最新!新卒採用の傾向 ーデジタル時代に真に求められるスキルとはー

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コロナ禍にデシタル化が進み、企業の採用事情は大きく変化しました。アドビでは、企業が求める人材像のトレンドが見えるセミナー「最新!新卒採用の傾向 −デジタル時代に真に求められるスキルとは−」を、2023年2月28日(火)に開催。大学、専門学校のキャリア支援担当者に向け、株式会社マイナビからの最新採用事情の講演と、就職活動を経た学生の体験談を通してリアルな動向を伝えしました。

新卒採用は前年比アップで推移

はじめに最新の新卒採用事情について、株式会社マイナビ マイナビ副編集長 吉田優太氏による講演が行われました。吉田氏はコロナ禍で採用フローが大きく変化し、説明会、面接ともにオンラインでの実施比率が圧倒的に高まったことを示しました。最終面接こそ対面の割合が高まっているものの、この傾向は一過性のものではなく、企業側の働き方の変化に伴い今後もオンライン中心の採用活動が続くと見通します。

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吉田氏の講演。コロナ禍で採用手段は様変わりした

オンラインが中心となってから、学生が提出するエントリーシートは多様化し、動画や自己表現力を試されるようなものも出てきました。また企業によっては、採用試験でデザイン思考テストを行い、課題発見力、課題解決力を見るという動きもあり、これらの動向も継続する見込みです。

大きな変化の中でも企業側の採用意欲は高まりを見せ、新卒採用実績のある企業は2023年(予定)で72.3%と、前年比+7.1%の高い水準で推移(※1)しています。ここで注目したいのがその理由です。2021年、2022年ともに新卒採用を実施した理由の1位は、「専門能力や技術を持つ人材の獲得」でした(※1)。ただし、新卒採用では、明確なジョブ型採用の即戦力よりも、専門知識を学んだ経験や、高い関心と意欲を持っているなどのポテンシャルが重視されているのが特徴です。

実際、企業が新卒採用時に重視することを聞いた調査(※2)では、スキルや能力よりも、人柄やカルチャーフィット(社風との相性)に関する項目が、より強く求められています。「専門的スキル等の職務適正は必須ではないものの、あれば望ましくボーダーラインの際に合格しやすい要素です。学生時代にスキルを身に付けたり学んだりしておくことはとても大事です」と吉田氏は解説しました。

(※1:マイナビ「人材ニーズ調査2022年版」。※2マイナビ「2023年卒新卒採用予定調査」)

仕事の現場ではデジタルリテラシーが求められる

企業の業務自体が大きくオンラインにシフトしたことで、社員が求められるスキルも変化しています。全体としては、「相手の話を聞く力」と「プレゼン力」が上位にきますが、非上場企業と比べて上場企業で顕著に高く求められているスキルがあります。それが「デジタルリテラシー」と「ファシリテーション能力」です。特にデジタルリテラシーは20ポイント近い差をつけていて、上場企業ではパソコンやスマートフォンなどの情報機器やオンライン業務に必要なさまざまなアプリケーションを使いこなして業務を進める力が求められていることがわかります。

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講演資料より。上場企業はデジタルリテラシーを求める割合が目立って高い

また、業務もオンラインと対面の併用で行われることが増えているため、採用においてもオンラインと対面の両方で変わらないコミュニケーション力を発揮できることが求められているということを、吉田氏は紹介しました。オンラインではスムーズに自己表現できていた学生が、対面では印象が違うというケースがあるのだとか。学生が求められる対応力も変化しているのです。

続いて、2023年4月より新社会人になる2人の学生が自らの体験を語りました。

クリエイティブツールで「わかりやすく伝える」ことを追求

北海道大学公共政策大学院修士2年の米田夏輝さんは、シンクタンクへの就職が決まっており、政策研究に携わる予定です。就職活動はオンラインが中心で、採用過程で課されるグループディスカッションも画面越しでした。初対面の学生同士が、限られた時間で意見をまとめなければなりません。米田さんは面接官にわかりやすくグループの意見を伝えられるよう、積極的に画面共有の権限を得て、議論をリアルタイムで資料に可視化しながら進行したそうです。

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北海道大学公共政策大学院修士2年の米田夏輝さん

米田さんは大学院でアドビのクリエイティブツールを学ぶ機会があり、インタビュー動画編集や自分の研究に関するポスター制作などの実習も経験しました。フライヤーやパンフレットを作る機会も多く、スライド資料作成も得意分野。グループディスカッションで力を発揮できたのは、「こういう風にすれば分かりやすいのではないか」と考えて制作をする経験を重ねたことが基盤になっていると分析します。また、エントリーシートに特技としてAdobe PhotoshopPremiere Proを使えることを記載すると、面接の際に話題になり好印象につながるという実感を得ました。

米田さんは、「就職活動に大切なのは、それまで自分が取り組んできたことをきちんと相手に伝えることだと思います。従来であれば、言葉でのエントリーシートや面接などですが、また別のひとつの手法として、クリエイティブツールは大きな役割を持つのではないかと思います」と話します。クリエイティブツールで自分を表現する幅を広げながら、大学院での研究調査や様々な経験を積み上げてきた米田さんのお話には安定感があり、新社会人としての着実なスタートを予感させられました。

自己表現にクリエイティブツールを駆使してスキルをアピール

専修大学経営学部経営学科4年の岡田有莉夏さんは、ウェブマーケティング系のベンチャー企業に、営業職として就職が決まっています。コロナ禍の就職活動の履歴書は9割以上がデータでの提出。岡田さんはAdobe XDでポートフォリオを作成して共有リンクを発行し、履歴書にポートフォリオのURLを貼るという方法を取りました。大学時代の様々な実績はもちろん、経営学を学んだ理由や自身の性格などをウェブサイトのようなデザインでまとめ、採用担当者により深く自分のことを伝える工夫をしたのです。

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専修大学経営学部経営学科4年の岡田有莉夏さん

岡田さんは大学でアドビ製品と出会い、Premiere Proでの動画制作を入り口に、グラフィック制作や写真の加工、UIデザインなどにも興味を持ち、Creative Cloudの他のツールにも挑戦するようになります。特に大学の授業やゼミなどはプレゼンテーションの機会が多く、Adobe XDで資料作成をする経験を重ね、どのようなデザインにしたら伝わるかを繰り返し試してきました。それがアウトプットの練習となり、就職活動のポートフォリオ制作にも存分に生かされました。また、対面の面接ではポートフォリオ閲覧用のQRコードを印刷して渡したり、オンライン面接では見てもらいたい記事リンクをチャットで送ったりと、デジタルのメリットを生かしてアピールのチャンスを逃しませんでした。

岡田さんは得意の動画編集の仕事を内定先企業から依頼されるという貴重な経験をしました。企業がクリエイティブスキルをプラスの要素として注目していることが明らかです。「学業のためにクリエイティブツールを使っていると、自然と技術的な面も身について、それが例えば動画編集の仕事をいただけるという好循環を生み出せました」と岡田さんは振り返ります。ツールを積極的に使いながらクリエイティブスキルを身につけてきた岡田さんのお話には、経験に支えられた自信があふれていて、新社会人としての活躍を予感させられました。

クリエイティブスキルが可能性を広げる

ふたりの体験談から、米田さんと岡田さんがクリエイティブスキルはもちろんのこと、吉田氏が講演で示した「デジタルリテラシー」を当たり前のように身につけていたことがわかります。採用の過程で、自らを表現するときにその力が自然と発揮され、企業側に際立ったスキルとして伝わったのは間違いありません。

本セミナーの進行役でもあるアドビ エデュケーションマーケティング部 部長 江口美菜子は、アドビの調査から、企業が採用時にクリエイティブツールのスキルを重視する傾向が高まっていることを示しました。営業、企画・経営、管理・事務などの非クリエイティブ職の求人を調べると、クリエイティブツールスキルを歓迎するという記述が、2010年と比較して2022年には、大幅に増加したのです。

「管理・事務において数字が顕著に伸びている要因として、リモートワークの普及に伴ってオンライン商談でも、遠隔でも内容が相手にわかりやすいように、これまで文字やグラフが中心だった営業資料に、簡単なグラフィックを制作することが求められる場面が増加傾向にあるということが考えられます」と江口は解説しました。

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アドビの調査結果を解説する江口

こうしたクリエイティブスキルを学生のうちから身につけられるように、筑波大学、北海道大学大学院、千葉大学で開講されている「デジタルクリエイティブ基礎講座」を紹介しました。ツールの使い方はもちろん、デザインの基礎知識を実習を交えて対面で学べる内容で、米田さんは、北海道大学大学院でこの講座を受講したことがアドビ製品を使いこなすきっかけとなりました。

この講座を全国の大学や専門学校で活用できるようにオンデマンド化した「デジタルクリエイティブ基礎講座オンライン版」があり、ライセンス購入数などの一定の条件を満たすと無償で提供されます。江口は、オンライン版には学生が個別に自習スタイルで取り組める気軽さや、大学の授業の補助教材として活用する利便性が高いことなどを紹介しました。大学が教材制作の負担をすることなく、学びたいと思った学生に十分な知識を提供することができるのです。

米田さんと岡田さんのように、専攻の学業に加えてクリエイティブスキルを身につけることは、学業や学生生活で活躍の場を広げるだけでなく、社会に出る後押しとなり、仕事においても継続して重要なスキルセットとなるでしょう。クリエイティブツールと出会うことが、自らの可能性を広げるきっかけになるということが伝わってくるセミナーでした。(文:狩野さやか)