電子サインに立ちはだかる「社内調整」の壁 〜上司と部下、部署同士の信頼関係が導入のカギに〜

時計, 挿絵, コンピュータ が含まれている画像 自動的に生成された説明

対外的な契約や社内承認など、紙と押印に頼っていた業務フローはデジタル化への移行が避けられなくなっている。リモートワークへの対応、災害時などの事業継続の観点から、ビジネスプロセスのデジタル化が不可欠だからである。しかし、押印に代わる電子サインの導入には阻害要因が少なくない。導入が進まない理由とその解決策とはどのようなものだろうか。電子サインのソリューション「Adobe Acrobat Sign」を提供するアドビが、導入の障壁の乗り越え方を指南する。

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アドビ マーケティング本部デジタルメディア ビジネスマーケティング マーケティングスペシャリスト 島田 昌隆氏

総論賛成でも具体化しない電子サイン 導入が進まない3つの理由

戸川:コロナ禍で多くの会社が効率化を一段と進めています。そうした中で、デジタル化の1つの具体的な取り組みとして電子署名、電子サインがあります。これまで紙で行っていた承認や契約などのプロセスを電子化するものです。出社が制限されたこともあり、多くの会社で「総論賛成」だと思いますが、実際には具体化しにくい部分もあるようです。解決策はあるのでしょうか。

島田:電子サインの導入が進まない理由として、アドビでは3つのポイントがあると考えています。1つ目は「社内の調整」です。例えば、導入担当者が多忙のため、社内調整から導入まで進まないケースです。2つ目が「環境構築」で、電子サインの導入というシステム面だけでなく、社内の押印規定をどうするかといった様々な環境整備が必要になります。3つ目が「コストがよく分からない」で、ベンダーからの言い値のコストで導入していいのかが分からず進まなくなってしまうケースです。今回は最初の「社内調整」の部分に絞って解決策を考えていきたいと思います。

戸川:新しいことをしようとすると、確かに誰もが面倒なことはやりたくないという気持ちになります。どの部門も仕事は多岐に渡るにもかかわらず、人を削減して忙しいですから、総論賛成でも具体的に自分がかかわるとなると各論反対になりがちですね。

根っこにある上司と部下の信頼関係 社内コミュニケーションが不可欠

島田:「社内調整」をさらに具体的にみると、大きく分けて4つの課題があると考えています。1つは「関連部門が多岐に渡り、各部門が人手不足で忙しい」です。電子サインの導入には、法務部や総務部、営業部門や情報システム部門が絡むことがよくありますが、特に昨今の社内のデジタル化の流れで忙しくなっている部署は情報システム部門かもしれません。忙しさを解決するアイデアは単純で「自分の業務を効率化する」「ほかの人に仕事を渡す」「やらないという判断をする」のいずれかを実現すればいいのですが、いずれにしても「忙しさ」の解決の実現には管理者の考えが重要なポイントになります。すなわち、上司と部下の信頼関係が重要なのです。

戸川:DX(デジタルトランスフォーメーション)や電子サインの導入というデジタル化の案件でも、アナログな上司と部下の信頼関係がないとできないのですね。

島田:アナログな上司でもデジタルな上司でも、そもそも日々の業務から信頼関係を築きましょう。特にコロナ禍以降は、チャットベースで業務が進むことが多くなっています。対面で話ができたときよりもよりお互いに信頼できないと何も進まないため、以前より信頼関係については敏感に捉えて良いと思います。当たり前のことを言っているように思われるかもしれませんが、当たり前が難しい世の中になっているので、あらためて念を押したいですね。

机の上に座っている男性たち 低い精度で自動的に生成された説明

課題の2つ目は「社内の誰と調整すればいいか分からない」です。ここでは、これまで導入してきた他のシステムの導入担当者に聞いてみるのがおすすめです。日々利用している勤怠システムや経費精算システムの導入を担当した人は、社内のキーパーソンや連絡すべき部署、経営者との話すべき内容などを理解しています。まずは社内で確認していくことが大切です。

戸川:前進するために、まずは気軽に聞いてみるということですね。

島田:3つ目は「社内でどれくらいの需要があるか分からない」ことです。進めるにあたって、社内で電子サインを必要としている人はどの程度いるのか、電子サインを使う紙書類はどれか、ということはよくポイントになります。また、この段階では逆に電子サイン導入に向けて何が必要か、ということも少しずつ理解しはじめる必要があります。当たり前ですが、情報収集としてまずはネットで検索してみましょう。そうすることで、電子サインでは契約書の数が重要だということが分かってきます。

戸川:契約書の数はコストに直結しますね。

島田:アドビの調査で、不動産業で電子サイン化が進んでいないことが分かりました。例えば不動産賃貸では、内見から契約、更新まで、ほとんどが紙業務なのです。しかし、2022年5月に宅建法が改正され、電子化のハードルが下がります。そうした外部環境を調べた上で、どのぐらい自社で電子サインの需要があるかをヒアリングしてみると、今後の変化に対応しやすくなるでしょう。意外な部署から「この押印はぜひ電子サインにしたい」と声があがることがよくあります。

戸川:今まで電子化できていない業界でも、制度が変わることで良くなる点を共有しないともったいないですね。

島田:4つ目が「部署間の連携を取るのが難しい」で、利害関係があってプロジェクトが進まないようなケースです。アドビでは、相手のワークスタイルに合わせてみることで、コミュニケーションを円滑にしていく方法を推奨しています。

5年後の活用を見据えた情報提供や 顧客にアナログ手法で誘導したことも

戸川:具体的な電子サインの事例を紹介してください。

島田:ソニー銀行の事例を紹介します。紙から電子に変わることは社員としては賛成でも、業務が変わることへの恐れ、電子化することによる業務の煩雑化への恐れがあり、アドビが将来を見越した情報提供をした事例です。一般に電子サインの導入でも「スモールスタート」がうたわれます。しかし、小規模で成功して全社に展開を考えた途端に社内システムとの連携がうまくできず、振り出しに戻ることもあります。アドビではそうしたリスクを避けるため「スモールスタートで始めて、5年後にはどのような形で活用したいか」を見据えた情報提供をしました。ソニー銀行では、顧客管理システムのSalesforceとAdobe Acrobat Signを連携することで、将来を見越した導入が実現しました。

戸川:システム連携を視野に入れてプロジェクトを進めたことが学びですね。もしスモールスタートだけを考えて導入してしまったら、と考えると恐ろしいです。ほかにも事例はありますか。

島田:不動産業のアットホームも面白い事例です。賃貸契約でAdobe Acrobat Signを活用していただいています。不動産の更新手続きをするお客様にメールアドレス登録用のWebサイトに遷移できるQRコードを印字したハガキを送付。その結果、書面で更新を行いたいという方以外、ほぼ100%の割合で取得することができました。

そして、メールアドレスを登録した入居者は、パソコンもしくはモバイルデバイスで受信した更新通知メールを開き、配置されたリンクをタップする。すると、ブラウザー内に書類が表示されるので、内容を確認して署名フィールドに文字入力または手書きでサインし「クリックして署名」をタップするだけで電子サインが完了します。

つまり、アットホーム様では、更新手続きをするお客様への更新業務をデジタル化する仕組みを構築しました。これはお客様の反応がとても良かったそうです。

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Adobe Acrobat Signの導入でアットホーム株式会社が実現した4つの価値

ツールとしての性能・機能に加えて アドビのエコシステムを最大限に活用

戸川:お話を聞くと、顧客に寄り添いながら壁を乗り越えていることが分かります。

島田:ここでアドビのエコシステムが効果を発揮しています。アドビのエコシステムには、法令対応に不安を感じられる方にご支援できるコンサルティングパートナーがいます。Adobe Acrobat Signの導入だけでなく、運用を見据えた押印規定の作り方からアドバイスすることもできます。もちろん、連携したい利用中のシステムがある場合は、開発をご支援できるITのソリューションパートナーもいます。

戸川:法令への対応などもコンサルもしてもらえるのはありがたいです。根本のITツールとしてのアピールポイントも教えてください。

島田:PDFを生み出したのが、そもそもアドビであるということも、あらためてアピールしたいですね。アドビのPDFは長期の参照性に優れていて、いつまで経ってもPDFの見え方が崩れませんので、長期の参照性が重要な契約書に適しています。また、Adobe Acrobat Signはセキュリティと改ざん防止に優れています。さらに、他のシステムとの連携性も抜群です。例えば、Microsoft製品との連携は開発不要で、すぐにお使いいただけます。ツールとしての性能や機能に加えて、多くのパートナーと一緒に最適な電子サインの導入をご支援できるアドビのエコシステムを活かすことで、電子サインの導入に立ちはだかる様々な壁を乗り越えてほしいと思います。

Adobe Acrobat Signの導入でソニー銀行が実現した4つの価値

Adobe Acrobatの電子契約機能について
https://www.adobe.com/jp/acrobat/information/business-solution/sign-pdf.html

Adobe Acrobat Signについて
https://www.adobe.com/jp/sign.html

また、アドビのWebサイト内にはさまざまな動画やお役立ち資料をご用意しています。AcrobatとAcrobat Signで脱ハンコ・ペーパーレス化の第一歩を踏み出してみてください。

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