編集から製本までデザインスキルいらず! Adobe Acrobatで「ZINE」デビューできちゃいます
はじめまして、ライターのむらやまあきです。
普段は人の生き方や取り組みへの思いにフォーカスしたインタビュー記事をメインに、
幅広いジャンルで執筆をしながら、舞台のパンフレット編集やエッセイの執筆なども行っています。
そんな私がずっと気になっていたのが「ZINE」。ZINEとは個人がつくる小冊子のことで、ルールに縛られず自由なテーマや手法でつくれるのが魅力。私の周りにも、日記やイラストなどをZINEにして販売している友人がたくさんいます。
私も彼らの姿に憧れて、今年こそは自分でもZINEをつくってみたいと思っていたものの、いかんせんデザインスキルが皆無……。世の中のおしゃれなZINEを見ては、「やっぱり自分には無理かも……」と及び腰になっていました。
ところがある日、Adobe Blog編集部から「操作が複雑なデザインツールを使わずに、Adobe Acrobat Pro(以下、Acrobat)だけで素敵なZINEがつくれるので、ぜひ試してみて!」という依頼が。普段からSNSでフィルム写真をあげていたのを見て連絡してくださったようです。
「ビジネスツールの印象が強いAcrobatでZINE?」と不思議に思いましたが、これもまた一つのチャンス。せっかくなので、AcrobatだけでZINEづくりに挑戦してみることにしました!
ということで本記事では、私が経験したZINEづくりの過程をご紹介。「作品テーマを考える」「Acrobatで編集作業」「製本」の3ステップで制作していきます。
ステップ1:どんなZINEにする? 作品のテーマや方針を考える
まずは、ZINEづくりの方針となるテーマの設定から。ZINEにはルールや正解がないので、自分が好きなこと、表現したいことならなんでもOK。小説や日記、撮りためていた写真、オリジナルのイラストなどを一冊にまとめるのもアリです。
私の場合は、ひとまず趣味で撮っているフィルムの写真とテキストで構成することを決めた上で、具体的にどんな内容にしていくのかを考えました。
今までいろいろ構想していたはずが、いざつくろうとなるとこれが結構悩ましい……。部屋の中だとすぐに煮詰まるので、タブレットPCと共に出かけ、開放的な空間で考えます。
いくつかエッセイの題材を書き出してみてから、全体のイメージを膨らませた結果、今回のZINEでは最近の関心事である「幸せ」をテーマにエッセイを書き、写真と一緒にまとめることにしました。テーマを「幸せ」としたのは、仕事でさまざまな方の人生や大切にしている価値観に触れるたびに、「自分自身の人生や幸せとも向き合ってみたい」と思っていたからです。
そのほか、テーマに合う写真を追加で撮影しつつ、ZINEのサイズ感や製本方法についてもざっくり考えておきます。
イメージに合う被写体を探してきょろきょろ
私の家にはプリンターがないので、今回は気軽に利用しやすいコンビニプリントを使って印刷をします。コンビニ印刷の対応用紙は、一般的なA3・A4・B4・B5サイズのみ。
手に持ちやすい小さめサイズが好みなので、A4用紙に印刷をして2つ折りにし、A5サイズのZINEをつくることにしました。製本も自分でチャレンジします!
A4用紙にA5サイズを2ページ並べて2つ折りにするとA5サイズのZINEができる仕組み。
ステップ2:いざ! Acrobatで編集作業をやってみるよ〜
ZINEのテーマやざっくりとした方針が決まったので、ベースとなるエッセイを執筆。写真を現像して素材が揃ったら、いよいよAcrobatでの編集作業を進めていきます!
さっそく、PDFのページをつくっていきましょう。作成はいたって簡単。
Acrobatを開き、「ツール」→「PDFを作成」→「空白ページ」を作成
まっさらな空白のPDFが作成されるので、ここから編集開始。
新しいページを追加したい場合は、右側にあるナビゲーションパネルを開き設定アイコンから「新規空白のページ」を選んで、必要なページ分だけ増やしていきます。
すでにページ数が確定しているのであれば、最初にバババッとまとめて空白のPDFを作成しておいてから編集を始めると、全体の構成を想像しながら作れるのでラクかもしれません。と言いつつ、私も16ページくらいの想定でつくっていましたが、調整しているうちに気づけば24ページに……。
B5小冊子の場合、A4用紙1枚に4ページ分(A5サイズ2枚×裏表)印刷されるため、白紙のページを作らないようにするには、4の倍数でしかページ数は増やせないので要注意。もし16ページに収まらなければ、20ページか24ページにする必要があります。
空白のPDFの準備ができたら、ページのレイアウトを始めます。
ベーシックな「新規テキストを追加」や「画像を追加」などの機能は、一般的な資料作成ツールと同じ要領で使えるので、初めてでも安心。単色の塗りつぶしや、画像を背景に設定できる「背景の追加」、手書きで書き込める「フリーハンド描画ツール」、ページの余白を削除する「ページをトリミング」といった機能があります。
PDF編集に特化したAcrobatならではの機能も揃っているので、いろいろ触ってみると面白いですよ。
もちろん文字の色も変えられますし、Acrobat Proユーザーであれば、OSフォントだけでなくおしゃれなフォントが揃う「Adobe Fonts」を利用できます(別途、アクティベートが必要)。私のZINEでは、テキストが真っ黒だと少し強すぎるかな?と感じたので、テキスト部分は基本的にグレーにしました。同じグレーでも、色合いや鮮やかさなど微妙な調整ができるので、ページによってちょっと変えてみることに。
また、今回は使いませんでしたが、ツールセンターの中にある「新しいページをデザイン」から、「Adobe Express」にあるテンプレートを使用することもできます。
「ブックカバー」というカテゴリーのテンプレートはZINEづくりでも使いやすそう。
テンプレートは絵本っぽい可愛らしいものから哲学書のようなかっちりしたデザインまで種類豊富。気になったデザインをクリックすると、テキスト編集から要素の配置までサクッと自分好みに編集できます。Adobe ExpressはAdobe Acrobat Proユーザーであれば無料で使えるので、デザインの知識はなくても見た目をより華やかにしたい!という方にはおすすめです!
あとはひたすら、写真とテキストの追加、位置の微調整などを繰り返しながらもくもくと作業を進め……
「ページを整理」では、作成したページを一覧で見ることができます。並べ替えも可能。
なんとか計24ページの作成が終わりました! 最後の2ページは、裏表紙にあたるページなので空白のままにしています。こう見るとめちゃくちゃシンプルだけど、それもまた自分らしい。
完成まであともう少し……! テンションが上がってきました。
ステップ3:正直大変そうな面付け作業…私にもできる?
では、印刷に向けて準備を進めていきます。ZINEをはじめとした複数のページがある冊子や書籍を作成するのに重要なのが「面付け」。印刷用紙に各ページのデータを正しい順で配置する作業のことです。
▼面付けの例(左開きの場合)
いや~~正直めちゃくちゃ苦手分野……。順番を間違えずにできるかすごく不安だったのですが、これがAcrobatの素晴らしいところ。印刷画面で、「小冊子」設定すれば自動で面付け作業をしてくれるのです。
右上の印刷マーク→印刷するページ「すべて」→ページサイズ処理「小冊子」→小冊子の印刷方法「両面で印刷」を選択すればOK!
まず用紙のサイズ設定は、上記写真の左下にある「ページ設定(S)」から。冒頭で決めたように今回はA5サイズのZINEにするので、用紙は「A4」を選択します。(デフォルトの設定はA4)
右側に出ている実際の印刷イメージを確認して、並び順が問題なさそうであれば「印刷」をクリック。
面付けされたPDFデータが書き出されて……
A5サイズのZINEにするので、A4用紙にA5サイズのデータが横向きに2枚ずつ貼り付けされて書き出されました。
保存が終わると、Acrobat上にもこのように面付けされた状態のページが表示されます。このPDFデータをUSBに入れて、いざコンビニで印刷!
ちなみに、コンビニで印刷をする際は、すでにAcrobatで面付けをしているので「両面印刷」を選べばOK。コピー機でも「小冊子」を選択してしまうと、1枚の用紙に4ページ分印刷されて失敗してしまうのでご注意を。
薄いコピー用紙しか選べない、かつ写真の色味や粗さなどはどうしてもコンビニクオリティにはなりますが、もともとフィルム写真はざらっとした質感なので、そこまで気になりませんでした。
無事印刷ができたら、あとは製本。手作業で中綴じ製本を行う場合、ミシンやホッチキスなどさまざまな方法がありますが、今回はクラフト感が可愛い「糸綴じ」に挑戦します。
まずは印刷したページを、なるべくずれないように一枚ずつ慎重に折りたたみ……
糸はよりクラフト感を意識して、ブラウンのヘンプ糸を使用しました。素朴な雰囲気があり、ちょっと失敗してもいい感じに見える気がします。
パンチで開けた穴に糸を通して、紙がばらばらにならないように綴じていきます。不器用なせいで穴のサイズや間隔がまちまちですが、それも愛嬌。
そしてついに……
完成!!! ZINE作りは初めてながら、なんとか形にすることができました!
Adobe Acrobat Proは、ZINEデビューの方にもおすすめ!
最初は「AcrobatだけでZINEづくりなんてできるの?」と半信半疑でしたが、結論できました! ビジネスツールだと思っていたAcrobatに、こんな使い方があるとは。
クオリティはさておき、実際に形になると嬉しくて愛着が湧くものですね。ZINEデビュー作として大切に保管したいなと思います。
Acrobatの使用感としては、使える機能が限られているのでデザインにこだわりたい方にはちょっと物足りないかも。
ただ、一つひとつの機能はシンプルでわかりやすく、デザインツールの知識やスキルがなくても一般的な資料作成ツールの要領で作業できるのは、ZINE初心者にとって魅力的だなと感じました。そしてやっぱり面付けを自動でやってくれるのが、ありがたすぎる。複雑な作業が必要ないと思うと、取り組むハードルが一気に下がりますよね。
次は、じっくりテーマやデザインを熟考しつつ、紙や印刷にもちょっとこだわったZINEをつくってみたいなと思います。いつかは販売できるように頑張るぞ~~~~~!
まずは形にしてみることが、ZINEづくりマスターへの近道。挑戦してみたいけれど、自信がなくて踏み切れていないという方はぜひ、Adobe Acrobat ProでZINEデビューしてみてはいかがでしょうか?
※本ブログのイメージ写真(PC画面)は全てWindows版のため、Mac版ではイメージが異なる場合があります。
(文:むらやまあき)
(写真:山中康司)