Adobe CC+販促ショールームで顧客のニーズに手厚く応える印刷会社ファビオの柔軟性と先進性

AdobeCC活用事例|ファビオ|メインビジュアル

Adobe CCを活かして映像事業にも取り組む

岡山の印刷会社・ファビオは、1965年3月、岡山市に池上写真製版所としてスタートしました。
パソコンでデザインしたデータから直接、刷版が作れる現在とは違い、写真植字で打った文字から版下を作り、フィルムを経て刷版へと焼き付けるアナログ製版の時代です。
現社長の池上鎌三郎さんの父と伯父が興した会社に、祖父と叔父が加わり、印刷を取り巻く環境が目まぐるしく変わる激動の時代を、三世代に渡って乗り越えてきました。
製版から印刷への業態変更、いまでは企画・制作・印刷までワンストップで顧客のニーズに応える企業へと成長を遂げた秘訣はどこにあるのでしょうか。ファビオで代表取締役社長を務める池上鎌三郎さんにお話を伺いました。

AdobeCC活用事例|ファビオ|社長・池上さん

株式会社ファビオ 代表取締役 社長 池上鎌三郎さん

「僕が会社に入社した頃は、ちょうど製版が版下・フィルムを使ったアナログ製版から、DTPへと変わろうとする時期でした。
版下作りも経験しましたが、パソコンが得意だったこともあり、1988年にはMacintochの小さな画面でAdobe Illustrator 88を触っていました。アドビツールに触れたのは、岡山県内でもかなり早いほうだったのではないかと思います」

1991年にはMacとアドビアプリを中心とした社内のDTP設備が拡充されます。
当初はアナログ製版、CEPS、DTPが混在する環境でしたが、時の経過とともに急速にDTPへと置き換わっていきました。

「アナログ製版時代は、写植、製版、印刷と工程が分業化され、それぞれがいいかたちで回っていました。しかし、DTPが登場し、フィルム製版がCTPになると、これまでの植字、版下作成、製版、そのすべてがパソコンひとつでできる。つまり、印刷工程がワンストップでできるようになったのです。
僕たちはDTPの導入が早かったこともあり、県内の印刷会社にアドビアプリの使いかたやDTPのノウハウを教えることもありましたが、印刷会社がDTPを導入しはじめたことで、製版を専門にしていた会社の仕事は一気になくなってしまったのです。
僕たちも急遽、生き残るための手段を考えざるを得なくなりました」

AdobeCC活用事例|ファビオ|ドラムスキャナとCTP

ドラムスキャナが残る社内(左)。CTP出力された水なし印刷用刷版(右)

こうした流れを受け、DTPデータをもとに印刷する手段として、オンデマンド機を導入し、県外からの受注を目指して2001年には東京支社を開設。さらに2003年にはオフセット印刷機を導入し、本格的に印刷会社へと業態をシフトしていきます。

「このときの経験があるからこそ、僕たちはいまだに“何屋になってもいい”という感覚を持っています。お客さまの要望に応えるのが仕事の基本である以上、印刷に限らず、動画でも、サイネージでも要望があればそれに応えていくだけです。
純粋な価格勝負になると太刀打ちできない印刷サービスがある以上、僕たちは価格以外のところで勝負する必要があります。そうなると、お客さまの手が届かないところ、面倒に感じる部分をしっかりとサポートしていくしかありません。
いまは、地方ならではの土地の広さを活かして、お客さまの商材、販促物を預かり、印刷から全国発送までを手がけるような、なかば物流業のようなことにも取り組んでいます」

AdobeCC活用事例|ファビオ|印刷機

オフセット印刷機は菊半裁4色機と菊全判両面8色機の2台。JapanColorの認証も取得している

AdobeCC活用事例|ファビオ|水なし

ファビオでは品質の追求とともに環境への配慮からオフセット印刷を水なし仕様に切り替えている
*水なし印刷:湿し水を使わないオフセット印刷方式。環境負荷が少なく、インキの乳化が抑制されるためシャープで高精細な印刷が可能

製版からスタートしたファビオはいま、DTP、印刷に限らず、企画や撮影、デザイン、さらにドローン撮影から動画制作まで、非常に多岐にわたる依頼を受けています。顧客のニーズに応え続けるなかで、いまなお、業務は拡張を続けているのです。

「動画を始めたのは、契約しているAdobe Creative Cloudに動画編集ソフトが入っているのなら、まずはそれで始めてみようと思ったのがきっかけです。
お金をかけて新規事業を始めるのは大変ですが、Adobe CCで使えるソフトが利用できるなら、0円でスタートできるわけです。それならやらない理由はありませんよね。
これはなにもファビオに限った話ではなく、どこの印刷会社でもすぐに始められることです。もちろん、ソフトの使いかたを学ぶ必要はありますが、新しい技術に強い社員、好きな社員が会社にひとりは見つかるはずですから」

AdobeCC活用事例|ファビオ|制作部

モーショングラフィックス制作にはAdobe After Effectsを活用(左)。制作部の様子(右)。デザインのメインツールは、Photoshop、Illustrator、InDesign

“小さな大成功”を生む販促ショールーム

さまざまな案件に取り組むファビオでは、顧客のニーズに対応するために積極的な設備投資を行なっています。ネオンカラーやメタリックカラーに対応したプロダクションプリンター・RICOH ProC7100/ProC7200を筆頭に、小ロット・多品種にも強い生産体制を構築。さらにこうした技術を伝える場として、印刷・デザインのショールームを設置しています。

「当社の取扱品目が増えたせいか、営業担当は指示書作成や外注手配、納品などに追われ、本来すべき営業活動の時間が少なくなってしまいました。それなら、お客さまに来てもらうことはできないかと考えてつくったのが、この“販促ショールーム”です」

AdobeCC活用事例|ファビオ|ショールーム

ファビオの販促ショールーム

これまでに手がけた仕事に加え、紙の見本帳やアイディアを散りばめた印刷・加工サンプルを用意したショールームは、訪れる人たちとのコミュニケーションの場となり、その対話が自然と仕事に結びつくようになったと言います。
“こういうデザインのものが作りたかった”とそのまま会社案内のデザイン・印刷を受注したケースや、吸着タイプの紙を紹介してすぐ、見積もり依頼から発注につながったケースなど、ショールームを通して受注した案件は数多くあるそうです。

「僕たちにとっては当たり前の技術が、お客さまにとっては驚くようなものであったり、こちらが思ってもいなかったようなアイディアを思いついてお話してくださる方もいます。
こうした経験を繰り返すうちに、ショールームがアイディアに困ったデザイナーの方やお客さまにとって、“とりあえずファビオに行けばいいよね”と言っていただける、たまり場のような存在、販促デザインのプラットフォームになれるんじゃないか。その可能性を感じています」

AdobeCC活用事例|ファビオ|CMYK+1

RICOH ProC7200を活用し、CMYKにスペシャルカラー・1色の追加を提案する「CMYK+1」

*ファビオではゴールド、シルバー、ホワイト、クリアに対応

ショールームに訪れた人が、サンプルを見てその場で発注を決める。こうした積み重ねを池上さんは大事にしていると話します。

「金額としては大きいものではないかもしれません。しかし、ショールームに来てくださった方がその場で発注をしてくださり、これまでにお付き合いのなかったところと仕事が生まれる……従来のお客さま先へ出向く営業スタイルでは経験したことのない感触でした。これは本当にすごいことだと思っています。まさに“小さな大成功”ですね」

AdobeCC活用事例|ファビオ|撮影機材

社内の写真スタジオ(左)。スティル撮影以外にも動画撮影、ドローン撮影にも対応する(右)

印刷に限らず、メディアを取り巻く環境はこの先も変化していきます。その変化に、どのように対応していくのでしょうか。

「今後、紙メディアはますます減り、デジタルメディアが増えていくなかで、印刷会社としてデジタルメディアを否定することは現実的ではありません。
それなら、デザインデータを持っているという印刷会社のアドバンテージを活かして、webや動画、モーショングラフィック等、新しいメディア、技術に対応していけばいい。そのための勉強をしていかないといけないと感じています」

屋外, 水, 男, 水鳥 が含まれている画像 自動的に生成された説明
AdobeCC活用事例|ファビオ|池上社長

持っているものを活かし、常に新しいことに挑戦する

持っているものを生かし、できることをやる。シンプルゆえに力強いファビオのスタイルは、顧客の厚い信頼へとつながっています。この王道とも言える企業姿勢を、Adobe CCは静かに支えています。

「Adobe CCには本当にたくさんのアプリがありますよね。せっかくお金を払っているのだから、使っているのがPhotoshop、Illustrator、InDesignだけではもったいない。使わないと損をするばかりですから(笑)。動画を始めたこともショールームを立ち上げたことも、いまあるもの、持っているものを活かした、その結果に過ぎません。
“ファビオさんはいつも新しいチャレンジをしているね”と言っていただくこともありますが、特別なことをやっているとは思っていません。お客さまの期待に応えるために、僕たちのような地方の中小企業は、立ち止まることなく、常に新しいものを取り入れていかないといけない。そう考えています」

AdobeCC活用事例|ファビオ|外観

株式会社ファビオ
web |http://www.fabio.co.jp/
Facebook|https://www.facebook.com/k.k.fabio/