ソニー・ピクチャーズの『search/#サーチ2』は、Creative Cloudを駆使してコンピューター画面に釘付けになるスリラーを創造しました
Image source: Sony Pictures Publicity.
2018年公開の『search/サーチ』(原題”Missing”)は世界に向けて、”スクリーンライフ映画”というジャンルを披露しました。物語はすべて、コンピュータや携帯電話、スマートウォッチ、セキュリティカメラなどの画面で展開されます。そして『search/サーチ』の制作チームは、続編『search/#サーチ2』で新たなミステリーを創造し、デジタルの世界を舞台に魅力的な映画が作れることを再び証明しました。このコンピューター画面を用いた巧妙なスリラーを生み出すために、制作チームはAdobe Creative Cloudを全面的に活用しました。
ニック・ジョンソン氏とウィル・メリック氏が脚本と監督を務めた『search/#サーチ2』は、オールスターキャストにテクノロジーが華を添えて観客を魅了します。ニア・ロングが演じるグレースが新しい恋人とコロンビアでのバケーション中に行方不明になったとき、ストーム・リードが演じるティーンエイジャーの娘ジューンは、インターネットの世界に救いを求めました。何千マイルも離れたロサンゼルスで身動きがとれないジューンは、手遅れになる前に最新のテクノロジーを使って母親を探します。
制作チームは、ジューンと同様に革新的なテクノロジーを利用して、デジタルデバイスを通じて語られる物語を創り上げました。
編集者のアリエル・ザコウスキー氏とオースティン・キーリング氏は、「スクリーンライフ映画を作るには、編集、ショットの構築、何千ものグラフィックデザインを同時に行う必要がありました」と語ります。「高速かつ柔軟で、共同作業が可能なツールを必要としていました。Adobe Premiere Pro、Adobe After Effects、Frame.io、全てが揃ったCreative Cloudがなければ、この映画は存在しなかったでしょう。」
ザコウスキー氏とキーリング氏は、Creative Cloudの連携機能を最大限に活用しました。グラフィックをAdobe PhotoshopやAdobe Illustratorで試作の上、最終的にはAfter Effectsでダイナミックリンクさせて合成。Premiere Proでの編集では、モーショングラフィックステンプレートやAdobe Senseiによるモーフカットなど、人気の機能を活用して画面上の各要素に命を吹き込みました。さらに、Premiere Proのプロダクション機能を使い、リモートでお互いや副編集者と共同で作業します。一方で、Frame.ioのクラウドベースのレビューと承認ツールを利用して、監督、プロデューサー、そしてソニー・ピクチャーズのスタジオチームからフィードバックを得ました。
2023年に公開された『search/#サーチ2』は、スクリーン上と同様に舞台裏にも魅力的な物語があります。編集者のザコウスキー氏とキーリング氏に、斬新で魅力的なスクリーンライフ映画をどのように作成したかについて、詳しくお聞きしました。
どこでどのように編集を学んだのですか?
キーリング: 11 歳か 12 歳のときに家にあった古いビデオカメラを見つけて、すぐにちょっとしたショートフィルムを作ってみたんです。そのプロセス、特に編集によって作品に命を吹き込むことに夢中になりましたね。そのまま独学で編集を学び、高校に入学すると同時にPremiere Proに移行しました。それ以来ずっと使い続けてます!
ザコウスキー: 私が初めて編集したのは、高校生のときに妹の成人式(訳註:ユダヤ教の成人式、女子は12歳)のために作ったビデオだったと思います。それが「編集が好き」と思った瞬間だったと思いますが、編集が何なのかは全然わかってなかったですね(笑)。そして18歳の時に、とても小さな映像プロダクションでインターンをしたのですが、コンピューターのある部屋に放置されたので、独学で編集ソフトの使い方を学びました。
編集開始時にどんな準備/環境設定を行いますか?
パンデミックの最中にこの映画の制作が始まったので、自宅での編集作業となりました。撮影が終了する頃にはオフィスに移り、寒々しい編集室を居心地よくするための個人的なアイテム、猫の写真、アロマディフューザー、ノートなどを持ち込みました。私たちは隣接した編集室で、お互い独自のキーボードショートカットをインポートし、ウィンドウレイアウトを自分たちの好みに合わせて設定、マウスやワコムのタブレットを接続しました。わずか数分で作業を続ける準備が整いましたよ!
お気に入りのシーンと、なぜそれが特別なのか教えてください
この作品は、全てにおいてこれまでのものとは大きく異なる特別なものでした。お気に入りのシーンの多くは、伝統的な編集技法を超越したものです。特に映画の終盤のあるシーンは、キャラクターの実写映像も台詞もなく、画面の要素だけで語られています。つまり、マウスのアニメーション、ショットのタイミング、画面内のカメラの選択だけを用いて、シーンがどのように展開するかを決定し、緊張とサスペンスの演出をゼロから作成するという、本当に楽しい挑戦でした。
ポストプロダクションで直面した具体的な課題はありましたか?どうやって解決したのでしょう
この映画はコンピューターと携帯電話の画面を通じて語られるため、当初からポストプロダクションにおける多くの課題を抱えていました。どの部分も画面を録画したものではありません。各アプリ、ウェブページ、マウスの動きを自在に変更できる必要があったため、画面上のすべての要素を個別に作成しています。実物そっくりで途中で動きが止まったりしないので、ピクセル単位の作り込みやストーリーテリングが自由になりました。ワークフローを考え出し、膨大な数のアセットを操るのは巨大なパズルのようでしたが、完成した映画ではその成果が得られたと確信しています。
Image source: Sony Pictures Publicity.
どのアドビ製品を使用しましたか? どうしてそれが最良の選択だったのでしょう
正しい質問は「どのアドビ製品を使わなかったか?」です(笑)。アプリのスクリーンショットを撮り、シーンで使えるようにPhotoshopで修正します。編集プロセスでは、Premiere Proのプロダクション機能を使用しました。これにより、お互いのシーケンスを共有したり、副編集者がメディアを送信したり、タイムラインにアクセスすることがとても簡単になりました。
ピクチャーロック(訳註:編集の最終段階、オールラッシュ)に近づくと、Illustratorですべてのグラフィックをゼロから作成しました。ベクターグラフィックなので、アセットにどれだけズームインしても画像が荒れません。編集完了後、各素材をAfter Effectsでダイナミックリンクさせました。仮グラフィックを高解像度のものに置き換え、オフラインファイル(訳註:作業用の軽量な映像)をグレーディング(訳註:色彩の調整)されたオリジナルファイルに再リンクします。手持ちカメラ風の揺れ、ピンボケやケラレ(ビネット)、モーションスケッチによる本物そっくりな動きをするマウスなど、各ショットに多数の細かな調整を行いました。最終的には、After EffectsでレンダリングしてDPXファイルを書き出します。正直なところ、Creative Cloudを使用しなければこの作品は存在しなかったでしょう。初めから最優先の、そして唯一の選択肢でした。
また、制作期間を通じてFrame.ioを使用しました。パンデミック中は自宅で作業していたため、ほぼ毎日、進行中の編集内容を監督にアップロードしていましたね。監督はそれをレビューし、私たちが翌日やるべきことをFrame.ioに直接コメントを残します。全員がオフィスで一緒に作業するようになった後も、一部分もしくは作品全体をプロデューサーや映画会社に見てもらうために使いました。大きなファイルのやり取りにも最適なので、副編集者はグラフィック制作会社やサウンドチームと作業する時にも、Frame.ioに大量の素材をアップロードして共有していましたよ。
Image source: Arielle Zakowski.
Premiere Proや他のツールの気に入っているところは?
Premiere Proなら、編集作業を素早く行えます。シーンの多くは40 以上のグラフィック要素のレイヤーが積まれて混沌としていますが、それでも直感的に操作できるのでとても助かりました。
トランスフォームエフェクトを適用した調整レイヤーを使用して各ショットを作成したので、変更にも問題なく迅速に対応することができました。また、モーショングラフィックステンプレートを使って、タイピング入力をシミュレートしています。おかげで、登場人物の感情を伝えるためのタイミングやスピードを制御できました。また、編集中に多くの分割画面やVFX ショットを大まかに作成する必要がありますが、Premiere Proの機能を使用してこれらの要素をシームレスに組み込めました。
Premiere Pro活用のヒントを何かひとつ教えてくれますか?
様々なアドビ製品のいろいろな機能を使っているため、ひとつだけを特定するのは難しいですね。とはいえ、プロキシワークフローは素晴らしい!ボタンをクリックするだけでプロキシファイルとオリジナルファイルを切り替えることができます。これにより、極端なズームインを適用する際に映像の解像度に注意を払えるだけでなく、After Effectsで仕上げるためにすべてのフッテージをオンラインにする作業(これも私たちの仕事!)がはるかに楽になりました 。また、プロダクション機能もMVPですね。これのおかげでポストプロダクションチーム全体で、シーケンスとメディアを簡単に共有できました。
Image source: Arielle Zakowski.
あなたにとって、クリエイティブな刺激を与えてくれる人は誰ですか?
お互いですね!冗談です。この作品では監督であり、前作『search/サーチ』の編集者でもあったニック・ジョンソンとウィル・メリックに敬意を表します。彼らは前作でこのワークフローを創り出し、この作品において私たちの指針となってくれました。二人とも、私たちがこの映画のコツを学ぶのに信じられないほど辛抱強く対応し、膨大な知識をチームと共有してくれました。編集者として彼らの指導を受けられたことに感謝しています!
これまでのキャリアで直面した最も困難なことを、どうやって乗り越えましたか? 意欲的な映画製作者やコンテンツクリエイターにアドバイスをお願いします
編集助手から編集者に、ドキュメンタリーから物語に、またはインディーズ映画からスタジオ映画になど、業界内でのキャリア転向のタイミングには深い悩みがつきものです。自分が本当にそれをやっていけるのかという疑念と、自分ができることをみんなに証明しなければならないというプレッシャーが同時に押し寄せます。私たち二人ともキャリアを通じてこのような瞬間はありましたし、おそらくこれからも続くでしょう。しかし毎日オフィスに入り、コンピューターに向かい、仕事自体に集中することで、心の中のノイズを静め、自分が好きなことをやっているんだと気づかせることができます。自分の価値を知り、内なる邪魔者に自分を抑え込ませないことが重要です。
Image source: Arielle Zakowski.
あなたの仕事場の写真を掲載します。一番気に入っているところはどこですか?
ロサンゼルスの素晴らしい景色が見えるオフィスで、特に私たちが運良く手に入れた角部屋には大きな窓がたくさんありました。編集作業は暗い小さな部屋で行われることが多いので、窓の向こうに外の世界がある広々とした部屋で働けて楽しかったです!
この記事は2023年2月2日(米国時間)に公開された”Sony Pictures’ Missing uses Adobe Creative Cloud to bring a riveting computer-screen thriller to life”の抄訳です。