トライベッカ映画祭受賞作『Between the Rains(原題)』は、Adobe Premiere ProとFrame.ioで共同編集されました

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Image source: Between the Rains/Andrew H. Brown.

気候変動は、トゥルカナ・ンガレマラ族が住むケニア北部の川を干上がらせ、土壌を浸食するだけでなく、長年自然と調和して生きてきた社会の基盤を蝕みます。受賞歴のある映画監督アンドリュー・H・ブラウン氏と、ケニアを拠点とする映画監督モーゼス・トゥラニラ氏は、新作ドキュメンタリー映画『Between the Rains』で、この壊れゆく世界を描きました。この作品は、環境とコミュニティの変化と向き合う若い羊飼い、コールの体験を追っています。

『Between the Rains』は、ケニア北部で記録的な低降水量が続く4年間にわたって撮影された作品で、共同監督兼共同プロデューサーのブラウン氏と、ジャーナリスト、教師、気候変動対策の支援者からなる地元のチームとのコラボレーションの成果です。彼らは、世界的な災害の震源地の脆い社会を覆う、悲劇や葛藤を描写しました。

撮影期間が長かったため、映像素材は800時間以上。監督とその主題のクリエイティビティを損わずに編集プロセスをスピードアップするために、チームはAdobe Creative Cloudを活用し、Adobe Premiere Proを使用して編集を行いました。また、Frame.ioも重要な役割を果たし、グローバルなチームが複数の場所からシームレスに連携しつつ、レビューサイクルを短縮、承認プロセスを迅速化することができました。

トライベッカ映画祭で作品がプレミア上映される前に、ブラウン氏に共同作業の重要性、編集ツールとして Premiere Pro を選んだ理由、そして夜間の密着取材で撮影された不穏なシーンをどのように演出したかなどを伺いました。

夕日が沈む様子 自動的に生成された説明

Image source: Between the Rains/Andrew H. Brown.

映画製作者としての経験や、この業界に入ったきっかけを教えてください

ずっと写真が好きでしたが、最初の長編ドキュメンタリー『When Lambs Become Lions(原題)』(トライベッカ 映画祭2018 最優秀編集賞)のプロデュースに没頭するまで、映画監督になろうと考えたことはありませんでした。東アフリカで多くの人道活動を行っていたある時、カメラを手に取り、伝えるべき情景を撮り始めました。それがビデオカメラへと移行した時点から、私のキャリアは自然に形成されていきました。

どこでどのように編集を学んだのですか?

実践しながらです。2作目の長編ドキュメンタリー『Kifaru(原題)』(Jacson Wild 2019 最優秀編集賞)をプロデュースし撮影を手伝ったのですが、3年間にわたる撮影を経てポストプロダクションに入る頃には、適切な編集者を雇うための必要な資金が底をついてしまったのです。幸いなことに、私の頭の中には既にストーリーが描かれていたので、あとはそれをまとめるためにどのボタンを押せばよいのかを知るだけでした。Premiere Proの使い方動画をいくつかネットで見て、すぐに初めての長編映画の編集に取り掛かりました。

編集開始時にどんな準備を行いますか?

作品によって異なります。『Between the Rains』では、私は監督、撮影監督、そして編集を担当しています。まずは、4年間にわたって撮影された800時間以上の映像を整理することから始まりました。編集チームはケニアと米国に分かれていたため、メディア管理に関して皆が同じ用語を使うことが重要です。Premiere Proの一番気に入っている点でもあるのですが、標準的な映像編集ツールなので、世界のどこにいるチームメンバーでも同じ用語を使って共通認識を保つことができました。私が長年使用してきた他の編集プラットフォームよりも、はるかに簡単にです。

夕日をバックに写真を撮っている人 低い精度で自動的に生成された説明

Image source: Between the Rains/Andrew H. Brown.

お気に入りのシーンと、なぜそれが特別なのか教えてください

夜に村人たちがライオンやハイエナの声を聞くたびに、コール(主人公)が夜間警備をしなければならないシーンですね。槍を持った若き十代の羊飼いに守られ、カメラだけを手にして夜のケニアの草原に出ていくのは抵抗がありましたが、それらのシーンの編集はとても楽しいものでした。わずかな光源は、コールの小さな懐中電灯と家畜小屋の周りで起こした火だけ。この暗闇のおかげで編集で「遊ぶ」ことができたのです。このシーンの目的は、藪が擦れる音や足音で生じる恐ろしい妄想を観客にも垣間見せること。全体的な物語や雰囲気を壊すことなく、カットを隠したり心理的トリックを駆使することができました。普通、ドキュメンタリーではできないことですよね。

ポストプロダクションで直面した具体的な課題はありましたか?どうやって解決したのでしょう

編集の段階で直面した最も困難な課題は、世界の反対側にいるチームが800時間以上の映像をどのように整理し、管理するかでした。Premiere Proはそれに対処するのに役立ちました。Premiere Proは、初心者のチームメンバーでも直感的に扱えるほど使いやすい一方で、クリエイティブかつ思い通りにストーリーを表現するために必要なすべての機能を提供してくれました。

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Image source: Between the Rains/Andrew H. Brown.

Frame.ioを使いましたか?その理由や活用法も教えてください

はい、私は米国、他のチームメンバーは北ケニアの広大な土地に散らばっていたので、プロジェクトを通じてFrame.ioのお世話になりました。共同監督のモーゼス・トゥランイラと私は英語とスワヒリ語しかわからないため、最初にすべての映像素材をFrame.ioで共有して、トゥルカナ語の翻訳者に字幕を作成してもらいました。編集段階では、マイルストーンごとに行うチームミーティングや、コミュニティと作品を共有してフィードバックを得るためにレビュー機能を使っています。

Premiere Pro活用のヒントを何かひとつ教えてくれますか?

私のアドバイスは、「思い切って飛び込んでみること」です。初めて使った時は、すべてのツールが怖ろしく見えました。最も気に入っているのは、常に新しい学びがあるところ。次々に革新的な技術や効率的なツールが追加されますよね。少人数のスタッフと仕事をすることが多いインデペンデント系映画製作者にとって、それらはドキュメンタリーを作り続けるための命綱となります。

あなたにとって、クリエイティブな刺激を与えてくれる人は誰ですか?

率直に言うと、今の私にとって最大のインスピレーションは、私の7歳と4歳の二人の息子です。彼らは毎日、日常のちょっとした瞬間や物事に喜びと美しさを見出すことを教えてくれます。映画制作者は一度に多くのことを考えなければいけないので、頭の中で行き詰まってしまいがちです。でも子供たちは世界をよりよく観察し、耳を傾けることを教えてくれます。

これまでのキャリアで直面した最も困難なことを、どうやって乗り越えましたか? 意欲的な映画製作者やコンテンツクリエイターにアドバイスをお願いします

残念ながら、私のキャリアで最も難しかったことは制作に関することではありません。それは単に、独立したフリーランスの映画製作者として生計を立てられるかということです。最終的には、自分が会計士や営業部隊など多くの役割をもつことになります。でも現場にいるときは、新しいクライアントやストーリーを見つけられませんよね。常に、ビジネスの側面とクリエイティブな側面のバランスを追い求めることが必要です。と言いつつも、私はいつも皆さんのやり方を観察し、限られた時間とリソースの中でより効率的になる方法を学ぼうと努力していますけどね。

あなたの仕事場の写真を掲載します。一番気に入っているところはどこですか?

キッチンの一角 自動的に生成された説明

Image source: Between the Rains/Andrew H. Brown.

私のお気に入りの仕事場、自宅のスタジオです。ノースカロライナ州ウィンストンセーラムにある、もともとは 1700年代に設立された植民地時代のモラビア人コミュニティにある古い銅細工師の家を購入しました。Covid-19パンデミックの期間中、1.5階建の作業場をリフォームしてスタジオに変えたのです。一番気に入ってるのは、編集に深く入る必要があるときに、チームメンバーを呼んで滞在させることができる点です。通勤の必要がない専用のクリエイティブな空間を持つことは素晴らしいことでした。真夜中に目が覚めて編集のアイデアを思いつき、そのまま裏庭にある仕事場に飛び込むことが何度あったか数え切れません。

この記事は2023年6月9日(米国時間)に公開されたFilmmaker Andrew H. Brown on collaboratively cutting Tribeca’s “Between the Rains” with Adobe Premiere Pro and Frame.ioの抄訳です。