Adobe Education Forum2023 特別企画「女子大におけるAI時代の学修環境の変革」を開催〜デジタルリテラシー育成の可能性

今年で11年目を迎えるAdobe Education Forum 2023を9月6日(水)に開催いたしました。本フォーラムは女子大学の関係者が集まり、女子大学におけるデジタルリテラシー育成の可能性について講演と意見交換が行われました。

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デジタルリテラシーの育成が大学の価値のひとつに

時代の変化とともに女子大学の存在価値は変化し、各大学はさまざまな変革に取り組んでいます。新たな価値となりうるのがデジタルリテラシーの育成です。近年、企業はクリエイティブスキルを持つ人材に注目し始めていて、学生のクリエイティブなデジタルリテラシーを育むことが大学の価値を高める可能性があります。

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アドビが提示した資料より

このような情勢を背景に、学生のデジタルリテラシー育成を重視してAdobe Creative Cloudを活用する2つの女子大学が事例を発表しました。

武庫川学院武庫川女子大学〜新たな大学のビジョンとDX

兵庫県西宮市にある武庫川学院武庫川女子大学は、12学部からなる国内で最も学生の多い女子総合大学です。同大総合情報システム部 東條弘氏は、同大が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)の全体像とAdobe Creative Cloudの活用について紹介しました。

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武庫川女子大学 東條弘氏

武庫川女子大学は、2039年に迎える100周年に向けたビジョン「MUKOJO ACTION」を掲げ、時代と社会の変化に合わせた新たな女子大としての価値創造を目指しています。その一貫にDXもあり、教育環境や働き方、研究活動、IR・広報などあらゆる領域で取り組んでいます。

アドビとは、2021年度より包括契約を結び、それまで特定の学部学科で行われていたライセンスの購入を一元化しました。現在では学部共通で備えられたパソコン全てにAdobe Creative Cloudを導入しており、授業においてアドビ製品を使用する学部では個人のパソコンでも利用できる環境を整えています。

例えば建築学部では、課題の制作やプレゼンテーション、図面、ポートフォリオの制作などに幅広くAdobe PhotoshopAdobe Illustratorが使用されています。同学部は学生個人に専用の製図机とパソコンが備えられているという充実した環境ですが、大学は防犯上の理由で夜間閉じてしまうため、家庭でも個人のパソコンで場所を問わずに作業できるのが好評です。

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建築学部でのアドビ製品の活用(発表スライドより)

また、文学部日本文学科には、小説を原作にして創造的解釈を加え映像化するという演習を行なっている先生もいます。専門技術の習得のためではなく表現手段のひとつとしてAdobe Premiere ProAdobe After Effectsが使われているのです。「創造的に学生が考え、自分で撮影し、自分で編集して作品を作るという経験することによって、創造的にデジタルツールを使いこなす力がつきます。学生は非常にクオリティの高い映像を作っています」と東條氏は説明します。

校務においても会議のペーパーレス化や映像や冊子などの内製化を進め、アドビ製品の活用シーンが広がりました。収録やライブ配信ができるスタジオ設備も充実させていて、誰もがデジタルクリエイションに関われる環境づくりが進んでいます。

跡見学園女子大学〜デジタル時代に必要な表現力

続いて跡見学園女子大学 入試部 障子恵氏が、同大のデジタルリテラシーの育成について紹介しました。跡見学園女子大学は埼玉県新座市と東京都文京区にキャンパスのある文系4学部からなる中規模の女子大学です。同大は、1998年にはデジタル画像編集ができる「教育教材作成ラボ」を設置し、その翌年には1年次に情報処理教育を必修化するなど、先を見越した情報教育を行ってきました。2021年度には全学生のPC必携化が始まり、現在では学生が日常的にデジタルツールを使う環境が整っています。

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跡見学園女子大学 障子恵氏

包括契約をしているアドビ製品は学内のPCへの導入や教職員へのライセンス配布が行われていて、1年次必修の情報リテラシーの授業の他に、デザインや画像処理、動画制作などに関する選択授業や校務で利用されています。障子氏は、業務でAdobe Expressを使用して作ったという告知用画像や動画用サムネイルを示し、「文字を入れ替えるとか写真を入れ替えるということで、デザインが得意ではない私でも素敵なデザインができました」と紹介しました。

文字の書かれた紙 自動的に生成された説明

Adobe Expressで告知用の画像や動画のサムネイル作成した例

障子氏は、デジタル技術の進歩が進み続けているからこそ、デジタルの手段に加え、現場に足を運び人に会って五感で感じるようなアナログの手段も大切だと指摘します。「卒業後、社会では適切に情報を伝える力が求められます。デジタル機器を利用して情報検索をして、実際に現地へ行って見聞きし肌で感じ、戻ってきてデジタルで処理をし、そしてデジタルとアナログを駆使してプレゼンテーションで伝えるという力を、たくさんの価値観に触れながら鍛えることが大学教育に求められています」と障子氏は語り、デジタルとアナログを共存させ、バランスよく多様な表現スキルを身につけることは、豊かに生きていくためにも大切なのではないかと結びました。

Adobe Expressのデモンストレーションで生成AIに注目

最後にアドビ マーケティン本部 Creative Cloudセグメントマーケティング部 マーケティングマネージャー 岩本崇が、Adobe Expressの活用についてデモを交えて紹介しました。Adobe Expressはデザイン、動画、画像などを直感的な操作で作成できるオールインワンのツールで、ウェブブラウザかモバイルアプリで利用できます。

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アドビ 岩本崇

岩本は、自己紹介動画を作るデモンストレーションを行い、テンプレートの写真や文字を差し替え、撮影動画やBGMを追加するなどしてあっという間に動画を完成させて見せました。さらにこの8月にAdobe Expressに機能追加されたばかりの生成AI 「Firefly」による画像生成も紹介。欲しい画像をプロンプトで指示するだけで複数のバリエーションの絵が出力される様子をデモすると、会場に驚きが広がりました。

テレビを見る人 低い精度で自動的に生成された説明

「台所で皿を洗うアライグマ」というプロンプトで瞬時に画像が生成された

Adobe Expressは気軽に使えるため、どのような学部でも導入しやすいツールです。岩本は学部の分野別に利用価値が高いテンプレートを紹介し、デジタルクリエイションを大学の学びに取り入れるヒントを示しました。

女子大学の新たな価値となりうるデジタルリテラシーをどのように育むのか、発表事例をもとにさらに意見交換が行われ、女子大学の関係者間の交流が深まりました。

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(文:狩野さやか)