個性際立つデザインで文字の表現力を大きく広げるFONT1000|Adobe Fontsパートナー紹介13

テキスト 中程度の精度で自動的に生成された説明

文字に豊かな表現力を与えるフォントは、クリエイティブには欠かせない道具のひとつです。アドビが展開する「Adobe Fonts」は、グラフィックデザインやweb、映像といったさまざまなフィールドでフォントをより自由に使えるようにするクラウドサービスで、2023年2月現在、600を超える日本語フォント、Adobe Fonts全体で2万以上のフォントを利用することができます。
この記事では、Adobe Fontsに参加する170を超えるフォントメーカーのなかから、一社をピックアップし、歴史や特徴、Adobe Fontsで利用可能なフォントを紹介していきます。

個性あふれるデザインフォントが集結した「FONT1000」

今回のフォントメーカー紹介では、FONT1000を中心に5つのブランドを取り上げます。
FONT1000はタイプデザイナーを中心に結成されたプロジェクトで、日本語の文章を組むのに必要な最低限の漢字1,000字に、ひらがな、カタカナ英数字、句読点等の約物を加えた文字セットを作り、それまでの書体にはない造形、筆法にチャレンジする実験的な取り組みとしてスタートしました。
このプロジェクトには、「築地」「良寛」「小町」「行成」「弘道軒」等を手がけた味岡伸太郎さん、「きりぎりす」「はるひ学園」で知られる七種泰史さん、モリサワの人気書体「すずむし」をデザインした豊島晶さん、ロゴデザイナーとしても有名な成澤正信さん等が参加。錚々たるメンバーから発表される斬新で目を惹きつけて止まない書体たちは、デザイナーの感性を大いに刺激することになりました。
従来のフォントにはない個性的なデザインは、MV等で文字がモーショングラフィックとして扱われるようになった昨今、ふたたび注目を集めており、Adoさんが歌う「ウタカタララバイ」では、リリックを織りなすフォントのひとつとしてFONT1000の「キコリ」が採用されています。

https://www.youtube.com/watch?v=hyV1AJiFNyo&

【Ado】ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)

漢字部分の書体はFONT1000「キコリ」。Adobe FontsでもAB版が利用可能
『ONE PIECE FILM RED』劇中歌「ウタカタララバイ」MV©️尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

FONT1000のフォントは、その後、テクノアドバンス社(当時/後述)の技術協力を受けて、漢字字種を拡張。それまで1,000字だった漢字は2,286字まで増え、合計約2,600字を収録したTA版(=TechnoAdvance)として販売を開始しました。
Adobe Fontsでは、FONT1000の131書体のうち、94ファミリー・96書体がFONT1000ブランドで提供されています(一部のFONT1000書体は、スキルインフォメーションズにOEM提供されており、Adobe Fontsからも利用可能)。
Adobe Fonts/スキルインフォメーションズ https://fonts.adobe.com/foundries/skill-information-s-co-ltd

FONT1000 https://fonts.adobe.com/foundries/font1000

FONT1000のフォントは、Adobe Fonts版(AB)と製品版(TA)で収録している文字数に違いがあります。フォント名に「AB-」がつくAdobe Fonts版は、漢字1,000字にひらがな、カタカナ、英数字、約物等を加えた1,206字に留まります。Adobe Fontsでデザインを試し、文字に不足を感じたら、フォント名に「TA-」がつく製品版フォントを導入するとよいでしょう。

フォント制作を支え続けるウェブフォントジャパン

FONT1000がTA版としてリリースされ、現在、Adobe Fontsでも利用可能になった背景には、片岡正さんという立役者の存在がありました。
片岡さんは1996年にテクノアドバンス社を設立し、サイン&ディスプレイ業界向けにカッティングマシンソフト「Gradeo」を発表。あわせて専用フォントを開発します。2001年には特定の漢字から別の漢字を自動生成する「フォントウィザード」、2002年には自分の手描き文字をフォントにする「マイフォント」、2003年には日本初となるWebFontサービス、手書きデザインフォントを専門に扱うブランド「手書き屋本舗」と次々にフォントサービスを手がけました。
その後、FONT1000プロジェクトで代表を務めていたタイプデザイナーの味岡伸太郎さんと出会った片岡さんは、「フォントウィザード」の自動生成エンジンをカスタマイズすることで、FONT1000のフォントが持つ1,000字の漢字を2,286字まで拡張することに成功。これによってFONT1000のフォントは製品として販売できるようになったのです。

片岡さんは2022年6月、ウェブフォントジャパンを新たに設立。現在、Adobe FontsではFONT1000に加えて、Gradeoフォント、手書き屋本舗、味明(Ajimin)、好恵の良寛さん(Yoshie no Ryokan-san)、計5ブランドを展開しています。以降、FONT1000以外の4つのブランドについて、その特徴を紹介します。

カッティングマシン用に作られた「Gradeo フォント」

Gradeoフォントは、片岡さんがカッティングマシンソフト「Gradeo」向けに開発したフォントです。明朝、角ゴシック、丸ゴシックのほか、個性的なデザインフォントも揃い、Adobe Fontsでは13ファミリー・24書体が提供されています。

テキスト 自動的に生成された説明

上から「AB-つらら」「TA重ね丸ゴ」「TA-角ゴGF」「TA-明朝GF」

Gradeoフォント https://fonts.adobe.com/foundries/gradeo-fonts

質の高い回文字フォントを提供する「手書き屋本舗」

手書き屋本舗は、より質の高い手書きフォントを提供するために片岡さんが2003年に立ち上げたフォントブランドです。ほどよいクセ字からチョークや筆の質感を生かしたものまで表現の幅広さが特徴で、Adobe Fontsでは18書体が提供されています。

上から「TA秋 」「TA恋心 」「AB-チョーク」「AB あっぱれ 」

テキスト 自動的に生成された説明

手書き屋本舗 https://fonts.adobe.com/foundries/tegakiya-honpo

味岡伸太郎さんが手がける見出し用明朝体「味明」

味明(Ajimin)は、タイプデザイナー・味岡伸太郎さんによる見出し明朝体「味明」を提供するブランドです。2種類の漢字(味明)と10種のかな(味かな)によって構成され、その組み合わせによって多様なバリエーションを実現しています。
漢字のウェイトはEBのみですが、10種のかなはそれぞれ10のウェイト、合計10×10=100書体を揃え、EB以外の味かなを使う場合は、各ウェイトに合わせて既存のフォントと組み合わせて使用します。書風の変化に加え、ウェイトがしっかり揃っているため、明朝体の表現力をこれまで以上に高めることができるでしょう。
Adobe Fontsではこのうち、味明・味明モダンの2種類の漢字に、それぞれ10種の味かなを組み合わせた・20書体が提供されています。
漢字:味明+かな:築・築C・秀・秀L・秀V・民・行・弘・良・草(計10書体)
漢字:味明モダン+かな:築・築C・秀・秀L・秀V・民・行・弘・良・草 (計10書体)

Adobe Fonts提供書体は2種の漢字と10種のかなの組み合わせてで構成されている

味明(Ajimin) https://fonts.adobe.com/foundries/ajimin

良寛の臨書を書体化した「好恵の良寛さん」

好恵の良寛さんは、江戸後期の禅僧・良寛の墨跡をもとに作られた書体をリリースしているフォントブランドです。フォント名はブランド名と同じ「好恵の良寛さん」で、筆で臨書した文字をもとに作られた「好恵の良寛さん」とサインペンで臨書した文字をもとにした「好恵の良寛さん Pen」の2種類が各3ウェイト提供されています。Adobe Fontsではこのうち、筆文字タイプの「好恵の良寛さん」3書体を利用することができます。

テキスト, 手紙 自動的に生成された説明

上から「AB好恵の良寛さん」M/DB/B

好恵の良寛さん(Yoshie no Ryokan-san) https://fonts.adobe.com/foundries/yoshie-no-ryokan-san

SNS・映像でもインパクト大!個性際立つフォントパック

Adobe Fontsで使用可能な多くのフォントのなかから、イメージや目的にあわせて厳選して提供する「フォントパック」に、「インパクト抜群!個性際立つフォントパック」が追加されました。FONT1000・96ファミリーのなかから、しっかりとした太みがあり、個性の強いフォントを10点セレクト。グラフィックデザインだけでなく、webバナーやSNS、映像でもそれまでのフォントにはない、インパクトのあるデザインに仕上げることができます。

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