3Dの最新技術が開く新たなビジネスの可能性を紹介~福岡工業大学
福岡工業大学では、教育、研究、働き方のさらなる高度化を実現するために、先端技術を活用した学内のDXに取り組んでいます。その一環としてアドビのライセンスを全教職員と学生が利用できる環境を整え、学生は自分が所有するパソコンからいつでもどこでも使用することができます。アドビ製品は学業のさまざまなシーンで活用されていますが、数あるアプリケーションの中でもよく利用されるものは偏りがちでAdobe Acrobat、Photoshop、Illustrator、Premiere Proなどが主流でした。そこでアドビでは、ビジネスの世界での3D技術の位置付けの変化や、アドビの最新3D関連アプリケーションの機能を紹介するセミナーを2023年3月、2回にわたりオンラインで実施しました。
プロダクトを扱う業界で3D技術が新たな注目を集める
セミナーで3Dの世界を紹介するのはアドビのCreative Cloud Specialist加藤修一。まずは、3D技術の存在価値がこの数年でどのように変化してきたのかを解説しました。
3Dというと、ゲームや映画、アートなどエンターテイメント業界のものというイメージがあり、実際にアプリケーションの購買層も同業界で占められていました。ところが、コロナ禍が大きなインパクトとなり、プロダクトを扱うアパレル、自動車、製造、建築・インテリアなどの業界で3D技術への注目度が一気に上がります。ロックダウンで商品撮影が困難となり、3Dモデルを用いてソフト内でバーチャルに撮影を行う“バーチャルフォト”が解決策となったのです。ニューノーマル時代における最も期待されている分野です。
3D技術の注目度の変化を説明するアドビ加藤
これらはすべて、実際の撮影写真ではなくバーチャルフォト
バーチャルフォトのメリットと新たな顧客体験への可能性
バーチャルフォトは、実際の撮影と比べて、人的、時間的コストを抑えられるだけでなく、バリエーションを増やせる手軽さや即時性があり、廃棄物やエネルギー消費を削減できるためSDGsの観点からもメリットが際立ってきました。実際に世界的に有名な家具メーカーで、カタログの75%をバーチャルフォトで構成しているという例もあります。
リアルな撮影はSDGsの観点でいうとデメリットがある
また、プロダクトの質の高い3Dデータを活用すれば、新たな顧客体験を生み出すことができます。例えば、ウェブショップ上で商品のカスタマイズをしたり、ARで商品を自分の部屋に置いた情景を確かめたり、ARでバーチャルに試着をしたりといったことがすでに実現していることを、加藤は紹介しました。さらに今後メタバースの世界がより身近なものになれば、VR空間においてよりリアルな質感のアバターや3Dオブジェクトが求められるようになるのは間違いありません。
3Dオブジェクトの表面素材に強いアドビの3D製品群
そこで重要になるのが、オブジェクトにリアリティを吹き込む表面素材です。アドビでは、高品質な表面素材の作成と3Dモデルへの適用、バーチャルフォトのレンダリングレイアウトを一貫してできる3 D製品群、Substance 3D Collectionをラインナップしています。加藤は、2022年10月にWindows版がリリースされたばかりの3Dモデリング用アプリを含め、5つの製品と1つのサービスにわたるコレクションを紹介しました。
アドビのSubstance 3D Collectionの製品ラインナップ
全体として、3Dデータを扱うことになれていない2Dのデザイナーでも直感的に操作できるようにできていて、操作の敷居が低く扱いやすいのが特徴です。2Dと3Dの垣根が曖昧になり、3Dが身近になってきました。
スニーカーの3Dモデルでデモンストレーション
加藤は、スニーカーのモデリングデータを用いて、テクスチャーの作成からレンダリングレイアウトまでの流れを実演してみせました。まずはSubstance 3D Samplerで平面画像から3Dモデル用テクスチャーであるマテリアルを作成。作成したマテリアルをSubstance 3D Stagerに送信して、用意しておいたスニーカーのモデリングデータにドラッグ&ドロップで適用します。非常に直感的な作業です。
3D Samplerで作ったグリーンの皮素材のマテリアルを3D Stagerでスニーカーの3Dモデルに適用したところ
さらに、ロゴマークを追加すると自動で表面にフィット。背景画像を追加する際はAIでパースを自動調整することができ、ライティングの適用も直感的です。加藤は短時間のデモンストレーションでオリジナルシューズを完成させ、Photoshop形式でレンダリングし、Photoshop側でテキストを追加して仕上げました。
3D Stagerでライティングを適用しているところ。光の当たり方を示してくれる
Photoshop形式にレンダリングして、Photoshopでテキストを追加
新たな技術の活用を知る機会に
最後に、加藤はSubstance 3D Collectionで作られたさまざまなバーチャルフォトの例と、国内で活用している企業や建築事務所などの実例を紹介し、実際に私たちの身の回りにすでに技術が浸透していることを示しました。
「企業は費用をかけて真剣にこの技術の活用に取り組んでいて、効率化に成功しているところ、売上に貢献しているところがたくさん出てきています。いろいろな業界で使われているので、学生の皆さんが現時点でSubstance 3D Collectionを試しておくと、就職される時にその知識が非常に役に立つのではないかと思います」と加藤はまとめ、気軽に触ってみることを薦めました。Substance 3D Collectionは、福岡工業大学が教職員や学生に用意しているアドビのライセンスに含まれていて、すぐに利用することができます。
質疑応答では、AR・MRの研究をしているという参加者からの質問も上がり、研究領域との親和性が高い教員、学生の皆さんが潜在的にいることがわかりました。セミナーを統括した福岡工業大学 情報基盤センターの成久智彦氏は、「昔からの定番のアプリケーション製品群のイメージで止まっていた認識から、昨今のアドビ製品で出来ることが大きく進んでいる認識を持つ機会になりました」とセミナーを振り返ります。参加者の感想には、「今後もあまり知られていない便利な製品の紹介や、そのアプリケーションを用いた制作プロセスをより詳しく見てみたい。実際に使ってみたい」という声があり、新たな技術との出会いの機会を提供することができました。
(文:狩野さやか)