中小事業にとっての「デジタルワークの未来」を検証する (「デジタルワークの未来」に関するグローバル調査)
デジタルエコノミーとハイブリッドな環境下にある現代において、中小企業にはかつてないスマートさと迅速さが求められるようになっています。しかし、果たしてそれは今の現実といえるでしょうか。多くの中小企業は従業員が最良の仕事をできるようサポートに努める一方で、自社の事業も成功させなければなりません。
全米中小企業週間を前に、アドビは「デジタルワークの未来」と銘打った新たなグローバル調査を実施しました。この調査は、米国、英国、オーストラリア、インド、日本の企業の従業員に対して、インフレ、不況、解雇、世界的混乱といった要素が常に存在する社会経済の状況下で、テクノロジーが企業の生産性向上にいかに役立っているか、あるいは阻害しているのかについて調べたものです。
中小企業は生産性をどう定義しているか
今回実施したグローバル調査では、回答者の半数近くが「生産的であること」について、「企業に収益をもたらすこと」や、「より少ない人数でより多くの仕事をより迅速に行うこと」よりも、「よりインパクトのある仕事をすること」を連想していました(45%)。中小企業の従業員の半分以上(52%)が仕事における生産性について個人的に主要な責任を担い、大企業(37%)に比べて「完全オフィス勤務」(47%)をしているとする回答が多いことも驚きではありません。
一方、日本の回答者(大企業、中小企業の従業員)に絞った結果をみると、「完全リモートワーク」で働く従業員が10%と調査対象の国の中で最も少なく、「ハイブリッドワーク」が49%、「完全オフィス勤務」が41%となっています。また、「週4日勤務の選択肢があれば、従業員の生産性が上がる」と回答した従業員は56%で、他国と比べて少ない数字となりました。
中小企業は明らかに生産性を重視しています。仕事量や仕事の仕方が障害になることもありますが、経済や社会のストレスが生産性を下げる要因にもなっています。こうしたストレス要因は大企業にとっても変わらず大きな懸念事項ではありますが、今回の調査の60%以上の回答者が自社の生産性が不況や生活費高騰の可能性など外的な経済不安により影響を受けていると報告しています。グローバル平均で、従業員をひどく悩ませている要因の上位3位は、上から「生活費の高騰」、「不況の可能性」、そして「賃金格差」です。一方で、日本の従業員を悩ませている要因は、「不況の可能性」と「仕事の柔軟性のなさ」が同率で1位、「生活費の高騰」が3位となっています。
中小企業はデジタル キャッチアップの段階にある
現状、中小企業の生産性は外的なストレス要因や仕事量に影響を受けており、グローバル企業は経済的圧力が増えても労働者の生産性を十分サポートできてはいません。大多数(85%)はテクノロジーが仕事をより速くよりスマートに行い、よりインパクトのある仕事に集中するうえで重要な役割を果たすということを認識しています。しかし、中小企業の88%以上が、「不十分なテクノロジーが自社の生産性を妨げている」と回答するなど、デジタルリテラシーにおいてはまだキャッチアップの段階にあるといえます。
例えば、中小企業のほぼ半数(55%)が「自社の業務の半分以上がいまだ紙に頼っている」と回答しました。こうした時代遅れの方法は中小企業の従業員のフラストレーションを増やすばかりで、3分の1以上(34%)がテクノロジーの不足を理由に業務をすべてやめてしまいたいと望んでいます。このフラストレーションにより中小企業の半分以上(58%)が「1日に2~4時間分の生産性を失っている」としています。 日本では、51%が、「自社の仕事の半分以上がいまだ紙ベースである」と回答(中小企業では61%)しています。また、66% (中小企業では70%) が、テクノロジーの不備により「1日に2~4時間分の生産性を失っている」と回答しています。
テクノロジーの不備によるコストは時間だけでなくやる気にも及びます。中小企業従業員の約4分の1(21%)が仕事におけるテクノロジーの貧困さについて上司に不満を漏らし、多くの従業員(22%)がそれを原因に今後半年以内に退職することを考えています。 日本では、自身がデジタルに「非常に詳しい、または専門家レベル」だと答えた人はわずか30%で、中小企業では25%とさらに低い数字となりました。また、12%の社員が仕事におけるテクノロジーの低さを上司に訴え、11%が別の仕事を探し、18%が「静かに辞める」と回答し、全体的に「静かに辞める」傾向が高いことがわかりました。
デジタルの可能性
このようにテクノロジーの不備が生産性を損なっているなかで、中小企業の従業員が自ら積極的なアクションを取ろうとしているのは良いニュースです。こうしたアクションには、
1) より良いソリューションを見つけ、リーダーにそれを薦める
2) より良いテクノロジーへの投資を組織に促す
3) より良いソリューションを発見し自ら使用する
ということがあります。
企業側は外的要因による従業員の生産性の低下に影響を与えるようなことができなくても、従業員に適切なテクノロジーを提供するという面では多くのことができます。
しかしこうしたテクノロジーとは何なのでしょうか。私たちの調査では、自動化とAIは、大企業のためだけのものではなく、中小企業の仕事の仕方にも良い影響を与え得ることが示唆されています。中小企業のほぼすべて(85%)が自社の生産性向上に自動化が役立っていると回答しています。AIに精通した中小企業ではより高い割合(92%)の従業員がテクノロジーについてポジティブなインパクトを持っていると答えており、約4分の1(22%)がこれを「奇跡」と呼んでいます。
BluShark DigitalのFuturist-in-Residenceであるピーター シャンクスマン氏は次のように述べています。
「テクノロジーは私のすべての行動において最優先事項であり、業務の合理化、効率化、コスト削減に役立っています。ニューロダイバースな中小企業創業者として、私は事業を順調に進め集中力を失わないためにテクノロジーを利用しています。クラウドベースのソフトウェアやSNS、そしてeコマースのプラットフォームを活用することで、カスタマーリーチの改善、オンラインプレゼンスの強化、データ管理及び分析の向上だけでなく、売上も上昇しています。つまりテクノロジーによって私は時代を先取りし、長期にわたる成功を成し遂げることができているのです。」
自動化とAI は今も仕事の迅速化とスマート化における最新のカテゴリーですが、デジタルドキュメントは、重要な生産性の貨幣といえるものの、過小評価される傾向にあります。調査によると、中小企業が仕事で使うすべてのテクノロジーの中で、PDFやe-scanなどのデジタルドキュメントを "なくてはならない "テクノロジーの第1位に挙げています。
The Postcard Edit の創業者であるソフィア ディーバ氏は次のように述べています。
「デジタルドキュメントは業務に欠かせないものです。請求書から契約書、製品カタログまですべてにこれを使っています。例えば、Acrobatを使えば契約書の編集、共有、最終確認までをスムーズに簡単に行えます。当社はグローバルにビジネスを展開し、大手の小売業者や新進のデザイナーともコラボレーションを行っています。PDFは彼らとプロフェッショナルかつ素早いユーザーフレンドリーなコミュニケーションをとるのに役立っています。」
パンデミック時や現在も非常に高い人気を示すコラボレーションテクノロジーやビデオ会議ツールは、それぞれ2位と3位でした。他にも興味深い情報として、このモバイル時代にあっても、中小企業は業務のほとんどを今もノートパソコン(58%)やデスクトップPC (38%)で行っています。(携帯電話が6%、タブレットが5%)
偉大なテクノロジーは中小企業の生産性向上に役立つだけでなく、優秀な人材を引き付けるのにも役立ちます。ほぼすべての中小企業の従業員(92%)が業務におけるテクノロジーが新しい会社での役割を引き受けるかどうかを決定する要因であると言っており、約4分の1(24%)が成功は優れたテクノロジー次第であるとし、これを「絶対に必要な要素」であるとしています。
今後の展開
現在、中小企業のリーダーたちは業務、財務、営業、カスタマー対応を同時に行いつつ、業務以外のストレス要因にも対処しています。このような状況下で、仕事をこなすための十分なリソースがないまま、これらすべてをこなしているのですが、その中でも特に重要なのがテクノロジーです。中小企業には、テクノロジーを活用することで、従業員や事業の成長を確実なものとする明確な機会があります。
※本ブログは、2023年4月26日に米国アドビブログで公開されたブログを抄訳し、一部データを補足したものです。