ホラーコメディ映画『Appendage/ アペンデージ(原題)』 は、After Effects と Premiere Pro を駆使して作られました

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Image source: 20th Digital Studios/Hulu.

自己不信──分析しすぎたり、くよくよ考えたり、ネガティブな思考が身体的な症状として現れることはありませんが、ホラーコメディ映画『Appendage/アペンデージ(原題:付き物、付属物などの意)』では、それが具現化します。アンナ・ズロコビッチが脚本と監督を務めたこの映画は、20th Digital Studio /Huluの『Bite Size Halloween』シリーズのショートストーリーを基にしています。深刻な自己不信が身体の一部に肉体的な変化として現れる、若い女性を描いたこの映画の制作には、アドビのビデオ編集ツールが活用されました。

この映画で、ハドリー・ロビンソン演じるハンナは若いファッションデザイナーです。外見上は問題がなさそうですが、内心では深刻な自信喪失に苦しんでいました。この抑え込まれた感情がハンナを身体的に苦しめ、やがて、彼女の体に凶暴な寄生生物、アペンデージが芽生えます。ハンナの健康状態が悪化するにつれて、アペンデージはますます強力になり、仕事における才能の欠如、彼氏や親友との関係の悪化、両親の愛と理解の欠如など、彼女の不安を煽り始めます。限界点に達したハンナは、衝撃的な発見をすることに──彼女と同じような人が他にもいたのです。

「アペンデージ」の創造

制作チームは、VFX(視覚効果)とAdobe Creative Cloudを多用し、映画のほとんどのVFX作業にはAdobe After EffectsAdobe Photoshopを使用しました。

編集者のアレックス・ファミリアン氏は語ります。「生命を吹き込むために、マイクとアペンデージの口を同期させました。そうすることで、誰かがマイクに向かって話すと、実際のクリーチャーの口が言葉に合わせて開閉するようになります」と。「ポストプロダクションで台詞が少し変わった際には、Premiere Proのマスキングとトラッキングツールを使って一時的なVFX作業を行い、クリーチャーの口を新しい台詞に合わせつつ特殊効果の一貫性を保ちました。」

これらのツールに加えて、ファミリアン氏はPremiere Proのプロダクション機能を使用し、チームでリモート編集を行いました。彼自身がノースカロライナ州で、アシスタントエディターのジョナサン・ベラスケスはロサンゼルスで作業するため、この機能はワークフローにとって不可欠でした。チームはまた、Frame.ioを使用して、カットや音源をすべてのポストプロダクション部門と共有しました。

この映画は、2023年3月にSXSWで初公開され、今年後半にHuluでストリーミング配信される予定(北米)です。背景にはコメディ要素と風刺も感じさせ、文字通り魅力的な映画となりました。さらに、編集にまつわる舞台裏のストーリーも興味深いものです。

編集者のファミリアン氏に、この映画をどのように生み出したかを伺いました。

どこでどのように編集を学んだのですか?

12歳か13歳の頃、友達とMiniDVカメラで映画を制作しようとして、違法コピーのソフトを使って編集を始めました。当時はカバレッジという概念がまったくわからなかったので、ただ長くて不安定な一発撮りのショットをつなぎ合わせ、ビースティ・ボーイズの曲やシックスペンス・ノン・ザ・リッチャーの「Kiss Me」を被せただけでした。

このプロジェクトの始めにどんな準備をしましたか?

常にマウス、マウスパッド、キーボードを持参し、なんとか馴染みのある環境を保つようにしています。このプロジェクトでは、ノースカロライナ州のウィルミントンに、編集を行うための小さなオフィススペースを借りました。毎日、愛犬のコニーをオフィスに連れて行きましたよ。

お気に入りのシーンと、なぜそれが特別なのか教えてください

ハンナが他のアペンデージを持つ人々——“デュアルDNA”と出会うシーンは、お気に入りの一つです。私のSF的なツボにはまる感じの何かがあるんです。現実感があって、アペンデージとそれに関連する問題について秘密裏に集まり話し合うグループが、本当にレッドフックに存在するかのように感じました。

ポストプロダクションで直面した具体的な課題はありましたか?どうやって解決したのでしょう

複数の対話シーンで実物のクリーチャーを使っています。アンバー・マリが率いる優秀な特殊効果チームは、アペンデージの口とマイクを繋ぎ、それに向かって話すとクリーチャーの口が言葉に合わせて開閉するようにしたのです。見た目も感触もかなりリアルでした。問題が生じたのは、ポストプロダクションの段階で台詞が少し変更された時です。Premiere Pro のマスキングとトラッキングツールを使用して、クリーチャーの口が新しい台詞と一致しつつ特殊効果の統一性も維持できるように、一時的なVFX 作業を行いました。VFXの専門業者に頼ることなく、Premiere Proの機能で満足のいく結果をすぐに得られたのでとても助かりました。

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Image source: 20th Digital Studios/Hulu.

どのアドビ製品を使用しましたか? どうしてそれが最良の選択だったのでしょう

製作中、私はノースカロライナで編集を行っていましたが、アシスタントエディターのジョナサン・ベラスケスはロサンゼルスにいたのです。間違いなく連携するために、プロジェクトファイルをLucidlink社のサーバー上に置き、Premiere Proのプロダクション機能を使用しました。これが完璧に機能したので、何の問題もありませんでしたよ。また、一時的なVFXや最終的なVFXのほとんどは、After EffectsとPhotoshopで行いました。

Frame.ioはワークフローに不可欠でした。私からFrame.io経由でジョナサン・ベラスケスにデイリーショットと音声を転送し、彼がすぐにダウンロードしてPremiere Proのプロダクションに読み込めるようにしました。もう一人のアシスタントエディターであるダグマウィ・アベベは、Frame.ioを使用してカットと音源をすべてのポストプロダクション部門に共有しました。作曲家のニック・チューバ、サウンドデザイナー兼ミキサーのロブ・マローン、VFXチームのAccompliceVFX、ジャスティン・サルセノ、Neon Pig、MercenaryVFX、そしてカラリストのサム・ギリングらともレビューンクで共有するために使用しました。

Premiere Pro活用のヒントを何かひとつ教えてくれますか?

マルチカメラ収録素材を、マルチカメラソースシーケンスとして同期させておきます。これにより、編集中に扱うオーディオトラックが1つになるため、素早い作業と整理整頓された状態を保つことができます。それぞれのクリップのオーディオトラックを確認したい場合は、「プロジェクトで表示」から「タイムラインで開く」を設定したキーボードショートカットで呼び出せばすぐに表示できます。必要な音声クリップをA1に移動させ、メインのシーケンスに戻り、オーディオをレンダングすればうまくいくはずです。

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IImage source: 20th Digital Studios/Hulu.

あなたにとって、クリエイティブな刺激を与えてくれる人は誰ですか?

セルマ・スクーンメイカーさんです。『カジノ』、『ディパーテッド』、『アフター・アワーズ』など、何回見ても常に新しい発見があります。彼女の編集には勢いがありますが、決して急かされる感じはしません。

これまでのキャリアで直面した最も困難なことを、どうやって乗り越えましたか? 意欲的な映画製作者やコンテンツクリエイターにアドバイスをお願いします

一番難しいのは、物語のプロジェクトに取り組む時間と収入を両立させることです。まだ完全に解決できているかは自信がありません。

アドバイスとしては、親切であること、謙虚であること、忠告を受け入れること。最近、ある監督が私にこう打ち明けてくれました、「誰もが映画『マグノリア』の舞台裏にいるかのように振る舞う必要はない」と。私はマグノリアが大好きですが、今はもう2000年代初頭ではありません。

あなたの仕事場の写真を掲載します。一番気に入っているところはどこですか?

私のマウス、ロジクールのM510です。左利きでも問題なく使えて素晴らしい。

Alex Familian Workspace.

Image source: Alex Familian.

この記事は2023年03月15日(米国時間)に公開されたAppendage utilizes After Effects and Premiere Pro to create a terrifying, yet comedic filmの抄訳です。