未来のバーチャル環境に向けて、コンテンツ制作を始める企業の心構え

バーチャルリアリティヘッドセットを覗き込む男性

メタバースが一過性の流行に過ぎないのか、それとも次の大きな潮流になるのか、まだまだ議論は続いていますが、没入型の体験がこれからも存在し続けることは確かでしょう。技術の進歩と、新しい種類の体験を求める顧客の存在により、一昔前は空想でしかなかったものが、今では現実の中に入り込みつつあります。Nike、カルティエ、Snapchat をはじめとする大手ブランドは、すでにさまざまな没入型体験を提供しています。

3D コンテンツ、没入型体験、そしてメタバースの存在感が高まる中、世界中の多様な企業がこのトレンドに注目し、将来のバーチャル世界における自社の役割を模索しています。それは、ブランドが現実世界で提供する商品に加え、プレミアムな体験に顧客が価値を見出す未来です。

アドビが主催したウェビナー「Creating Content Experiences for the Virtual Future」では、ブランドが没入型の体験を通じて顧客と関わる必要性について検証しました。具体的には、デジタルが物理的なものと同等以上になった物理的な世界を前提に、顧客が何を求めているのか、企業が 3D を使うことで近い将来に何を得られるのかといったトピックが議論されています。

この記事では、没入型体験とメタバースがもたらす機会に前向きなビジネスリーダーのために、ウェビナーの中で語られた 3 つの重要な洞察を紹介します。

3D は、もはやただの「特殊効果」ではない

かつては本格的な 3D と言えば、VFX 映画やビデオゲームが占有する領域でした。しかし、この 30 年間の技術の進歩の恩恵を受けて、今では、ブランドマーケティングの新たな要素としても認知されつつあります。

アドビで 3D & イマーシブのビジネス開発部門の責任者を務める Sharrom Yezdegardi は、このパラダイムシフトを牽引しているのは、主に、ユニークな体験を求める顧客の欲求であると考えています。 「4 人中 3 人は、プレミアムな製品よりも、プレミアムな体験にお金を払うことに前向きです」と彼は発言しました。

3D による没入感とインタラクティブがもたらす利点は、ブランドにとってとても魅力的なものであり、そこには活用しないという選択肢がないほどです。顧客をより深く理解する機会になるのはもちろん、顧客との関わりをより良いものにできるため、ブランドロイヤルティの構築に役立ちます。

以前であれば、3D のような技術は、ゲーム的な要素が欲しい場面のみで使われる特別な効果だったかもしれません。しかし、消費者の嗜好、特にパンデミックによる消費者の行動の変容は、あらゆる分野の企業に創造的であることを求めています。今日の消費者のニーズを満たす手段として、仮想現実や拡張現実が急速に注目を集めたことは、決して偶然ではありません。

3D 技術やメタバースは一部の大企業だけのものではない

たいていの新しいテクノロジーと同じく、3D やメタバースへのよくある誤解のひとつに、参入するには膨大なコストがかかるというものがあります。たしかに、現在メタバースをリードする企業の多くは大手ブランドです。しかし、実のところ、没入型の体験をつくり出すことは、ますます身近なものになっています。

香港を拠点とするインタラクティブ & XR エージェンシー Visionaries 777 の共同設立者 Frantz Lasorne は、メタバースは、実験的な施策に対する意欲を持つ中小企業にも向いていると考えています。彼は、フランスのカスタム自動車メーカー DAB Motors が、購買の意思決定に影響を与えることを目的に、現実世界のような没入型の体験を提供している例を紹介しました。

その他には、社内トレーニングにも没入型体験が適している場合があります。特にリモートに社員を抱える環境では、没入型の教育体験を提供することが、コストに見合う効果を発揮する場合があります。

正しいマインドセットと組織的な関与は不可欠

Liam McClure は、正しいマインドセットを保つことの重要性と、人々がアイデアを表現できる安全な空間を確保することの必要性を指摘しました。「企業は、その想像力を制限されるべきではありません。テクノロジーを探求することに対して、前向きであることが必要です」と彼は、企業が持つべきマインドセットについて述べています。

正しいマインドセットを持つことに加えて、企業としての目標に沿った組織づくりも重要です。チーム間の連携や情報の共有、そして 3D 技術の採用による変革は、効果的な没入型体験を提供することによる、顧客と従業員の双方にとっての長期的な成功に向けた原動力になります。

また、Yezdegardi は、それと同じくらい重要なこととして、経営陣はがこれらの技術を通じて『なぜ』『何を』達成しようとしているのかを明確にすることを挙げています。「このテクノロジーの可能性を探求する際は、関係者全員がその目的に対して同じ理解を共有することが本当に重要です」と彼は言いました。

メタバースは、最先端の顧客体験への挑戦です。もし成功すれば、ブランドはこれから何年にもわたり、この注目を集める顧客体験を収益化できるようになるでしょう。そして、消費者を喜ばせられる何かをつくるには、大胆な発想と洞察に基づいたアプローチが求められます。

オンデマンドのウェビナーを見るには、ここをクリックしてください。次のようなトピックについて議論されています。

  1. ブランドにとって、3D や没入型の体験が持つ役割は何か?
  2. 3D コンテンツの必要性を高めている消費者のトレンドは何か?
  3. 短期的な視点で、3D を使うことのビジネス上の利点は何か?
  4. これまでに成功しているブランドから学べることは何か?
  5. ブランドはどのように着手することができるか?

この記事は Creating content experiences for the virtual future(著者: Adobe Communications Team)の抄訳です