自治体向け実践講座「SNS × デザイン | まちの魅力を伝える情報発信と制作のコツ」第 1 回開催レポート
「SNS × デザイン」をキーワードに、SNS 活用のヒントを自治体向けにお届けするオンラインセミナー「SNS × デザイン | まちの魅力を伝える情報発信と制作のコツ」第 1 回が、2023 年 7 月 5 日に配信されました。今回のサブテーマは「伝える力を最大化する SNS 活用とデザインとは」です。ゲストにお迎えしたのは有限会社ユニバーサルワークス 代表取締役の清家 順氏です。清家氏は、公益社団法人日本広報協会 広報アドバイザーと静岡県 広報業務アドバイザーも務めています。
有限会社ユニバーサルワークス 代表取締役の清家 順氏
本セミナーで清家氏は、SNS を活用したい自治体に役立つ情報として、4 つのトピックを紹介しました。 まず、1 つ目の「メディアの活用状況・SNS の利用状況」では、日本国内において SNS がどのように使用されているのか、最新のデータが紹介されました。
若い世代はインターネットを頻繁に使い、高齢になるほどテレビ視聴が増えるという話は、広く認識されていることですが、インターネットの利用状況だけに注目すると、少し違う姿が見えてくると清家氏は指摘します。紹介された総務省情報通信政策研究所 データによると、10 代と 20 代では、ソーシャルメディアや動画投稿共有サービスに費やす時間が非常に長く、ブログやウェブサイトに費やす時間が短いことがわかります。つまり、若い世代は SNS 投稿は見るけれども、その先のウェブサイトにあまり遷移していないのです。ところが 、30 代から 50 代では、ブログやウェブサイトの利用時間の方が、若干ですがソーシャルメディアよりも長くなります。このように、SNS を活用する際には、年代により利用形態が異なっていることを認識する必要があるわけです。
最新の情報が得られる場所として、清家氏は他にも、コムニコが公開している記事、モバイル社会研究所が発行しているモバイル社会白書、キャプテラによる SNS 購買行動調査を紹介しました。
自治体の SNS 活用事例
清家氏は、データは最新のものが良いとしながら、考え方については、最新でなくとも現状に適う場合があるとして、過去からの事例も含め、2つ目のトピック「自治体等 SNS 活用事例」を紹介しました。
最初の事例は、首相官邸の Instagram に対する取り組みです。清家氏は、「JK より上手い」「お役所感がない」と評判となった投稿の舞台裏を紹介した ITmedia NEWS の記事を引用して、情報発信をする前の段階が重要であることを力説しました。
「とかく自治体では、やったことを発信しなければと考えがちだが、それでは受け取る住民のニーズにそぐわない」と、清家氏は警告します。自治体の都合ありきではなく、まずは、SNS を利用する人たちが何を求めているのか、ネットでは何が流行っているのかを、確認することから始めるべきだということです。
もう一つ、学ぶべき事例として清家氏が紹介したのは、岩手県広聴広報課のツイートです。ツイートの内容としてはシンプルですが、「いいにくいことをいう日」のタグが付いている点がポイントで、このハッシュタグで Twiiter が盛り上がるタイミングに合わせてツイートしたことにより、投稿を多くの人に届けることができました。
SNS 活用においてトレンドは重要です。SNS 界隈で流行っていること、これから流行ることにアンテナを張ることは欠かせないと清家氏はセミナーの中で繰り返し語りました。
3 つ目の事例は東京都です。従来、東京都には組織別に約 130 のツイッターアカウントがありました。それを代表アカウントと 18 の分野別アカウントに再編したのですが、清家氏が特に評価していたのは、「組織の枠を超えた、分野別の情報発信」です。そのおかげで、都民は、東京都の組織の知識がなくても、興味のある分野の投稿けを受け取れます。さらに、清家氏は、各分野で最もフォロワー数の多いアカウントを名称変更して再利用したことにも、意味があると言いました。政治的な判断で残すアカウントを決めると、拡散力の弱いものを残すことになってしまう可能性があるためです。
記事投稿と運用のポイント
3 つ目のトピックは「記事投稿や運用のポイント」でした。SNS の活用方法がわからないときの清家氏お勧めの手段は、「マニュアルを読む」「他者から学ぶ」の 2 つです。
ここでのマニュアルとは、サービスを提供している企業の公式情報です。清家氏は、4 つの公式情報を紹介しました。「Google 検索セントラル」は、サイトの検索エンジン最適化のための情報が提供されているページ、Twitter ビジネスの「ツイートのアイディア」は、ツイートでより多くの利用者とつながるためのベストプラクティスが紹介されているページ、「Youtube Creators」は、動画コンテンツ制作のヒントが書かれているページ、そして、アクセシビリティ向上のためにできることが紹介されている Twitter の公式ブログ記事です。
インターネットのサービスは、日々進化もしています。そのため、今まで蓄積した知識や経験が役に立たなくなったり、あるいは今まで難しかったことが簡単にできるようになったりすることがあるかもしれません。ですから、もう既に知っていると思いこまず、公式情報に目を通すことに価値があると清家氏は語りました。
活用方法がわからないときのもう一つの手段、「他者から学ぶ」は、成功も失敗も含めて先行事例から学ぶことです。成功した事例として紹介されたのは、半年前に投稿した動画をもう一度投稿したら、「いいね」が倍以上になったフエキのケースです。これは、「製造業」というタグがトレンド入りしていた時に、そのタグをつけて便乗投稿したことによる結果で、その瞬間のトレンドに乗ることの重要性を示しています。
別の成功例として、炎上対策が評価された尾瀬ガイド協会の事例も紹介されました。差別的投稿に至った経緯、問題点、今後の方針を、詳細かつ誠実に掲載したことがこの結果につながったと清家氏は語りました。また、できれば炎上は起こさない方が良いとして、炎上を避けるためのヒントの「炎上さしすせそ」も紹介されました。これは、一般社団法人 SNS エキスパート協会が提示しているもので、炎上しやすい投稿内容が分かりやすくまとめられています。
価値あるグラフィックを提供する
最後のトピック「価値あるグラフィックを提供するために」は、画像やデザインを使用する際に参考になるヒントの紹介です。これは、SNS だけではなく、ウェブで発信する情報にも関係します。
画像を使うといいねやリツイートの数が増えるという傾向は一般的に知られています。しかし、画像をつけたからといって印象が良くなるわけではないとして出されたのが栃木県農政部の事例です。栃木県農政部でも画像のある投稿にいいねが付きやすい傾向は見られますが、下の画像です。左右どちらのツイートにも画像が使われているのに、いいねの数はそれぞれ 1 つです。
その原因は、開催した側の都合で画像が選ばれていることにあるというのが清家氏の指摘です。自治体の活動により何が県民に還元されるのか?という視点から画像を選べば、おのずと異なる画像が選ばれ、ひいては投稿内容自体も変わってくる。その意味でも画像選びは重要だと清家氏は言いました。
清家氏は、ウェブサイトのカルーセルで使われる画像についても言及しました。下の東京都のサイトの例は、東京 2020 大会のメダル制作のために、携帯電話等を都庁で回収していることを伝えることを目的に使われていた画像です。この画像は、メッセージが散漫になっているだけでなく、都民へのメッセージの伝え方が考慮されていない点が問題だと清家氏は語りました。
下の画像は、良い例の一つとして紹介された、河内長野市のサイトです。おおさか河内材のイメージを伝えつつ、左側に黄色と黒の明確なコントラストを用いて、閲覧者へのメリットを伝えている点が高評価の理由です。見た人にわかりやすく美しい画像を用いて、訪問者の意識を上手に誘導している優れた例です。
上の 2 つの事例が示すように、画像を適切に選択してデザインすることは、SNS やウェブサイトを活用して住民の役に立つ情報を発信する上でとても重要な作業です。Adobe Creative Cloud や Adobe Acrobat の官公庁及び自治体向けのライセンスを導入すれば、オフラインの環境でも、高品質なデザインツールが利用できます。
また、Adobe Stock というクラウドサービスを利用すると、写真、イラスト、動画、オーディオの素材を入手できます。検索ワード等を使って絞り込むことができるため、たくさんの候補が見つかった場合でも、イメージに近い素材を見つけやすくなっています。このサービスの利用にはインターネット接続が必要になりますが、一回ライセンス購入したものは、オフラインの環境でもそのままご利用いただけます。
第 2 回「自治体職員だからこそつくれるSNS動画を」は、7 月 19 日 12:00 – 13: 00 配信予定です。セミナー詳細はこちらの紹介ページをご覧ください。