ましろ「描いたあとでも調整・加工もできるAdobe Fresco」Adobe Fresco Creative Relay 38

ましろ|メインビジュアル

アドビでは毎月、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストコンテストを実施しています。応募は簡単、Twitterで アドビ公式アカウント をフォローして、 #Frescoイラコン をつけてTwitterへ投稿するだけです。
5月のテーマは「海の生き物」。海に暮らす多様な生き物たちをAdobe Frescoで描き、#Frescoイラコン をつけて投稿しましょう。
そして、この企画に連動したAdobe Frescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第38回は京都芸術大学に在学するイラストレーター・ましろさんに登場いただきました。

背景パターン が含まれている画像 自動的に生成された説明
ましろ|作品

眼前に広がる海のファンタジー

「“海の生きもの”は、小さな頃から自分でも好きなテーマだったので、自分が描いたことがあるもの、きれいだと思うもの、かっこいいと思うもの……すべてを詰め込んだ絵にしようと思って描きました。

普段から現実と非現実を組み合わせた作品を制作しているのですが、今回も男の子の前に現実ではあり得ないような空間が広がる様子を描こうと、おおまかな構図から決めていきました。それからは塗りを重ねながら、描き加えたり、削ったりしながら仕上げています。クジラが飛び跳ねて、パレードのように紙吹雪が舞う、ワクワクするような作品になったと思います」

誰よりも描くことで培った画力と表現力

2023年5月現在、京都芸術大学 芸術学部 情報デザイン学科 イラストレーションコース在籍に在籍するましろさん。幼少期から絵と触れ合い、小学1年生から年に一度は絵画の賞を取っていたというエピソードは並々ならぬ絵の才能を感じさせます。その背景には、尽きることのない絵への興味と情熱、そしてたゆみない努力がありました。

「子どもの頃からとにかく絵ばかりを描いていました。
幼稚園のとき、わたしが描いたカブトムシの幼虫の絵を先生がすごく褒めてくれて、親に至ってはその絵を見て、“もうこの子は絵で食べていくんだ”と思ったそうです(笑)。
小学校に上がってからは友だちの似顔絵やオリジナルのミニキャラを描くようになったのですが、授業中もずうと絵を描いていたせいで、毎回、先生に怒られていましたね……あのころ、ノートや教科書、白い紙のすべてがわたしにとっての自由帳でした」

ましろ|作品

高校2年の文化祭にむけて描いた作品。サメはましろさんお気に入りのモチーフのひとつ

小学生の頃に描く絵といえば、流行のマンガやアニメのキャラクターの模写がひとつの定番。しかし、ましろさんにとって、模写では自分で描いたという実感が得られなかったそうです。

「なにかを描き写すよりも、自分が想像したもの、思いついたものを描くほうがずっと楽しかったんです。
中学校で美術部に入ってからは、コンテストに応募するためにテーマに向けて絵を描くようになりました。それまでは好きなように絵を描くばかりで、テーマを自分で解釈して絵で表現するということ自体、はじめての経験でしたが、そこで賞をいただいたとき、自分の絵が認めてもらえたように思えて、うれしかったのを覚えています」

ましろ|作品

中学2年のときに描いたモネ『睡蓮』の模写

豊かな色彩はましろさんの作品の特徴のひとつですが、中学時代、ましろさんが色に興味を持つきっかけになったできごとがありました。

「美術の課題でモネの『睡蓮』を模写する機会があったのですが、自分で好きなように描いて先生に見せても、“色数が足りない”“ここが違う”“もっとよく見て描いて”となかなかOKがもらえなかったんです。
正確に写し取ろうと『睡蓮』を見ているうちに、“こんなに黄色を使っていたんだ”“ここにはこんな色があったんだ”とそれまで見えていなかったディテールが見えるようになって。模写を通して色のおもしろさに気づけたことで、作品に使う色も増えていきました」

ましろ|パレットと作品

左:段ボールのパレット(写真は大学以降使用しているもの)/右:アクリルガッシュで描かれた作品

「いろいろな色を使うようになってからは、パレットの決められた枠のなかに色を入れるのが嫌になってしまって、“もっとたくさんの色が置ける場所がほしい”という理由から使いはじめたのが段ボールのパレットです。
段ボールの上に色を重ねていくと、自分が思っていなかった色彩が生まれたり、偶然隣り合った色から新しい配色をみつけたりすることもあって、より感覚的に、直感的に色が扱えるようになりました」

ましろ|作品

左:高校時代のコンテスト受賞作品/右:高校時代のデッサン

高校進学先には、香川県立高松工芸高等学校 美術科を選択。“美術漬け”とも言える日々を通して、ましろさんの画力はさらに磨かれていきました。

「授業の前、朝7時半から8時半までデッサンをする時間があり、休みの時期にはコンテストやコンペに応募する作品を作り、片道1時間半の通学時間でも絵を描き……中学時代とは比べものにならないくらい、絵と向き合う毎日でした。
25人のクラスメートはみんな絵がうまくて、画風もそれぞれ違う。自分の知らない世界に触れて、最初は驚くばかりでしたね」

ましろ|作品

ましろさんの高校時代の作品(左:1年時/中・右:2年のときの自主制作作品「ウ!ミ!ウ!シ!」)

高校生活も終わりが近づき、卒業後の進路として選んだのが、現在在籍する京都芸術大学です。

「京都芸術大学に行こうと思ったのは、友だちがオープンキャンパスに誘ってくれたのがきっかけです。学校では誰もが自由に作品を作っていて、そこにめちゃくちゃ感動したんです。
本当ならいろいろな学校を見て進路を決めるべきなのですが、オープンキャンパスでの体験で満足しきってしまって。それからは京都芸術大学を目指すようになりました」

ましろ|作品

検診車ラッピングデザインコンペ(主催:一般財団法人京都工場保健会)で最優秀賞を受賞。ましろさんの絵でラッピングされた検診車はこれから約20年にわたって使われる予定

こうして京都芸術大学 芸術学部 情報デザイン学科へと進んだましろさんは、絵画とイラスト、ふたつの面で頭角を現していきます。「検診車ラッピングデザインコンペ」では色あざやかなクジャクを描き最優秀賞を受賞、京都芸術大学とひらかたパークによる産学連携プロジェクトではアトラクションを擬人化したイラストを制作。
現在は、TwitterやInstagramでも精力的にキャラクターやアニメーション作品を発表するほか、展示にも積極的に取り組んでいます。

ましろ|作品

左:ひらかたパーク アトラクション擬人化イラスト・トロールパニック パチャンガ/右:「サイバーパンク」

ましろ|作品

「タクティカルファッション」

ましろ|作品

「浸る」

アナログのタッチでそのまま描けるAdobe Fresco

ましろ|制作環境

ましろさんの普段の制作環境

中学1年生の頃からデジタルでイラストを描くようになったましろさん。
Adobe Frescoを使うのは今回がはじめてではなく、数年前からAdobe Frescoを授業の課題や自身の制作に活用していると言います。そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

「Adobe Frescoを使い始めたのは、大学一年のときです。
イラストを描いて自分の自己紹介をするという課題があったのですが、ツールがAdobe Fresco限定だったんです(笑)。京都芸術大学では各自一台、iPadを持っていたこともあって、すぐにAdobe Frescoをインストールしました。最初は鉛筆ツールくらいしか使いかたがわかりませんでしたが、まるで本当の鉛筆のように描けるので、友達と一緒になって絵を描いていましたね。
Adobe Frescoにアニメーション機能が搭載されたとき、何時間もかけて作品を制作してTwitterに投稿したら、アドビさんからも賞をいただいて。すごくうれしかったです」

パレット上で予期せず混ざり合う色を巧みに使いこなすましろさんの目に、リアルな水彩を再現するライブブラシはどのように映ったのでしょうか。

「2色を混ぜ合わせてグラデーションを作るとき、Adobe Frescoの水彩ライブブラシを使うと本当にリアルに色が混じります。“この色とこの色ならどんな色になるんだろう”と考えながら描くうちに思いがけない色が生まれることもあって……それがとても楽しいですね」

アナログの魅力とデジタルの強み。双方が活かせる環境にこそ、ましろさんは魅力を感じています。

「これまで使っていたツールでアナログで描いていたような作品を作ろうとすると、色がのっぺりとした感じになってしまうのですが、Adobe Frescoではアナログの感覚のまま描くことができました。絵の具を用意しなくても、iPadとAdobe Frescoがあればアナログと同じように絵が描けるのは本当にいいですよね。
アナログでは描いてしまったらそこで終わりになってしまいますが、Adobe Frescoならそこから調整、加工を加えることができるのもデジタルならではの魅力だと思います」

ましろ|Fresco画面

ましろさんはいま、Adobe Frescoをそれまでのアナログテイストの絵だけでなく、キャラクターイラストにも活用しはじめています。

「2023年5月のGW中に開催された、ドリームワールドさんとの二人展『ゆめましまし展』では、Adobe Frescoを使ってイラストを合作しました。ドリームワールドさんはデザイナーもされていて、普段からAdobe Frescoを使って作品を制作していたこともあり、“Adobe Frescoならお互いやりやすいね”という話になって。『電車ごっこ』のイラストでは、左のキャラクターをドリームワールドさんが、右のキャラクターと背景をわたしが担当しています」

ましろ|Fresco作品

Adobe Frescoで描かれた作品/右:電車ごっこ(ドリームワールドさんとの合作)

確かな画力と幅広い表現力を兼ね備えるましろさんですが、いまはまだ大学在学中。今後目指すものは何なのでしょうか。

「今までは自分が好きなものばかり描いて、それを見てもらえるだけでうれしいと思っていました。最近、それだけではいけない、もっと人に求められるような絵を描こうと考えるようになりました。いまはAdobe After Effectsにも取り組んでいて、2023年8月の展示ではショートアニメーションが作れたらと思っています。
いつか実現したいのは、“シャッターにアナログで絵を描くこと”です。多くの人に見てもらえて、長い間残り続ける場所。そこに自分の作品を残すことができたらいいですね」

ましろ
Twitter|https://twitter.com/Mashiro826826
Instagram|https://www.instagram.com/mashiro_826826
BOOTH|https://mashiro826.booth.pm/