株式会社 ライドオンエクスプレス|人材教育用の動画コンテンツを、撮影からPremiere Proでの編集まで完全内製化
宅配寿司「銀のさら」をはじめ全国に382の拠点を置く株式会社ライドオンエクスプレスは、人材教育のための研修や各種マニュアルを動画に移行。それを機に、動画制作の経験が全くない状況で、撮影から編集までの完全内製化を実現しました。
同社がなぜ内製化を目指し、どのような方法で推進して行ったのか、そしてどのような成果をあげたのか、制作にあたったFC教育グループの3名にお話を伺いました。
もくじ
- オンライン動画による研修で、参加者が3倍に増加
- プロと現場のこだわりの相違が課題に
- コンサルタント指導のもと内製化をスタート
- 動画に対するこだわりが加速
- 動画マニュアルの視聴者数が一気に増加
- 短く、わかりやすく。Z世代に向けた動画の制作に着手
オンライン動画による研修で、参加者が3倍に増加
株式会社 ライドオンエクスプレスは、「ご家庭での生活を『もっと美味しく、もっと便利に』」をビジョンに、宅配寿司の「銀のさら」、「すし上等!」、宅配御膳の「釜寅」、そして宅配代行サービスの「ファインダイン」といった、自社開発ブランドの直営店運営およびフランチャイズ事業を展開しています。フランチャイズ事業においては、人材教育・育成プログラムの構築など、加盟店へ向けて開業から経営の安定化および業績アップを支援する幅広いサービスを提供しています。
「お客様が安心・安全に利用できる高品質の商品・サービスを提供すること」を最優先に考える同社は、その経営理念を実現するための人材教育に特に力を入れています。そうしたチェーン全体の安心・安全活動の企画運営を担っているのが、FCサポート部 FC教育グループです。その業務は、店長研修の運営のほか、交通安全教育や衛生管理全般の管理、 お客様相談室の窓口対応、各種マニュアルの企画・制作など多岐にわたります。
研修の講義で使用する資料や、寿司の作り方、接客、交通安全などに関するマニュアルは、それまで紙の冊子として制作されていましたが、2018年頃から徐々に動画を採用するようになりました。同社が動画に着目した経緯について、FC教育グループのグループマネージャーである佐藤 眞一 氏は次のように話します。
「きっかけは、上司から『店長研修をオンラインで実施することはできないか?」という提案を受けたことです。 店長研修の場合、1か月以上の集合研修があります。そのため1ヶ月間は店に出勤できず、遠方にお住まいの方は、宿泊も伴います。動画による講義なら、いつでも、どこでも、好きな時間に受講ができ、繰り返し学習することも可能です。
集合研修は実技・座学・OJTと3つのカテゴリがあり、まずは座学を動画で撮影するところから始めました。講師がカメラの前で講義を話し、スライドを映していくという単純な構成でした。40くらいのコンテンツを作ったのですが、これが非常に好評で、一気に受講者が増えました」
FC教育グループ グループマネージャー 佐藤 眞一 氏
動画の有効性を実感した同グループは、座学だけではなく実技の動画も制作するようになり、2020年の初めにはOJTを除く研修に必要な動画がほぼ全て揃いました。ちょうどこの頃、コロナ禍が始まり、集合研修が実施できない状況の中で、動画コンテンツが非常に有効活用されました。オンラインで動画をひと通り見れば集合研修の講義が終了するということもあって、研修参加者が一気に急増。2020年、2021年は従来の約3倍にまで増加しました。
プロと現場のこだわりの相違が課題に
FC教育グループが動画制作に着手し始めた当初は、それまで動画制作の経験が全くなかったため、撮影や編集においては外部に協力を求めていました。しかし、制作の本数が増えるにつれて、ある課題が見えてきたと、佐藤氏はいいます。
「第一に『スピード感』について課題意識がありました。事前の打ち合わせにしろ、撮影や編集のやり取りにしろ、とにかく時間がかかっていていました。例えば撮影中、プロのディレクターとカメラマンですから、影や色や向きなど非常に細かいところまでこだわります。これはプロとして当たり前なのですが、我々はそこまで気にしない、マニュアルとして分かれば良いわけです。そのこだわる時間を次のことに使いたい。反対に、こちら側がこだわりたいところ、例えば『手元や包丁を入れる角度の見せ方』など、そういったところが上手く伝わらず、理解してもらうまでにすごく時間がかかります」
そうした「スピード感」の課題を克服するために、同グループは内製化の可能性を探り始めます。とはいえ、動画制作の知識やノウハウが全くない中、何から手をつければ良いかわからない状況でした。そこで、動画内製化を支援するコンサルティング会社をいくつか検討し、その中で自分たちのニーズやこだわりを一番理解してくれると判断した「株式会社火燵(こたつ)」に支援を求めました。
コンサルタント指導のもと内製化をスタート
まず初めに火燵は、FC教育グループからのヒアリングをもとに、機材の扱い方や照明のセッティング方法、動画編集時の基本フォーマットの策定などが網羅された動画内製化マニュアルを作成しました。撮影機材には、Sony Cinema Line FX3を選定。プロ仕様のカメラを初めて手に取ったときの感想を、FC教育グループ 安全教育チーム マネージャーの江波戸 里奈 氏は次のように話します。
「それまで撮影というと、フルオートのコンパクトカメラで写真を撮るくらいで、照明の当て方とか三脚の立て方とか全く無知の状態でやっていたので、こんなカメラ、本当に使いこなせるのだろうかと不安になりました。最初はマニュアルを見たり、レクチャーを受けたりしながら何とか扱ってみたものの、音が右からしか録れていないとか、そういったことがありましたね」
教育グループ 安全教育チーム マネージャー 江波戸 里奈 氏
撮影からスタートした内製化ですが、動画編集については外部の制作会社に依頼し、カラー調整やテロップ入れなどのごく簡単な編集は以前購入したAdobe Premiere Elementsで行っていました。撮影から編集まで一気通貫で行う内製化を目指していた同グループは、次のステップとして、Adobe Premiere Proの導入を検討します。
「火燵さんに動画編集ソフトの相談をしたところ、答えはPremiere Proの一択でした。Premiere ProについてYouTubeやサイトを検索してみると、使い方や作り方のコンテンツがたくさん出てくるので、『こんなことやってみたい』と思ったときにすぐ調べられるのが便利だなと思いました」(佐藤氏)
2021年6月、FC教育グループはPremiere Pro グループ版 単体プランを導入しました。Premiere Proを使って動画編集を行っているFC教育グループ 安全教育チーム トレーナーの大塚 勇輝 氏もまた、以前は全く動画制作の経験はなかったと言います。
「最初は全くわかりませんでしたね。でも、私はどちらかというと、新しいことをはじめたら、『きっとできるようになる』って前向きに考えるタイプなので、まずはやってみようと。困ったらネットで調べたり、あとはもうとにかく火燵さんに相談してました。初めはカット編集のやり方から、次に音をどう入れるか、テロップをどこにつけるか、どういう色味にするか、順番に1つ1つ覚えていきました。他の仕事もしながらで、1ヶ月くらいでひと通りの操作ができるようになりましたね」
FC教育グループ 安全教育チーム トレーナー 大塚 勇輝 氏
動画に対するこだわりが加速
現在では、台本の作成から現場の仕切り、撮影、編集、公開まで、動画制作の一連の流れを主に佐藤氏、江波戸氏、大塚氏の3名で行っています。最近では、マニュアルや研修用の動画以外に、これから店長研修を受講する人に向けた14分の研修紹介動画を制作しました。
「動画制作を始めて、だんだんと自分たちの思いどおりのコンテンツができるようになると、『もっとこうしたい、今度はこんなものが作りたい』という欲が出てくるんですよね。店長研修紹介動画も、これまでのマニュアル動画のようにただわかりやすいものではなく、見ていてわくわくするようなものにしたかったんですね。色味にちょっとこだわって、BGMも入れて、映画風な仕上がりにしてみたらどうだろうって。シナリオをちゃんと作って、ロケハンにも行って、実際の店長研修の現場に入って撮影をしました。編集も今までやったことのないような演出を入れたりして、すごくいいものが作れたと思います」(佐藤氏)
店長研修紹介動画は人事グループの目にとまり、新卒採用のツールとしても活用されることになりました。
店長研修紹介動画は、座学、実技、OJT、さらに安全運転講習の模様をわかりやすく伝える
動画マニュアルの視聴者数が一気に増加
動画の完全内製化がほぼほぼ形になってきた現在、その効果は着実に見え始めています。店長研修への参加者の増加に加え、社内の動画マニュアルサイトの登録者数は年間1,000人以上、登録せずに視聴だけしている人を含めるとその倍以上にもなると言います。
コスト面では、これまで10分程度の動画を外注すると数十万円の費用が発生していましたが、撮影から編集までの完全内製化により外注費はゼロになりました。
また動画内製化は、人材教育や会社経営への貢献だけではなく、制作者自身の意識にも変化をもたらしているようです。
「初めは自分の仕事の範疇外としか思えなかった動画制作ですが、やっていくにつれて自分の知らない世界がどんどん広がっていくのを感じました。例えば、台本の作り方だとか、ロケハンの大事さだとか、どの順番でどのように撮っていくと効率的だとか、今までは考えもしなかったことを考えるようになり、それは作品の仕上がりにも如実に表れてきています。実際できた動画を見ると、紙のマニュアルよりもはるかにわかりやすい、伝わりやすい。『なぜもっと早くこれをやらなかったのか』と思えるくらいになりましたね」(江波戸氏)
以前はWindows標準の動画編集ソフトやPremiere Elementsを使っていた大塚氏ですが、Premiere Pro導入後、編集作業にどのような変化があったのでしょう。
「一番はキーボードのショートカットキーですね。これが使えるようになってからは作業効率が格段に上がりました。それまではパネルを行ったり来たりしていましたが、よく使うツールを登録しておけば、キーを押すだけで切り替わる。今では左手はずっとキーボードの上にありますね。
Premiere Proを使うようになってからは、以前は2時間くらいかかっていた作業が30分前後でできるようになりました」
Premiere Proを使って効率的に編集作業を進める大塚氏
短く、わかりやすく。Z世代に向けた動画の制作に着手
動画内製化という一見容易と思えない取り組みを、撮影から編集まで一気通貫で実現したライドオンエクスプレス FC教育グループ。今後の取り込みについて、佐藤氏に伺いました。
「店舗で働いているクルーは若く、Z世代の比率が高くなっています。Z世代はデジタル・スマホ・SNSネイティブと言われていて、より動画で伝えることの重要性が高まっています。今まではじっくり丁寧に作業や手順を見せていましたが、飽きずに最後まで視聴してもらうために、YouTubeのように短いシーンを次々と切り替えて、全体の長さも今までより短くして伝えることを意識しています。またもっと短く、TiKTokのように1分以内でポイントだけしっかり伝える事が出来る様な動画編雄にも取り組んでいます」
最後に、動画内製化を検討している企業に向けてアドバイスをいただきました。
「内製化は最初から自走だけで進めることはハードルが高く、時間も、かえってコストもかかると思います。一緒に並走してくれるコンサルティングなどの業者を探し、専門的な指導を受けながら徐々に進めるほうが、より早く質の高い内製化を実現できると思います」
東京都港区三田にある本社オフィスで、FC教育グループ 3名が動画の内製を行なっている