で患者を移動させるためにだけ使われるものだそうです。しかし、2人を含め車いすユーザーの多くが使うのは、そうした介助用の車いすよりもずっと小ぶりなものだそうです。また、ストック写真では車いすを誰かが押している様子を映したものが多いものの、車いすユーザーの多くは、他者の介助なしに自分で動かす方が好きだと説明されました。

障がいを持つ人が日常で実際に使っている機器を普段と同じように使っている姿ではなく、障がいのないモデルが撮影用の小道具を使って障がい者に扮するストック写真では、こうしたニュアンスが失われやすいとVerganiさんは指摘します。

Person in wheelchair playing basketball outside and sister embracing child with disability in simple living room.

クレジット:(左)Adobe Stock / Gabriel Vergani、(右)Adobe Stock / Gabriel Vergani

人の自然体を映し出す

撮影前は入念にリサーチや準備をするというVerganiさんですが、それでも撮影中には新たな発見があるそうです。

「今でもまだ、自分の中から消し去るべき誤解や視点があると感じています。例えば撮影中に、特定の方向に『車いすを向けてください』とモデルの方に言ってしまったことがありました」とVerganiさん。車いすに乗っている人ではなく、車いすに焦点を当てるというミスを犯してしまったことに気が付きました。

Verganiさんのポートレート作品には、彼の写真の才能だけでなく、人々のストーリーを理解し、それをとらえようとするオープンな姿勢からくる繊細さがあります。

「撮影したことがあるモデルの中に、寿命を制限されるような障がいを持っている方がいました。この撮影は最終的に、その方の母親のために彼女の人生をビジュアルで残すという形になり、商業的なコンテンツを撮影するという域を超えて、とてもはかないひと時となりました。私はそれにとても感動したのです」とVerganiさんは語ります。また別のある時、車いすのバスケットボール選手を被写体にその方の自宅近くのコートで撮影していた際、自身が下半身不随となった事故に遭った場所をそっと指差したと言います。

「僕が撮影する人たちは、単なるモデルではなく、現実の生活やストーリーを持ったリアルな人物です」とVerganiさんは言います。「撮影は、一つの構造物と言えます。環境や光、被写体のフレーミングは僕がしますが、それは制作の半分でしかなく、写真に感情を与えるのはモデルの方々です。どんなモデルと撮影する時も、写真にあなた自身を投影して、自然体でいてくださいとお願いしています」

人は違っている部分がある以上に似た部分があるということを、自分が制作するようなストック写真を通じてもっと伝わってほしいというのが、Verganiさんの願いです。

この記事は2022年10月27日にSarah Rose Sharpにより作成&公開されたAdobe Stock artist Gabriel Vergani on creating authentic portraits of people with disabilitiesの抄訳です。

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