ハンナ・ピーターソンのデビュー長編『The Graduates(原題)』Adobe Creative Cloudで紡ぎ出された悲痛な映画
Image Source: Tribeca Film Festival.
ハンナ・ピーターソン監督のデビュー長編映画『The Graduates』が、今年のトライベッカ映画祭で初演され、米国ナラティブ部門の最優秀撮影賞を受賞しました。この映画は、ジェネヴィーヴ(ミカ・サンドウォール)が、ボーイフレンドの命を奪った悲劇的な銃乱射事件の痛ましい思い出に直面しながら、人生の転換期を乗り越える様子を描いています。卒業が近づくにつれ、彼女は人生における難しい決断を迫られていることに気づきます。脚本と編集も手がけたハンナ・ピーターソン監督は、Adobe Creative Cloudを使用して、喪失と向き合うコミュニティの重苦しく傷つきやすい空気を表現しました。
監督は「Creative Cloudは、編集アシスタントやプロデューサーと簡単にコラボレーションできるので、ベストな製品でした」と語ります。6月10日に行われたプレミア公開に先立ち、監督の映画製作の経歴、ヒントや影響を受けたもの、そしてこの作品の編集プロセスについてお聞きしました。
映画製作者としての経験や、この業界に入ったきっかけを教えてください
私はカリフォルニア芸術大学(CalArts)で映画監督のMFA(芸術学修士)を取得するために、ロサンゼルスに移りました。そこでゲストアーティストとして講演に来たショーン・ベイカー監督に出会います。彼の『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017)』は私が初めて参加した長編映画で、ものすごく影響を受けました。この映画を彼が脚本、監督、編集(Adobe Premiere Proを使用)したという事実を含め、そこから学んだことの多くを自分の卒業制作映画に取り入れました。卒業後、クロエ・ジャオ監督と『ノマドランド(2021)』で共同作業する機会を得ます。この作品を通じてアーティストとして成熟し、撮影現場で将来の協力者たちに出会うこともできました。クロエ監督も脚本と編集を行うので、自分の長編映画で同じようにやりたいと思ったのは当然のことです。
どこでどのように編集を学んだのですか?
最初に編集を学んだのは、ケニアに住んで非営利団体のためにビデオコンテンツを製作していた頃です。直感的なiMovieの編集方法を独学で身につけました。その後、カリフォルニア芸術大学(CalArts)で編集のクラスに入り、仲間たちからも吸収していきます。それから短編映画を編集したり、友達に聞いたり、オンラインのチュートリアルを読んだりして、試行錯誤しながら学び続けました。
編集開始時にどんな準備を行いますか?
編集アシスタントとメディア管理者に、ワークスペースのセットアップを手伝ってもらっています。そのため、フッテージ(撮影素材)にシーン番号とテイクのラベルが既に付けられています。私はすべてのフッテージを見て、セットでのメモを確認し、ゆっくりとそれらを組み立て始めるという感じです。
お気に入りのシーンと、なぜそれが特別なのか教えてください
編集の観点からすると、ジェネヴィーヴがベンと対立し、彼女がパーティーを去る場面の作業はとても楽しかったです。パーティーシーンは初めてでしたが、カメラとキャラクターの視点を使った多くの演出があり、それらを見渡しての編集をエンジョイしました。また、登場人物が感情を内面化して目立たせない作風の中で、誇りに思えるほどの演技を見せるアレックス・ヒバートとミナ・サンドウォールの映像を用いて、このシーンの際立った緊張と感情を表現できたことは本当にうれしかったです。
ポストプロダクションで直面した具体的な課題はありましたか?どうやって解決したのでしょう
編集の過程で物語を書き直し、再構築する必要がありました。私が脚本も書いたので言えますが、ページ上ではうまくいっていたことが、編集では必ずしもそうではない部分が出てきます。脚本ではキャラクターごとに章で分け、文学的な構造にしていました。しかし編集を始めると、3人の主要なキャラクターが最初から登場する必要があることがわかったのです。そのため第3幕の多くを序盤に引っ張ってきて、物語のリズムを新しい構成で作り出す必要がありました。最初はその難しさに圧倒されましたが、最終的には製作過程の中で一番好きなチャレンジになりました。なぜなら、それは正解を見つけていく作業であり、柔軟性と寛容性が求められる類のものだったからです。
どのアドビ製品を使用しましたか? どうしてそれが最良の選択だったのでしょう
Premiere Pro、Frame.io、 Adobe Media Encoder、Adobe After Effectsを使用しました。編集アシスタントやプロデューサーと簡単にコラボレーションできるため、私にとってベストな製品なのです。
Frame.ioを採用した理由や活用法も教えてください
すべてのデイリー(ショット)とプロキシをFrame.ioにアップロードし、それをハブとしてプロデューサーや作曲家、サウンドデザイナーなど、さまざまな共同作業者とレビュー用のカットを共有しました。
Premiere Pro活用のヒントを何かひとつ教えてくれますか?
キーボードショートカットを学びましょう!
あなたにとって、クリエイティブな刺激を与えてくれる人は誰ですか?
仕事で行っていることはすべて、ショーン・ベイカーとクロエ・ジャオのセットでの経験に基づいています。彼らの映画製作プロセスと流儀は話し合いを重視するもので、私は早い段階で伝統的手法の見直し方を学ぶことができました。ふたりとも脚本家、監督、編集者であり、そのようなアプローチで映画に取り組むには多大な責務へのコミットメントと寛容性が必要です。それは私が切望していたことであり、初めての長編映画でその機会を与えられたことは本当に幸運だと感じています。
これまでのキャリアで直面した最も困難なことを、どうやって乗り越えましたか? 意欲的な映画製作者やコンテンツクリエイターにアドバイスをお願いします
私が思うに、アーティストであることの一番厳しい側面は、持続力が必要なことでしょう。前に進むことができず、まっすぐな道ではないように感じる長くて困難な期間があります。私が受けた中でも最も役に立つと感じたアドバイスは、編集でも執筆でもそれが何であれ、ただやり続けること。何かをうまくやるにはたくさんの練習が必要ですが、誰も見ていないときこそ練習を続け、技術を磨き、自分の声を見つけることが大切です。
あなたの仕事場の写真を掲載します。一番気に入っているところはどこですか?
この家兼オフィスは、私の友人である非常に才能あるプロデューサーの所有物でした。彼女はこの空間に多くの創造的なエネルギーを残したと思っています。おまじないみたいなものですが、このスペースを、純粋なクリエイティブワークだけを行う場所と決めました。インターネットにアクセスしたり、電話を使いたい場合は他の場所に行きます。おかげで、この部屋に入るたびにエネルギーが漂っているのを感じるんです。気が散りやすいので壁には何も置かないようにしていますが、タイラー・ヘイズのジグソーパズルだけは、私の創造的なプロセスを完全に反映しているので机の前に飾っています。
Image Source: The Graduates Director, Screenwriter and Editor Hannah Peterson.
この記事は2023年6月14日(米国時間)に公開された“Hannah Peterson’s debut feature “The Graduates”: A heartbreaking film crafted with Adobes Crea-tive Cloud”の抄訳です。